『サイバーパンク2077』レベルデザイナーインタビュー。ナイトシティでのクエストはどのように展開されていくのか

CD PROJEKT REDは2020年4月16日に、『サイバーパンク2077』を発売する。今回レベルデザイナーのマックス・ピアース氏とジャパン・ローカライズマネージャーの西尾勇輝氏にお話をうかがった。まずは開発における苦労やこだわりなどをお訊きする。

CD PROJEKT REDは2020年4月16日に、『サイバーパンク2077』を発売する。対応プラットフォームは、PC/PlayStation 4/Xbox One。『サイバーパンク 2077』は、オープンワールド RPG。舞台となるのは、巨大都市ナイトシティ。この街では、大企業が文化生活のあらゆる面をコントロールし、それ以外の部分をギャングが支配している。サイボーグ化したストリートの不良共や技術オタクのネットランナー、冷血な企業戦士がうろつき、犯罪者や貧乏人で溢れ全米一住みにくい街だとされながらも、希望を求める人々が集まってくる。プレイヤーが操作するのは、謎めいたインプラントを追うことになった主人公“V(ヴィー)”。外見からサイバーウェアによる身体強化まで、豊富なカスタマイズ要素が用意されるほか、無数の選択肢を通じて、プレイヤーは自分だけのストーリーを紡いでいく。

『サイバーパンク 2077』は国内向けの発売も予定されており、日本語字幕・日本語音声に対応するという。ダウンロード版はCD PROJEKT REDより発売され、パッケージ版はスパイク・チュンソフトよりリリース予定。東京ゲームショウ2019(以下、TGS2019)でも出展されており、登場するバイク「YAIBA KUSANAGI」の実物大モデルが展示され、キアヌ・リーブス氏も訪れていた。開発者による日本語吹替版の実機デモプレイも披露されており、同作の日本展開がいかに本気かがわかる展示であった。

そんなTGS2019にあわせて来日していた、『サイバーパンク 2077』のレベルデザイナーのマックス・ピアース氏とジャパン・ローカライズマネージャーの西尾勇輝氏にお話をうかがった。ゲームのシステムに迫る開発編と、日本語化の苦労をお訊きするローカライズ編に分けて内容をお伝えする。まずは開発編となる。

 

───TGS2019の実機デモで気になったのは、他言語のセリフが自動翻訳という設定で書き換えられるという演出です。あの演出はどこから着想を得たのでしょうか。

マックス氏:
ナイトシティはかなり広大な場所で、時代は2077年、テクノロジーが大きく進化しています。多様な人々が自らのアイデンティティを失わずに暮らしていることを表現しつつ、プレイヤーにもしっかりと情報が伝わるようにしたい。その結果、あの演出が生まれたんだと思います。

───他のインタビューでも「サイバーパンク2020」の原作者、マイク・ポンスミス氏と連携しながら開発しているという話をされていましたが、物語やワールドデザインだけでなく、細かいレベルデザインのところまで同氏と確認を取られることもあるのでしょうか?

マックス氏:
レベルデザインでは、そこまでの連携はありませんね。ただ、実は彼、過去にビデオゲームのレベルデザイナーをしていたんです。だからイベントでご一緒した時は、そういった話もしました。私のチームとの関わりは薄いかもしれませんが、『サイバーパンク2077』における彼の存在は本当に大きいものです。今作で苦労するのは、原作のテーブルトップで描かれた世界を、どうやってビデオゲームの世界に移し替えるのかという問題です。2つのメディアの間にはいろいろな違いがあります。だから、設定を原作の世界観に合わせるうえで、本当に重要な役割を果たしてくれています。

───マイクさん自身がスタジオに来られるのですね。

西尾氏:
しょっちゅう来られてますよね?

マックス氏:
ですね、本当によく来られます。スタジオに居なくてもテレビ電話をつなげて、いつでもコミュニケーションを取っています。イベントにも何度も来てもらっていますね。

西尾氏:
シナリオについても質問はします。今作は「2020」や「Cyberpunk Red」の設定が使われることもあるので、「この場面には誰がいたかな」とか、シナリオの真意みたいなものをお伺いすることはありますね。本当に、密にお話をしています。

───いろんなプレイスタイルにあわせたレベルデザインにしなければいけないと思うのですが、レベルデザインの理念のようなものはありますか。

マックス氏:
あらゆる選択に、見返りがあるように配慮しています。見返りは戦利品のようなものとは限らず、なにかゲームに影響のあるものを用意しようとしています。たとえばカメラをハッキングして操作したり電源を切ったり。ソロの場合はドアを破壊することで、周囲から危害を受けずに素早く先へ進めるといった見返りがありますね。これがネットランナーになると、ロボットを操って敵を倒したり、ベンチプレスで敵を殺したりできます。このように、どんな役割を選んでも必ず見返りがあるようにしています。それぞれがユニークで、遊んでいて面白いように。

───そうした仕掛けは、好奇心を刺激しますよね。

マックス氏:
その通りです。このゲームの大きな魅力のひとつが、デモでもご覧いただいたように、いろいろなルートでプレイを進められるということ。友達とは全然違った体験をするかもしれないわけです。皆でゲームについて話してみたら、全然違う内容だったということもあり得る。ここが、本作の大きな魅力だと思いますね。

───銃撃で敵を倒していくプレイスタイル、ステルスで突破するプレイスタイルなどさまざまな遊び方があると思います。それによってレベルアップのスピードが変わってくることもありますか。

マックス氏:
経験値にはさまざまな獲得方法があります。たとえば、ハンドガンを使い続けることでハンドガンのレベルが上がるといったように、特定のスキルや武器をレベルアップすることができます。射撃訓練で練習を重ねたり、敵を殺したりといった風に。そうやって個別能力をレベルアップしていくわけですが、ここで注意が必要なのが、こうした成長にはキャラクターレベルに応じた限界があるということです。たとえば、ハンドガンがレベル5になったときに、キャラクターもレベル5だったとしましょう。この場合、先にキャラクターレベルを上げないと、ハンドガンのレベルは上がりません。

西尾氏:
キャラクターの基本レベルが、他の全部のスキルレベルの上限になる、という感じですね。ハンドガンだけじゃなく、どの武器でもキャラの基本レベルを超えることはできません。こんな風にバランスが調整されていて、基本レベルはどのプレイスタイルを選んでも大きな違いが出ないようになっています。ただし、プレイスタイルによって強化できるスキルレベルは変わってきます。ハンドガンを多く使っていれば、近接戦闘よりもそちらの能力が伸びていく、といった感じです。

今回のデモでも、キャラの基本レベルが上がった時に現れるポップアップ通知をご覧いただいたと思うのですが、あのキャラクターレベルはどんなスタイルを選んでも同じような速度で成長していくはずです。経験値の獲得方法は本当にいろんなものがあるので、プレイスタイルの選択が大きな違いを生むことはないでしょう。敵を殺さなかったとしても、キャラクターとしての成長速度は変わらないと思いますよ。

───ネットランナー、テッキー、ソロのうちスタジオ内で一番が人気あるのはなんですか。

マックス氏:
難しい質問ですね。

西尾氏:
聞く相手によっても変わるかな?

マックス氏:
そうですね。多分、一番人気は……ネットランナーですね。でもこれは本当に相手によって変わると思います。プレイスタイルは人それぞれなので。それから、プレイヤーごとの違いについて一番面白いとおもうのが、クラスの成長が流動的になっているということ。これによって遊び方が大きく変わってきます。

西尾氏:
クラスは固定されておらず、V(ヴィー)はプレイスタイルによって非常に流動的な成長をします。限りなく純粋なネットランナーやソロに近い育て方はできるのですが、その場合でも、ある程度の流動性は保たれます。プレイヤーはそれぞれ好みが違うので、選択も微妙に変わってきます。スタジオ人気については、アンケートを取ったわけでもないので、一番人気をお伝えするのは難しいんですが……。ネットランナーはかなり人気だよね。

マックス氏:
そう思います。ただ、やっぱりクラスシステムの一番の魅力は、プレイヤーによって能力の組み合わせ方が変わるというところだと思いますね。

西尾氏:
ですね。基本的には、あらゆる要素を試してみてほしいと思います。

───続いてクエストの話になります。『ウィッチャー3 ワイルドハント』では、退屈なクエストを作らない───どんな小さなクエストでも(何かしらのひねりがあったりし)記憶に残るような物語にするというルールを設けているとの話を聞きました。今作でも同じようなルールでクエストを作っているのでしょうか。

マックス氏:
もちろんです。『ウィッチャー』シリーズでは、ゲームをリリースするたびに新しいことを学び、それを発展させて、成果を得るという教訓を得ました。我々はストーリーを最重要視しています。そのため、各クエストに意味のあるストーリーがあり、何かしらの目的を果たすために進めているのだと感じられることが、なにより大切なのです。これは、デザイン哲学以上に重視すべきことだと思いますね。

───『ウィッチャー3』では、善悪がはっきりしない選択肢があったり、何を選んでもハッピーエンドにならなかったりといったケースが多く見られました。『サイバーパンク2077』でもそうした難しい選択が迫られることを期待してもいいのでしょうか。

マックス氏:
はい、個人的に「サイバーパンク」の世界から得られるもの、そこに内在する要素というのは、人に物事を考えさせるジャンル性にあると思っています。だから、作品のトーンは非常に大切にしています。たとえば、デモ版でも裏切ったヴードゥー・ボーイズと協力を続けるか、ネットウォッチ側につくのかという判断を迫られる場面がありましたね。実際にプレイするとわかるのですが、これは難しい選択です。その時点ではもう、ヴードゥー・ボーイズと結構な時間を過ごして関係が深まっていますから。

西尾氏:
その通りです。しかも、どちらの選択肢も怪しげに見えます。ヴードゥー・ボーイズ自体がかなり不穏な集団で、プラシドは何かを隠しているような気配があります。だからこの時点で、プレイヤーにはかなり難しい選択が迫られていると思います。しかもこれは、『ウィッチャー3』で見られたような、倫理的にはっきりとした答えのない、難しい判断なので、それが物語を面白くしているのではないかと。イエスとノーを、はっきりと割り切れるような状況ではないわけです。我々は、誰もが同じ選択をする、正解が明らかな状況を作りたいとは思っていません。

───デモの最後では、会場のナレーションとして「すべての謎が解けるかはプレイヤー次第」との説明が流れました。全ての情報が揃うという意味での正解エンドのようなものがあるのでしょうか。

マックス氏:
そこは、『ウィッチャー3』と同じ流れになるでしょう。今作はプレイヤーの選択に大きな比重が置かれています。それは冒頭のキャラクター作成でもそうで、選択したキャラクターのルーツによって、一部のキャラクターとの会話の選択肢が変わっていくわけです。レベルデザインでいえば、ある場所にどうやって侵入し、進んでいくのかといった風に多くの選択肢があります。こうしたちょっとした選択にも、意味があることがわかり、実際に展開が変わっていく。そうして、『ウィッチャー3』のようにマルチエンディングを迎えます。こういう言い方は避けたいですが……

西尾氏:
「これが正解だよ」とは言いたくない。

マックス氏:
その通り。

西尾氏:
我々にとっては、すべての物語が正解です。

マックス氏:
そうです。これはあなたの物語です。あなた自身が物語を左右し、あなただけの物語を紡いでいってほしいです。

───キアヌ・リーブスさんの起用を発表したことで、これまでゲームに関心のなかったキアヌ・リーブスファンや映画ファンの関心が増えたことを感じていますか。

マックス氏:
難しい質問ですね。マーケティングの専門家は他にいますが、僕はまったくの素人だから。それよりも、このコラボレーションに至った経緯の方が面白いと思うし、そこに人々の期待が高まっていると思います。適当な人選では決してないし、プロジェクトに適した人が選ばれている。ここが一番刺激的だと思うし、皆さんの反応からもそう感じます。彼の参加を喜んでくれていて、ゲームもうまく仕上がっています。キアヌという魅力的な人物が、きっちり溶け込んでいるのです。

───そこに化学反応を感じます。ジョニーにキアヌさんならではの個性が感じられるように思いますし、それはあまりゲームをプレイしない方にとっても魅力的ではないのかと。

西尾氏:
とにかく、存在感が圧倒的(Breathtaking)。これまでゲームをプレイしたことがない方が、『サイバーパンク2077』を手に取ってくれたら嬉しいです。そのきっかけがキアヌさんであっても、それは全然構わない。むしろ素敵なことだと思います。ただ現時点では、反響を数字などで客観的に示すことはできません。そうした現象が起きている可能性もあるかもしれませんが……我々としては、ゲームにあまり親しみの無い方にもこの機会に『サイバーパンク2077』を楽しんでいただけたら嬉しいです。

───最後に、『サイバーパンク2077』を楽しみにしているファンに向けたコメントをお願いできますでしょうか。

マックス氏:
発売を心待ちにされている皆様には、熱心な応援をいただき心から感謝しています。今回、TGSで発売前にもかかわらず来場者の皆さんがブースの様子を楽しんでいる姿を見られて本当に嬉しかったです。早く皆さんにゲームをお届けし、ナイトシティを探検してほしいです。本日は、ありがとうございました。

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