『ディアブロ イモータル』開発者インタビュー。ゲームの見どころや目玉のPvPシステムについて訊く

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Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)は4月下旬より、『ディアブロ イモータル』のクローズドαテストを海外向けに実施中。『ディアブロ イモータル』は、ハクスラARPGの金字塔である『ディアブロ』シリーズのモバイル向け完全新作だ。

『ディアブロ イモータル』は日本向けにも展開されるそうだ。全世界同時ローンチ予定で、その中に日本も含まれているという。今月5月20日には、Android向けに国内クローズドαテストの開催も予定されている。本作の日本公式Twitterアカウントも開設されているので、本作が気になっていた方はチェックしてほしい。


クローズドαテストに際して、Blizzardは日本メディア向けのインタビューを実施。本稿では、本作のプリンシパル・ゲームデザイナーScott Shicoff氏とゲームディレクターWyatt Cheng氏への合同オンラインインタビューの内容をお届けする。

まずは『ディアブロ イモータル』の内容について説明したい。本作は、『ディアブロ』をモバイル向けに最適化した新作だ。ソーシャル要素なども豊富に盛り込まれており、今までの『ディアブロ』シリーズ作品と比較して、さらにプレイヤー同士の繋がりが重視される作品になるようだ。また、ゲーム中の課題をクリアして、シーズン期間をかけて報酬を少しずつアンロックしていく形式の、有料と無料のバトルパス(シーズンパス)システムも用意されている。

『ディアブロ イモータル』を大きく特徴づけるのは、「イモータル」と「シャドウ」というふたつの陣営の存在だ。イモータルが王座防衛者で、シャドウが挑戦者といったイメージになるだろう。プレイヤーはシャドウとしてチームを組み、サーバー内最強のチーム、すなわちイモータルの座を目指して争うこととなる。


最高の成績をおさめイモータルとなったプレイヤーたちは、宝物庫の守護やPvEレイドを通じて、強力な報酬を手にする権利を得る。そしてシャドウ側は、イモータルの守る宝物庫や地位を狙って襲撃を重ねることとなる。このコンテンツは「闘争の円環」と呼ばれており、まさにその名のとおり、円環のように戦いのサイクルがめぐるシステムだ。


もちろん、闘争に参加したくないプレイヤーはソロの冒険者として活動することもできる。ソロプレイヤー向けにも、強力なモンスターとの対戦を重ねるPvEコンテンツ「ヘリクアリ」など、単独でも楽しめるエンドコンテンツが用意されているようだ。メディア関係者はすでにクローズドαテストを先行体験済み。そうしたコンテクストを踏まえ、インタビューを読んでいただければ幸いである。


――プレイしてみて思っていた以上に面白かったです。また弾幕を避けるボスや川下りのステージなどが登場し従来のシリーズとは異なる試みを入れられています。思い切ったことをやるなと感じました。ほかにもオートナビやレジェンダリランクの移動、ジェムを非破壊で付け外しできるなど、合理的で思い切った作りになっていると思います。モバイルで『ディアブロ』を実装するにあたって「ここまでは挑戦してもいい」というようなコンセプトがあったのでしょうか?

Wyatt氏:
Blizzardのゲームデザインのコンセプトは、特に新しいプレイヤーやハードコアプレイヤーどちらかにフォーカスする、といったようなことはしていません。どちらかというと、両方のプレイヤーに楽しんでいただけるようなゲームデザインをモットーにしています。なので、今までのゲームを見ていただきますと、『World of Warcraft』であったり『ハースストーン』であったり、両方のタイプのプレイヤーが楽しんでいただけるつくりになっているかなと思います。『ディアブロ イモータル』においては、エンドコンテンツ「闘争の円環」に関してはそこがしっかり実現できているのではないかなと思います。

――エンドコンテンツはPvP要素が重要になると思うのですが、PvPとPvEで戦闘やメタゲームの差異が生まれることもあると思います。そういった場合に、PvPとPvEの間でスキルの性能に変化を加えるといった調整は考えていますか?

Scott氏:
ゲームデザインをする上で気にしていることとして、プレイヤーが習得したスキルの使い方に関しては、どのコンテンツでも一定にしたいと考えています。例を出すと、ダッシュして敵にスタンを与えるスキルは、PvPでもPvEでも同じような性能になるように注意して作っています。ただ、PvPとPvEの間でスキル概要は一緒だとしても、バランス調整はするべきだと考えています。たとえばモンスターに対して5秒間のスタンを与えるスキルがあった場合、これがそのままPvPでプレイヤーに対して5秒間のスタンを与えてしまう仕様だと、プレイヤーがとんでもなく長い時間に感じてしまう。こうしたことは避けたいと思っており、その点の調整はおこなう予定でいます。

――最強チームイモータルが宝物庫から獲得できる報酬は、具体的にどのようなものでしょうか?また、挑戦者側のシャドウが宝物庫の襲撃に成功した場合、シャドウは宝物庫にアクセスできるのですか?

Scott氏:
Vault(宝物庫)のアイテムに関しては、かなり良いものが入っています。普通にプレイしていてもドロップで入手できるアイテムではありますが、良いものが出る確率が上がっています。意図としては、イモータルが死守した宝物庫の中身があまり良いものではない場合、プレイしていても気持ちよくないと感じさせてしまうのが理由です。シャドウに関しても、そのまま同じものが手に入るようになっています。シャドウに関しては、かなり苦労して宝物庫のレイドをしなければならないので、その苦労の甲斐があるように調整するつもりでいます。

少し追加のシステム説明をさせてください。週の半ばでイモータルたちが宝物庫を死守します。その際、防衛の参加率によって宝物庫の中身にある欲しいアイテムに対しリクエスト(入手希望)が出せるようになります。最大で3個のリクエストが出せるようになっていて、一週間守りきった場合には、そのリクエストに応じてイモータルたちにアイテムが渡されます。ただ、仮にシャドウ側がこの宝物庫のレイドに成功して中身を盗み出し、イモータル側プレイヤーがリクエストを出したアイテムがなくなっていた場合には、そのプレイヤーはまた別のリクエストを週の最後に出すことが可能です。

――そのリクエストというのは、たとえば「装備が欲しい」あるいは「ジェムが欲しい」というように、アイテム種別を指定するかたちでしょうか?それともピンポイントで「このアイテムが欲しい」という具体的なリクエストを出せるのでしょうか?

Scott氏:
特定のアイテムをリクエストすることができます。ただ、アクティビティに関して多く貢献したプレイヤーのリクエストが優先されるように、システムが組まれています。

――シャドウ側が宝物庫を狙ってPvPアクティビティに参加する際、事前に宝物庫の内容について把握できるのでしょうか?

Scott氏:
シャドウ側に関しては内容を知ることはできません。ただ、宝物庫に入っているアイテムというのは高確率で良いものが入っていますので、レイドをする価値は間違いなくあると思います。シャドウ側がレイドに成功した場合、普通の宝箱のように開いてから内容を知るというかたちになりますので、何が入っているか事前に知ることはできません。

――プレイヤーはPvEで使用している装備をそのままPvPにも持ち込めるのでしょうか?

Scott氏:
アイテムに関しては、PvPでもPvEでもまったく同じアイテムが使用できます。考えとしては、ゲームをプレイして、苦労して手に入れたアイテムをほかのコンテンツに持ち込めないとなった場合、残念な気持ちになってしまうので、それはさせたくないなと思っています。ただ、先程も伝えたとおり、PvP向けにステータスを調節することはあります。

――レジェンダリの効果も調整されるということでしょうか?

Scott氏:
効果は調整されません、調整されるのはあくまで数値ですね。

――開発者の思いとしては、PvPアクティビティである闘争の円環に参加してほしいという気持ちが強いのでしょうか?日本にはソロプレイヤーが多くいますが、そういった人たちはヘリクアリのようなPvEアクティビティを目標にすればよいですか?

Wyatt氏:
ひとりでプレイする場合、メインクエストのストーリーラインが一番ふさわしいのではないかと思います。今回のエンドゲームコンテンツに関しては、ソロプレイヤーにプレイを強制するものではありません。たとえば「ヘリクアリ」に関しては、ひとりでプレイしてもまったく問題ないですし、むしろそっちの方が挑戦しがいがあるかなと思います。ただ、『ディアブロ イモータル』に関しては「モバイルでMMOを作りたい」というのがメインのコンセプトにあります。それを考えた場合、やはり人と連絡を取ったりするソーシャル要素というのは大きなコンテンツになってきますから、フォーカスして作り込んだ箇所ではあります。

シャドウに関しては、どこかのギルドやハウスに属する必要はまったくありません。ちょっと寂しいことではありますが、ソロプレイでシャドウになることももちろんできます。そういったプレイヤーに関しては、シャドウのコンテンツとして「流血の道」というものを用意しています。これは「自分がどれだけ強いか」というのを証明する内容になっていますので、ひとりでプレイしていただくことも可能です。


――バトルパスの後半にはどのような内容の報酬が用意されているのでしょうか。レジェンダリジェムなどは含まれていますか?

Wyatt氏:
有料バトルパスの報酬には、強化の素材などが含まれているほか、カスタマイゼーションのためのコスメティックアイテムなどが沢山入っています。

――サーバーが正式稼働して最初にイモータルになるグループは、どうやって決まるのでしょうか?

Scott氏:
サーバーがスタートした時点での最初のイモータルはNPCです。このサイクルに関しては、割と短いものを想定しており、大体3週間くらいだろうと考えています。なぜかというと、やはりプレイヤーにイモータルになってほしいというのが理由です。実際のサイクルの長さに関しては、1か月から3か月の間でまだ検討中ですので、そこに関しても今回のαテストで試験し、反応を見たいと考えています。

――『ディアブロ イモータル』がなぜ“イモータル”なのか、というのは今回初めて明かされる情報かなと。『ディアブロ イモータル』を発表した当初からこの闘争の円環の構想は存在したのでしょうか?

Wyatt氏:
簡単に答えますと、タイトルとゲームシステムのイモータルは最初から繋げて考えてはおりませんでした。最初に「ソーシャルコンテンツが多く含まれているもの」と考えた時に、このゲームシステムが浮かんだというかたちです。ゲーム名の“イモータル”に関してですが、イモータルという単語は英語の中でもいろいろな意味を持っています。開発チームの各メンバーそれぞれで、思い描いているイモータルという単語のイメージに差異があったりもしました。

もう一つの理由としてはディアブロというキャラクターです。ディアブロは殺すことができません。イモータル(不死)にはそういった意味もあります。そのイモータルという名前を冠するゲーム、常に生きており、ライブアップデートされて長い間プレイされていくゲームを作りたい、という思いにフィットしたと僕らは考えています。実際どのタイミングでこれらの要素があわさり、正式に名前になったのかは覚えていませんが、おおよそそういった経緯でこの名前になっています。

――闘争の円環は、『ディアブロ イモータル』の世界観の中ではどこで行われている設定なのでしょうか?ダイデッサは、コーヴァスという都市を作ったキャラクターだと思いますが、そういった設定が活かされているのか、お聞きしたいです。

Scott氏:
イモータルとシャドウの両陣営には、ストーリー上ではそれぞれの役割があり、その役割に適したそれぞれの拠点がゲーム内に存在します。イモータル側については、常に最前線で戦っていないといけませんから、そういった拠点です。シャドウ側に関しては、常にイモータルに挑戦しつづける拠点というかたちです。ストーリー上の流れでは、今回はウェストマーチという場所がメインのストーリー展開の中心になっており、ストーリー中で訪れることになります。今回のイモータルの拠点に関しては、ウェストマーチの地下に存在しています。なので、イモータルの拠点に関しては、「ウェストマーチの付近」という答えになります。

――そういったストーリーというのは、メインクエストやサイドクエストなどの形で、プレイヤーがゲーム内のみですべて把握することはできるのでしょうか?

Scott氏:
今回のメインのストーリーやロアに関しては、本編ですべて語られることになります。メインクエストやサイドクエストで、プレイヤーはすべてを把握することができます。ただ、『ディアブロ イモータル』はライブサービスゲームですので、今後ストーリーラインが追加されたり、クエストラインが追加されたりすることもありえると思います。『ディアブロ イモータル』以外の『ディアブロ』シリーズで、これらの話が語られるかどうかに関しては、「なんとも言えません」というのが今の答えになります。

ストーリー、ロアに関してもっと知りたい、この内容では足りないということであれば、是非そのご意見をコミュニティに広めてください。実際僕は今予定している以上のストーリーラインやロアを作っており、これをどこかで出したいなと思っているので、聞きたいと思われるなら是非ともBlizzardに懇意にしてください(笑)

――宝物庫レイドを配信しているプレイヤーを見ていたのですが、警報を鳴らしてしまったものの、イモータルが来ないという現象が起こっていました。これは人数がまだ少ないからだと思うのですが、実際に警報が発動した際にはプレイヤーにどう通知され、どのようにプレイヤーが集まるのかを教えてください。

Scott氏:
現状ではイモータルの人数が足りていないので、そうなった場合はNPCのイモータルが配置につくことになります。ただ、NPCに関しては毎回確実に参加するわけではなく、確率で参加するようになっています。仮にすべてのイモータルがプレイヤーになった場合、完全にプレイヤーによる防衛になります。イモータル側が全員何かで忙しかった場合、誰も来ないことになります。そういった場合は、シャドウが簡単に宝物庫のものをゲットすることができます。ただ、イモータルのプレイヤーが24時間ずっと襲撃に備えて待機するというのは、かなりのストレスになってしまいますので、レイドができる時間帯を決めて調整しています。なので、「今日のこの時間からこの時間の間はレイドが可能だ」という時間帯で配置についておく、といった予定を立てられますので、イモータルのプレイヤーもそこまでストレスを感じることはないと思います。


――イモータルになったプレイヤーがイモータルから脱退することは可能なのでしょうか?というのも、イモータルの有力プレイヤーが脱退して、仲の良いシャドウのプレイヤーに与するようなこともあると思います。そういった点についてシステム的な制限などはあるのでしょうか?

Scott氏:
イモータルのプレイヤーに関しては、自分からやめることが可能です。なので、イモータルをやめて冒険者になったり、シャドウに戻ったりできます。追加の情報としては、イモータルのリーダーやオフィサーなど、上位メンバーになった場合は、アクティブではないイモータルのメンバーを、投票でイモータルから蹴り出すことが可能です。なので、サーバー上の500人のイモータルは、常にアクティブで最強のメンバーという状態にすることができます。

――『ディアブロ III』でもそうでしたが、シリーズを通じてチュートリアル的なパートが終わったところでスケルトンキングが出てくる印象があります。『ディアブロ イモータル』でも最序盤のラストにしっかり出てきて笑ってしまいました。こういったキャラクターを日本のコミュニティで“先生”と呼んだりしますが、スケルトンキングは先生の役割を与えられているキャラクターなのでしょうか?

Wyatt氏:
スケルトンキングに関しては、最初のエリアのボスという位置づけになっています。チュートリアルのボスに関しては、実際はまた別のボスキャラクターが居ますので、スケルトンキングにたどり着くまでに、既にそのボスを倒しているはずです。内部的には、ウォーサムというエリアが実際のチュートリアルエリアだと考えています。ただ、スケルトンキングに関しては内部でも、先生的な立ち位置だと考えている人はいます。具体的に何と言っていたかは思い出せませんが、スケルトンキングを倒した際に、冗談で「こいつ何回も倒してるな」とか「もう2回目だよな」というセリフが入っていたりします。

――日本語版クライアントからアクセスできるのは日本独自サーバーでしょうか?それともアジアサーバーでしょうか?周辺諸国とのプレイヤー人口のバランスの関係で、日本人プレイヤーが厳しい戦いを強いられることを懸念しています。

Wyatt氏:
サービスインする際は、日本独自のサーバーになります。ただ、日本独自のサーバーは提供しますが、他のリージョンや他国のプレイヤーが日本サーバーに入るのを止めるのは難しいことなので、「その時になってみないとわからない」というのが今の答えです。

――日本では5月20日よりクローズドαテストが開始されます。

Scott氏:
日本向けのαテストに参加していただけることが、とても楽しみです。今回のテストでは、特に闘争の円環を筆頭に、コンテンツがいろいろと入っています。なので、是非そこにたどり着き、コンテンツをご自身で確かめてほしいです。『ディアブロ イモータル』は日本のプレイヤーのみなさんにも楽しめるように制作していますので、是非日本のプレイヤーのみなさんの声を僕らに聞かせてください。

Wyatt氏:
『ディアブロ III』コンソール版が日本で発売されたその日のことを、よく覚えています。開発チームのメンバーがとても喜んでいました。実際、日本向けのローカライズが決まった時も開発チームが興奮していて、「すぐにやりたい」という声があがっていました。今回『ディアブロ イモータル』の日本語ローカライズをおこない、欧米と同じタイミングでリリースできるということは、僕にとって楽しみなことのひとつです。なので、世界中のファンたちと同じタイミングで、日本のプレイヤーにも『ディアブロ イモータル』をプレイしていただき、意見が聞けるのが本当に楽しみです。『ディアブロ イモータル』を是非楽しみにしていてください。

――本日はありがとうございました。

『ディアブロ イモータル』は5月20日からAndroid版の日本向けクローズドαテストを開催する予定だ。こちらは抽選制となっており、公式サイトから事前登録することで抽選に参加できる。いち早く本作に触れたいプレイヤーは是非登録してみてほしい。『ディアブロ イモータル』はAndroid/iOS向けにリリース予定だ。

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