『ウォークラフト アークライト ランブル』メディア合同インタビュー。タワー“オフェンス”が生まれた経緯や、開発姿勢について訊く

 

Blizzard Entertainmentは5月4日、『ウォークラフト アークライト ランブル』を発表した。対応プラットフォームは、iOS/Android。本作は、『Warcraft』の世界を舞台にした、タワーディフェンスならぬタワーオフェンスゲームとなる。自分の拠点を守るだけでなく、こちらからボスを目指して攻勢をかけることができるという(関連記事)。

本作の発表に際して、このたび弊誌は、メディア合同インタビューに招待いただいた。本稿は、そこでのインタビュー内容をお届けするものである。


なぜタワー“オフェンス”なのか

―― 『Warcraftのモバイル向け新作とお聞きしていましたが、まったく予想していなかったジャンル・ビジュアルに驚いております。どういった開発経緯があるのでしょうか?

ゲームディレクターTom Chilton氏(以下、Chilton氏):
『ウォークラフト アークライト ランブル』としての開発が始まったきっかけは、2つあります。ひとつは、我々がプレイしてきた、さまざまなゲームから受けたインスピレーション。そしてもうひとつは、我々のもつ『Warcraft』というフランチャイズを、モバイル向けの新鮮なゲームとして制作したい、という思いです。これらの着想から、開発がスタートしました。

シニア3DアーティストJustine Hamer氏(以下、Hamer氏):
制作チームについても、それぞれの課題に専念できるように、完璧なメンバーで構築されてきました。

―― 本作は、タワーディフェンスならぬタワーオフェンスということですが、タワーディフェンスというジャンルは、流行の最盛をやや過ぎた印象を受けます。そこであえて、このジャンルを選んだ理由はあるのでしょうか?

Chilton氏:
前に述べたように、本作はさまざまなPCゲーム、およびモバイルゲームからインスピレーションを得て開発されています。現行の『Warcraft』シリーズや、『クラッシュ・ロワイヤル』。さらに、私は『パズル&ドラゴンズ』の長年のファンで、同タイトルからも影響を受けています。いろんなジャンルのゲームから着想を得たうえで、最終的にはタワーディフェンス改めタワーオフェンスというジャンルに行き着きました。

さらに付け加えると、Blizzardでは市場のニーズよりも、開発者の情熱を重視してゲームを制作しています。熱意ある開発者が、素晴らしいビジョンをもって制作したゲームは、市場のニーズにかかわらず優れたタイトルとなるからです。

―― では、タワーオフェンスの新タイトルとして特に“売り”になるような部分はあるのでしょうか?

Chilton氏:
本作が売りにしているのは、戦闘です。ゲーム内で、あるキャラクターが別のキャラクターと戦うシーンというのは、非常に深いゲームプレイをもたらす可能性を秘めています。戦闘面でのゲーム体験は、開発の初歩から全体にわたって意識している部分です。

ゲームプレイについて

―― プレイヤーの操作への介入度について教えていただきたいです。ユニットの移動先やスキルなど、複雑な操作が要求されるものでしょうか。それとも、ユニット生産やスキル発動のタイミングのみを決めるようなシンプルなものですか。また、本作では、PvEとPvPのどちらがメインになるのでしょうか?

Chilton氏:
本作でのゲームプレイは、自動的に進行していくようなものではなく、プレイヤーが熱中しながら操作できるものです。また、Blizzardでは、基本を簡単に習得できる反面、上達するのは難しい、というゲーム作りをモットーにしています。そのため、PvPであれPvEであれ、プレイヤーがゲームプレイのなかで上達しながら、自身の思惑をプレイとして表現できるようなシステムを構築しました。メインとなるゲームコンテンツはPvE用に作られていますが、その他多くのコンテンツでは、PvPにも同等に焦点をおいて制作されています。

―― 想定されている1ゲームのプレイ時間はどの程度になるのでしょうか?

Hamer氏:
1ゲームあたりは2、3分前後とごく短いです。

Chilton氏:
ユーザーがプレイスタイルに応じて、短い時間でもプレイできることは非常に重要だと考えています。もちろん、たくさんゲームをプレイして何時間も遊ぶ、ということも可能です。

―― eスポーツのように、世界的に競技ゲームとして展開する構想はありますか?

Chilton氏:
今のところ明確には決めておりません。コミュニティの声を重視したいと思っています。まずはベータテストで、プレイヤーが何を必要としているのかを理解していきたいです。そのうえで、プレイヤーにとって、eスポーツとしての競技性が重要視されているのであれば、そのような方向性を取っていく可能性はあります。

――Blizzardは、プレイヤーコミュニティとともに、いつもゲームを大切に育てていらっしゃるイメージを持っております。今作でもユーザーの声をゲームに反映していくという施策は検討されていますか?

Chilton氏:
プレイヤーコミュニティは、Blizzard作品の大部分を占める要素です。本作でも、それを反映する施策のひとつとして、ギルドシステムが用意されています。ゲームプレイも、ほかのギルドメンバーと協力して挑戦するようにデザインされています。誰もが共通の目標に向かって取り組み、みんながその報酬を得られるようなかたちです。こうしたコミュニティ要素が、ゲームの内側だけでなく外側にも反映されて、コミュニティ開発が盛んにおこなわれてくれることを期待しています。

また、Blizzardでは、「Every Voice Matters(すべての意見が重要)」を会社哲学のひとつとして掲げています。そのため、コミュニティに接してプレイヤーの意見を聞くことが、開発においても大きな部分を占めています。

Hamer氏:
特に、ベータ版では、たくさんのフィードバックをお待ちしております。

日本向け展開について

―― 日本のゲーマーにとって『Warcraft』は、やや馴染みの薄い印象があります。同作を知らないユーザーが興味を持ってくれるような、日本向けの特別なイベント・キャンペーンなどは考えられているのでしょうか?

Chilton氏:
マーケティングチームの戦略や、コミュニティからのニーズなどを含めて、総合的に判断していきます。そのため、現状では、日本に向けて特別な展開が明確に用意されているわけではありません。ただ、リリース後に、日本のプレイヤーコミュニティからの要望があれば、サポートしていけるようにと考えています。

──── 今回のタイトルは日本市場にも注力されると聞いております。日本での人気を狙う、戦略の根拠となるものはあるのでしょうか?

Chilton氏:
我々Blizzardのゲームは、数多くの地域に向けてローカライズされ、展開されています。私たち開発者が情熱を注いでいるのは、世界中のみなさんに最高に楽しいゲーム体験をお届けすることです。リリース時にはいつも、世界中の人々が、我々のタイトルを気に入ってくれていることを祈っております。そして、開発しているゲームのクオリティが高いほど、ファンがどんどん増えて、展開される地域も広がっていくと信じています。

なかでも日本では、モバイル向けゲームの人気が高く、我々のゲームをたくさんの人に遊んでいただけるチャンスがあると考えています。日本は、ゲームを熱心に遊んでくれるプレイヤーが数多く、世界的にみてもゲームの中心地のひとつです。そんな日本の方々に本作を気に入っていただければ、きわめて喜ばしいことだと思っています。

―― 本作のビジュアルは、今までの『Warcraft』作品よりもかなり明るい印象を受けます。この『ウォークラフト アークライトランブル』版のキャラクターたちが、リアルフィギュア化される予定はございますか?

Hamer氏:
キャラクターデザインでは、非常に良い仕事に取り組めたと思います。フィギュア化については、将来の計画としてはっきりとお伝えすることはできませんが、実現されるように願っています。もしフィギュア化されるなら、私自身も絶対に手に入れたいですね(笑)

――ありがとうございました。