『ソフィーのアトリエ2 〜不思議な夢の錬金術士〜』プロデューサーインタビュー。「秘密」シリーズを経て見直された、「モダンアトリエ」

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コーエーテクモゲームスから、『ソフィーのアトリエ2 〜不思議な夢の錬金術士〜(以下、ソフィーのアトリエ2)』が2022年2月24日(Steam版は2022年2月25日)に発売予定となっている。本作には、『ソフィーのアトリエ 〜不思議な本の錬金術士〜(以下、ソフィーのアトリエ)』の主人公であり、「アトリエ」シリーズの中でも人気のあるソフィーが再び主人公として登場。故郷キルヘン・ベルを離れて旅を続けていたソフィーが、夢幻世界「エルデ=ヴィーゲ」で新たな冒険を繰り広げるという。

本作の情報としては、プラフタ(人形)と同名の少女プラフタや、錬金術士のラミゼルなどが明かされているが、まだまだ謎が多い。今回弊誌では機会を頂き、本作のプロデューサーである細井順三氏にインタビューを実施。なぜソフィーが再び主人公を務めるのか、『ソフィーのアトリエ2』の時系列などについて疑問をぶつけてきたので、その内容をお届けしよう。


「秘密」シリーズで新たな展開を見せた「アトリエ」シリーズ

───自己紹介をお願いします。

細井順三氏(以下細井氏):
ガストブランド長の細井順三です。2020年4月にガストブランド長に就任しまして、それ以降はガストブランドのすべてのタイトルの責任者を務めています。また『ソフィーのアトリエ2』ではプロデューサーとして制作にも携わっています。

───ガストブランド長に就任される以前から、プロデューサーとしてご活躍されていましたよね。

細井氏:
『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』(*1)がプロデューサーとして初めて携わったタイトルで、それ以降ほぼすべてのガストタイトルにプロデューサーとして関わっています。元々ガスト(*2)には宣伝担当として入社しました。当時のガストは30人もいないぐらいの規模で、『マナケミア ~学園の錬金術士たち~』(*3)というゲームを発売を予定していました。小さなパブリッシャーでしたので映像制作など、宣伝が関わることはすべて担当していたのですが、一度にリリースされるタイトルも少なかったので、1タイトルを発売したら宣伝としては手の空く期間もありました。そうした時には、たとえば開発のお手伝いなどもしていました。

*1:コーエーテクモゲームスのガストブランドから2017年3月に発売されたヒロイックRPG。イラストレーターの岸田メル氏が監修/キャラクターデザインを務め、少女たちの等身大の青春を描いている。

*2:長野県でゲームを開発していた国内のゲーム開発会社。2014年のコーエーテクモゲームスへの合併を経て、現在はガストブランドとなっている。

*3:ガストから2007年にPlayStation 2用ソフトとしてリリースされた、「アトリエ」シリーズの9作目。翌年には続編となる『マナケミア2 〜おちた学園と錬金術士たち〜 』も発売されている。

───開発にも入られていたんですね。

細井氏:
そうですね。宣伝の仕事を行いつつも、どんどん細かなゲーム開発自体にも携わっていきました。そのうち次第に声優事務所や外部の開発スタジオとの交渉や、開発の進捗管理なども担当するようになって、宣伝を担当しながらもゲームの開発に深く関わるようになっていきました。コーエーテクモゲームスの中でも比較的特殊な経歴かもしれません。

───ちなみに、ガストブランドは現在どの程度のスタッフが在籍されているのでしょうか。

細井氏:
100人強でしょうか。ガストブランドは現在横浜みなとみらいと京都に拠点があり、その両方をあわせると100人くらいになります。


───『ソフィーのアトリエ2』の発表後、シリーズファンから大きな反響がありました。ユーザーからの反応については、どのように感じておられますか。

細井氏:
「アトリエ」シリーズファンの皆さまには喜んでいただけたかなと嬉しく感じています。「ライザの新作じゃないの?」といったご意見もいただきましたが、「やっぱり「不思議」シリーズ(*4)のソフィーはいいよね」や「ソフィーが帰ってきたか」といった反応もあり、「不思議」シリーズやソフィーのファンの皆さまには喜んでいただけたと感じています。発表後は「不思議」シリーズのDX版の本数も伸びました。同じような現象として、「秘密」シリーズ*5の『ライザのアトリエ2 〜失われた伝承と秘密の妖精〜(以下、ライザのアトリエ2)』発表時も『ライザのアトリエ 〜常闇の女王と秘密の隠れ家〜(以下、ライザのアトリエ)』も本数が伸びていましたので、やはり関連過去作や「“1”と“2”をあわせてプレイしたい」というニーズがあるのだと改めて感じました。

*4:『ソフィーのアトリエ』『フィリスのアトリエ 〜不思議な旅の錬金術士〜(以下、フィリスのアトリエ)』『リディー&スールのアトリエ 〜不思議な絵画の錬金術士〜(以下、リディー&スールのアトリエ) 』『ソフィーのアトリエ2』をまとめた名称。タイトルに共通して「不思議」が付いていることから、「不思議」シリーズと呼ばれている。またそれぞれのタイトルについて新規コンテンツを追加したDX版も発売されている。

*5:『ライザのアトリエ』『ライザのアトリエ2』をまとめた名称。タイトルに共通して「秘密」が付いていることから、「秘密」シリーズと呼ばれている。


───「アトリエ」シリーズは、「秘密」シリーズで売上が大きく伸びた部分があると思います。最近発売された「不思議」シリーズDX版には、「秘密」シリーズからの新規ユーザーも入ってきているのでしょうか。

細井氏:
『ライザのアトリエ』以降は、「アトリエ」シリーズ全体をプレイされている方のベースがあがっている印象があります。販売本数も底上げされていますし、SNSなどで情報を投稿したときの反応も圧倒的に伸びていますので、「秘密」シリーズ前後でベースは明らかに変わっていると思います。

───「秘密」シリーズ以降、ユーザーベースが拡大した要因は何だと思われますか。

細井氏:
シリーズというものは、ただ作品を重ねていってしまうとマンネリ化して、ユーザーの皆さまの中で鮮度が落ちていってしまうと思うんです。そうして鮮度が失われたものは、ライブ感のないコンテンツに見えてしまったり、忘れられていってしまうと思うんです。我々は常にライブ感がある「アトリエ」シリーズを作っているつもりでも、ユーザーの皆さまがライブ感を得られないコンテンツになってしまっていては、忘れられてしまいますし、新しい方も入りにくい状態になります。

「アトリエ」シリーズはまさにそういう状態にあったのですが、再度ライブ感を出すために『ライザのアトリエ』でシステムや遊びの部分を見直した結果、かつてのプレイヤーの皆さまに「私アトリエ好きだったんだよね」と思い出していただけたり、これまで触れてこなかった方にも「アトリエ」シリーズに初めて触れていただけるような機会になったのではと思っています。


再び描かれるソフィーの物語、『フィリスのアトリエ』までの空白の成長

───ここからは『ソフィーのアトリエ2』の開発の経緯について伺わせてください。どういった理由から、「不思議」シリーズ4作目として、再びソフィーが主人公を務めることになったのでしょうか。

細井氏:
「アトリエ」シリーズは来年で25周年を迎えます。その際ユーザーの皆さまに新しい驚きや、シリーズの拡張性などを示したいと考えていました。また、25周年を記念するタイトルは、ユーザーの皆さまに寄り添ったコンテンツにしたいとも思っていました。考えていく中で、さまざまな人気投票やSNSの反応などを統合的に見た時に、「アトリエ」シリーズファンにソフィーが愛されていると感じました。

2019年に「アーランド」シリーズの4作目として『ルルアのアトリエ 〜アーランドの錬金術士4〜』を発売しました。その時の皆さまの反応から、一口で「アーランド」シリーズが好きと言っても、「アーランド」シリーズに生きるキャラクターたちが好きという方が多いのだなと感じました。また『ライザのアトリエ2』で主人公続投を好意的に捉えていただけたこともあり、「アトリエ」シリーズ25周年記念タイトルでは、ソフィーを再度フィーチャーすることにしました。「不思議」シリーズ4作目を作るとしても、新しい主人公を据えるのはユーザーの皆さまの望んでいる方向にはならないのではないか、直球で行こうと考えて、『ソフィーのアトリエ2』となりました。

社内では「なんで今ソフィーなの?」といった意見も出ましたが、それでも我々としては『ソフィーのアトリエ2』を作る必要性を感じていました。というのも『ライザのアトリエ』以降、「アトリエ」シリーズに対してポジティブな意見を多くいただきましたが、同時にずっと「アトリエ」シリーズを好きなユーザーをないがしろにして、新規ユーザーを獲得しにいったといった声もありました。我々としてはそのようなことはなく、変わらずユーザーの皆さまの動向を見ていますし、ファンの皆さまに応援していただいているからこそ続けてこられている「アトリエ」シリーズですので、そのことを「アトリエ」シリーズファンの皆さまに改めてしっかりお伝えしたいと思っていたんです。そのような事情からも、『ソフィーのアトリエ2』を開発することにしました。

───従来のプレイヤーを大事にしていると示したかったわけですね。

細井氏:
ライザはセクシャルなキャラクターとして認識されている方が多いと思います。トリダモノさん(*6)の画風もあってセクシーに見えるキャラクターとして認識されるようになったというのは正直ありますが、衣装の布面積を見比べると、ライザ以前の主人公のほうが布面積が少ないケースもあります。そんなライザは田舎の村の元気な子でお転婆なところもあり、「アトリエ」シリーズとしてはちょっと変わった主人公だと思っているんです。

我々としては、そうした変化球のようなキャラクターのほかにも、岸田メルさん(*7に)担当していただいた『ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜』以降の現代「アトリエ」……私は「アーランド」シリーズ以降の現代「アトリエ」を「モダンアトリエ」と分類していますが、「モダンアトリエ」のイメージをそのまま踏襲した、ガーリーで華やか、温かくてほのぼのといった「アトリエ」の直球的なキャラクターも尊重していますし、重要だと考えています。先にも話に出ましたが、「アーランド」シリーズは『ルルアのアトリエ』で4作目を出していましたから、「秘密」シリーズを経てその技術もとりいれた「不思議」シリーズの4作目というのは、皆さまにサプライズをお届けできるのではないかなと思ったんです。

*6:「秘密」シリーズのキャラクターデザインを担当しているイラストレーター

*7:「アトリエ」シリーズでは、『ロロナのアトリエ 〜アーランドの錬金術士〜』から続く「アーランド」シリーズのキャラクターデザインを担当したイラストレーター

───ソフィーを主人公として、『リディー&スールのアトリエ』よりも後など、ほかの時系列を描くプランもあったのではないかと思います。本作の時系列が、『フィリスのアトリエ』の前となった理由について伺わせてください。

細井氏:
ソフィーは『ソフィーのアトリエ』の最初は駆け出しの錬金術士ですが、『フィリスのアトリエ』では錬金術の先生、そして『リディー&スールのアトリエ』では常識はずれなレベルの錬金術士にまで成長していきます。その経験期間のひとつを、続編・新作タイトルとして描くことで多くのユーザーの皆さまに楽しんでいただけたり、驚いていただけたりするのではないかなと思いました。『リディー&スールのアトリエ』はいわば完成系といいますか、すでに成長に成長を重ねた結果のソフィーです。しかし『ソフィーのアトリエ』の最後から『フィリスのアトリエ』までの間にあそこまでソフィーが成長しているということは、その間に何かドラマチックな経験があったはずですので、そこをしっかり描きたいと考えました。それに加えて、ソフィーが錬金術を始めるきっかけになった物語、「不思議」シリーズの起点とも言える「エピソード・ゼロ」的なお話やプラフタについても、もっと深堀りしたいとも考えていました。

今まで描いていなかったソフィーの成長、「どうしてあそこまで成長できたのか」をしっかり描くこと。それを通じて、ユーザーの皆さまに、なぜ『ソフィーのアトリエ』と『フィリスのアトリエ』という時系列を選んだのか、ご納得いただけるのではないかと思っています。

───確かに「不思議」シリーズの物語は、『リディー&スールのアトリエ』できちんと完結していましたね。

細井氏:
そうですね。その後を描いた4作目を作るのは蛇足だと思いますし、ソフィーが主人公であるなら『ソフィーのアトリエ』よりも前のお話は作れないと思うんです。そもそも錬金術がほとんどできませんから(笑)。また我々は、単純にソフィーを主人公にしたゲームを作ればいいと思っているわけではありません。『ソフィーのアトリエ』プレイ後に、「もっとソフィーの活躍を見たい! ソフィーの続きを見たい!」と思ってくださった方、さらには「不思議」シリーズをプレイされた方に、ソフィーというキャラクターについてもっと深く知っていただけるものでなければ、主人公として採用する理由がないと思うんです。やはり我々も描きたい物語があるからソフィーを採用した背景があります。

───ということは、ソフィーが好きな人は本作に期待していいわけですね。

細井氏:
ご期待にお応えできるようなものになっていると思います。


「秘密」シリーズを経た、現代版「モダンアトリエ」

───本作では、『ルルアのアトリエ』と「秘密」シリーズを経て、再び「不思議」シリーズが描かれます。改めて「不思議」シリーズを描くにあたって、意識していることはありますか。

細井氏:
「秘密」シリーズで培った技術をとり入れつつも、「不思議」シリーズならではのファンタジックな世界観や、優しくて温かい世界と登場人物といった「モダンアトリエ」を包括するように作っています。「秘密」シリーズはライブ感や新鮮さを重要視していましたので、過去作はあまり気にせずに作っていました。

そのため「秘密」シリーズには、「アトリエ」シリーズっぽくない、ということでそれまで避けられてきたものも入っています。たとえば、「秘密」シリーズはひと夏の思い出を描いていますが、それまでの「アトリエ」シリーズでいえば、ひと夏という短い期間で錬金術士が完成する、はたまた賢者の石が調合できるようになるというのはありえなかったと思います。そうした過去の作法的なものをある程度無視していますので、「アトリエ」シリーズとしては異質のようなシリーズになっていると思います。そのため『ソフィーのアトリエ2』は、「モダンアトリエ」の現代版を作るぞという意志を持って挑んでいます。『ライザのアトリエ』のときとは切り口を変えて、もう一度一つ一つの要素を見直して、なぜ陳腐化していったのか、どうしてこれが面白かったのか、といったところも含めてすべて検証し直し、アップデートされた結果が本作です。

───試遊版を遊ばせていただきましたが、シームレス戦闘やマップ画面への採取可能素材の表示など、快適に遊べる仕組みが印象的でした。検証の結果、そうした仕組みの導入に繋がったのでしょうか。

細井氏:
そうですね。たとえば戦闘ですが、細かいシステムは違えど「不思議」シリーズでは一貫してターン制の戦闘を採用していました。ですので本作でもターン制の戦闘を採用しています。ただ、ターン制の戦闘は、コマンドを選ぶ選択性はあっても、特定のタイミングでダメージを一気に稼ぐといった、リアルタイム的な遊びがなくなってしまいます。そのためにツインアクションなど、ユーザーが任意でダメージを一気に稼ぐ手段を入れていった形です。

またターン制の戦闘ではテンポのよさも重要だと考えていましたので、ストレスをどんどん減らしていく方針で設計し、フィールドからシームレスで戦闘へ移行するようにしました。ほかにも、戦闘中は何度も同じ演出を見ることになりがちですので、倍速モードなども入れています。

───関連して、本作のバトルのコンセプトについて伺えますか。

細井氏:
とにかくわかりやすく、芯がある戦闘を目指しました。本作では、敵が「オーラ」というシールドのようなものをまとっていることがあります。オーラを破壊した際に、ツインアクションでダメージを稼げるような設計にしていますので、ダメージを一気に与えるべきタイミングがわかりやすくなっていると思います。プレイスタイルによってそれぞれ正攻法は異なるかもしれませんが、ゲームとしての基本のわかりやすさとテンポのよさを追求し、それと共にストレスを限りなく減らしていきました。戦略性や戦術性は、複雑すぎるとかえってプレイヤーにストレスを与えかねない要素でもありますので、そこのバランスに非常に気をつけて作りました。


───ソフィーについて伺わせてください。本作では、錬金術士としてのソフィーの立ち位置はどういったところになるんでしょうか。

井氏:
本作の主人公として、周りをリードしていくような立ち場です。『ソフィーのアトリエ』後の物語ということで、錬金レベル(調合の腕前)は高い状態で、もちろん錬金術も扱えます。たとえば本作から登場するプラフタ(少女)を先導して錬金術を教えるような立ち位置にもあたりますが、性格的には未熟なところがまだまだあったり、不安定なところを見せたりもします。

───今作で『ソフィーのアトリエ』から錬金レベルを継承した理由を伺えますか。

細井氏:
『ライザのアトリエ2』のときのユーザーの皆さまの反応を受けてですね。『ライザのアトリエ2』では調合レシピをおもにスキルツリーから覚えていく形にしていましたが、『ライザのアトリエ』でライザが成長しながら覚えたはずの調合レシピを『ライザのアトリエ2』では再度覚え直す必要があったんです。当然ユーザーの皆さまの中には『ライザのアトリエ』をプレイした時の思い出があり、『ライザのアトリエ2』では、いわばその前作での成長がゼロになってしまったことで違和感ができてしまった部分があったかなと思います。『ライザのアトリエ2』発売後の反応の中でも、そうした部分が錬金術周りについての不満点として言及されていたこともありましたので、それを反省した結果、『ソフィーのアトリエ2』のソフィーは最初から錬金レベルを高く設定し、システム面でも錬金術士として優秀であることを示しています。

ただ「アトリエ」シリーズは錬金レベルが高い状態からだと、レシピの解放やアイテムの配置といったレベルデザインが難しくなる側面もありますね。

───ということは、本作の錬金術周りの設計には苦労があったのではないでしょうか。

細井氏:
苦労はしましたが、開発初期の段階から「ソフィーの錬金レベルは高い状態からスタートしよう」と決まっていましたので、そこまで大工事をしたわけではありません。本作の開発で苦労した点を上げるとすれば、大工事を何度もしたシナリオですね。シナリオはキャラクター像にも大きく影響しますし、納得のいく物語を作るために何回も大規模な修正を行いました。

ユーザーの皆さまが思い浮かべるであろうソフィー像やキャラクター像は製品版で出会う人物像になりますが、その製品版にいたるまでは、開発に関わるメンバーによってそれぞれ解釈やイメージが違っていたりするんです。今回は、書き手による解釈の違いを統合するために、何度も議論を重ねていきました。苦労した分、結果的に良いシナリオになったのではないかなと思っています。

───本作ではストーリーと独立した形で、再びレシピ発想がシステムとして採用されています。レシピ発想についても、導入の理由などを伺わせていただけますか。

細井氏:
「不思議」シリーズはレシピに紐付いたシステムが好評でしたので、そうした基本のところは残そうと思っていました。加えて本作では「採取」の楽しさにもフィーチャーしたかったので、レシピ発想のシステムは必須だったとも言えます。「秘密」シリーズでは、採取道具を切り替えることによって、ある程度狙った素材を採取できるような能動的な採取になっており、プレイヤーの採取にかかるコストを極力減らす方向にしていました。『ソフィーのアトリエ2』は、その逆というか、どんどん採取して、たくさん新しい素材を採取していった結果、新しいレシピも発想できるというサイクルでゲームが回っていくようにしています。「秘密」シリーズとは採取のコンセプトが違うので、それに紐付いたシステムにしていますね。

───採取においては、どのような見直しがおこなわれたのでしょうか。

細井氏:
「アトリエ」シリーズでは、調合の材料集めのために採取でフィールドを歩き回る機会が多いと思います。フィールドで採取していく途中に敵と遭遇してロードが挟まり、戦闘終了後に再びロードが挟まってフィールド、つまり採取に戻るという流れはプレイヤーにとってストレスだと考えました。ターン制の戦闘でのテンポのよさを重視するためのシームレス化は、採取のテンポをよくするためのものでもあったんです。また、今回は採取道具の切り替えを任意で行うことなく、ワンボタンでその採取ポイントの素材を採れるようにしています。「秘密」シリーズのように採取行動の一つ一つに選択が伴うと、採取とターン制戦闘のそれぞれにおいて、プレイヤーが選択にかける時間が多くなってしまうのではないかと思ったんです。本作では、戦闘で時間をかけて戦略を考えていただける設計になっていますので、プレイヤーの選択にかかるコストを考慮して、ワンボタンでの採取を採用しています。また、採取の中にも道具選択とは違う遊びをとり入れたかったので、ミニゲーム的に採取を楽しめる「大採取」も用意しました。


───調合関連では、プラフタ(少女)で調合できる「プラフタ調合」が発表されました。ソフィーでの調合とプラフタでの調合には、レシピ以外の違いはありますか。

細井氏:
レシピにはソフィー専用のレシピ、プラフタ専用のレシピ、二人共通のレシピの大きく分けて3種類があります。ソフィーの調合とプラフタの調合では、レシピ以外に大きな違いはありません。専用レシピはシナリオに関わるアイテムがあるため、両者ともバランス良く調合を行って、それぞれの錬金レベルを上げておくのがオススメですが、まずはお気に入りのキャラクターで調合を楽しんでいただければと思います。

───調合関連の新しい要素としては、仲間との協力スキルも発表されました。これまで調合は錬金術士が一人で担うイメージがある中で、今回仲間と協力する要素が登場しましたが、どういった経緯から導入が決まったのでしょうか。

細井氏:
ソフィー、プラフタどちらの調合でも協力スキルは使えますが、今回の舞台は夢幻世界という、ある種、これまでの「不思議」シリーズとは違う世界ですし、仲間が調合を手伝ってくれる形も面白いと思い、仲間キャラクターが介入するような調合システムを追加しました。


夢幻世界で登場するキャラクターたち

───アレットのキャラクターとしてのコンセプトなどについて伺わせてください。

細井氏:
アレットは、陽気な商人気質のキャラクターで、夢幻世界にやって来たソフィーの第一発見者です。好奇心旺盛ですので、ソフィー自身にも強い興味を持っており、一緒に冒険することでなにか良いものが得られるのではないかと思って、パーティーに参加することになります。とても明るいキャラクターです。またデザインは、ゆーげんさんに担当していただいています。

───『ソフィーのアトリエ2』のキャラクターデザインに際しては、何かオーダーをされましたか。

細井氏:
NOCOさんもゆーげんさんも、これまで「不思議」シリーズ3タイトルのキャラクターデザインを担当されていますので、我々から強いオーダーはあまりしていません。おふたりの中には「不思議」シリーズにおけるデザインイメージがあり、そのイメージはすでに完成されていますので、その部分は揺るがさずに描いていただきました。アレットについては、ゆーげんさんのデザインで胸が大きい女性キャラクターはあまり見たことがありませんでしたので、驚きましたね。


───オリアスのコンセプトについて伺わせてください。

細井氏:
オリアスは、基本的には面倒見がよいキャラクターです。ソフィーをこの世界で助けてあげられる、兄貴分としてサポートしてくれる頼もしい存在、というのがコンセプトになっています。思いやりもあるのですが、自信家な俺様タイプですので、自分中心に動くようなところもありますね。

───オリアスのデザインについては、アトリエシリーズの男性キャラクターらしいデザインだと感じました。

細井氏:
オリアスのデザインを担当されたNOCOさんは、「不思議」シリーズにフィットする形に仕上げてくださることが多いですね。過去の「不思議」シリーズに登場したキャラクターのエッセンスもとり入れているのかなと思います。

───プレイヤーからの反応について伺わせてください。新しいプラフタがプレイヤーの間でロリフタと呼ばれています。そのような反応についてはどのように捉えておられますか。

細井氏:
本作から登場するプラフタについて、そうした愛称をつけていただけるほど注目されたのは非常に嬉しいですね。デザインを担当されたゆーげんさんも手応えがあったのではないかと思います。


───ラミゼルについてはいかがでしょう。こちらは“直球の予測”に従った愛称がつけられています。

細井氏:
ラミゼルは具体的に説明せずに伝えるといいますか、ユーザーの皆さまに色々と考察して楽しんでいただきたい、という宣伝チームの望みがありました。望んだような反響をいただけて、我々としても嬉しいかぎりです。

───ユーザーの反応の中で意外だったり、印象的だったものはありますか。

細井氏:
きちんと閉じた「不思議」シリーズの物語なのに、何でまた開くんだというご意見です。開発当初から、「きちんと3部作で終わっているのに、なんでもう一回ソフィーの物語を描くのだろう?」といったご意見は少なからずいただくだろうと予測はしていましたし、ごもっともだと思います。ただ、『ソフィーのアトリエ2』をプレイしていただければ、我々がやりたかったこと、描きたかった物語はご理解いただけると思っています。

───インタビューの中で、細井さんは批判的なユーザーの意見もしっかり参考にするという印象を受けました。

細井氏:
批判的なご意見も、好意的なご意見も、どちらも興味をもって注目していただけた結果だと思っているます。我々にとって一番良くないのは、何の興味も持たれない無風の状態で、無風ほどつらいものはないと思うんです。批判されるということは、少なくとも情報をご覧いただいたうえで、さらに何かが気になっている状態ということになりますから。ゲームはエンターテインメントであり、生活必需品というわけはありません。人を楽しませるためのものを作るときに、批判的な意見を見ずに、良い意見だけを見るというのは、私はずるいと思うんです。批判的なものも、好意的なものも、より多くの人たちに楽しんでいただけるゲームを作っていくうえで必要不可欠なものですので、ユーザーの皆さまのご意見にしっかり向き合って、きちんとそれを吸収し、よりよいものを作っていきたいと思っています。そしてそれは、ガストブランドの文化でもあります。

───ユーザーの意見と向き合うという部分もあってなのか、「アトリエ」シリーズでは毎作システムやキャラクターなど、さまざまなものが変化しています。細井さんは、そうして変化する「アトリエ」シリーズの中で、軸になる「アトリエ」らしさとは何だと思われますか。

細井氏:
「アトリエ」らしさは開発全体で作っていく部分があると思っています。「アトリエ」シリーズ1作目の『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』を作った吉池さん(*8)とは、今でもよくお話しするのですが、たとえば吉池さんが当時考えられていた「アトリエ」と、今の「アトリエ」は違うものだったりするんです。でもそれは「アトリエ」を作り続けてきているなかで、開発チームそれぞれのメンバーが「アトリエ」らしさのイメージをもっていて、「ここまでやったらだめだよね」、「このあたりまでであれば大丈夫かも?」といったせめぎあいをずっとしてきた結果なんですよね。そうしてつながってきたものが、「アトリエ」シリーズらしさを生み出しているのではないかと思います。

───何か継承してきたものがあるということでしょうか。

細井氏:
イメージなので具体的にお伝えするのは難しいですが、優しい世界、人を殺してはいけない、などの根本的な部分はあります。ただ、それを守ったからといっていきなり「アトリエ」らしい「アトリエ」を作れるかと言うと、そうではないと思います。やはり開発全員が作り続けてきた文化やイメージをタイトルを作るたびにメンバー同士で相談しつつずっと継承していって、皆さまからのご意見やリクエストもいただきながら、その時代やニーズに合ったものを作ってきた結果が「アトリエ」シリーズらしさであり、ガストブランドの礎であるとも思っています。

*8:ゲームプランナー・シナリオライターである吉池真一氏。元ガストブランド所属で、『マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~』当時はディレクターを務めていた。


───最後に「アトリエ」シリーズ、「不思議」シリーズのファンに向かってメッセージをお願いします。

細井氏:
「アトリエ」シリーズは来年で25周年を迎えます。本当にこれまで応援してきていただいてありがとうございます。本作は25周年の記念のオープニングタイトルとして、ガストブランドの総力を結集して作っています。我々が自信をもってお届けできる作品に仕上がっていますので、是非プレイしていただけると嬉しいです。

───オープニングタイトルということは、ほかにも期待できるのでしょうか。

細井氏:
ご期待ください。

───ありがとうございました。


©コーエーテクモゲームス All rights reserved.
※掲載されている画面写真は開発中のPlayStation®4版のものです。

『ソフィーのアトリエ2 〜不思議な夢の錬金術士〜』公式サイト
https://www.gamecity.ne.jp/atelier/sophie2/




※ The English version of this article is available here

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