協力強盗FPS『PAYDAY 3』先行プレイ感想。ゲームスピード上昇と本格ステルス要素が強盗に「進化」をもたらす

PLAIONは9月21日、協力クライムシューター『PAYDAY 3』を発売する。本稿ではメディア向け先行プレイの内容に基づき、新要素や前作『PAYDAY 2』との違いを紹介していく。

パブリッシャーのPLAIONは9月21日、協力クライムシューター『PAYDAY 3』を発売する。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S。本作は協力プレイ対応FPS『PAYDAY』シリーズの最新作だ。プレイヤーは、犯罪集団PAYDAY Gangの一員となって、銀行、美術館などで強盗や窃盗などの犯罪を働くクライムシューターとなっている。


前作『PAYDAY 2』はリリースから約10年間にわたってアップデートやDLCの展開が続けられてきた。満を持しての最新作となる本作は、前作を超えるような作品となっているのだろうか。『PAYDAY 2』にハマり込み、新作の登場を心待ちにしている筆者は今回、メディア向けのプレイセッションに招待いただいた。

プレイセッションでは、オーソドックスな銀行強盗を行う「Branch Bank」と美術館にある著名な絵画を強奪する「Art Gallery」の2つのステージをプレイ。また、今回のプレイセッションには開発元であるStarbreeze Studiosのスタッフも同席。『PAYDAY 2』をプレイしていた筆者の考える、『PAYDAY 3』の気になるポイントを直接伺うことができた。本稿では今回のプレイセッションを通して明らかになった前作『PAYDAY 2』との違いや本作の新要素、ゲームプレイの感想などを紹介していこう。


『PAYDAY 2』の基盤は残しつつ、ハリウッド映画のようなめまぐるしいゲームスピードに

筆者はプレイセッションへの参加前、『PAYDAY 3』のゲームプレイトレイラーを見て、『PAYDAY 2』と比べてゲーム全体のテンポが速くなっている印象を受けていた。というのも、『PAYDAY 2』には、装備しているスキルやアーマーの強度、もっている荷物の種類に対して移動速度が変化するシステムがある。そのためゲームスピードの速かったシリーズ1作目『PAYDAY: The Heist』と比べるとゲーム全体のテンポは控えめな作品であった。トレイラーを見るに、『PAYDAY 3』ではふたたびゲームスピードが速くなった印象を事前に抱いていた。

そして、『PAYDAY 3』をプレイセッションにて実際に遊んでみると『PAYDAY 2』と比べて目まぐるしいゲームプレイに仕上がっているように感じた。しかし、基本的なシステムや求められる立ち回りは『PAYDAY 2』とかなり近く、筆者含め前作に慣れ親しんでいたプレイヤーであればすんなりとゲームの世界に入り込むことができるだろう。まるで、堅実なゲームシステムであった『PAYDAY 2』と、スピードが速く目まぐるしい展開が楽しめる『PAYDAY: The Heist』の“いいとこどり”のようにも思える仕上がりだ。


そう思えた要素の1つが、本作から追加された新しいアクションたちだ。いままでは歩き、走り、しゃがみしか出来なかった基本操作に、今作では飛び越え、スライディングといったアクションを追加。「屋上にある荷物を1階に運ぶ」や「盗品をバンに詰め込む」といったステージ上での移動が多い本作にとって、障害物を避けたり、被弾率を減らしたりと非常に有用なアクションである。また、『PAYDAY 2』では札束など荷物の種類によっては、背負ったときに走れなくなり行動が制限されてしまっていた。一方、『PAYDAY 3』では札束を背負ってもスイスイ走れるようになったほか、スライディングなどのアクションも変わらずおこなえた。本作は移動が多いことに加え、荷物を背負うことも多いので、この改修によって快適なゲームプレイが実現していた。なお今回のプレイセッションでは、前作に登場した金塊や重めの美術品には遭遇しなかったので、すべての荷物に対して行動制限が解除されたとは言い切れない点には留意されたい。

筆者はプレイセッション中に、開発者に『PAYDAY 3』ではどのようなゲームスピードの調整をおこなったのかも訊いてみた。すると、やはり本作は前作と比べてゲームスピードが上がっており、まるでハリウッド映画のように目まぐるしく展開が変わるように設計されているという。また開発者は、前作における設計思想も説明してくれた。まず『PAYDAY: The Heist』では、実際の犯罪の再現性を高めるように注力した作品になっていたという。『PAYDAY 2』はそこから一度抜け出して、繰り返し遊べるようなゲームになるように、ゲームスピードを落として作られていたとのこと。そして、『PAYDAY 3』はもう一度改めて犯罪の再現性を高めることに注力されており、ゲームスピードは『PAYDAY: The Heist』に近くなっているという回答を頂けた。


ステルス要素を華麗で心地のいいものに再構築

本作が前作『PAYDAY 2』と大きく変化した点として次に挙げたいのは、ステルス(隠密)のゲームプレイが再構築されたことだ。ステルスは『PAYDAY 2』から追加された要素で、ラウド(戦闘モード)突入を避けて犯行するプレイとなる。歯ごたえのあるプレイが楽しめる一方で難易度は高く、マップごとに覚えることも多数。また、ステルスをよりメインに据えたほかの作品と比べると、相当にとっつきにくい内容であった。というのも、前作『PAYDAY 2』では怪しまれにくいものの歩く以外の行動がほとんどできないマスクオフ状態と、行動に制限はないもののすぐに怪しまれてしまうマスクオン状態という極端な2つの状態しか維持できなかった。そのうえ、見つかると即刻ラウドへと移ってしまうことから、ステルスプレイのハードルがかなり高い印象であった。

プレイセッションで遊ぶ限り、『PAYDAY 3』ではそんなステルス要素にも大きく変更が加わっていた。まず、マスクオフ状態では銃は撃てないものの、走り、しゃがみなど自由に行動ができるようになった。また、今回のプレイセッションでのプレイヤーキャラは小型カメラを装備していた。この小型カメラは壁や天井のほか、警備員や市民の背中にまで設置できる。こういったツールのおかげで前作以上にスムーズな偵察が可能となっていた。次にマスクオフ状態でステージ上のどのエリアにいるかにより、見つかったときの警備員の対応が変わることとなった。怪しまれることがない「Public Area」、見つかったら怪しまれるものの戦闘には移行せず一度施設から出されるなどのワンクッションが置かれる「Private Area」、見つかったら即戦闘となる「Secure Area」の3つのエリアでステージを区分け。これにより、ステルスを維持する難しさが緩和されたほか、ステルスからラウドへ激化していくようなゲームプレイ展開にも、グラデーションがもたらされていた点も好印象だ。


開発チームはプレイセッションにおいて、『PAYDAY 3』では映画「オーシャンズ」シリーズのような華麗なステルスを楽しめると語っていた。映画「オーシャンズ」シリーズといえば、一流イカサマ師たちが警備の目を欺く、華麗な犯罪劇が繰り広げられるのが魅力。本作のステルスもプレイセッションを遊ぶ限り、そういった警備の目を欺く緊張感と、心地よさが感じられる仕上がりとなっていた。

またプレイセッションでは開発者自らによる、ステルスの魅力を引き出すお手本プレイもおこなわれた。Private Areaに立ち入り、あえて警備員に見つかることで、セキュリティカードをスリ盗ったり、背中に小型カメラを設置して中の状況を確認したり。そして外に設置された階段から屋上へと移動し、Secure Areaへ侵入。セキュリティカードを使って警備室に入ったらマスクを装着。警備員を静かにテイクダウンしたのち、金庫をあっさり破って庫内にあるすべての金を空っぽにしていた。

開発者プレイにて驚いたのはそのスピードで、銀行への侵入からすべての金を運びきるまでわずか10分足らずで完遂して見せていた。まさしく開発者チームが語っていた映画「オーシャンズ」シリーズのような華麗で心地のいい完全犯罪であった。また、プレイセッションで見たプレイ以外にも、本作では電撃やカメラハックなど、さまざまなアプローチでステルスを楽しむことができる模様。本来あった要素を再構築し、新要素を追加することで、ステルスをより楽しく、心地のよいものへと仕上げていた。ちなみに筆者もプレイセッション中に華麗なステルスプレイに挑戦してみたが、まったくもって華麗とはいかなかった。さまざまな要素を使いこなす必要もありそうだ。


スキルシステムがシンプル化。一方でオーバーキル武器がビルドに幅をもたらす

『PAYDAY 3』が前作の要素を分解して再構築したのはステルスだけではない。『PAYDAY 2』の魅力を形作っていたビルド要素も、本作では一気に刷新され新たな装いを見せていた。

『PAYDAY 2』のビルド要素といえば「プライマリ武器」と「セカンダリ武器」からなる2つの武器種と、グレネードやアーマーなどの装備品。そして、複雑で奥深いスキルシステムからなっていた。特にスキルに関してはかなり複雑で、大まかなプレイスタイルに対応する5種のスキルツリーに、コンセプトがそれぞれ異なるPerkツリーが連なっていた。また、汎用性のあるPerkはスキルツリーを横断して選ばれることもしばしば。深みがあると同時に、初心者にはどこから手をつけていいか迷うような代物となっていたのだ。サービス開始時はシンプルだったスキルや、武器の種類もアップデートを重ねるごとに増加。ゲームとして楽しさは増えるものの、少し間を開けてプレイするとさらに複雑になっているビルド要素をかみ砕いて理解するのに、四苦八苦する場面も少なくなかった。

そんな『PAYDAY 2』の魅力でもあり、難点でもあったビルド要素が『PAYDAY 3』にて再構築された。まず、一番驚いたのは装備できるスキルが4つのみであったことだ。シリーズ初心者にも理解しやすくする狙いがあるのだろう。かといって、決して深みがなくなったわけではない。まず、習得出来るスキル種類自体はかなり多く、スキルツリーの成長要素も健在だ。一方で“犯行”に向けて装備できるスキル数に制限が加わったため、よりビルドが構築しやすくなったと同時に、スキルに応じてゲームプレイや戦略も大きく変化しそうだと感じた。スキルに関するシステムがシンプルになったことは、『PAYDAY 2』の複雑な強化システムが好きだったプレイヤーにとって賛否両論ある部分かもしれない。一方で新システムは、新規プレイヤーが参入しやすく、また複雑なスキルビルドに悩まされていた筆者としても嬉しい調整であった。

選べるスキルが減った一方で、ビルドに新たな選択肢も増えた。それは新武器種「オーバーキル武器」である。これはいわゆる特殊武器にあたるもので、グレネードランチャーやロケットランチャーなど、使用に制限はあるものの、敵を一網打尽にできる非常に強力な武器たちだ。『PAYDAY 2』では、豊富な武器も魅力の1つで、アップデートなどのたびに新しい武器が追加され、ビルド構築の幅が少しずつ広がっていった。しかし、2つしか武器の装備枠がなかったこと、そしてあまりにも強力なグレネードランチャーやロケットランチャーが武器として追加されたことにより、武器に関するゲームバランスは少しずつ歪んでいるようにも感じていた。


そうした強力な武器は今回「オーバーキル武器」という新たな枠に分類。敵を心地よく吹き飛ばせるような武器を扱う楽しみは残り、それとは別枠で「プライマリ武器」「セカンダリ武器」を選べるようになった。これはゲームプレイの戦略性にも繋がっている。プレイセッション中、正面からの銃撃が効かない「シールド兵」や、防弾スーツを付けた特殊な敵「ブルドーザー」などが迫ってきた場面があった。ここで形勢逆転の技としてオーバーキル武器を使い、状況を打破することができたのだ。

過去作では高難度攻略のために、チームの誰かが武器枠を割いてシールドやブルドーザーに対応した爆破武器などを持ち込むことはよくあった。一方、『PAYDAY 3』ではオーバーキル武器の登場により、誰もが強力な敵に対応できるようになっているわけだ。同時に、武器枠不足に悩むことのない自由な武器構成を考えられるようになっている。3種の武器ビルドと装備品、そして刷新されたスキルシステムによって、『PAYDAY 3』ではまったく新しいビルド要素を楽しむことができそうであった。


手触りはそのままに、強い新鮮味

『PAYDAY 3』は今までのシリーズを遊んできた筆者にとって、どこか懐かしくも新しいゲームプレイになっていた。『PAYDAY 2』の安定したゲームシステムをベースに、過去の課題点ともいえた要素を洗いざらい再構築。プレイセッションで遊ぶ限りは、前作の楽しいところはそのままに、長く遊ぶ上でストレスとなる要素は排除されていた印象だ。今回のプレイセッション全体を通しても、ゲームプレイの印象は『PAYDAY 2』に近く、10分もすれば自然とゲームが体に馴染んでいた。同席していたスタッフに『PAYDAY 2』プレイヤーだと“感づかれる”くらいには、前作での経験を活かせるシステムとなっていた。

しかし『PAYDAY 3』は、新たな体験もしっかり見せてくれた。作り直されたステルスでのゲームプレイでは、前作での不自然さ・不条理さを撤廃。余計なストレスは消え、スリルや柔軟な戦略性を楽しめるよう変化していた。また「オーバーキル武器」の追加は、強力な武器によるド派手な銃撃戦という要素を前作から引き継いだだけでなく、武器選択の自由度ももたらしている。

またゲームエンジンが従来の独自エンジンからUnreal Engine 4に刷新された本作では、グラフィック面での進化も忘れてはならない。特に筆者が注目したいのは、銃撃描写の進化。排出された薬きょうが飛び跳ねて落ちるところまで見える描写の細かさやエフェクトの進化などによって、本作の銃撃戦はより熱中できるものになっていた。さらに発売後にはUnreal Engine 5への移行も予定されているそうだ(関連記事)。


今回のプレイセッションは2時間ほどで、2ステージをそれぞれ1~2回ほどプレイするにとどまったが、すでに何度も遊んでみたい仕上がりとなっていた。プレイセッション終了後には、発売まで約3か月間待ち続けるのが憂鬱になったほど。シリーズの持ち味を継承しつつ、新鮮さを備えた新作『PAYDAY 3』との“再会”を心待ちにしている。

『PAYDAY 3』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに2023年9月21日に発売予定だ。

Tamio Kimura
Tamio Kimura

エンタメ大好き系ゲーマー。COOPゲームが大好き、クライム系だったらなおよし。

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