人狼系ADV『グノーシア』『レイジングループ』開発者座談会。人狼の「グロさ」から、魂のこもった傑作2本が生まれた(ネタバレなし)
「汝は人狼なりや?」に端を発し、後にカジュアルな形にローカライズされて一世を風靡した「人狼ゲーム」。毎夜人狼が現れて1人を殺し、村人も対抗して1人を吊るす。血で血を洗う薄暗い内容と独特の緊張感、ゲームとしての面白さもあってか、創作物やゲームの題材にも大いに選ばれてきたが、閉鎖的な集落の因習として人狼を物語へ昇華したホラーADV『レイジングループ』と、人狼の面白さをそのまま1人用の人狼シミュレーターとして搭載した『グノーシア』は、そんな中でも頭抜けた存在である。
本稿は、共に人狼を題材に傑作を作り上げた、クリエイターたちによる座談会の記録である。参加していただいたのは、『レイジングループ』を手がけた気鋭のシナリオライターamphibian氏。Nintendo Switch版が4月30日に発売される傑作人狼シミュレーター『グノーシア』の制作チーム、独立系ゲーム開発集団プチデポットから、リーダーのめづかれ氏、開発とシナリオ担当のしごと氏、画像担当のことり氏、サウンド担当のQ flavor氏、計5名だ。彼らが人狼をどのように捉え、1本の作品へ組み立てたのか。クリエイターたちの目から、傑作はどう見えたのか。両者の意外な関係性も含め、座談会の内容をお届けしよう。なお本稿においては、ゲームの核心にふれるネタバレにはふれていないので、未プレイユーザーも安心してほしい。
amphibian氏は、『レイジングループ』を手がけたケムコ所属のシナリオライター。同作では、加筆も加えられた全7巻の小説版が星海社から出版。最近では、秘密を賭けてこっくりさんを行う漫画作品「こっくりマジョ裁判」(となりのヤングジャンプ/全4話Web上に掲載中)の原作を務め、6月25日にはフルリメイク版『デスマッチラブコメ!』が発売を控えている。
プチデポットは、『グノーシア』『メゾン・ド・魔王』の開発チーム。メンバーは、リーダーのめづかれ氏、開発とシナリオを担当したしごと氏、画像担当のことり氏、サウンド担当のQ flavor氏の4名。名古屋在住で、全員が近いところに住んでいるという。今回のインタビューでも、4名が1部屋に集まって参加していた。
人狼は「グロい」
───本日はよろしくお願いします。みなさんは人狼をテーマにゲームを作り上げられたわけですけど、ゲームを作られてから人狼はプレイされていますか?
amphibian氏:
私は実は、やってないですね。
めづかれ氏:
私もないんです。あまりリアル人狼の機会がなくて。すみません。
amphibian氏:
むしろ『グノーシア』ですごく久しぶりにいっぱいやったなと思っています。
しごと氏:
僕も自分のゲームのプレイで人狼は一生分やったからいいや、みたいなところはありますね。
───では、人狼はどういうゲームだと思われますか。
amphibian氏:
以前ならば政治ゲームといった回答をしたと思うんです。が、もう少し範囲を広げると、敵対的コミュニケーションゲームかなと思います。コミュニケーションを楽しむというゲームには違いなくて、けどその作法には卓によって違いがあるなと。
『グノーシア』をやっていても思ったんですけど、『レイジングループ』と『グノーシア』には、結局どう相手を陥れるかみたいなところが考え方として共通していると思うんです。その点で政治的なんですけれども、人によってはより推理的な枠組みを強めて、そのためにみんながそういうムーヴをすることで卓を成立させているところもある。要は必ず全員が職業を解禁するから、推理的というか論理的に解明できる場もあるんです。
でも卓の性質によってどうコミュニケーションをするか、楽しみ方は違う。共通しているのは「人を追い出すゲーム」であること。突き詰めると、投票によって人を減らしていくゲームになると思うんです。
人狼ゲームでは、ゲームプレイヤーが発言を禁じられています。もちろん喋れるようにしてある人狼もルールとしてあると思うんですけど、人を削っていって何が残るか、そこを楽しむゲームかなと思っています。そこにたどり着くまでの過程で、コミュニケーションを遮断するという敵対的な行動に走るんですよね。そこが特徴であり、魅力でもありつつ、私はちょっとどうかなと思っているところです。
───プチデポットさんにもお伺いします。人狼とはどのようなゲームだと思われますか。
めづかれ氏:
正直なところ、あんまり人狼のこと知らないんですよね。
amphibian氏:
そんなバカな(笑)
しごと氏:
メンバーの中で、僕が1回やっただけです。
めづかれ氏:
僕もちょっとやったけどね(笑)でもほとんど素人ですよね。
ことり氏:
「人狼読本」というルールとかリプレイとかをまとめた本を一冊読んだだけで、あとは全然知らないよね。
しごと氏:
知らないなりに考えたのは、ものすごく極端に落とし込んだら、文句のつけあいみたいな。背景に確率や論理的なものはありますけど、結局は適当な発言をぶつけあって、相手の評価を下げて排除していく。極端な話、勝敗もあんまり関係ないのかな、ぐらいのイメージでした。
めづかれ氏:
私たちは最初『グノーシア』を議論型RPGと言ってたんですよ。剣をペンに変える。剣で殴るんじゃなくて、言葉で殴るみたいな。だから、戦いの中で殴って倒すのではなくて、言葉で体力を削ったりとか、そういうRPGの戦闘を言葉によって置き換える。そういう発想をよく話していました。
amphibian氏:
ちょっと根本から伺いたいんですけど、それでは、そもそもなぜ人狼をベースとしたゲームを作ろうと思われたんですか。
ことり氏:
1人用の人狼ゲームのアプリがあって、それを少しやってみると結構楽しかったんですよね。だから、「これ作ってよ」と私が開発のしごと君に言ったのが、そもそもの始まりでした。
amphibian氏:
そうだったんですね。じゃあやっぱり、人狼ゲームが面白かったっていう出発点はあったということなんですね。
ことり氏:
そうですね。でもその時は人とやりたいとは全く思わなくて。1人でやる推理ゲームぐらいのスタンスで。
amphibian氏:
ちなみにそれは推理だったんですか?ロジックで解けるやつ?
ことり氏:
いや、ロジックも……あったかなあ?
しごと氏:
再現度としては、ランダムで場当たり的に作ってある感じでした。
ことり氏:
だから、もっと高度なのを作ってよ、と言ったのがきっかけになります。
───ではamphibianさんは、なぜ人狼ゲームを、『レイジングループ』を作られたのでしょうか。
amphibian氏:
ルーツを言うと、最初に会社でシナリオを書いた『鈍色のバタフライ』が、人狼に近い設定の作品だったんです。社内でたまたま人狼を知っていたことから、私が担当することになりまして、結果的に人狼というか、デスゲーム系ライターに流れでなってしまいました。
結果的にそうなったとはいえ、私的には自分がデスゲームライターになったことへのおこがましさと不本意さもありました。一方世の中では人狼が徐々にブームになりつつあり、そうした人狼に対するアンチ的な思いで『レイジングループ』は作っていますね。人狼とは難癖のつけあい。物的証拠とか科学的捜査ができるわけではないので、つきつめれば推理ではないというのはわかると思うんですよ。
であるにもかかわらず、それを推理として遊んでいることに対して自分の中で違和感があった。結局プレイヤーを除外していくという遊びが敵対的なゲームだなとも思ったり。コンセプトがグロいのに「リア充がキャッキャして遊んでんな?」みたいな、お前たちがやっているのはこんな恐ろしいことなんだぞ、といいたかったのはありますね。
めづかれ氏:
「グロい」というのはありますね。子ども遊びの「花いちもんめ」も同じで、子どもたちはキャッキャと言いながらやるんですけど、傍から見ていると恐ろしいことで。人の取り合いで誰も選んでくれなかった寂しい経験があるんですよ。人狼にはもっと言葉の殴り合いとかありますけど、「花いちもんめ」には理論とか論理関係なく、好きとか嫌いとかちょっと気に入らないとか、その時の感情でどんどんやっちゃう子供ながらの残酷さがある。人狼ゲームも似たようなところがある気がします。
amphibian氏:
ある意味本能的なゲーム体験を、露骨に採用していますよね。
───『グノーシア』も『レイジングループ』も心理的にはグロいゲームだと思えるのですが、それは元々のあそびの性質がグロいからということですね。
amphibian氏:
私はそう思ってます。『レイジングループ』では、主人公が推理を考えようとするけど上手くいかないとか、人間が理不尽に動くということは強調したつもりです。逆にそれで人狼っぽくなくなったという話もあります。ただ、『レイジングループ』内のキャラは命をかけて人狼をやっている。急に村に集められて「人狼がいるんだ」と明かされた直後に、実際「開示してください」とゲーム的な感じにはなりませんよね。
みんなそこから必死に戦略を編みだそうとするし、持てるものは全部使おうとする。リアルかつ人狼ゲームとは何か、人狼で起こっているというのはこういう恐ろしいことだと、『レイジングループ』で書こうとしておりました。
───――プチデポットさんは、人狼のグロテスクさを意識していましたか?
ことり氏:
そもそも投票されたら死ななきゃいけない状況で、人狼ゲームなんて成立しないと思っていました。
しごと氏:
もし、そんな状況でこんな淡々と「誰々を一日ずつ吊っていこう」なんて言ってる連中がいたら最低な連中だと。もう村ごと滅びてしまえ、となる(笑)『レイジングループ』で言うと、人狼ゲームがある程度リアルに成立するためにはこれだけの話がいるという点が、恐ろしいなあと思っていました。
amphibian氏:
設定の上では、「信仰」は必要になるとは思っていましたね。
しごと氏:
だから『グノーシア』を作る上では、設定を軽くするというか、グロテスクさはあまり意識せずに済むようにしています。登場人物たちも、そこらへんをそこまで重く背負わない人たちばかりが出てきています。
めづかれ氏:
投票されたあと、「見つかっちゃった、しょうがないよね。てへ」みたいな感じでコールドスリープされますけど、あれは死んでるわけではないので、いつか復活するんだろうと解釈ができます。全体的に軽くしようとした意図はすごくあります。
手軽に周回できる人狼として
───コールドスリープ設定は、世界観からきたのか、死を避ける目的で設定されたのか、どちらが先にありましたか。
ことり氏:
「投票されて死を受け入れられる人」を私たちが書けないというのがありました。そんな人達の話は別に読みたくないし。
めづかれ氏:
だから、凍らせることによって軽くしたんですよ。お手軽な感じに。遊びみたいな。
amphibian氏:
でも、本当に『グノーシア』は、巧みに全てを整えておられるなと思うんですよ。気軽に周回できる人狼を成立させるために、設定、キャラクター、空気感、アート、音楽や効果音も含めて全てがサクサクになっているなと。これはすごい手腕だなと私は思っております。
めづかれ氏:
『レイジングループ』は、地の文であるとか主人公がどう思っているかとかも含めて、客観性の高いシナリオになっていますよね。『グノーシア』の場合は、プレイヤーが主人公なので、主観性が高いと僕は思ってるんですよ。
客観性と主観性の違いが『レイジングループ』と『グノーシア』の違いかなと。客観性でいろんな文章とかシナリオを書いていくと、どうしても淡々といろんなことを伝えなきゃいけないとなりがち。理詰めで、なぜこうなったのかといった因果関係とか、そういうものを書くことになると思うんですね。
amphibianさんは確か、大学で生物の研究をされていましたよね。『レイジングループ』は、いろんなところからの反論処理ができるように、頭の中で試行錯誤しながら理詰めで書かれていたことが、個人的にすごく楽しかったですね。
amphibian氏:
ありがとうございます。しかし、客観性かあ、なるほど。それはカメラの範囲とかの話ですかね。要は、あくまで自分が見えるところしか見えない、開示されないつくりになっているのが『グノーシア』で、みたいな。
めづかれ氏:
『レイジングループ』では、場面転換でいろんな場所へ行ったり、他のキャラクターたちもすごく綿密に描かれている。でも、『グノーシア』ではプレイヤーが主人公なので、自分が見てる範囲でしか移動・行動もできないし、選択もできない。プレイヤーの視界の外で、他のキャラクターが何をやっているかはわからないんですよね。
議論が終わったあと、夜のパートで何が起こっているのかは、プレイヤーがその場にいなければ見えないから、全体像がつかめない。これは部分的な小さなイベントを用意するナラティブな手法なんですけど、そういう仕組みから結構違っているので、被らなくてよかったなと。システム的な部分で違いを見せられたのは良かったなと思いますね。
amphibian氏:
あんまり私は主観・客観という考え方はしていませんでした。考えていたのは、リアリティですね。私が『レイジングループ』を書いたときは、いわゆる現実世界において、人狼村を顕現させるためにはどれだけ証拠の積み上げがいるかが重要だと思っていました。
『グノーシア』はそもそも現実世界ではないというか、SFなので現実っぽい部分もあるかもしれないんですけど、プチデポットさんワールドですよね。あのアートとあのテイストの物語、音楽で幻想的なテイストで成立してる物語だと感じたので、過剰な証拠やロジックの積み重ねは必要とされないと思うんですよ。
それこそ、何故一晩に1人コールドスリープ対象を選ばなければならないのか。話の流れによっては複数コールドスリープさせたりとか、全員コールドスリープさせようというのも発生しうるけれど、あの世界においてその理由を突き詰めることは必要ないですよね。証拠がなくても納得できるから。
なので、そもそも理詰めにする必要がない世界を成立させている時点で、理詰め要素は全部排除できている。あくまでキャラクターとか世界観の不思議さを味わうために、いろんな設定を集中させることができたんじゃないか。そういう風に感じました。もちろん、システムの違いもありますが、方法論の違いは強く感じました。
しごと氏:
そうですね。人狼ゲームを繰り返しやるコンセプトの関係から、あまり長い尺の説明とか世界観、論理立てて語る尺がないし、世界観や設定の説明を入れるよりは違うことをしたほうがいい。世界観の説明がいらないような、なんていえばいいのかな。
ことり氏:
たぶんやってる人も知りたいのは、世界設定の描写とかじゃないだろうと。キャラクターのことを知りたいとか、好きになりたいとか、そっちのほうを出せばいいと思っていました。
心に残るものはキャラクター
しごと氏:
リアリティの話で言うと、世界自体のリアリティは、SFベースの1000年後の世界ということで、無理やり成立させてしまえば気にならないかなと。キャラクターだけはリアリティレベルを高く、リアルに近い方を目指してはいます。
amphibian氏:
確かに。マンガ的、キャラクター的な表現よりは、ウェットな血肉を備えた感じのあるキャラクター造形に感じられましたね。
しごと氏:
そういう方向を目指していました。キャラクターのリアリティレベルさえ確かであれば、世界観とかは説明しなくてもいい。
ことり氏:
キャラクターがその世界に住んでいるという土台がちゃんとあれば。
しごと氏:
住んでるなら、逆に世界はあるみたいな。
amphibian氏:
なるほど。そこも結構違うところですね。私は最近「お前ほんとはキャラクターに興味ないだろ」って結構言われるんです。だいたい世界観の方を作りこみたがりますね。結局、世界観がしっかりしていれば、世界観をエンジンとして物語が生成されるので、そこに設定をいっぱい用意しておいて、そこにキャラクターを突っ込んでどんな物語になるかなって遊ぶのが好きって感じですね。TRPG的というか。
ことり氏:
とにかくみんなの心に残るものは、キャラクターしかないんじゃないかと思っているので、うちらは逆にキャラクターを推していくスタイルです。どんな話だったかは忘れてもキャラクターは残る。キャラクターを見せるのに、人狼ゲームはすごい向いてるな、人間性出せるなとは思いました。
めづかれ氏:
1周15分ぐらいで終わるので、何度も遊んでいるとキャラクター性がゲーム中のAIの思考の中でも、プレイヤーはアナログな感じで見てくれる。「このキャラクターはこういうことをしがちだよね」「イベントこんなのあったしね」みたいなお互いを補うことで、ストーリーとゲーム性のところをお互い補完しあっているんじゃないかと思っています。
だから、ガチガチにこのキャラクターはこういう設定だというよりも、プレイヤーの体験とキャラクターの出会い方、人狼ゲームの遊び方によって、各キャラクターの像をプレイヤーが補完しあう。
amphibian氏:
いや、もう完全にそのとおりだと思います。
めづかれ氏:
究極的なことを言うとストーリーは、プレイヤーの頭の中に出来上がる妄想が完全なストーリーであって、こちらのほうで全てを描く必要はない。だから、プレイヤーの体験とストーリーをどう絡ませるかという点では、今回の15分の周回プレイによる仕組みは上手くいったと思ってます。
プレイヤーによって、キャラクターの見え方や感じ方は全然違うわけで。そういうプレイヤーごとの体験がある意味究極じゃないかな。今回はパラメーターが6個あるので、自分に輝きはないけれどロジックで押すぞとか、自分のキャラクターと照らし合わせながらロールプレイをしたりして、そういう群集劇みたいなものが、『グノーシア』では描けたんじゃないかと思っています。
amphibian氏:
なるほど。確かにセリフは交わすけれども、結構ユーザーが行間を埋める余地はありますものね。個々の人狼ゲームというか、1セッションをやってこういう物語の流れがあったというもので、結構プレイヤーの側が想像して間を埋めているということは起こっていると感じました。
しっかりとキャラクターは作り込まれているけれど、めちゃめちゃ喋るわけでもないですし、めちゃめちゃ設定をひけらかすわけでもないというのが、バランス良く提示してるなあと思いますね。いやあ、やっぱり賢く作ってるゲームだなと。
プチデポット一同:
(笑)
───逆にamphibianさんは徹底的に描くというか、グレーを残さないような印象がありました。
amphibian氏:
そういうわけではないんですけど、いくつか事情があって、私が文章しか書けないわけですよ。しごとさんは文章とプログラムができるわけじゃないですか。だから、ある意味完璧なプログラムを作って「すごい面白いゲームを創るぞ」というところで想像力やクリエイティビティを発揮することができる。けれど、私は書くことでしかクリエイティビティを発揮できないので、そこの出力が多めになるのはあると思うんですよ。もう1個は、たしかに学問をちょっとやっていたので、突っ込まれることに対する恐怖はすごくある。
だから、ツッコミどころはできる限りないようにしようというのは、強迫観念としてあると思います。あと、TRPG的な考え方として、誰かがこの世界で遊ぼうと思った時に再現できるぐらいに完璧なデータを残しておこうという作り方はしてるとは思います。セッションを他のゲームマスターができるぐらいには。
ただ、割と読者さんからツッコミが入るのを恐れているので、それに対していろいろ言い訳を考えるステップが高じてこうなっているかなというところはあります。でも、本当は設定が大量にあると読者さんに負担がかかるわけで、それが別にベストではないと思っていますね。それしか今のところ武器がないので武器にはしますけれど、そういう点で言うと、キャラクターベースで軽く作りつつ十分に面白いものを作られるというのはいいなあと思っております。いいなあ!
メンバー間で行われた騙し合い
───『グノーシア』開発の経緯を伺いたいのですが、開発初期は現在とは異なるシナリオを予定されていたんですよね。
めづかれ氏:
元々『グノーシア』は、人狼ゲームを遊べるシミュレーターとして作っていたんです。シミュレーターとしてのゲーム性を売りにするために作っていたので、しごと君たちとストーリーは後付けで作ることになっていました。ただし、ある程度決まったネタがあった。でも、その構想を使おうとした時に、他のゲームとネタが被っていたんです。
ことり氏:
設定としてちょっと似ているし、そのゲームのほうがもっと良いラストになっていたという(笑)
───当時考えていたのは、具体的にはどんな話だったんでしょうか。
ことり氏:
元々とあるキャラ(セツ)があの宇宙船内のシミュレーションをしていて、実際には何があったのか明らかにするために何度も繰り返しているという設定だったんです。
めづかれ氏:
シミュレーションというか、思考実験な。
しごと氏:
シミュレーションの中から真実を探ろうという話を考えていたら、ループというもの自体をもっとしっかり扱った作品を見つけまして。
ことり氏:
ラストにすごく強いメッセージを含んでて、すごいな、その作品と似たような話を作る必要ないなと。
しごと氏:
その方向はやめようとなったんですよね。
めづかれ氏:
それで1回考え直しになって、みんなで集まって打ち合わせをしました。結果的に長考して、ストーリーで1年半ぐらいかかったのかな。当初は、人狼ゲーム自体を面白くして、シミュレーターを楽しんでもらうことを優先させたかったので、細かなシナリオを作るつもりだったんです。
バランスとしては、ストーリーで押しすぎると、人狼ゲームシミュレーターとしての魅力が損なわれたり、逆にストーリーを追いたくなるプレイヤーにとって人狼ゲームがジャマになるかもしれない。なので、当初はストーリーは補完的な立ち位置にしてあまり重要視していませんでした。一方で、人狼ゲームを僕らがずっとテストプレイしていると、さすがに飽きてきて、モチベーションが上がりませんでした。
そこで、ストーリーを使って周回プレイに耐えられるようにしたんです。でもストーリーを用意することになるとたくさんの小ネタとかイベントとか考えなきゃいけなくなり、最初50程度のストーリーやイベントで終わらせる予定が、どんどん膨らんじゃって。しごと君やことりちゃんと設定を膨らませていった結果、最終的にボリュームが増えたんですね。
しごと氏:
あれはですね。48ぐらいというのは、僕がちょっとめづかれさんを騙すというか―――
一同:
(笑)
しごと氏:
本当はひょっとすると倍ぐらいになるかもしれないと思いながら、「めづかれさんにはとりあえず48って言っておこう」って感じでした。
迷っていたグノーシア
───amphibianさんとプチデポットさんは面識があったのでしょうか。
amphibian氏:
最初に、プチデポットさんのブログで触れていただいたことが、コンタクトのきっかけだったと思います。確か取り上げていただいたのは、前の閏年にあたる2016年の2月末です。その後、「夏のコミケの時に来られるならついでにご挨拶を」と連絡をいただいていました。ただ、その時はタイミングが合わなくて。出張に出る機会があり、ついでに名古屋に寄ってお会いしたのが最初だと思います。その時に、アドバイスじゃないですけど、情報交換をしたんじゃなかったかなと思います。
しごと氏:
情報交換というか、こちらが教えを請うというか。
amphibian氏:
いやいや、そんなそんな(笑)
ことり氏:
ストーリーどうしよう、と悩んでいた時期だったので。
しごと氏:
元々僕らが『レイジングループ』の大ファンで、会いたいとずっと言っていたら、声をかけていただいて、最終的に会えました。
amphibian氏:
今記録を見たところ、お会いしたのは2017年ですね。最初にブログで取り上げていただいてから1年経っていました。私の方もぜひお会いしたいなと思っていて。とにかく地方に住んでいるとクリエイターの方と出会うことがないので、ぜひともと思って渡りに船で行かせていただきました。
───ブログに書かれたことをきっかけに、実際お会いされたんですね。
amphibian氏:
お会いした時に伺った時点では、大部分出来ているけれど、イベントの頭数を揃える段階で止まっているという感じでしたよね。
めづかれ氏:
キャラクターを作る時の考え方について話しましたよね。
amphibian氏:
そうですね。キャラクターを揃える時にどういうやり方でやるかとか、どういった情報が必要か、などを申し上げた記憶はあります。
めづかれ氏:
僕らの『グノーシア』は、amphibianさんの『レイジングループ』とはまた違う作り方をしています。ただ、ベースは同じ人狼だから、考え方など共有させていただけるかなと思いました。
しごと氏:
お会いした時に、「シナリオってどうやって書けばいいの?」ってお訊きした覚えがあります。
amphibian氏:
それはそうだったと思います(笑)
ことり氏:
やることは決まっているけれど、具体的にどう書こうという段階でした。
───amphibianさんにとって、人狼アドベンチャーゲームという意味では、ある意味プチデポットさんはライバルでもあると思うんです。そうやってアドバイスをおくられたのは、少し不思議に思います。
amphibian氏:
いやいや、プチデポットさんには到底及ぶものでもないと思っております(笑)実際ライター仲間的なものっていうのはすごく人脈が狭いので、知識はやっぱり共有しないと。そこに何も躊躇はありませんでした。
それに、そんなに秘伝のタレというか、これを教えたらまずいみたいなノウハウは持っていないので。基本的にはこういうことだと思いますという、物の本からの引用みたいなものです。そういうことなら、いくらでもできると思っていました。
───その時は、どんなお話をされたんですか?
amphibian氏:
たとえば、キャラクターシートの作り方だったり、ランダム性を利用して会話をジェネレートする手法であったり、そういうお話だったと思います。哲学的なものとかではなくて、ゲームを作る上で、文章をひねり出さないといけない時にどうすればいいのか、みたい話がメインだったかなと。その時点で、(グノーシアの)話の筋とか何がコアなのかとかは決まっていたと思うのですが、ゲームを更に彩り豊かにするためにどんなコミュニケーションが必要だといった段階だったと思います。
───実際のところ、amphibianさんのアドバイスって取り入れられていますか?
しごと氏:
めちゃくちゃ取り入れました(笑)
ことり氏:
ほぼそのまま、すべて実践しました(笑)
amphibian氏:
むしろ、人狼を書くためにこういうのがいいですよ、みたいのは話してないですよね。
しごと氏:
そういう話はなかったですね。
めづかれ氏:
僕が記憶している範囲だと、たとえば、舞台の設定としてどこに家があるといったマップの全貌を作る。キャラクターの設定では、喋り方の癖の有無、履歴書みたいにどういう年齢でどういう生き方をしてきたかを考える。普通はこのキャラクターとこのキャラクターでかけあいをすると書きやすいんだけれど、そういう安牌を狙わずに、サイコロによるランダム性を利用して、ランダムなキャラクター同士だとどうなるんだという流れで、意外性を生み出す。そういった創作方法のアドバイスをいただいた記憶があります。
amphibian氏:
実は、私は『グノーシア』で好きなイベントがあってですね。ネタバレになるので詳しくはいわないんですが、3人のキャラクターを巻き込んでゲームをするイベントがありましたよね。あれも意外な組み合わせでした。もしかして、それは私の意見を取り入れていただいたと?
しごと氏:
はい、ランダム性という点で、師匠に教えていただいた手法を使いました。
amphibian氏:
いやいやいや(笑)
ことり氏:
ランダム性はたしかに、だいたいのイベントに使いましたね。
amphibian氏:
ランダム性を用いるのには理由がありまして、クリエイターもまた読者であり、物語を楽しむ人であるので、何らかの意外な展開を必要としていると思うんですよ。かといって、自分で完全に考えたお話だけを語っていたら、意外なことは起きない。なので、そこはサイコロとか、つまりランダムに起こしてもらおうと。助けになったなら幸いです。
しごと氏:
本当にありがとうございました。
───サイコロのランダム性をシナリオづくりに使われているんですか。
amphibian氏:
エンジン上でランダムを実行するのではなくて、設計時点のアイデア出しにランダム性を利用するという考えですね。そこに至った理由としては、TRPGの影響が大きいと思っています。ライターになった経緯の中で、TRPGに参加していたというのがありまして、TRPGはゲームとしての側面もあるんですけど、作劇のエンジンとしての側面もあるんです。
TRPGでは、キャラクターと設定を使って遊ぶわけですけど、完全にGMの提示するシナリオ通りに進むとは限らなくて、サイコロ次第でとんでもないところに進むこともある。物語をジェネレートする設計段階でランダム性に頼って「意外とこの組み合わせありだぞ」とか、そういうのを出すのは結構ありな方法かなと思っているところです。
───ちなみに、TRPGは何を遊ばれていたんですか。
amphibian氏:
「ガープス」*1がメインでした。元々はロボットSF系の「バトルテック」*2……「メックウォリアーRPG」とか、ホラー系の「ゴーストハンター」とか、そういうのに興味があったのですが、当時もう入手が難しく。で、とにかくTRPG遊んでみようと、入れていただいたサークルで使われてたのが「ガープス」だったのです。ガープスの特徴としては、モジュール系というか、ジェネラルのルールにいろんなサプリメントを乗っけて遊ぶ感じなんですけど、この辺りは作風にかなり影響しているなと感じています。
めづかれ氏:
ガープスだったら、ガープス・ルナルというのがありましたね。そこにルナル・サーガという舞台設定があって、汎用性が効かせられるものですよね。
amphibian氏
やろうと思えば、妖怪アクションとか、超能力とか、SFとか、いろんなものが一つのルールで遊べるというのがポイントのゲームだったので、割と私も自分のゲーム作るときには設定を複数くっつけて作るみたいなことをやっちゃいますね。
*1:ガープス(GURPS)
汎用性の高いTRPGシステム。特定の決まった世界観が存在せず、サプリメントを導入したり、自由に設定した世界観で遊ぶためのルールが用意されている。
*2:バトルテック
パイロットとなって巨大ロボットを操るボードゲーム。TRPGとして遊ぶためのルールブック「メックウォリアーRPG」も存在するほか、「メックウォリアー」の名を冠するデジタルゲームは現在に至るまで根強く展開されている。
意外な反応
めづかれ氏:
あと創作の話以外ですと、amphibianさんとプロデュースというか、ゼロからゲームを作って、たくさんの人に知ってもらうにはどうすればいいのか、考え方などを共有させていただきました。特にストーリーものだと、私たちみたいな無名な状態にも関わらず『メゾン・ド・魔王』とまったく違う『グノーシア』を作ってしまったので、どう魅力を伝えようか苦心していたんです。
そういう意味で『レイジングループ』はアプリからスタートされ、無料版と1600円のフルパッケージで販売されて、正直、いまのアプリ相場からみて少し高めといいますか。とはいえ、結局買うわけですよね僕も。それだけのパワーがある。しごとくんやことりちゃんも買って遊んでましたし、遊んでみるとものすごく安いですよね。
amphibian氏:
そうですかねえ。実際コンソールゲームと比べると安いですけど、アプリと比べるとめちゃめちゃ高いという難しい価格帯で、それでもギリギリ高いところを狙う意図であれはやらせていただきました。受け入れていただけたのはこれまで支えていただいた方に、まずは買っていただけたのも大きかったと思います。
なぜそれがちょっとずつ受け入れていただけたのか、最初の方はわからないところもあったんですけど、幸いにしてストアですごく好意的に受け入れられたことがあったかなと。ストア上では常に好評だったので、ある意味では値段が高いことで一見の層が振い落とされ、手に取らない状況だったことで上手く行ったんじゃないかと思います。このあたりはまだ、よく上手く行ったなと振り返る部分でもあります。
───結果的に見れば、『グノーシア』と、『レイジングループ』では売り方も似ているところがありますね。
amphibian氏:
狭いところを狙って、そこで一気に話題をさらうことで頭角を表すというメソッドは、めづかれさんから伺いました。私のほうが教えていただいた形なんです。でも『グノーシア』は全プラットフォームを狙っていけたでしょう(笑)
めづかれ氏:
体力が……(笑)開発の人数が少ないので。
amphibian氏:
うちの場合はアプリ屋というか、スマホで作ることが至上命題で、当時はそれしかなかったので。『グノーシア』は、わざわざ狭いところを狙ったんですか?
しごと氏:
単純に、時間がかかってしまったというところもあります。
めづかれ氏:
もっと勢いのある時に出せればよかったんですけど(笑)ただ中途半端な状態で出すことはプチデポット的に納得できないので、時間がかかってしまいました。でも結果的には良かったですね。PS Vitaで遊んでくださる人たちは、ADVが好きだったようなので。
amphibian氏:
結果的に、いい形になったような感じはします。
───リリース以降、ユーザーから評価されて意外だったゲームの部分はありますか。
しごと氏:
あくまでシナリオ担当の僕の視点なんですけど、ストーリーを評価されたこと自体にびっくりしましたね。めづかれさんはエンディングも含めて結構ストーリーがいいと言ってくれていましたけれど、自分では良くわかっていなくて。あんまりピンと来てなかったんですよ。
めづかれ氏:
エンディングは、最初から作っていたわけじゃなくて途中まで作るのを止めてたしね。
ことり氏:
最後の方で一気に仕上げたよね。
めづかれ氏:
クリア直前までは何度もテストプレイをするわけですけど、エンディングはテストプレイの感覚と感性を元に、プレイヤーだったらどういう気持ちになるかを逆算して作るために、作成を止めてたんですよ。しごと君のその時の感覚を大事にしたいのもあったし、シナリオを作ってからのゲームじゃないものね。
プレイをしながら自分のプレイの感覚、ループが続いて鬱陶しいだとか、この展開が楽しかったとか、どういう気持ちでゲームを遊んでいたかが大事だと思っていましたので。そういったことをイベントやシナリオでプレイヤーに寄り添っていくような作りを大事にしたつもりです。
amphibian氏:
なんというかっこいい作り方をされてるんですか! ライブゲームづくりみたいな。
めづかれ氏:
元々構成や設定はある程度の形はありましたけど、実際に作って遊んで、それから足りないところを追加したり、プレイヤーの気持ちはどうだとか検証しながら進んでいた部分がすごくあって。その結果、すごい時間かかってしまった部分もあるんですけど。
よくイメージボードを作るっていいますけど、私たちの場合は音楽でイメージするみたいなところがあるんです。設定とかストーリーができていない段階から、コンポーザーのQ flavorはいろんな雰囲気とか考えて音楽を作ってくれるんですね。それをどんどん送ってくれるので、聴きながら音楽に寄せていくみたいなところがあって、amphibianさんが仰ったようにライブ、ジャズみたいな感じですね。
それは4人でやっているから対応できるのと、期間とか時間とか無視して、いいものができるまで出さないみたいなところがあって。わがままな作り方の結晶なので、それが上手くたくさんの人に伝わってよかったなと思いますね。たぶんそういう作り方は普通だとできないと思うので。
amphibian氏:
できないですよねえ。いやあすげえなあ。
めづかれ氏:
その環境を作るのは大変だったんですが、今のところなんとかできてます。あともコミュニケーションは結構密に取れてよかったなと思います。時間はかかりますけど、全部スタッフでまかなえると、メンバー同士の伝導率は高いですし、外注さんにお任せする必要もないので。あと4人の中でも感性の違う部分はあるんですけど、この人達が言うんだからOKと思える信頼関係があるから、自分たちの感性の中で完結させられますし。
心がけとしては、自分の中にはないアイデアが出た時には、否定や批判はしないようにはしています。本当はこれ嫌だなとかいっぱいあるんですけど、作品というより商品として見ていて、クリエイティブなところとお客さんに寄り添うところのバランスがとても大事だと思うので。あと、設定を最初に考える時もありますが、音楽以外にことりちゃんに描いてもらった絵から入って、あとで皆でシナリオとかを乗せていくこともありましたね。
ことり氏:
まずは人狼ゲームを作るというところから始めているので、人数をそろえるというか、とにかく思いつくままにキャラクターを描いていきましたね。
amphibian氏:
とても、ある意味すごく贅沢なゲーム制作体制だと思いますね。私はひたすら、締切に泣きながらテキストを仕上げていたので(笑)
───amphibianさんは、評価されて意外と感じた部分はありましたか。
amphibian氏:
主人公が思ったよりは人気があったことですね。一応主人公で人気を取りたいと考えていたんですけど、失敗したかなと思っていたんですよ。こいつはあんまり好かれないんじゃないかなと。リリースする前は、「そんなに狂ってないなこいつ」と思ってたんです。
いわゆるサイコパス的な、イカれた主人公をホントは書きたかったんです。つくっている時は、こいつはそんなにぶっ飛べなかったなと思っていました。でも、リリースされてみると思ったよりぶっ飛んだ主人公と評価された感じです。その辺は自分でも麻痺しちゃってるのかな。
───中々イカれた主人公で良かったですよ。
amphibian氏:
それだとありがたいんですけど、逆にこんなイカれた主人公は二度と書けないんじゃないかと言われたり。そうなのかと思ったり、自分でもわからないんですよね。あと、ヒロインがかわいいと言ってもらったのもありがたいんです。思っていた以上に、可愛くしようとしたのが効いた感じがありました。全体的に、キャラクターを好意的に受け入れてもらえたなと思っています。
───プチデポットさんは『レイジングループ』で好きなキャラクターはいますか?
めづかれ氏:
僕は春ちゃんと橋本さんが好きですね。
amphibian氏:
その心は?
めづかれ氏:
まず春ちゃんは、いろんな側面でヒロイン含め綺麗な部分もそうじゃない部分もたくさん見せつけられるんですが、そうなるとかわいいとか好きの前に、ここまでキャラクターを知っちゃったので、愛着以外の何物でもないと言うか。そのキャラクターのことを全部理解したかのような、勝手な達成感と征服感がありまして。だからもう、全部好きみたいな。
amphibian氏:
なるほど。
めづかれ氏:
橋本さんについては、ほんとにもうすごい好きですね。ボス戦のような戦いというか、ひりひりしていてほんと怖いんですよ。あの人正論だから怖いんですよ。
amphibian氏:
確かに、主人公は正論を取れない状況ですからね、その時には。
ことり氏:
私は主人公の房石陽明が好きです。やっぱ賢いっていいですよね。
amphibian氏:
愚かさによってプレイヤーの足を引っ張らないようにというのは、すごく気を遣ったところではありました。
ことり氏:
そうですね。たぶんストレスたまっちゃうから、一歩先を行ってくれるのがいいです。
しごと氏:
僕は、真剣に考えてみたら間宮さんなんじゃないかなと思います。まともな人が好きです。
amphibian氏:
そうですね、彼女は恐怖に泣き叫びますしね。ちょっとその、ある程度普通のプレイヤーに心寄せられる人も貴重だろうなあと思って入れました。
Q flavor氏:
具体的にどのキャラクターがというのではないですが、全体的に皆が僕の考えや予想を上回る行動をしてくるところが好きです。
amphibian氏:
ありがとうございます。
───amphibianさんは、『グノーシア』で好きなキャラクターは居ますか?
amphibian氏:
あんまり面白くない答えかもしれないんですけど、たぶん一番好きなのはセツだと思うんです。なぜかというと、彼女とだけはどういうチームアップでも、信頼関係があるわけですよね。彼女がグノーシアでめちゃくそ騙してきてて「あーこいつ裏切ってる!」って気づいた時でも、彼女とだけは信頼関係があるわけですよ。そこで不思議な体験ができるというか、殺し合ってるけど信頼関係がある。その変な吊り橋効果みたいな状況に置かれていることで生まれている愛着みたいなものは感じましたね。
彼女がグノーシアで自分が乗員のこともあるし、逆もある。でも、この2人の間だけには乗員VSグノーシアの関係性を超えた目的意識があるので、普通に情報交換するわけですよね。その後、普通に殺し合いというか、グノーシア退治のセッションをやって、それで片方がやられてもサバサバするわけです。それはなんだろうな。それこそループ関係を互いだけが知ってる背徳感もありつつ、殺し合いの中でも2人だけの違う感情を共有してるんだという独占感のようなものもあるかもしれません。
───ちなみに、amphibianさんはどういうパラメーターでプレイされていたんですか。
amphibian氏:
最終的に直感が50になりましたね。直感が議論以外で相手の正体を判別する唯一の方法ですよね。だから最終的には「人間と言え」であぶり出すのがルーチンになってましたね。
───『グノーシア』の遊び方も、千差万別ですね。最後に読者へ向けて、今携わっている、もしくは発売される製品の告知をしていただけますか。
めづかれ氏:
『グノーシア』Nintendo Switch版は、4月30日に発売予定です。ストーリーやイベントなどはPS Vita版と変わらないんですけど、バックログ機能を含めいくつか新機能が搭載されており、音や画像もSwitch用にリファインされているので、またお楽しみいただけるのではないかなと。あとゲームバランスも100箇所以上の調整をしましたので、遊び甲斐があるとおもいます。あと片手モードでも遊べますね。
しごと氏:
移植は僕がほぼ1人で担当したのですが、amphibianさんが片手モード必須と仰っていたので、片手モードにも対応しました。
amphibian氏:
もしかしたら、グノーシアは携帯モードで遊ぶのが向いているという風になるかもしれないんですけど、あるものは入れたほうが(笑)
amphibian氏:
私からは、すでに情報が出ているとおりフルリメイク版『デスマッチラブコメ!』が6月25日にPlayStation 4/Switch/PC向けに出ます。レイジングループの1個前に作っていた作品でして、告白されると爆死するというぶっ飛んだ設定を元に、学園ラブコメホラーみたいな、はちゃめちゃといいつつ結構怖かったり深みのあるストーリーが語られる、いつもの長編ノベルゲームになっております。フルリメイク版では、グラフィックや音楽を相当強化しておりまして、シナリオチャートを導入して、すごく遊びやすくなっております。
―――ありがとうございました。
amphibian氏とプチデポットの4名に面識があったこともあり、対談は終始和やかな雰囲気で行われた。人狼という出発点を同じにしながら、異なるアプローチにより組み立てられた『レイジングループ』と『グノーシア』。人狼へのアンチテーゼという共通点や、それぞれのこだわりなど、座談会を通して伺った話題はいずれも興味深い内容だった。本稿をきっかけに、作品へ興味を持ってもらえれば幸いだ。