『エルデンリング』DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」先行プレイ感想。『エルデンリング』はまだまだ「過去の名作」にならない。遊び続ける理由をくれるコンテンツ

『エルデンリング』DLC「SHADOW OF THE ERDTREE」先行プレイ感想。筆者もまた、DLCの舞台となるエリア「影の地」へ向かった。

発売日の到来がもう間もなくに迫る『エルデンリング』の有料拡張コンテンツ「SHADOW OF THE ERDTREE」。かつて世界中を熱狂させたゲームに、明確な「再び遊ぶ理由」をもたらすコンテンツの中身が一体どうなっているのか。このたび一部を先行してプレイする機会に恵まれたため、現時点で判明している作品の内容を紹介していきたいと思う。

「SHADOW OF THE ERDTREE」は『エルデンリング』の有料拡張コンテンツだ。発売日は6月21日。値段は4400円。対応プラットフォームはPC/PlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X|S/Xbox Oneとなっている。また、「串刺し公、メスメル」スタチューなどの特典が付くパッケージ版「COLLECTOR’S EDITION」がPlayStation 5/PlayStation 4向けに、本編とセットになったダウンロード版が、全プラットフォーム向けに予約を受付中。他にもさまざまなバージョンが存在するため、詳しくは公式サイトを確認してほしい。

本DLCでは、マリカが神となり黄金樹が生まれた場所である「影の地」を舞台に、本編では消息が掴めなかったデミゴットの1柱「ミケラ」の物語が展開される。

試遊内容の紹介に移る前に、まずは本DLCの突入条件についておさらいしておきたい。「SHADOW OF THE ERDTREE」はゲーム内における「神人眠りの繭」から突入可能ではあるが、この場所まで到達するにあたり、「星砕きのラダーン」と「血の君主、モーグ」という2体のボスを攻略する必要がある。なかでも「血の君主、モーグ」はゲームクリア級の成長段階を想定しているボスであり、DLCの攻略に関しても、最低限その程度のプレイスキルを求められることになる。ちなみに、今回の試遊にて使用できたプレイヤーデータは「レベル150」となっていた。このレベルのキャラクターでもやられるときはサクッとやられるような難易度であるため、余裕を持って攻略するには、後述するDLCエリアのみで有効な、新しいステータス強化要素を活用したほうが良いだろう。


前置きが済んだところで、さっそく試遊内容を紹介していこう。今回のゲームプレイは先述したように、「神人眠りの繭」の前からスタート。本編では行方知らずのデミゴット「ミケラ」の足跡を追っているというNPCの導きに従い、筆者もまた、DLCの舞台となるエリア「影の地」へ向かった。

そこは一面に広がるすすき草原の中に、黒い亡霊と残光のような姿の墓石といった「過去の象徴」が立ち並んでいる異質な空間である。歪んだ影樹を中心に天から注がれる光のヴェールは、空に黄昏のような終末と朝焼けのような始まりを同時にイメージさせる。「影の地」はその名の通り「影」の世界として、「日が決して直接当たらない」秘匿された神秘のような雰囲気を醸し出しており、文明の残り香が感じられる本編の世界とは異なる趣が漂っている。筆者はここに到達したとき、「怖い」という言葉が思わずこぼれてしまったことを今でも覚えている。なお影の地において、時間の概念はしっかりと存在しており、経過に応じて情景も変化する。


風景に感動しながらチェックポイントと地図を求めてフィールドをさまよいはじめたところ、地元民を発見。あらかじめ『エルデンリング』の公式SNSでも公開されていた敵である。である。今回の試遊体験ではDLCに登場する武器や魔法をいくつか利用することができ、筆者も『エルデンリング』自体久しぶりのプレイということも合わせて、ヤツを肩慣らしにしてやろうと判断した。

用意された武器のラインナップとしては……「格闘」武器はボスにとっておくとして、技量武器の「逆手剣」や、軽々振り回せる「軽大剣」。攻撃の際に遠距離攻撃が可能な「投擲短剣」、戦技で炎をまとわせることができる大剣など、新カテゴリの武器や既存カテゴリの新武器が並んでいたが、なかでも筆者の目に止まったのは「刺突盾」。攻撃できる盾である。右手に持てば攻撃ができ、左手に持てばガードができる。両手持ちをすると攻防一体となる面白い武器だ。攻撃用の戦技を装着可能なため、左手に持っていてもガードしつつ攻撃が可能となる。 「刺突盾」の名の通り、盾で殴っていくということで、モーションは全体的に軽めで扱いやすい。一方でリーチは短くなっている。

影の地で見つけた新たな相棒と共に意気揚々と敵へ向かっていく筆者。踊り子のようなモーションに翻弄され、ガード無効の投げ技をくらい、早速ゲームオーバーである。このあと2回ほど倒され、相性の悪さを認識し、今回選んだセーブデータのステータスを見直すことを思いついた。筆者のデータは技量ビルドだった。装備を技量武器である逆手剣に付け替え、再チャレンジだ。逆手剣は基本的に直剣の延長線上にありながら、戦技をはじめとして、距離を詰める手段に長けた武器である。これによって間合いのコントロールと移動の隙を消しつつ柔軟に戦っていく、扱いやすくも遊びがいのある武器という印象だ。武器を付け替えたとたんに難なく撃破。持てる手段をすべて使って生き抜いていく。ビルドの関係上、新しい魔法や新しい祈祷を使うことは叶わなかったが、これこそ『エルデンリング』であることを筆者は今一度思い出したのだった。


激闘ののち、見つけたチェックポイントで休息を取り、手に入れた地図を広げてみる。フロム・ソフトウェアいわく、本DLCでは密度を意識したフィールドデザインが成されているという。ボスは10体以上を用意したそうだ。本編と比較すると(地図で分かる範囲は)広いとは言えないが、プレイヤーの興味関心を促すための要素に関しては枚挙に暇がない。

今回の試遊では2種類のダンジョンを選んで攻略可能になっていたが、そこに到達する前の段階からして、さまざまな探索や接敵の誘惑が仕込まれていたからだ。大量の溶岩をぶちまけてくるウィッカーマンのような巨大な敵。ストーリートレーラーに登場した兵団の拠点跡地のような場所。横道に逸れたい欲望と葛藤しながら、フィールドを進み、道の分岐点にたどり着いた。この先にあるのは攻略可能な2つのダンジョン。1つは「塔の街、ベルラート」。大規模なレガシーダンジョンである。もう1つは「エンシスの城砦」。こちらは中規模なダンジョンとなっている。筆者は「塔の街、ベルラート」への道を選択。トレントに跨りかけていく。道中ではこの時点で数人のNPCと会話をする機会があり、彼らはそれぞれの派閥に所属しながら、一様にミケラを探していた。「密度を意識した」という言葉の正しさを改めて知ると共に、彼らの物語が展開されるであろう、製品版の内容に思いを馳せるのだった。


そうして筆者は「塔の街、ベルラート」に到着した。おおまかな外観こそ本編における街のダンジョンに似てはいるものの、先述した異質な雰囲気や、流れる黄金の液体、見たことのない意匠やかつて起きた戦火の跡を通じて、ここが特別な場所であることを伝えてくれる。構造としては上下の空間を意識した内容になっており、ジャンプアクションを通じて意外なところから道が拓けたりなど発見がある。道中の敵は亡霊の戦士のような者からうじゃうじゃ群れるサソリ、鬱陶しい巨大鳥、鎧を纏った忌み子の戦士までおり、バリエーション豊かなメンツが見られる。中でも忌み子が大手を振って歩いているということは、差別が少ない地域なのだろうか。

筆者は探索の結果、本筋外のボスクラスの敵を発見し、戦闘を行った。より時間をかければ、コレ以外にもさまざまな戦いや報酬が待っていることだろう。ちなみに今回の報酬は新しい戦技であった。内容としては武器に神秘属性を付与し、HPが少ないほど攻撃力UP効果が高まるというピーキーなもの。神秘と言えば状態異常ビルドが思い浮かぶが、DLCを通じてさらなる強化が見られるのか期待である。ちなみに、DLCでは「影の地」限定の強化要素がプレイヤー、霊体共に存在しており、聖杯瓶を強化するような形で特定のアイテムを消費し、プレイヤーの攻撃力とカット率の強化を行うことが可能である(強化内容は影の地のみ反映される)。つまりコレを前提としたボス戦が組まれている可能性があることを考えると、ワクワクが止まらない。


ダンジョンを散策しつつやがて筆者は最奥に到達。PVに登場した「獅子舞」のような敵との戦闘が始まった。筆者としては、読者の方にぜひ初見殺しを味わってほしいという思いと、ネタバレの観点から、本稿ではボス戦に関する細かい内容は描写しない。あえて何かを言うのであれば、「獅子舞」をここまで敵として表現できるのかと驚愕したことだ。強大な怪物的な畏怖と迫力の中に、舞としての踊るような、獅子のようなモーションが混じり、独特なボスに仕上がっている。そして攻撃が痛い。レベル150程度であれば、油断するとあっさりゲームオーバーになってしまうほどの強さを誇っていた。なるほど相手が舞うのであれば、こちらもまた肉体で勝負せねばなるまい。用意してある「格闘」武器で応戦していく。武器によってモーションがかなり異なることを特徴としており、それこそ格闘技のようなモーションを持つ武器があれば、獣の如くアグレッシヴに立ち回る武器もあった。しかし、筆者の技量では討伐ならず。残り時間を使って次のダンジョンに向かうことになった。

2つ目のダンジョンである「エンシスの城塞」は兵団の拠点跡のようでありながら、立体感を意識した構造となっており、全体的に暗く重苦しい雰囲気が漂う場所である。ストーリートレーラーにて描写された「串刺し公、メスメル」による侵攻となにか関連があるのだろうか。中には「黒騎士」の名を冠する敵がおり、倒すと装備をドロップする。味方として戦ってくれる遺灰もある。フロム・ソフトウェアのシリーズタイトル「ソウル」シリーズでも同名の敵が登場し、彼の装備を集めることが好きだった筆者にとっては思わぬファンサービスとなった。ダンジョンの奥へ進んでいくが、ボスへたどり着く前に残念ながらここでタイムアップ。今回の試遊体験は幕を閉じた。


現時点での「SHADOW OF THE ERDTREE」に関する総合的なインプレッションとしては、もう一度本編を遊ぶ楽しみをもたらしてくれるDLCであるという印象を受けた。これは単純に、新しい武器や魔法、祈祷に合わせたキャラクターで狭間の地を旅したいという欲求もあるが、DLCが本編の過去を取り扱う内容でもあるということを踏まえ、『エルデンリング』のストーリーを1から振り返りたいという気持ちもある(なお、DLC自体の時間軸は現在であり、過去の時代を直接冒険するというわけではない)。

2年前の初見プレイ時には理解が難しかった物語の理解も、プレイヤーたちの尽力によって、今では参考資料の山がネットに積み上がっている。破砕戦争や、デミゴットの関係。そして世界の成り立ちと律について、これまで何かが欠けていた物語の輪に今回のDLCや皆の考察を組み込むことで、より味わい深い体験を得ることができるだろう。2年が経った今だからこそ見られる景色もあるかもしれない。

そして何より、―これは極めて個人的な事情ではあるが―プレイスキルの低下が著しい。2年の間に『エルデンリング』が身体から抜け落ち、過去の思い出になろうとしていることを、身をもって経験させられた。強大なDLCボスに挑む前に、マルギット先生たちに稽古をつけてもらわねば。『エルデンリング』が「過去の名作」となるにはまだ早い。コンテンツの発売が待ち遠しくなる試遊体験であった。

『エルデンリング』の有料拡張コンテンツ「SHADOW OF THE ERDTREE」は6月21日に、PC/PlayStation 5/PlayStation 4/Xbox Series X|S/Xbox One向けに発売予定だ。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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