豪華スタッフJRPG『アストリア アセンディング』は、美しさとフレーバーが魅力のRPG。PS4版の内容を紹介

3gooは10月7日、『アストリア アセンディング』をPS4/PS5/Nintendo Switch向けに発売する。弊誌AUTOMATONでは、一足早くPS4版『アストリア アセンディング』をプレイする機会をいただいた。PS4版をベースに、本作のゲーム内容を紹介していこう。

パブリッシャーの3gooは10月7日、『アストリア アセンディング』をPS4/PS5/Nintendo Switch向けに発売する。本作は9月30日にPC(Steam/DMM GAME PLAYER)版が、10月1日にXbox One/Xbox Series X|S版 が発売されている。PS4/PS5版とNintendo Switch版が発売されることで、ひととおりのプラットフォーム展開が完了することとなる。

本作を開発するのはカナダのゲームスタジオArtisan Studio。海外スタジオながらJRPGへの造詣が深く、過去には『勇者ネプテューヌ』を手がけている。また、シナリオに『ファイナルファンタジーVII』『ファイナルファンタジーX』を手がけた野島一成氏、音楽に『伝説のオウガバトル』『十三機兵防衛圏』などで知られる崎元仁氏が参加。アート面では『グランブルーファンタジー』などで知られるCyDesignationが関わっている。日本国内の著名なクリエイターが集結して制作されているということで、注目している方もいるのではないだろうか。


弊誌AUTOMATONでは、一足早くPS4版『アストリア アセンディング』をプレイする機会をいただいた。PS4版をベースに、本作のゲーム内容を紹介していこう。

美しいビジュアルと音楽が強み

美麗な2Dグラフィックスで描かれるオルカノンの風景は圧巻で、街を歩いているだけで観光気分が味わえる。登場するロケーションは森林や草原、砂漠など多岐にわたる。次はどんな美しい風景が見られるのだろうかと、新しい地方に行くたびにワクワクすること請け合いだ。背景だけでなく、キャラクターグラフィックも衣装差分や待機ポーズなど、細かい部分までしっかりと作り込まれている。アイテムも個別にグラフィックが用意されており、ファンタジー好きの方なら一覧を眺めるだけで楽しむことができるだろう。


ファンタジーらしい荘厳な雰囲気を演出する音楽も、すばらしいの一言だ。本作の世界観を見事に引き立てており、オルカノンという豊かな土地を耳から感じ取ることができる。特に筆者の耳に残ったのが、通常バトルBGM「フォーカス!」だ。JRPGらしい勇壮なトーンが戦闘を盛り上げ、戦略性が求められる本作のバトルをさらに手に汗握るものとしてくれている。初回限定生産の『スペシャルエディション』には、全10曲入りのサウンドトラックも同梱されているため本作の楽曲が気になる方は要チェックである。

世界観は王道のファンタジー路線

『アストリア アセンディング』の舞台は、古より12の獣が住むといわれる大地・オルカノンだ。オルカノンでは5つの種族が手を取り合い、「調和の実」と呼ばれる果実を食べて暮らしている一方で、調和を乱す「ノイズ」と呼ばれる存在が人々の生活を脅かしていた。そのノイズに対抗すべく生まれたのが、8人の英雄「デミゴッド」である。デミゴッドはノイズに立ち向かうことができる力「ゾディアック・パワー」を有しているが、力の代償として3年間の任期満了で命を落とすことが運命づけられている。

プレイヤーが操作するのは、第333期デミゴッドに選出された8人のキャラクターだ。ウラン率いる第333期デミゴッドの任期満了まで残り3か月となったところから物語がはじまる。ノイズ出現の知らせを受け、いつものように討伐へ赴く面々。そつなく討伐を終えるも、このノイズ出現を契機にオルカノン各地で異変が発生しはじめる。異変はやがて世界各地へと及び、デミゴッドたちは世界を救う戦いに身を投じることとなる。


世界観については、先行して発売されている海外版のレビューでは、良いという声もあれば、分かりにくいという声もある。ユーザーの意見が分かれた理由として、本作がセリフなどで世界観の細かな説明をしないところにあるのではないかと感じた。本作の世界観はフィールドを見て回り、セリフの行間を読んで感じ取らせるようなつくりになっており、説明パートはやや少なめだ。プレイヤーに想像を委ねる場面が多いのである。

たとえば、本作に登場する種族の1つであるペスカは、頭に水槽のようなものを付けている水棲種族と思われる。しかし、「ペスカ族は水棲種族だ」と明確にゲーム内で説明されるわけではない。プレイヤーはペスカの外見やセリフから、「ペスカは卵生の水棲種族であるらしい」と推測することになる。わかりやすいよう種族で例えたが、同様のケースが多くの設定で見られる。そのため、人によっては世界観がわかりにくいという感想を抱き、評価が分かれているのかもしれない。

もちろん、プレイヤーを置いてけぼりにして物語が進んでいくというわけではない。本作の世界観は細部まで作り込まれており、たとえば装備品ひとつひとつにフレーバーテキストが実装されている。革製の装備品ならどんな生き物の革なのか、武器ならどんな職業の人が使う剣なのか、といった、本筋に絡まない情報がたっぷり詰まっている。さまざまな情報からゲームの世界観を感じたいプレイヤーにはたまらないつくりと言えるだろう。

個性豊かなキャラクター

『アストリア アセンディング』では、8人のデミゴッドたちを編成して世界を旅することとなる。隊長のウランをはじめ個性豊かなキャラクターが揃っており、メリョ(人間族)、ペスカ(小柄な魚人族)、アルクタン(獣人族)、ケイディン(鳥人族)、ゼフト(ドラゴン系の種族)と、多様な種族が揃い踏みだ。年齢も幅広く、年端のいかない子供から妻子持ちの中年男、老夫婦までが一同に会しているのが第333期デミゴッドだ。気になった方はまず、以下のキャラクター紹介トレイラーをご覧いただきたい。

筆者が特に気に入ったキャラクターは、アラシアとアルパジョの夫婦である。キャラクター紹介トレイラーによるとアラシアの年齢は60歳。若者の多いデミゴッドのなかで年上ゆえの落ち着きを持つアラシアは、パーティーのブレーンとしても優秀な召喚師の女性である。夫のアルパジョは63歳。冗談好きで茶目っ気のある盗賊の男性だ。

一見噛み合わなそうな二人だが、「愛しのアラシア」と妻を呼んでみたり、戦闘不能ボイスで相手の名前を呼び合ったりと、実はかなりのラブラブ夫婦。この二人が残り3か月の命だなんて……と悲しい気持ちになるが、ともに同じ任務で死ぬことができるのは幸せなことかも知れない。デミゴッドのなかには妻子がいるにもかかわらず自分だけが選ばれてしまった者や、片思いの相手に気持ちを告げられないまま悩んでいる者もいる。本作のテーマは「運命と犠牲」である。平和の犠牲となるために選ばれた自身の運命に対してデミゴッドたちがどう向き合っていくのかという部分も、本作の見所のひとつと言えるだろう。


バトルでは「フォーカスシステム」が鍵となる

バトルの形式はターン制コマンドバトルだ。本作ならではのバトルの特徴として「フォーカスシステム」が挙げられる。本作には風や炎など9種類の属性が存在するが、弱点属性で敵を攻撃することでフォーカスポイントと呼ばれるポイントが溜まっていく。このポイントを使用することでスキルの効果を最大200%まで増幅し、バトルを有利に進めることができるのだ。また、味方の行動時に「フォーカス」を選択すると、そのターン時のみ使用できるフォーカスポイントも獲得できる。


逆に、敵が耐性を持つ属性で攻撃をすると、味方のフォーカスポイントは減少してしまう。ポイントは0を下回ることもあり、マイナスになると味方の行動が弱体化してしまうので注意が必要だ。また、フォーカスポイントは敵側にも存在し、パーティーメンバーが弱点を突かれると敵のフォーカスポイントが上昇してしまう。バトルを有利に進めるためには、敵の攻撃属性や弱点を把握することが重要となる。いち早く敵の弱点を把握し、こちらは弱点を突かれないような立ち回りを考えるのが、本作のバトルの面白さと言えるだろう。

筆者は難易度ノーマルでプレイしたが、ほどよく歯ごたえのあるバランスに仕上がっていると感じた。筆者は属性攻撃を得意とするキャラクターをメインに据え、技のバリエーションを広げるように育成していった。本作のバトルは弱点を突くことに重きが置かれているため、物理攻撃寄りのキャラクターをメインに育成したい場合は体感の難易度が異なってくるかもしれない。戦闘が難しく感じた場合も、非常に簡単/イージ-/ノーマル/ハードの4種類の難易度をいつでも変更することができる。

少し不親切に感じられたのが、スキルなどで開示した弱点表示画面を閉じてしまうと、弱点を見る手段がなくなってしまうという点だ。設定で「弱点インジケーター表示」をONにすることで弱点を表示できるようにはなるものの、今度は初見の敵でも弱点が丸わかりになってしまい、弱点を探りつつバトルを楽しみたいプレイヤーにとっては物足りない難易度になってしまう。アップデートなどで何らかの調整を望みたい部分である。


幅広いビルドを試行錯誤できる成長システム

本作では、敵を倒すと経験値のほかにSPというポイントを得ることができる。SPはアセンションツリーと呼ばれるスキルツリーに割り振ることで、それぞれのデミゴッド固有の効果を得たり、新たなスキルをアンロックしたりすることができる。なお、SPはキャラクターごとに獲得できるため、8人全員の足並みを揃えて成長させることが可能だ。


アセンションツリーは初期職業であるベースジョブのほか、物語が進行すると解放されるメインジョブやサブジョブにも存在する。本作ではキャラクターごとにベースジョブ、メインジョブ、サブジョブ、サポートジョブをそれぞれ設定することができる。それぞれのジョブの組み合わせによって前衛型やサポート型など、さまざまなビルドを考えることが可能だ。また、選んだジョブによってキャラクターが身につける衣装も変わってくる。


本作のキャラクタービルドはかなり自由度が高い。アセンションツリー内のパラメータアップの項目では、複数のパラメータから1つを選んで強化することができる。ひとつのパラメータに特化してもいいし、バランスよくキャラクターを強化しても構わない。また、ベース・メイン・サブ・サポートの4種類のジョブの組み合わせによってキャラクターをさまざまな方向に育成することができる。ジョブの相性などを考えるのが好きな方に、本作はぴったりと言えるだろう。


謎解き要素のあるダンジョン

ダンジョンはパズル要素のある横スクロール式だ。物語が進行すると仕掛けを解くためのさまざまな能力が手に入り、それを使ってダンジョンの謎解きをおこなっていく。たとえば序盤のダンジョンでは、前方にエネルギー弾を放つ「ゾディアック・リング」を入手することができる。エネルギー弾でスイッチを起動することで閉ざされていた扉を開放することができるほか、エネミーシンボルにヒットさせて動きを止め、戦闘を回避することも可能だ。

謎解き部分の導線は丁寧に作られているため、苦手な方でもさほど苦労せず進むことができるだろう。たとえば序盤のダンジョンでは正しい順番でスイッチを押すギミックが登場するが、直前に意味深な碑文が置かれている。全編を通して謎解きで迷わないような配慮がされており、攻略しやすい印象だった。逆にいえば、この点について奥深さは期待しないほうがいいだろう。


やや不安定な部分もあり

あくまで筆者が先んじてプレイした開発段階のPS4版の話となるが、動作面でやや不安定さを感じる場面もあった。ミニゲーム「J-STER」の対戦画面をキャンセルすることができなかったり、サブクエストのバトルを終えるとバトル前に巻き戻って進行不能になったりといったバグに遭遇したためだ。アップデートで解消されることを願いたい。

以上、カナダ発のRPG『アストリア アセンディング』を紹介した。JRPGを愛する開発者が集う海外スタジオに、日本国内の著名クリエイターが参加して完成した本作。豪華スタッフの集ったグラフィックや音楽のクオリティは非常に高く、本作の世界観を美しく彩っている。基幹となるRPG部分にも日本のRPGへのリスペクトが垣間見え、Artisan StudioのJRPG愛を感じることができるタイトルと言えるだろう。不具合面がやや評価に影を落としているが、今後のアップデートによる改善に期待したい。

本稿はPS4版のプレイをもとに執筆したが、本作はさまざまなプラットフォームで展開されている。『アストリア アセンディング』は、PS4/PS5/Nintendo Switch版は3gooより10月7日発売予定。パッケージ版についてもAmazonなどで販売中だ。そのほか、PC(Steam/DMM GAME PLAYER)/Xbox One/Xbox Series X|S向けにも、Dear Villagersなどから発売中である。

Aki Nogishi
Aki Nogishi

ポストアポカリプスとドット絵に心惹かれます。AUTOMATONではFF14をメインに担当します。

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