Steam向けアクション『Metal Unit』開発チームインタビュー。ストーリー重視の探索型ローグライトゲームはどのようにして生まれたのか?

韓国のパブリッシャーNEOWIZは、2020年2月4日にSteamにて『Metal Unit』を早期アクセス販売開始した。本作『Metal Unit』の開発におけるルーツに迫る。

韓国のパブリッシャーNEOWIZは、2020年2月4日にSteamにて『Metal Unit』を早期アクセス販売開始した。『Metal Unit』は、メタルユニットというメックスーツを装備した少女を操作し、宇宙人とモンスターから地球を取り戻そうと奮闘するローグライト2Dアクションゲームだ。

ステージ上には多数の敵が待ち受けており、全ての敵を倒すと次のステージへ移動可能になる。パーマデスの緊張感を抱えつつ、道中に設置されている宝箱や隠しエリアから装備品を集め、キャラクターを強化し、ボスの待つエリア最深部へ向かって進行。ストーリーにも重点が置かれていて、チャプターを進めるごとに人類を裏切ったという姉や、不穏な空気の漂う主人公の状況などが、少しずつ明らかになっていく。

早期アクセス配信中の作品ながら、荒廃した地球やキャラクターを描いたグラフィック、パーマデスによる緊張感、レアリティの設定された装備群、アクションゲームとしての気持ちよさなどを備えており、Steamのユーザーレビューでは250件以上の評価を経てほぼ好評。一方、バランスの甘い部分もあるものの、さまざまなエッセンスをゲームに取り込みつつ、完成版に期待が持てる作品になっている。

今回は、そんな本作を開発している韓国のインディーゲームスタジオJellySnow Studioへ質問する機会をいただいたので、メールインタビューを行った。スタジオの背景や作品のルーツ。パーマデスを導入した理由、ゲームバランスやアップデートに関することを含め、さまざまな話題の質問をぶつけている。

2019年9月に釜山で行われたBUSAN INDIE CONNECT FESTIVAL2019での写真。左からプログラム担当のフェリックス氏、サウンド担当のウ・ヒド氏、アート担当のキム・テフン氏。

―――今回は質問の機会をいただきありがとうございます。まずは、開発チームであるJellySnow Studioについて紹介していただけますか。

JellySnow Studio:
私たちは、それぞれ別の仕事をしながら趣味でゲームを開発しているチームです。メンバーは、プログラマーで共同代表のFelix Soumpholphakdy、サウンド担当のウ・ヒド、共同代表でアート担当のキム・テフンの3人になります。まだまだ足りない点も多いですが、互いの知識を共有して、作業しながら共に成長しています。

―――どのような経緯で『Metal Unit』の開発が始まったのでしょうか。スタジオの前作『Froggo』とは、作風がかなり変わっていますよね。

JellySnow Studio:
様々なジャンルが好きなメンバーが集まっていたチームでしたが、まだまだ力が足りておらず、前作『Froggo』のようにシンプルなゲームから開発を始めました。でもここにきて、各スタッフの実力も高くなり、これまで以上に複雑なゲームを作れるようになりました。その最初の作品が『Metal Unit』になります。

―――『Metal Unit』について、ゲーム内容を改めて紹介していただけますか。

JellySnow Studio:
『Metal Unit』は、未来の地球を舞台に宇宙人やモンスターが登場する、Metal Unitという宇宙技術を利用して戦う美少女アクションゲームです。メトロイドヴァニア、ローグライク、アクション、横スクロール、探検、ボス戦闘、ストーリーなど、チームメンバーの思いがすべて込められています。さまざまな要素が入っているため、奇抜な点も含まれていますが、それがMetal Unitの魅力だと思います。ストーリーの存在によって世界観を伝え、死亡時のアイテムロストによって緊張感が生まれる。探検してパズルを解くことで強い武器を手に入れ、自分が強くなっていくことを感じていただけるかと思います。

―――影響を受けた作品やタイトル、参考にしたゲームなどはありますか。ヒットストップや回避の動きが気持ちよく、アクションゲームをよく研究されている印象があります。

JellySnow Studio:
『Dungreed』のプラットフォームゲームのアクションとドットを参考にして開発しました。アクションでは『ニーアオートマタ』『鉄拳』『Dead Cells』など、数多くのゲームを研究して参考にしています。アクションゲームでは、エフェクトが遅すぎるとプレイがルーズになります。ただ、早すぎるとちゃんと見えなくなってしまうので、バランスに注意しています。

―――戦闘中はメックスーツを装備して戦う一方、ポーズ画面などで見られる主人公の立ち絵がかわいくて驚きました。ポーズ画面で見られるジョアナの立ち絵について、特別な感じがしますが、最初から実装予定でしたか。また、外見を切り替える機能の搭載予定などはありますか。

JellySnow Studio:
最初は戦車に乗っている大胆な女戦士が地球を守るというコンセプトで考えていたため、現在のような形になっています。戦車がスーツに変わり、青い髪の女戦士は今、かわいい美少女になりました。キャラクターの外見については、アップデートを通じて切り替えるような機能を追加する予定です。

―――先日公開されたロードマップでは、『Metal Unit』は全5ステージになると書かれていました。そのほか、今後実装予定の機能やコンテンツについて、可能な範囲で教えていただけますか。

Jelly Snow Studio:
タイムアタック、シークレッドストーリー、パズルマップ、新規アイテム、ボスレイドなど、プレイヤーが楽しめる様々なコンテンツを追加できるようにと考えています。

―――本作は、現時点ではそれなりに難易度が高いゲームに仕上がっていると思います。難易度が高いという意見について、どうお考えでしょうか。

JellySnow Studio:
まず、難易度が高いという評価については、感謝の言葉を申し上げます。ご質問の難易度に関してはアーリーアクセス版の発売以後、プレイヤーの意見を反映してアシストモード(Assist Mode)などを追加したり、メタルユニットのアップグレードシステムや、 さまざまな武器が獲得できるゴールデンルームなどを更新して改善してきました。さまざまなコンテンツの追加により、 ノーマルモードではハイレベルユーザーにとって簡単になってしまうかもしれませんが、この部分は、既存のヘルモードがあるため大きな問題にはならないと思っています。

―――では具体的に、どのようなゲームバランス/ゲームプレイを目指して開発していますか。

JellySnow Studio:
誰でも楽しめるゲームですが、簡単にはクリアできない難易度やシステムになっていますユーザーが繰り返しプレイできるようにさまざまなアイテム、マップ構成、ボスモンスターなどのバランスを再度見直し、さらに魅力的なゲームに発展させることを目指しています。

―――パーマデスを採用された意図について教えていただけますか。

JellySnow Studio:
ストーリーと深く関係している部分もあり、ひょっとしたらネタバレになるかもしれないので、簡単に説明します。オープンワールドで、プレイヤーの冒険心をくすぐるゲームを作りたいと思っていました。しかし、それを実現するためには開発リソースが足りませんでした。そのような状況でゲームを完成させ、成功させたいと思い、パーマデスシステムを適用しました。

また、一直線に進行する構図はプレイタイムを短くし、それによってもっとゲームをプレイしたいという気持ちを掻き立てるため、このシステムを導入しています。『The Binding of Isaac』『Dungreed』『Enter the Gungeon』のようなローグライク要素を入れてさまざまなプレイを楽しめるようにメトロイドヴァニアシステムを導入しました。

―――パーマデス導入により、戦闘に緊張感が出ています。一方、先のチャプターで死亡した場合に、前のステージへ戻って装備を集め直さなくてはならないバランスについては、不満とするユーザーもいます。今後どのようにバランス調整されていくのでしょうか。

JellySnow Studio:
正式発売までアップデートを通じて調整していく予定です。今は、一度集めた武器はコレクションに保存されるため、基本補給ボックスから獲得できる確率がアップするシステムになっています。しかし、持続的なアップデートを通じてもう少し簡単にゲームを進行できるようなシステムを導入する予定です。このようなアップデートによって徐々に低くなる難易度を体感できるようにすることを目標としています。

―――プレイしていて、敵を倒した際に手に入る通貨の価値が低いように感じられました。用途を増やしたり、ショップのラインナップを拡充したりなど、調整の予定はありますか。

JellySnow Studio:
はい、計画しています。まずは主にバグ及びアイテムバランスを修正し、チャプターアップデートを実施してゲーム内通貨の価値を高める予定です。。

―――そのほか、この部分に特に力を入れた、というものがあれば教えていただけますか。

JellySnow Studio:
ストーリーに力を入れています。Metal Unitの全てのプレイヤーが世界観を理解し、一緒にストーリーを描けて行けたらいいなと思っています。最後のエンディングにはこのゲームをプレイしてくれた全ての方に伝えるメッセージがあるので、最後まで見守ってほしいです。

PAX East2020で撮影された写真
PAX East2020で撮影された写真

―――早期アクセス版を購入したプレイヤー、そしてこれから遊ぼうと思っているプレイヤーに向けて、メッセージをお願いします。

JellySnow Studio:
まず、まだまだ未熟な私たちの初めてのゲームをプレイしていただき、ありがとうございます。まだまだ足りないことが多いゲームですが、持続的な開発やアップデートを通じて購入して頂いたことを後悔しないゲームになるように最善を尽くします。そして、これからプレイを考えているゲーマーの方にも素敵な経験を提供できるように頑張ります。よろしくお願いします。

―――今後の開発も楽しみにしています!ありがとうございました。

 

早期アクセス開始当初から比べると、すでにポーションショップの追加、クリスタルを消費してキャラクターを恒久的に強化するシステムの実装、隠しエリアの追加、新たな装備や調整など、精力的なアップデートが実施されている『Metal Unit』。メールインタビュー中でも触れられているとおり、今後もアップデートやコンテンツの追加により、より良いゲームを目指して開発が進められている。そんな『Metal Unit』は、Steamにて1520円で販売中だ。

PAX East2020で撮影された写真
開発者説明会で講演中のキム・テフン代表取締役
Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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