『モンスターハンターライズ』レビュー。着実に未来へ歩みを進め続けるシリーズ最新作

『モンスターハンターライズ』レビュー。『モンスターハンターライズ』は、携帯機でハンティングアクションを行う『モンスターハンター』作品において、紛れもなく傑作と呼ぶに相応しい出来栄えであった。

初作の登場から実に15年以上、日本国内において、高い知名度を常に維持し続けてきた『モンスターハンター』シリーズ。昨今では『モンスターハンター:ワールド』(以下『MHW』と表記)の発売をきっかけに、海外市場においても「極東の珍品」から「一線級のフランチャイズ」へとその評価を覆しつつある。その人気の理由としてはさまざまなものが考えられるが、筆者としては「開発チームが持つ課題発見、およびその解決能力」を挙げたいと思う。「どうすればプレイヤーの体験がより良いものになるのか」「世界観をアップデートするには何に挑戦すれば良いのだろうか」。最新作を手に取るたびに新たなワクワクとドキドキ、開発陣が込めた熱い想いが伝わってくる。すでに得た高い評価に慢心することなく、失敗に臆することなく、思い描いた理想に向けて歩みを止めぬその姿勢こそ、今もなおシリーズが愛される一番の理由ではないだろうか。

そしてその歩みは1つのマイルストーンに到達したと言っていいだろう。『モンスターハンターライズ』は、携帯機でハンティングアクションを行う『モンスターハンター』作品において、紛れもなく傑作と呼ぶに相応しい出来栄えであった。



伝統の見直しによる「手軽さ」の創出


まずは本作のシステムにまつわる部分から見ていこう。『モンスターハンターライズ』のゲームシステムは、前作にあたる『MHW』および当作品のDLC『モンスターハンターワールド:アイスボーン』(以下、『アイスボーン』)をベースに、Nintendo Switchというハードウェアに最適化されたチューンナップが施されている。それはRE ENGINEをフル活用したことで生まれた、ハードスペックの期待を超える美麗なグラフィックスやローディングの短縮といった優れたパフォーマンスだけを指すのではない。

Nintendo Switchというゲームハードは、家で腰を据えて遊ぶ「据え置き機」の性質と共に、スキマ時間で遊べる「携帯機」の性質を両立させたデバイスである。よって作品にもじっくり遊べる「やり応え」と出先で気軽に遊べる「手軽さ」の両立が求められる。「やり応え」の点に関しては既に『MHW』、ひいては『モンスターハンター』シリーズの根本たるハンティングアクションと装備強化を軸とした、長期的なプレイングを想定するゲームデザインによって図らずも解決している。しかし、「手軽さ」については『MHW』から大幅な改善が求められる状況にあった。もとより『MHW』はまとまった時間を使って遊ぶ、据え置き機を前提とした(携帯機の成分を考慮していない)作品であり、よって『MHW』のシステムをそのまま本作にスライドさせるわけにはいかなかったのだ。

なお『MHW』の時点で「手軽さ」がまったく考慮されていなかったというわけではない。プレイヤーを対象へナビゲートする「導蟲」の存在や「ベースキャンプ」、各種消費型アイテムの削除、『アイスボーン』で導入されたプレイヤーの移動を加速する「モンスターライド」などはたしかに導入されていた。そしてこれらの施策は成功だったと言っていいだろう。フィールド探索→ターゲット発見→狩猟というシリーズ伝統のリアリティあるフローを維持しつつ、余分な要素を削ぎ落としプレイスピードを加速。同時にフィールドの情報密度を上げることにも成功している。ただし、これらはあくまで「繰り返しの怠さ」を改善するためのシステムである。


そこで本作にて開発陣が採った策というのが、フィールド探索→ターゲット発見→狩猟というシリーズ伝統それ自体の見直しと狩猟速度のさらなる加速による「手軽さ」の創出である。『モンスターハンターライズ』では、プレイヤーが自らマーキングせずとも最初からターゲットの位置を表示するようしたことで、一連のフローより「フィールド探索」をカット。別個の楽しみとして完全に独立させた(一応、プレイヤーをバフしてくれる環境生物がフィールドギミックとしてあちこちに存在するが、ゲーム内容を大きく作用するレベルの影響力をもっているわけではない)。

モンスターライドの常時発動版である「オトモガルク」とクラッチクローの発展形である「翔蟲」の導入は壁走りと合わせて『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のような、自由度の高い3次元の高速移動を実現。先述したフローの短縮要素と合わせることによって、本シリーズの醍醐味である「モンスターとの戦闘」へと即座に到達することが可能となっている。

戦闘そのものに関しても、前作と比較して全体的に易化の傾向にあり、ゲームスピードをさらに速めている。今作のモンスターは大技を多用する代わりに明確なスキが存在し、特に『MHW』のモンスター達と比較すると討伐難易度は低下している。さらにプレイヤーキャラクターが逐次、大技の予兆を報告してくれたり、援護役であるオトモアイルーの性能の高さやリトライの手軽さ、食事の簡略化、装備更新のしやすさなど、狩猟を楽にする要素に関しては枚挙に暇がない。中でもモンスターを傀儡のように操り大ダメージを与えることができる「操竜」の存在は、「複数のモンスターを合流させることは危険」という伝統を根本から覆した。何らかの手段で2頭を引き離すという、狩猟途中のワンクッションが消滅しただけでなく、前作におけるダメージ用のフィールドギミックの役割も兼ねている。ちょっかいを出してくる住人が、誘導可能な固定ダメージ源へと変わったのだ。

それなりにシリーズをやりこんでいる筆者の体感からすると、進行状況に適した装備を身につけている場合、ソロ用の里クエスト(俗に言う村クエ)ならば初見相手でも狩猟完了まで10分程度。マルチプレイを前提とする集会所クエストであればソロでも20分はかからない。マルチプレイを行えばさらに早い(ただしラスボスは除く)。シリーズ初挑戦という方でも、3Dアクションゲームのクリア経験があれば、一度の狩猟に30分以上かける場面に遭遇する機会は少ないのではないだろうか。

この仕様を受けて、読者の中には「強敵に対峙する」という楽しみが減ったと考える人がいるかもしれない。「サクッと戦闘を開始するのはシリーズらしくない」と思う人もいるだろう。しかしこう考えることもできる。「クエストにおける戦闘という要素のウェイトが減少した」と。そもそも、『モンスターハンター』というシリーズは「誰でも参加できるネットワークアクションゲーム」「誰もが同じ行動を強制されないゆるさ」をコンセプトに掲げ制作されている。クエスト中ギリギリまで釣りに没頭しても良いし、肉を焼いても良い。達成目標と関係ないモンスターを狩るのも楽しい。仲の良い友人同士であれば、狩りの代行を頼んだって構わない。仮に1人が何らかの理由でクエストに参加しなくても、ゲームが成立するようデザインされているのである。


少し筆者の体験談をしよう。――それは晩酌ついでに3人で狩りに出かけていたときのこと。メンバーの1人が言った。「あの高難易度クエストを代わりに攻略してくれないか」。2人でオロミドロを相手に泥まみれになる中、代行を依頼した当人はピラミッドで「凄い蛇を発見した」だの大騒ぎ。そのテンションのまま眠れる金獅子を叩き起こし現場に急行すると、怒髪天のラージャンに跨り敵を蹂躙したのだった。クエスト開始からわずか25分の間に行われた出来事である。

また違う日は同じモンスターを狩り続けることにマンネリを感じたため、狩猟と収集アイテムの捜索とを同時進行で行っていた。

このように、『モンスターハンターライズ』は、いや『モンスターハンター』シリーズはモンスターを狩ることがすべてではない。自然があり、個性豊かな生き物が生きている世界で行われる総合アクティビティである。

そうした前提のもと培われた本作の「手軽さ」とは、単にアクションと装備強化の繰り返しが高速化したことだけを指すのではない。フローが短縮し、戦闘が易化したことで、プレイヤーひとりにかかる狩りの負担が減り「モンハンらしいゆるい体験」を、短い時間の間に得られるようになったことを意味している。このことは人によって障壁となるであろう、マルチプレイにおける責任問題やコミュニケーションのしづらさの緩和に繋がっている。単にNintendo Switch向けの仕様という評価に収まらない、シリーズのコンセプトである「誰でも参加できるネットワークアクションゲーム」という理想に向け、『MHW』の時点から着実に歩みを進めたものであると言える。

高速移動を前提とした新たなハンティングアクション


『モンスターハンターライズ』の特に素晴らしい点は、問題の改善を試みるための手段が、同時にオリジナリティの高い面白さを生むための土台になっていることだ。

先述したとおり本作はオトモガルクや翔蟲の存在により3次元の高速移動が可能となった。この状況にモンスター側も黙っておらず、360°のブレスや壁張り付き、体を目一杯つかった攻撃、中には登頂可能なオブジェクトを突如フィールド中に召喚するものなど、3次元移動による回避を前提としたド派手なアクションでハンターを迎え撃つ。空中を縦横無尽に駆け回りつつ大技を避け、攻撃を叩き込んでいく本作の狩猟スタイルは、軽やかさと武装の重量感を両立した爽快感極まる本作独自の出来栄えへと仕上がっている。 大剣やランス、ガンランスといった、これまで機動力に欠けていた(溜めやリロードなどアクションにワンクッション必要だった)武器種が今までにない動きを見せるようになったことはもちろん、双剣や片手剣、ハンマーなど既に高機動であった武器にさらなるエッセンスをもたらした。


その象徴たる「鉄蟲糸技」は、本作の特徴である「高速移動」、「途切れないテンポ」に、新規アクションや過去作で使用されたモーションのアレンジをミックスさせたものだ。明確な新鮮味を覚えるものもあれば、どこか懐かしさを覚えるものもある。この「鉄蟲糸技」は一部通常技とあわせて、用意された複数のアクションと入れ替えることが可能。『モンスターハンタークロス』における狩技と狩猟スタイルの関係性のように、入れ替えることでプレイスタイルの大幅な変化を生み出し、理論値追求を面白さの一つにしているゲームデザインの都合上、最大火力用のコンボに収束しがちなアクション面にメリハリを与えている。お気に入りの組み合わせを見つけるもよし、特定のモンスターやソロ/マルチプレイ時といった状況に合わせて入れ替えるのも面白い。

なお「鉄蟲糸技」と翔蟲による高速移動は、一度のアクションに同じゲージを消費して行う都合上、むやみに連発することができない仕様となっている。この技の回避には翔蟲を使うのか使わないのか、あえてゲージ回復に時間がかかる「鉄蟲糸技」でカウンターを狙うのか。狩猟中に刹那、頭をよぎる数多くの選択は、プレイスキルの向上を伴って、戦闘の変化と奥行きを演出する働きを持つ。


3次元の高速移動を前提とした戦闘要素として忘れてはいけないのが、タワーディフェンスを取り入れたクエスト方式「百竜夜行」だ。ステージを飛び回りながら随所にユニットや兵器を配置し、里になだれ込むモンスターたちを迎撃するこのクエストは、過去作における巨大モンスター戦の発展型と呼べる内容であり、ソロプレイとマルチプレイにおける体験差を生み出すための実験という点で、興味深い試みであるといえる。

『モンスターハンター』シリーズが抱える問題として、「誰もが同じ行動を強制されないゆるさ」をコンセプトとしているがゆえに、「マルチプレイとソロプレイの間にアクションからくる体験の差を生み出しにくい」「ソロプレイ/マルチプレイならではの体験をゲーム内で生み出しにくい」というものがある。たとえばマルチプレイでしか出来ない武器のアクションを採用してしまうと、ソロプレイヤーが物足りなさを感じてしまう。そのアクションの存在によりマルチプレイのほうが狩猟に有利であると判明してしまえば、マルチプレイ内でもそのアクションを行わないことに対してメンバーから批判が湧くことになる。結果としてプレイヤーの行動が画一的になりコンセプトは崩壊する。

一応、この問題に関して開発陣がこれまで何も対処しようとしてこなかったわけではない。直近のタイトルで言えば『MHW』発売後に『FF14』コラボを経て実装された敵視システムや、「マムタロト」「ムフェト・ジーヴァ」のクエスト。『アイスボーン』で実装された「傷つけ」のシステムなどが該当する。これはメンバー内に「ヘイト役」「傷つけ担当」などロールを与え連携させることでマルチプレイにおける体験の拡充=「複数人でタコ殴りをする状況」(独立したソロアクション×4という状況)からの脱出を図ったものだった。しかしこのシステムがソロプレイ時にも適用されてしまったのは失敗だった。本来分散されるはずのロールや、「傷つけ」前提の体力を持つモンスターを一人で引き受けることになり、マルチプレイ前提のクエストならまだしも、そうではない普段からのソロプレイの内容まで重いものになってしまったのだ。


そうした経緯で本作に登場した「百竜夜行」は対巨大モンスター戦をベースに、攻略を「武器を使ったアクション」ではなく、「どれだけ効率よくユニットや兵器を運用できるか」に変更している。メンバー数が多ければその分簡単にダメージが出る平時の狩猟とは異なり、兵器の効率的な運用と人数はとくに関係がなく(メンバー数が多ければ当然同時に干渉できるユニット数は増えるが、それが効率の良い使い方に繋がるかは別の問題である。また強い兵器は設置できる数が少ない)、メンバーが増えるほど押し寄せるモンスターたち一頭一頭の体力は増える。ソロプレイの場合はフィールドを常に駆け回りながらすべての要素を活用するべくリアルタイムで戦術を組み立てる面白さがある。マルチプレイの場合は他人にある程度持ち場を任せることができる分、ソロよりも硬いモンスター1頭に対しどれだけ人を割くかという、連携を通じた団体競技的な面白さを生み出している。

その一方でクエストの報酬内容が「どれだけクエストクリアとは直接関係ない課題を達成できたか」にかかっており、これに関しては同時に出来ることの多いマルチプレイのほうが断然有利な状況になってしまっているのは残念である。またタワーディフェンスという形式そのものが遊び終えるまでに一定以上の時間を消費する都合上、出先で空いた時間でも遊べるような手軽な内容ではないということも指摘しておきたい。

ただ筆者としてはこの「百竜夜行」を大きく評価したいと考えている。プレイヤーの進行状況で格差が発生する装備ではなく、固定火力のオブジェクト主体で攻略していく方針で生まれた、ソロ/マルチそれぞれでしか味わえない体験は、今後『モンスターハンター』シリーズが新たなハンティングアクションを創造していく上で明確な試金石となることだろう。


総じて『モンスターハンターライズ』は、Nintendo Switchというハードウェアが持つ「携帯機」の性質に合わせた「手軽さ」の創出だけにとどまることなく、手軽さの構成要素である「高速移動」「途切れぬテンポ」を起点に、「翔蟲」を通じた新たなハンティングアクションを生み出すに至っている。その出来栄えは携帯機で狩りを行う『モンスターハンター』作品において、傑作と呼ぶに相応しい。代を重ねるごとにのしかかる過去作の評価に固執することなく、逆に積み重ねたものを単に切り捨てることもなく、的確な取捨選択を通じ、着実にシリーズを未来へと前進させ続ける開発陣の姿勢には毎度のことながら驚かされる。発売からまだ1か月も経っていないが、既に次回作が楽しみになっている自分がいる。

なお、各種便利なシステムの実装によって狩猟行為がリアルな人の営みの表現から遠ざかったことに関しては、筆者は特に問題視してはいない。本作は歴代作品でみられた以上に、演出に外連味をもたせ、ファンタジックな側面を強調させることでシステムの存在に説得力をもたせている。BGMにアンビエントを採用せずボーカルやコーラスを多数おり混ぜることで幻想的な雰囲気を生み出し、モンスターのモチーフには妖怪を使用。主人公を「国民皆兵を是とする隠れ里のエリート」としたことなど、ファンタジー描写に事欠かない作品となっている。

よって極地対応用のドリンクが不要になったことや、空中で体を捻らせ回避可能なことに関しても特に違和感はない。次回作以降どう反映させるのか、ということに関しては、技術拡散を狙うNPCが里内に散見されるため、世界設定上の不都合が生じることはほぼないと思われる。一方でアイテムのフレーバーテキストやゲームの進行状況で変化するNPCの会話差分に関しては大変充実しており、シリーズの楽しみの一つである世界観の深掘りやリアリティある演出に関しておざなりになっている訳では決してない。

無料アップデートを経て完結する作風とプレイヤーの未来


最後に本作が採用した、無料アップデートを経て完結する作風について個人的に思うところを述べ、本稿を閉じようと思う。『モンスターハンターライズ』は発売当初から「無料」アップデートを通じたコンテンツの段階的な追加を発表していた。だが、蓋を開ければその内容はこれまでの「買い切り型」と呼ばれる作品の常識からは考えられないものだった。それは新たなモンスターと彼らに関連する装備を段階的に増やしていくというだけではなく、「無料」で後から新しい「エンディング」を追加するというものだ。つまりARPGにも関わらず発売時点で本作の物語は完結していない。出来上がっているものに新たな要素を追加するだけでなく、最初から作品として欠けているパーツが存在しており、「無料」で後からそれを付け足すということだ。一応、「新たな」という名称が付いているように、エンディング自体は作中に存在している。だが内容としてはエンディングとしての体を成していない。プレイヤーにスタッフロールを見せるため以上の役割はない。

同様の方式を採用した直近の作品としては、坂口博信氏が中心となって開発を手がけたRPG『FΛNTΛSIΛN』があてはまる。配信開始時点で完結しておらず、しばらく期間を開けたのち、「後編」が作品内に実装されることになっている。こちらはApple Arcadeというサブスクリプションサービス、「1作品に消費者が直接対価を支払うわけではないビジネスモデル」だからこそ成立している。また『スーパーロボット大戦Z』シリーズや『ライフ イズ ストレンジ』シリーズなどが採用している作品の分割販売に関しては、「有料」「無料」の点で明確に異なる。

この「ゲームサービスではない、単品の作品にエンディングを後から無料で追加する方式」に際し、私がまず思ったのは「中古対策や話題性の維持に関して、来るところまで来たな」ということだ。完結後に追加コンテンツを通じて中古対策を行う作品は数あれど、単純に分割商法を採用するのでもなく、特定時期までクリアを先延ばしにするゲームが発売されることになるとは思わなかった。追加分が無料であるため、批判的な感情は特にない。またゲームの実況配信などが一般的になった現在、「早期クリアを目指す放送」が増えていることもこの形式を採用した理由のひとつとして考えられる。ゲームを終わらせないことは、スーパープレイを見ただけの人間が言う「ボリューム不足という風説」「ネタバレ」の拡散を、ゲーム購入者が増えるまで防ぐことにも繋がるのだ。

同時に、この作風が広く一般化された場合の未来を想像して、新しいゲーマーのプレイスタイルに思いを馳せた。「あの作品のエンディングが配信されるのは2週間後だから、それまで違うゲームの前編を遊ぼう。これが終わったら最近第3話が配信されたアレを遊ぶんだ」。ひとつの作品に定住せずノーマッドのようにさまざまなゲームを渡り歩く日々。千変万化する世界情景の中に、たしかな欠落といつまで経っても完結しない飢餓感が常につきまとう日常。この頃にはゲームのサブスクリプションサービスやマルチプラットフォーム対応は広く一般化しているだろうし、「買い切り型」という言葉は死語に、「ゲーム」は単品ではなくサービスを指す言葉になっているのかもわからない。その果てにはゲームの最低難易度として倍速プレイなんて機能が実装されるかもしれない(これはむしろ高難易度だ)。分割だからこその表現を差し込むゲームも現れることだろう。

いずれにせよ、本作が採用した「完結を先延ばしにする」作風は、開発費の高騰が鰻登りにあるゲーム業界に1石を投じることになるだけでなく、プレイヤー側のゲームスタイルを明確に変えていく可能性を秘めている。少なくとも『モンスターハンター』シリーズの今後は本作を経て変わるだろう。筆者としては何があろうと、ゲームのあり方がどう変わろうと、いつまでも食らいついていきたい所存だ。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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