『グラブル VS』は、なぜ盛り上がったのか?プロゲーマー2人が振り返り語る、シーズン1の白熱の軌跡

Cygamesは、9月24日より『グランブルーファンタジー ヴァーサス』シーズン2を開始した。新規タイトルとして立ち上げられ、異例の盛り上がりを見せたシーズン1は、どのような内容だったのか。プロゲーマーたちが振り返る。

Cygamesは、9月24日より『グランブルーファンタジー ヴァーサス』(以下、GBVS)シーズン2を開始した。『GBVS』はCygamesが企画・制作する対戦アクションRPG。アークシステムワークスとタッグを組み、シンプルなシステムと奥深い格闘ゲームシステム を実現。『グランブルーファンタジー』の世界を立体的に、そして鮮明に描き出している。『GBVS』は、新規タイトルでありながら、今年2月の発売から現時点で全世界累計45万本 を売り上げるヒット作となった。

シーズン1では、5キャラクターが追加され、たびたび調整が実施されるなど、精力的なアップデートが続けられてきた。そして9月24日より、『GBVS』にてシーズン2が開幕。すでにベリアルやカリオストロの追加が発表されており熱気も高まりつつあるが、その前に、シーズン1がどのように盛り上がったのか、その背景に興味がある方もいるだろう。実は白熱の裏には、さまざまなドラマがあったようだ。 『GBVS』をやりこみ続け大会実績もあるプロゲーマーの小路KOG氏(以下、KOG氏)とスコア氏に、改めて『GBVS』の魅力やシーンについて語っていただいた。なお本対談は、シーズン開幕前の9月初頭に収録されたもの。

『GBVS』と『グランブルーファンタジー』

――本日はよろしくお願いします。まずは皆さん、自己紹介からお願いします。

小路氏(以下、KOG氏):
格闘ゲームならほぼなんでもやる小路KOGと申します。こうじでもKOGでも好きな方で呼んでください。ゲームの大会に出場するだけでなく、 格闘ゲームを主としたeスポーツイベントのMC、実況解説や、企画制作運営に到るまで幅広く活動しています。よろしくお願いいたします。

スコア氏:
チームAMATERASU所属のSCOREです。GBVSでは「ランスロット」というキャラクターを使用しています。プレイヤーとしてはもちろん、コミュニティを盛り上げるためにイベントの企画や運営等の活動も行っています。本日はよろしくお願いいたします。

※ KOG氏、スコア氏共に、奈良県発のプロゲーミングチームAMATERASU所属のプロゲーマー。ホームページはこちら

――まず『GBVS』という格闘ゲームについて、お二人の最初の印象はどのようなものでしたか?

KOG氏:
『グランブルーファンタジー』という大きなIP、そしてCygamesさんが初めて出す格闘ゲームということで発売前から非常に注目度は高かった印象です。実際に発売されて触ってみると、その原作再現度の高さに驚きました。たとえば原作でのトリプルアタックのモーションがそのまま格闘ゲーム内で再現されていたりして、かなりの原作愛とこだわりを感じましたね。


――小路さんは原作『グランブルーファンタジー』の方もかなりのヘビープレイヤーであるとお聞きしています。

KOG氏:
そうなんですよ。僕はいつもヘビープレイヤーであると自称しているんですけど、そのことで(本当の)ヘビープレイヤーに弄られるくらいのレベルではあります(笑)というのも、Twitterで『グランブルーファンタジー』に関する美容師との会話のツイートがバズりました。今の僕はああいう感じのキャラになってしまいました。

――原作プレイヤーであるからこそ、『GBVS』には感動したと。

KOG氏:
そうですね、特に僕は『GBVS』以前から原作をプレイしていたので、衝撃は大きかったです。今日いらっしゃるスコアさんなんかは、逆に『GBVS』から入ってその影響で原作を始めた方です。そういうパターンの方も結構多いんじゃないですかね。

スコア氏:
自分のまわりでは、そのパターンはよく聞きますね。

――ちなみにお気に入りの演出とかはありますか?

KOG氏:
演出ですか……演出に関してはどうしても格闘ゲーマーとしての好みが出てきてしまいますね。というのもこのゲーム、基本的に1ラウンドに1回は奥義の演出を見ることになるので、何度も対戦しているとシンプルで短い演出が一番助かるんですよね。ということで一番好きな演出はグランの「テンペストブレード」とシャルロッテの「ブリリアントムーン」ですね。どちらも一瞬でモーションが終わるけどめちゃくちゃダメージは出るのでお気に入りです。


――スコアさんは『GBVS』に触発されて原作を?

スコア氏:
はい、原作は未プレイでした。『GBVS』をプレイしてから、自分のメインキャラのこととかがやっぱり気になってきてしまって、ストーリーにも興味が出てきたので、スマートフォンでプレイしています。同じような流れで、原作に入った方は結構いると思います。実際に原作をプレイすると『GBVS』の細かい原作再現やそういった工夫がわかるようになって、より面白く感じられましたね。

――『GBVS』から原作へ、逆輸入のパターンもかなりあるんですね。

KOG氏:
間違いないですね。本来ならば「原作プレイヤーに格闘ゲームに興味を持ってほしい、遊んでほしい」というコンセプトの元作られたゲームなんじゃないかと思っているんですが、蓋を開けてみればその逆のパターンのほうがむしろ多いと感じます。それぐらいまわりの格闘ゲーム勢で「本家デビュー」した人がたくさんいますね。格闘ゲームのプロゲーマーが「古戦場配信」なんていって昼夜本家『グランブルーファンタジー』の配信をしていたりなんかもして。

吹き込まれた新たな風

――『GBVS』が格闘ゲームコミュニティに新しい層を取り込むことは成功していると思いますか?

KOG氏:
僕とスコアさんはどちらも格闘ゲームのプロゲーマーをやらせてもらっているんですが、基本的に応援してくれるファンの方というのは男性の「動画勢」と呼ばれる方たちなんですね。甲子園の野次馬なんかをイメージしてもらえると分かりやすいと思います(笑)もう10年以上そんな感じだったんですが、『GBVS』を始めてからというものの、毎日のように女性の絵描きさんから「応援絵」なんかが届くようになったんです。すごくないですか?いままでになかったことですよ、これは!!!!

スコア氏におくられたファンアート Image Credit : もちころ / Cygames


――ファン層からして変わったと?

KOG氏:
まさにそうなんです。

スコア氏:
明らかに違いますね。

KOG氏:
スコアさんはよくゲーム配信をしてるんですが、コメント欄にも女性の方がいっぱいいらっしゃるんですよね。

スコア氏:
コメントの3割か4割くらいは女性の方なんじゃないかなと思います。自分の場合は、使っているキャラクターの関係とかもあるとは思うのですが。このあたりは原作人気と原作ファン層のパワーをひしひしと感じますね。

KOG氏:
スコアさんのメインキャラである「ランスロット」は、バレンタインランキングで2位を取るくらいの人気イケメンキャラなので(笑)本社にチョコレートが贈られてくるレベル。女性が多いゲームって、やっぱり華やかな印象もついたりしますし、自然と盛り上がるじゃないですか。今までの格闘ゲームにはまったくなかった傾向なので、そういう点でも『GBVS』はすごいですね。


――ちなみに今まで女性比率は、100人いたとするとどれくらいですか?

スコア氏:
以前なら、100いたら1か2はいるかどうかくらいのレベルですね。

KOG氏:
100人視聴者がいたら、前は女性は0で、今は10くらいの印象です。実際にコメントは書かずに見てるだけの方も含めるともうちょっといくんじゃないかなくらいの感じですね。女性は絵の上手い方も多いのでファンアートなんかも日々SNSを飛び交っていて、他タイトルの格闘ゲームコミュニティからは「GBVS界隈はなんだかすごい」という印象を持たれているんじゃないかと思います。今までの格闘ゲームコミュニティではまったくなかったことなので。

――原作のコミュニティと派生の格闘ゲームのコミュニティが上手いこと混ざって成功しているのはなかなか珍しいんですね。

KOG氏:
かなりのシナジー効果を感じています。僕の使う「ファスティバ」っていうプロレスラーのキャラクターなんかも、ランスロットやパーシヴァルに比べて描きづらいキャラクターだとは思うんですが、たくさん描いてもらえて嬉しいです(笑)

スコア氏:
でもすごい可愛く描いてもらってますよね。

KOG氏:
めちゃくちゃ可愛く描いてもらってます(笑)本当にありがとうございます。

プロゲーマーとその使用キャラを描いたファンアート Image Credit : もちころ / Cygames


シンプルで硬派、そして顔ぶれの豪華さ

――ファン層やコミュニティとは別に、ゲームとして気に入ってる部分、遊ぶ理由や続けられる理由には何がありますか?

スコア氏:
そもそもシリーズものではない完全新作の格闘ゲームというのは、結構珍しいんですよね。それに元々の原作人気も加わって、発売前から「これは人が集まるゲームになるんじゃないか」という予感がありました。実際発売されてみるといろんな格闘ゲームのトッププレイヤーが集まっていて、すごく楽しく遊べています。ゲームシステムの面ではアビリティのアイコンとクールタイムという独特のシステムをめぐる駆け引きには当初からすごく興味を惹かれましたね。

プロゲーマーとして人が集まりそうな新作格闘ゲームにはとりあえず手を付けてみようというのはあって、『GBVS』もその感覚でプレイを始めたんですが、いざプレイしてみるとゲーム自体の面白さも、ネット対戦まわりの快適さも、プレイヤー層の厚さも全部文句なしでした。これはずっと遊んでいけるゲームだなと思いました。

KOG氏:
そうですね。20年モノのシリーズなんかが多い格闘ゲームで「Cygamesさんが完全新作格闘ゲームを出す」というのがもうそれだけでかなりインパクトがありました。『シャドウバース』の印象からCygamesさんのゲームならばかなり派手な賞金付き大会とかも期待できるというのもありましたし、発売前から注目度MAXでしたね。

いざ発売されてみると、最近はチーム戦の格闘ゲームが多かった中で1v1の硬派な格闘ゲームというのも逆に新鮮でしたし、アビリティシステムや投げ抜けの尻もちダウンだとか、ありそうでなかった新システムがかなり多くてプロゲーマーとしても「これは面白いゲームが来たな」と思いました。それにたとえば『ストリートファイター』シリーズメインのプロプレイヤーであるマゴさんや『ギルティギア』シリーズの強豪プレイヤーでありRAGEの優勝者でもあるもっちーさんなど、さまざまなシリーズのトッププレイヤーが集まって「大運動会」化しているのも本当に楽しかったです。


――ゲーム性に関しては、クローズドベータで初めて触った時はどういう印象でしたか?

KOG氏:
アークシステムワークスさんが開発に関わっている最近のゲームだと『ドラゴンボール ファイターズ』や『ブレイブルー クロスタッグバトル』のような派手で激しいゲームが多かったので、『ストリートファイター』スタイルに回帰した『GBVS』のゲーム性は確かに逆に新鮮でしたね。

スコア氏:
原作のプレイヤーが初めて格闘ゲームに触れるタイトルと想定すると、シンプルで分かりやすいシステムは成功してるんじゃないかなとは思います。

KOG氏:
あまりゴチャゴチャしたシステムもなく、ワンボタンで必殺技が出るシステムは特に初めて格闘ゲームを遊ぶ人にはかなり嬉しい要素だったのではないかなと。コマンド入力の難しさはどうしてもハードルの高さになるので。

――『GBVS』のゲーム性で一番気に入っている部分ってありますか?

スコア氏:
やっぱりアビリティアイコンとクールタイムの駆け引きが面白いなと思います。必殺技を使う順番を考える必要があったり、その時に使える必殺技に応じてコンボを使い分けるアドリブ要素があったり、あのシステムはシンプルながらもかなり奥が深いなと思います。

KOG氏:
1回使うと6秒くらい使えなかったりして、考えなしに必殺技を振るとかなり不便だったりします。他のゲームだとゲージさえあれば好きなだけ使えたりするんですけど、『GBVS』の場合は厳密に使えない時間が決まっているので、思っている以上に慎重に使い方を考える必要があって、なかなか難しいです。

――逆に『GBVS』のゲームシステムでここは改善してほしいなという部分はありますか?

KOG氏:
1つめは奥義ゲージで、基本的にキャラ固有の奥義を打つのにしか使われないんですよね。奥義の性能に格差を感じるというのもちょっとあるんですが、根本的に使いみちをもうちょっと増やしてもらえたらなとは思います。2つめはコマンド技の出にくさですね。このゲーム、コマンド入力の判定が厳しいんですよね。昇竜が波動に化けたりとかも日常茶飯事で。スコアさんが使うランスロットは入力的に必殺技の暴発も多いキャラなのでさらに苦しいんじゃないかなと思います。


――暴発は一体何が原因で引き起こされているんですか?

KOG氏:
ランスロットの暴発に関してはそもそも「→→+攻撃ボタン」 というコマンドが他のゲームにはあまりないので、設定されたコマンド自体が暴発を誘発しやすくなってるんじゃないかなと思います。

コマンド入力の出にくさに関しては、まずコマンドはガードを入れた状態から出すことが多いんですよね。↙を入力した状態から→↓↘(昇竜コマンド )を入力したつもりが、↙から↓↘→を入力したと認識されてしまって波動に化けることがこのゲームでは多いです。コマンド前に1回レバーがニュートラルに戻れば大丈夫なんですけど、ガード入力状態からそのままグルっと昇竜コマンドを入力しようとすると波動に化けちゃうシステムなんですね。他タイトルでは最後に↘が入れっぱなしだと絶対昇竜が出るようになってたりとか、結構気を遣っていることが多い部分なので、『GBVS』でもコマンド入力まわりの快適さが改善してくれるとプレイヤーとしてはありがたいですね。

そして3つめに、これはどうしても直してもらいたいポイントなんですけども(※注)、『GBVS』は相手キャラクターとの距離に応じて同じボタンでも近距離攻撃と遠距離攻撃というのがあるんですね。このゲーム、遠距離攻撃が出てほしい時に、近距離攻撃が届かない位置であるにも関わらず近距離攻撃が出るということがあるんですよ。しかもめちゃくちゃ頻繁に。このゲームをある程度やり込んでいるプレイヤーならば、遠距離攻撃が出てほしいタイミングで届かない近距離攻撃が出てコンボをミスるというのを100回以上は経験したことがあると思います(笑)これは本当に直してほしいですね。

※ 注  9月24日に実施されたVer2.01アップデートにて、同問題が修正された。近・遠距離攻撃の認識間合いや一部当たり判定に調整が入り、空振りする事がほぼなくなった。KOG氏もスコア氏も納得の模様。


eスポーツゲームとしての『GBVS』

――なるほど。少し話は変わりますが、eスポーツとして、競技ゲームとしての『GBVS』の感触は今の所どんな感じですか?

KOG氏:
『GBVS』は2月発売だったんですが、これがいわゆるコロナが始まったのと同時期なんですよね。格闘ゲームってメジャーな大会はほとんど海外が中心なんですが、『GBVS』も実はワールドツアーの開催が確定していたんですよ。かなりの額の賞金が用意されて、月1、2回のペースで、世界各地で大会が開催される流れが用意されていたと思うんです。しかし結果的にコロナで実施不可能になってしまった。どうしようもないことではあるんですが、そこはちょっとタイミングが悪かったかなと思います。

ただ、オンラインのオープントーナメント、誰でも参加できて優勝賞金300万円のRAGEはすごかったですね。他の格闘ゲームではこの時期にこんな大きな賞金、大規模な大会はなかったので。RAGEに関しては2回目も確定していますし、賞金規模の大きな大会をコンスタントに開催するという点においても『GBVS』は今間違いなく競技シーンの最前線を走っているタイトルだと思います。

スコア氏:
EVOの種目にも選ばれていたんですが、いろいろと運が悪かったですね。それでも、いろんな格闘ゲームのトッププレイヤーが集まっているので、単純にレベルが高いという点でも競技ゲームとしては成功していると思います。

※ EVO(Evolution Championship Series)とは、1995年よりアメリカのラスベガスで開催されている、1年に1回行われる世界最大級の格闘ゲーム大会である。

Image Credit: RAGE


――コロナの影響でどの競技シーンもオンラインメインになり、ネットコードやラグ (※)の話題もよく見かけるようになりましたが、『GBVS』はどうですか?

※ オンライン対戦は物理的な制約上どうしてもある程度の入力遅延が発生するが、プレイヤーの操作情報などをゲーム上でどうやって同期させるかの処理方法や最適化の手法はゲームによって異なる。ネットコードの質が悪いと必要以上に入力遅延が発生したり、いわゆるラグが頻発したり、最悪の場合は対戦中の同期ズレや切断が起きたりする。

スコア氏:
『GBVS』のネット対戦はすこぶる快適ですね。自分が他にプレイしていたタイトルだと対戦を続けているとなぜかどんどん重くなるゲームとかもあったんですが、『GBVS』は安定していますし、回線相性が悪そうな相手で少し重くても、その状態でそれなりに安定して遊べます。今までやってきたタイトルの中ではネット対戦の出来は一番良いと思います。

KOG氏:
『GBVS』のネット対戦は本当に素晴らしいですね。ネット対戦の出来が良いので、コロナでオンラインメインになったことで逆に得している部分もあるんじゃないかと思うくらいです。

――競技人口はどうですか?

スコア氏:
かなり多い方じゃないですかね。

KOG氏:
そうですね。RAGEが日本だけで1000人以上の参加者を集めてますし、競技人口的には『スマブラ』『ストリートファイターV』に次ぐ位置くらいにいるんじゃないかと思います。新規タイトルとしては間違いなく成功しています。

――競技人口に賞金額は関係していると思いますか?

KOG氏:
要因の一つではあると思います。そもそも国内の大会では賞金がある方が珍しいですし、あっても10万円がマックスなことが多いので。そんな中でいきなり優勝賞金300万円の大会が開催されるのはかなりインパクトありますし、人が集まった理由の一つではあるでしょうね。

スコア氏:
またすぐ冬にもう一度開催されるとも宣言されてますからね。

KOG氏:
「これはもう『GBVS』やらねば!」となるべくしてなっているゲームですね。


――大会の開催サイクルが短いのは大事と。

KOG氏:
めちゃくちゃ大事です。特にプロプレイヤーにとっては。基本的に格闘ゲームは1年に1回のEVOを目指しつつ、3~4か月のシーズンごとに大きな大会があるのが理想かなと思います。理想ではあるんですが、その1年に1回の大会すらないゲームが多いので……。なので、『GBVS』がこのペースで大会を開催してくれるのはかなり嬉しいですね。

――国内から参加できるのもいいですね。

KOG氏:
ですね。他のタイトルでは大会参加のために海外まで行かないといけないことが多いですから。


オールスター感がたまらない

――『GBVS』を続けるモチベーション、原動力となっているものはありますか?

スコア氏:
もちろん賞金や大会もあるんですけど、何よりも自分のモチベーションになっているのは、前も言ったようにいろんなゲームのトッププレイヤーが集まっていて、そういった人たちと対戦して競い合えるところですね。「格闘ゲーマー最強決定戦」に参加してるようなノリがあって、その中で一番になってやりたい、というのが何よりものモチベーションになっています。


――トッププレイヤーが集まるといえば、発売当初はトッププレイヤーのランクマッチ配信が大人気でしたよね。

KOG氏:
あれは盛り上がりましたね。かずのこさんやマゴさんといった有名なプレイヤーがよくランクマッチの配信をしていたんですが、マスターという最上位ランクに上がるためには実質的に7連勝する必要があるんですよ。1回でも負けたら7連勝最初からやりなおしという無慈悲すぎるシステムで。これが配信のドラマ要素としてはすごく面白くて、配信者がランク上がりそうだと結構な確率で待機していた他の強いプレイヤーがそれを阻止しに行くんですよね。特にマゴさんなんかはプレイヤーとしてもすごい方なんですけどリアクションが面白い方なので、あと1勝で負けた時とかなんかはコメント欄も大盛りあがりでした。自分もマゴさんをスナイプするためだけに待機していたことがあります(笑)今はみんなマスターに上がってしまったのもあってランクマッチも大人しいんですけども、あの時期はかなりコンテンツ力が高かったですね。

――ちなみにプレイするタイトルが違うなどで今まで交流がなかった格闘ゲームのトッププレイヤーで、『GBVS』をきっかけに知り合って刺激的だったり印象に残ったりしている方はいますか?

スコア氏:
自分は板ザン(板橋ザンギエフ氏)さんですね。プレイヤーとしてはもちろんなんですが、ゲーム以外の部分も含めて周りを気遣ってくれる方で、「そんなところまで助けてくれるんや!」とトッププロの器の広さを感じさせてくれる人物でした。対抗戦中に見やすい配信のコツを教えてくれたりだとか、いろんな部分でフォローして頂いて感動しました。

KOG氏:
自分はやっぱりgameraさんがすごいなと思っています。RAGEを観戦した方で、gameraさんを見て衝撃を受けた方も多いんじゃないでしょうか。あんなゲームにすべてを注いでいるような、職人のようなプレイヤーって全然見ないので、個人的にすごく格好良いなと思います。

――シーズン1で他に印象的だった時期はありますか?

KOG氏:
フジテレビさんの「いいすぽ!」の大会と RAGEの2つの大会は盛り上がりましたね。これ以外だとかげっちさんなどが主催するコミュニティ大会が盛り上がった時期と、スコアさんを初めとするコミュニティの方々が「出身ゲーム別対抗戦」などを月1、2回の頻度で開催していた時期とかがあります。なので、シーズン1はどちらかというと公式イベントよりもコミュニティイベントが中心に盛り上がっていた印象はあります。

――それほどまでにコミュニティが盛り上がった理由は何なんでしょうか?

スコア氏:
やっぱりいろんなゲームのトッププレイヤーがお互いに競い合ってる「オールスター感」が大きいんじゃないですかね。見てる方も面白いですし。単純にプレイヤー人口が多いというのもあります。自分が今までやってきたゲームって人口が少なくて対戦相手はずっと同じ人になりがちだったりするんですよね。それがこのゲームだと起動したら大体人がいるので、毎日いろんな人と対戦できて新鮮さがあります。

大会というより番組だったRAGE

――なるほど。では公式のイベントだとRAGEは実際のところどうでしたか?

KOG氏:
格闘ゲームで、あの規模でオンラインのオープン予選というのはかなり前例のない試みだったので、予選はちょっとトラブルがありましたね。「PLAYHERA」のアプリに関しては、今後も利用されるにあたってどんどん改善されて使いやすくなっていくと信じています。

スコア氏:
不正防止のため試合結果の写真を毎回撮って提出する必要があったんですが、それで試合間に考える時間がなくなってしまったり集中が途切れたりで、結構パフォーマンスに影響が出た部分がありました。必要なこととはいえ次回以降ではなんらかの改善がされているといいなと個人的には思います。

KOG氏:
自分は本戦に出場したんですけども、旅費もホテル代も全部出していただいてかなりいたれりつくせりの対応でした。本格的なプロモーションビデオを撮ってもらったりもしました。ポーズはかなり恥ずかしかったですけど(笑)

スコア氏:
二つ名をつけられたりしてましたよね。

KOG氏:
「浪速のぶん投げ職人」でした(笑)もっちーさんは「無敗のエンペラー」と格好いい感じでしたし、おんせんさんは「格闘ゲーム界に噴き出た秘湯」だったりでかなり個性的な二つ名をつけられてました。ファイナリスト達をタレントとして扱っている感じがして、新鮮で面白かったです。格闘ゲームの大会って大体コミュニティが集まって騒いで終わりというのがほとんどなので、エンタメや見世物としての側面をきちんと意識したRAGEの運営方針は個人的には非常に評価が高かったです。

Image Credit : RAGE


シーンとしては、オンライン予選の後はまずセミファイナルがあり、そこではかずのこさんや藤村さんといった有名なトッププロが見知らぬ猛者にバタバタと倒されていったのが非常に印象に残っています。結局プロゲーマーのファイナリストは8人中自分とレンさんだけでした。それだけいろんなタイトルの隠れた猛者がたくさんいたということで、『GBVS』のプレイヤー層の厚さを証明する一件だと思います。

ファイナルではまずセミファイナル以下と同じく2本先取ルールのままなことが、かなり不安でした。ただ初戦の相手であるおんせんさんの対策は1か月間練ってあったので、それを実践して無事勝つことができました。次の試合では伊予さんという『ストリートファイター』界のレジェンドと当たって負けてしまいました。自分はかなり場馴れしている方だとは思うんですが、それでもかなり緊張してしまったのでそれが敗因の一つかなと思います。EVOのような舞台とはまた違ったタイプの大舞台で、かなり慣れてないタイプの緊張でした。

――RAGE独特の空気があったと。

KOG氏:
真横に声優さんがいましたしね(笑)やっぱりEVOとかは大規模ではあるんですけど、それでもコミュニティ大会の延長線上にある印象です。それと比べてRAGEは完全に「番組感」があったというか。緊張の方向性が全然違いました。

――プレイ環境はいかがでしたか?

KOG氏:
プレイ環境はとても良かったです。しっかり試合に集中できる環境が用意されてました。全員にお弁当も出ましたし(笑)あとセミファイナルで24人東京に呼んだあとにファイナルでもう一回8人を東京に呼んでいるのはすごいなと思いました。もちろん2回とも交通費宿泊費含めて全部出してもらって、本当にいたれりつくせりの対応で、気持ちよく参加・プレイできました。

――なるほど。話は少し変わりますが、国内シーンがRAGEなどで盛り上がっているのとは別に、海外での『GBVS』シーンはどうなっているんでしょうか。

KOG氏:
先程も言ったように、本来は開催されるはずであったワールドツアーが中止になったのもあって、海外の状況はほとんど日本には伝わってないですね。たとえば『ドラゴンボール ファイターズ』なんかは日本最強のGO1選手vsアメリカ最強のSonicFox選手の構図なんかがかなり盛り上がる要因になっていると思うんですが、『GBVS』では今の所こういう海を超えた話題がないのはちょっと残念です。海外に恐ろしいほど強い人がいて日本勢が全滅した!なんてことがあれば大盛り上がりだと思うんですけどね。

――海外の『GBVS』プレイヤーとの交流は少ないんですか?

KOG氏:
ほぼゼロといっても差し支えないレベルですね。

スコア氏:
一応自分はInfiltration氏やZJZ氏、あとは『ブレイブルー クロスタッグバトル』のワールドツアー優勝者のShinku氏とは交流がありまして、彼らもかなり『GBVS』はプレイしている様子なので、コロナが明けてEVOのような世界大会が出てきたら、そういった海外のプレイヤーも表に出てくるんじゃないかと思います。

KOG氏:
日本からではそういったプレイヤーの活躍は見づらいですからね。実際の強さがわからないというのもかなりもどかしいです。いざ直接対決してみて日本勢がボコボコにされるというのが一番盛り上がると思っています。格闘ゲーマーはやっぱりみんなプライドが高いので、みんな心のどこかで「やっぱり俺が最強だし」と思っているところがありますから(笑)海外勢にその鼻っ柱を折られるところも見てみたいと自分は思っています。

――まだまださらにコミュニティが盛り上がるポテンシャルは秘めていると。

KOG氏:
コロナが明けたら間違いなくもっと盛り上がりますね。みんなオフライン対戦もしたくてうずうずしているはずです。

これまでとこれから

――ゲームの話に戻りまして、『GBVS』の対戦以外のゲーム部分に関してはいかがでしたか?

KOG氏:
RPGモード、自分はかなり楽しめましたね。原作の『グランブルーファンタジー』と同じで周回を重ねてジワジワと強くなっていく感じが良かったです。それ以外のモードだとタクティクスモードのミッションは結構やりごたえがありましたし、シングルモード(いわゆるアーケードモード)はクリアすると報酬として一枚絵が貰えるので、それも集めたりはしました。一応トロフィーコンプするまではこのゲームやり込んでいます。

スコア氏:
小路さん、RPGモードのタイムアタックをやり込んでいた時期がありましたよね?


KOG氏:
お、その話をしちゃいますか。アレスってボスをなるべく速く倒すタイムアタックが6日間だけ開催されたことがあったんですよね。もちろんランキングつきで。武器を全部集めていたので1位取れるだろうと思っていたら、自分が1分かけて倒しているところを1位の人が20秒くらいで倒していて仰天したんですよね。あまりにも気になったのでその1位の人の連絡先調べて「これどうやったんですか?」って聞き出しました(笑)いざ聞いてみたらすごく意外な戦法を使っていて、思わずそれを友達に共有したらその友達がそれを配信でバラしてしまって。結果その元の1位の記録はさらに塗り替えられてしまったんですけど、アレはいまだに元1位の人には申し訳ないことをしたなと罪悪感があります。たぶん自分が話さなかったらその人は1位のまま終わったと思います、それくらいマニアックな方法でした。

スコア氏:
タイムアタックは今後もまた他のボスで開催されそうな雰囲気はありますよね。

KOG氏:
ですね、次からは気をつけます(笑)こういった対戦以外のコンテンツが1、2か月に1回くらいのペースでポンと更新が入るので、それで全然飽きずに楽しめてます。

――格闘ゲーム未経験者が『GBVS』を始めるにあたってアドバイスしたいことはありますか?

KOG氏:
これはいつも言っていることなんですが、本人が楽しむことが何よりも大切だということですね。勝つためにこうしろというのではなく、自分が動かしていて楽しいんだったらその遊び方、そのプレイスタイルが正義だと思います。「ゲームを楽しんでください」というのがなによりです。

スコア氏:
間違いないですね。格闘ゲームは勝ち負けがはっきり出ちゃうゲームではありますが、勝敗に関わらず楽しめているならそれがすべてだと思います。自分のお気に入りのキャラクターやモーション、演出を見つけるのも大切ですし、あまり勝敗について思いつめないで楽しむことを優先してください。

――「格闘ゲーム」として『GBVS』は初心者向けの作りになっていると思いますか?

スコア氏:
やり込んでいくとどうしてもセットプレーといった初心者向けではない部分も顔を出してくるんですが、間口は間違いなく広く出来ていると思います。今までやってきたゲームの中ではかなり初心者に寄り添っているゲームだという印象です。

KOG氏:
今までのアークシステムワークスさんのゲームは「直ガ」(※直前ガード、相手の攻撃がヒットする寸前にガードを入力するテクニック)前提のゲームなことが多いので、それがないだけでも相当初心者に配慮していると感じましたね。初心者向けというと自分は『ストリートファイターIV』なんかはかなり初心者にオススメのタイトルだったと思っているのですが、『GBVS』はそれに負けず劣らず格闘ゲームジャンルの初めてのタイトルとしてオススメできるゲームだと思います。

――なるほど。最後に、シーズン2に向けて期待したいことはありますか?

スコア氏:
9月24日にまたバランス調整が入る予定なんですが、前回あった調整はどちらかというと全体的にキャラ性能をマイルドにする感じの調整だったんですよね。もちろんこれはコミュニティの要望をある程度受けてのものでもあるとは思うんですが、できればマイルドにするよりも全キャラ強くしていく、みんなやることが増える方向性で調整してほしいなというのが個人的にはあります。新キャラについても、最近の新キャラはそこまで強くなかったので、せっかくなら新キャラはみんなに使われるような強い性能で出てきてくれるといいなあと思います。


KOG氏:
シーズンが変わるというのは1つの節目だと思いますので、システム関連でテコ入れがあったら新鮮な気持ちで新たにプレイできると思います。先ほども話題に出た、キャラクター固有の奥義でしか使用できない奥義ゲージに別の使い道を追加する等、戦術の幅が増える調整に期待ですね。近距離攻撃がスカる現象()もシステム変更で改善されたら本当に嬉しいです(笑)

※ 前述したように、同現象についてはVer2.01アップデートによって修正されている。

また、難しいとは思うんですがキャラクター調整に関しては「弱くなった代わりに別の部分が強くなる、新たな戦い方が生まれる」という調整があれば面白いと思います。具体例を出すと、ジータやファスティバは一度弱体化調整を受けているんですが、代わりの強化調整として、ほとんど使われていない特殊技(ドライブバースト、抱きしめてア・ゲ・ル!)をもっと使いやすくするとかあれば使い手も喜ぶと思います。

まだ発売されてから半年しか経っていないタイトルなので手探りな部分はあると思いますが、イベントや調整のペースが非常に速く注目度も高いので、いちプレイヤーとしては色々と期待してしまいますね(笑)

――楽しみですね、本日はありがとうございました。


グランブルーファンタジー ヴァーサス』は、PS4/Steam向けに販売中だ。

© Cygames, Inc. Developed by ARC SYSTEM WORKS

Mizuki Kashiwagi
Mizuki Kashiwagi

PCとPS4をメインで遊んでいます。自分で遊んでも、観戦していても面白いような対戦ゲームが好きで、最近は格闘ゲームとMOBAをよく遊んでいます。

Articles: 115