探索+戦略RPG『ミュータント・イヤー・ゼロ』Nintendo Switch版開発者ミニインタビュー。移植担当者がこめたこだわりとは

3gooは11月21日、『ミュータント・イヤー・ゼロ:ロード・トゥ・エデン デラックスエディション』のNintendo Switch版を発売した。発売を際して、移植担当者にお話をうかがった。

3gooは11月21日、『ミュータント・イヤー・ゼロ:ロード・トゥ・エデン デラックスエディション』のNintendo Switch版を発売した。パッケージとデジタル版の両方が発売されている。『ミュータント・イヤー・ゼロ:ロード・トゥ・エデン デラックスエディション』は、スイスのインディースタジオThe Bearded Ladies Consultingが開発した、探索RPG。核戦争、気候変動、疫病により人類が滅んだ後の「ポストヒューマン」の世界を舞台にミュータントたちが「エデン」といわれる安息の地を探す。

このたび、Nintendo Switch向け移植に携わったHigh Voltage SoftwareのチーフテクノロジーオフィサーのAnthony Glueck氏にお話を伺った。PC/PS4/Xbox Oneでも発売されていることからも察せるように、難易度が高く見えるNintendo Switch向け移植を実現した移植チームはどのような点を工夫したのだろうか。

 

Anthony Glueck氏:
まずはゲームについて説明させてください。『ミュータント・イヤー・ゼロ』は、ポスアポカリプス世界を舞台とした、リアルタイムな探索と、テーブルトップRPGゲームのターンベース戦闘を織り交ぜた、タクティカルゲームです。プレイヤーは特殊能力とユニークな武器を持つミュータントのチームを率います。勝つためには、地形をしっかりと分析し、優勢をとるためにステルスしなければなりません。本作のユニークな点は、極めてディープな戦闘システムですね。戦闘戦術においては多くの選択肢がありますし、キャラクターにはスキルツリーもあって、武器のアップグレードも分岐していますよ。

移植チームは別に存在していますが、オリジナルのチームと多くの時間を共にしました。メインスタジオはスイスのスタジオのThe Bearded Ladies Consultingが担当していますが、Nintendo Switch版の移植はPS4とXbox One版の移植チームです。オリジナルチームとしばらく協働しましたし、ゲームのことを知り尽くしています。

Nintendo Switch版の移植は、シカゴとニューオーリンズに拠点を構える、僕らHigh Voltage Softwareが担当しました。2つのスタジオで、100人以上のスタッフが在籍していて、移植チームは2つのスタジオから4人ずつの8人で構成されていました。Nintendo Switchの移植においての当初の目的としては、もともとが素晴らしいゲームですから、より幅広いユーザーに広めたかったのです。探索と戦闘を組み合わせたゲームプレイは、携帯ゲームにもぴったりです。開発を通じての目標は、オリジナルのゲームプレイを維持し、同じようにSwitchユーザーに体験してもらうことです。

私はニンテンドーゲームキューブ時代から任天堂ハードに関わっていて、Nintendo Switchは特にお気に入りです。TVモード(ドック時)のパワーはすごいですし、旅行にも持っていけます。PCゲームをNintendo Switchに移植する時は、グラフィックを妥協しなければいけないですが、できるだけ画質を近づけながらもオリジナルと同じ体験をしてもらうことを重要視しました。開発期間と人数については、8人ほどが関わり8か月を要しました。

ただ、TVモードと携帯モードにはパフォーマンスの特徴に違いがあるので、プレイヤーの遊び方にあわせていくつか変更を施す必要がありました。具体的には、解像度を変更したほか、ゲームに関係ない部分のビジュアルを削除し、 携帯モードでは地面にある草木が 減っているのがわかると思います。移植において大変だった部分は、プレイしていてほかのプラットフォームと同じように感じてもらうことでした。ジオメトリーとシェーダーを修正し、ハードウェアへの最適化をするのは、このプロジェクトを通じての挑戦でした。最終的には、技術的な見た目とフレームレート、解像度においてバランスのよいものを作れたと思っています。プレイヤーに満足してもらえると嬉しいですね。

 

筆者の所感としては、『ミュータント・イヤー・ゼロ』Nintendo Switch版はかなり頑張っているとも、無理をしているとも形容できる。TVモードで遊んでいる際には、グラフィックは他プラットフォーム版のレベルには及ばないにしても、それなりな精細さが保たれている。ただし、携帯モードになると話は別。全体的な解像度がかなり低めでボケている。KotakuやDualShockerといった海外メディアも、携帯モードのパフォーマンスについては口酸っぱくコメントしている。一方で、フレームレートは安定しており、ゲームプレイはしっかり楽しめるように作られていることは留意しておきたい。

探索とシミュレーションがシームレスに組み合わせられたゲームプレイは、近年発売されたシミュレーションゲームとしても、歯ごたえと没入感両方の面でピカイチ。『ファイアーエムブレム』 のような詰将棋的なゲームを好む方は、きっと本作も気に入ることだろう。携帯モードのグラフィックは、同作を携帯モードで遊ぶためのトレードオフであると考え、それに目をつむることができるならば、出先で遊ぶのにはなかなか楽しい作品になるといえるかもしれない。

『ミュータント・イヤー・ゼロ:ロード・トゥ・エデン デラックスエディション』Nintendo Switch版は、店頭やニンテンドーeショップで購入可能だ。

 
Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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