『アークナイツ』開発元新作『ポッピュコム』は「自己肯定感を高めてくれる」傑作幸福協力シューターだった。たくさんの「喜び」と友達と共に過ごす時間
『ポッピュコム』は高いハードルに対して、色を操る独特なゲームプレイと、プレイするうちに自己肯定感が高まっていくかのような「寄り添い力」によって、新たな協力プレイの傑作を作り上げているように感じられた。

『ポッピュコム』の開発を手がけるのは、『アークナイツ』や『エクスアストリス』で知られるHypergryph。これまでスマートフォン向けのタイトルを開発してきた同社にとって、初のPC/家庭用ゲーム機向けの作品となる。
Steamストアページ:
https://link.gryphline.com/c/WEDL36bV
Epic Gamesストアページ:
https://link.gryphline.com/c/9F1tkhaa
Hypergryphの作品といえばSFのエッセンスが色濃い世界観を連想するが、それは『ポッピュコム』においても引き継がれている。物語の舞台となるのは、邪悪な独占企業による大規模な環境汚染によって生み出された、「ポム」というスライム状の異生物の侵攻によって疲弊してしまった星だ。プレイヤーたちは謎のロボット「マヨタン」によってこの星に召喚された冒険家となり、世界を救うための旅に出る。
一方で、アートスタイルやキャラクターなどについては、過去作のような硬派で美麗なものからは打って変わって、カバーアートやキャラクターのイラストなどからも分かるように、全体的にデフォルメされた、ポップでキュートな方向性へと大胆に舵を切っている。
だが、それ以上に大胆なのが、ジャンルの「3Dマルチプレイアドベンチャー」が示すように、本作が「協力プレイ必須」の3Dプラットフォーム作品であるということだろう。『ポッピュコム』のメインにあたる「ストーリーモード」は2人プレイ専用となっており、3~4人で遊ぶ「パーティーモード」も用意されているが、本作を一人でプレイすることはできない。画面分割で遊ぶオフラインに加え、オンラインでもフレンドを招待したり、発行されたルームナンバーを共有することによってマルチプレイを楽しむことができる(ローンチ時点ではマッチメイキング機能は用意されていないため、注意が必要だ)。
「協力プレイ必須の3Dプラットフォーム作品」と聞くと、どうしても『It Takes Two』のような傑作を連想してしまう。つまり、ジャンルの各作品のレベルが高いということだ。『ポッピュコム』はこの高いハードルに対して、色を操る独特なゲームプレイと、プレイするうちに自己肯定感が高まっていくかのような「寄り添い力」によって、新たな協力プレイの傑作を作り上げているように感じられた。本稿では、「ストーリーモード」の前半のプレイ感想を通して、そのユニークな魅力を掘り下げていく。
協力しながら「色」を操る、ユニークな3Dプラットフォーム体験
『ポッピュコム』のストーリーモードは、『スーパーマリオギャラクシー』や『アストロボット』のように、進行状況に応じて徐々に解放されていく複数のステージの中から、実際に遊ぶステージを選択する「自由選択+ステージクリア型」の形式で進んでいく。それも、ただクリアするだけではなく、ステージ内に一定数用意された目標(「ケボピン」というキャラクター)を、なるべく多く回収することが目標となる。

ステージの多くはリニアな構造となっており、目の前に立ちはだかる3Dプラットフォームや敵キャラクターとのバトルをプレイヤー同士で協力して切り抜けながら、最奥に待つボスとのバトルに挑むという流れになっている(一部、ボスキャラクターとのバトルにフォーカスするなどの特別なステージも用意されている)。主なプレイヤーの武器は、カラフルなバブル(圧縮された擬態「ポム」)を放つ「レインボーポッパー」と、それぞれ固有の役割をもった特殊なアイテムだ(こちらは後述する)。
一見すると「よくある3Dプラットフォーマー」のように感じられるかもしれないが、『ポッピュコム』がユニークなのは、「色」を中心としたメカニクスをゲームプレイ全体に取り入れているということだろう。本作では、各ステージに4つの色が設定されており、そのうち2色ずつが各プレイヤーに割り当てられる。また、プレイヤーは2色のうちどちらか一方の色しか一度に選ぶことができず、ワンボタンで色を切り替えながら進めていく。色を切り替えると、放つバブルの色はもちろん、自身のキャラクターやUI自体もその色に変化する(オプションで色覚サポートが用意されている)。


『ポッピュコム』の世界には、「色が塗られているものは、その色のプレイヤーのもの」という原則がある。例をあげると、目の前にピンク色の床があるとして、プレイヤー1が「ピンク/イエロー」、プレイヤー2が「ブルー/グリーン」だった場合、「ピンクのプレイヤー1」のみ、その床に乗ることができる(それ以外の場合は、乗ってもダメージを受けたり、そのまま通り抜けて落下してしまう)。

もう一つの重要な原則が、「自分のバブル(疑似「ポム」)を使って同じ色のポムを3つ以上揃えると、ポムが消える」ということ。たとえば、同じ色の敵キャラクターが、縦に二体以上積み上がっていたとして、そこにくっつけるようにして(その色を使えるプレイヤーが)同じ色のバブルを放つことで、相手を消すことができる。逆に、違う色のバブルを放ってしまった場合、バブルは敵キャラクターにくっついたまま残ってしまう。イメージとしては、『パズルボブル』や『パズループ』といった往年のパズルゲームに近い。

このような、色を基軸とした二つの原則が、『ポッピュコム』におけるゲームプレイの根幹だ。普段は見慣れているような3Dプラットフォームでも、それぞれのプレイヤーに「色」という役割が与えられることによって、あらゆるものが一筋縄ではいかなくなる。具体的に言えば、連携するためにボイスチャットで話しまくることになる。
「はい!イエローだから自分!!やった!!次はピンクだからお願い!!うわ、ブルーだ!!あー、間に合わなかった!!ごめんなさい!!」
これは『ポッピュコム』のプレイ時における、よくあるボイスチャットのやり取りだ。3Dプラットフォームでは、目の前に現れる色やステージを見て、「これは自分の色か、相手の色か」を的確に判断しながら、声を掛け合って切り抜けることになるし、バトルにおいても、自分が対応できない色の敵や攻撃がこちらに迫ってきた時は、なすすべもなく「助けて!!!!!」と叫ぶことになる。

そんな「協力プレイならではのカオス」をさらに盛り上げてくれるのが、ゲームの最序盤で手に入る、以下の4つのアイテムである。
● ばくれつ丸:自身を球体のようなフォームに変え、転がったり、爆発することができる
● くうにゃん隊長:ドローンを遠隔操作して、ものを持ち上げたり、動かすことができる
● バリアロボ:目の前に大きなシールドを出すことができる(前方と上方の二方向に切り替えられる)
● カイリキボー:遠くにあるものを掴むことができる(ステージ内のグラップリングフックも使うことができる)
これらは(コントローラーの場合は)十字キーで切り替えて使うことができる。どれもユニークな体験を生み出しているのだが、筆者のお気に入りは何と言っても「バリアロボ」だ。シールド一枚で同じ色の攻撃をほとんど防ぐことができるため、「私が守っている間に攻めろ!!」という協力プレイならではのアツい連携ができるし、このシールドは実はもう一人のプレイヤーのための足場にもなるため、バトルとプラットフォームアクションの両方で大いに役立つ。「大きな板を出す」というシンプルなメカニクスでありながらも、「協力プレイ」と「色を操る」という『ポッピュコム』ならではの特徴を起点にして可能性が広がっていくのは、まさに本作ならではの新鮮でワクワクする体験だ。


直感的で心地良い操作性と、「色&協力プレイ」縛りが生み出す達成感
シューター要素のある3Dプラットフォームアクションとなると、何よりも操作性の良さが重要となるわけだが、その点についても『ポッピュコム』は丁寧に仕上げているという印象だ。キャラクターのコントロールは直感的かつ精度が高く、ゲームスピード自体もゆったりとしているため、「思った通りに動かない!」というストレスに悩まされることなく、アクションに専念することができる(ステージ設計にもゆとりがあるため、意図しない落下死が少ないのも良い)。
また、本作のシューターメカニクスは、いわゆるADS(照準機能)のないシンプルなものだが、忙しなく動き回るなかでも、しっかりと狙いを定めて撃つことができる。弧を描くような挙動でありながら、エイムと着弾点が一致しているため、「思った場所に当たらない!」というストレスがなく、「ちゃんと弾を撃っている」という確かな感覚を味わえる。バブルを放つ時の小気味良い「ポン、ポン、ポン…」という音も、まるでプチプチをリズムよく潰す時のようで、とても気持ちが良い。

だが、『ポッピュコム』の「シューターとしての面白さ」をもっとも味わえるのは、やはりバブルを揃えてポムを一気に消す瞬間だろう。前述の通り、本作では「同じ色を揃えて消す」のが原則であり、ただ闇雲にバブルを撃っているだけでは、むしろ敵の数やアーマーを増やす結果になってしまう。一方で、(特にボス戦では)その攻撃はなかなかに激しく、時には『Returnal』さながらの大量の弾幕が襲いかかってくる場面もある。そんなリスクだらけの空間のなかで、相手と力を合わせて「バリアロボ」などのアイテムを駆使しながら状況を切り抜け、「パンッッ!!」という音と、画面いっぱいに広がる弾けるエフェクトとともに、一気にポムを消した時の爽快感といったら、筆舌に尽くしがたいものがある。

筆者は普段、『Escape from Tarcov』や『Call of Duty』、最近では『DOOM』の新作といったシューターで遊ぶことが多いのだが、『ポッピュコム』はそうした「シューター欲」をしっかりと満たしてくれると同時に、本作ならではのユニークな体験を作り上げているように感じられる。また、あくまでゲームスピード自体は比較的ゆったりとしており、アシストオプション(エイムアシスト、ダメージ無効)も用意されているため、シューター入門にも強くオススメできるタイトルなのではないだろうか(特にエイム上達に良さそうだ)。
ゲーム全体でプレイヤーの成長を促し、自己肯定感を生み出す圧倒的「寄り添い力」
ここまで『ポッピュコム』の基本的なゲームとしての魅力をまとめてきたが、実は、筆者が本作をプレイするなかで何よりも印象に残ったのは、この手のタイトルでは意外ともいえる「自己肯定感が高まっていく」という感覚である。二人で協力してプラットフォームやバトルなどのさまざまな壁を乗り越えていくというプロセス自体はもちろんだが、何よりもゲーム側が率先してプレイヤーを褒め、成長を実感させてくれるのだ。
まず、前述の通り、本作のステージ構成は基本的にはリニアで、目の前に現れるプラットフォームパズルやバトルを乗り越えていくのだが、その一つひとつを突破するたびに、クラッカーを鳴らすイラストと「イェーイ!」という効果音で華々しくプレイヤーを祝ってくれるのである。最初はちょっとビックリしてしまったが、これが思ったよりも嬉しいのだ。

さらに、レベルデザインについても、基本的には各ステージごとに「ある一つの動きやコンセプトを元に、徐々に難易度が上がっていく」という一貫性を担保した上で、「まずは基本を学び、応用を重ねていく」という学習曲線が丁寧に構築されている。さらに、初めて登場するメカニクスについては、ステージ内に設置されたディスプレイ上の映像を通して学ぶことができるようになっていたり(一般的なチュートリアルウィンドウと異なり、うっかり閉じてしまうことがない)、ゲーム内通貨(コスメティックアイテムと交換できる)の役割を担っているプリズムの配置が「これを取るように動けば良いのでは?」と、プラットフォームを突破するためのヒントとしても機能しているのである。


こうした工夫が隅々まで施されていることによって、余計なストレスを感じることなく、目の前に立ちはだかる壁に挑むことができる(また、正攻法ではないゴリ押しが効く場面も少なくない)。それでいてステージ全体での難易度の上昇具合も絶妙に調整されているため、どのステージでも「二人で協力して、歯ごたえを感じながら一歩ずつ成長していく」という協力プレイならではの成功体験をしっかりと味わうことができるのだ。しかも、一歩進むごとに、ゲーム側が盛大にクラッカーでお祝いしてくれるのだから、自己肯定感が高まっていくのも当然といえるだろう(さらにステージクリア時には大量のネコ型「ケボピン」がキュートに祝ってくれる)。
そんな「工夫」の中でも、特に衝撃的だったのが、ゲームオーバー時の演出である。ゲームオーバーと言えば、『ダークソウル』の象徴的な「YOU DIED」や、ヴィランに煽られる「バットマン アーカム」シリーズのように、プレイヤーの悔しさを駆り立てるような例が多いが、『ポッピュコム』では「君は悪くない!むしろ凄かったよ!」と、失敗したにも関わらず、プレイヤーを全肯定してくれるのである(代わりにマヨタンが自分を責めてしまう)。現実世界の厳しさを日々実感している身としては、もはや泣きそうになってしまうが、『ポッピュコム』は「プレイヤーが成長しやすい環境をつくり、成功を祝い、プレイヤーに寄り添う」というホスピタリティの高さを隅々まで貫いていて、それ自体がゲームの個性となっている。


思えば、協力プレイ必須のタイトルは、それ自体が難易度の高さを生み出しており、ゲーム云々以前に、プレイヤー間のギスギスをきっかけにコントローラーを置いてしまうという例が少なくない。『ポッピュコム』は、「二人が力を合わせて頑張ることって凄い!」という、(見落としがちではありながらも)当たり前の事実と真摯に向き合っており、本作のプレイを進めていくと、まるで自分と相手とゲームの3人(?)でお互いにハイタッチをしたり、ハグをしているかのような気分になっていくのだ。これは間違いなく、本作ならではのユニークな体験だろう(ちなみに一緒にプレイした相手も「今の時代に必要だ」と言っていた)。
新たな「協力プレイ必須タイトル」の傑作の予感。ゲームと一緒に自己肯定感を高めよう
ここまでが、『ポッピュコム』の「ストーリーモード」の前半をプレイした感想である。「色」を基軸としたユニークなメカニクスと、操作性からレベルデザインまで丁寧に仕上げられた完成度が光る本作は、高評価のタイトルが並ぶ「協力プレイ必須の3Dプラットフォーム作品」の中でも、新たな傑作として名を連ねるのではないかという期待を強く感じさせてくれる。

だが、それ以上に印象的だったのは、やはり「プレイヤーが成長しやすい環境をつくり、成功を祝い、プレイヤーに寄り添う」ことを徹底しているからこそ感じられた、自己肯定感の高まりだ。率直に言って、ゲームを遊んでこんな気分になったことはほとんどないし、ましてや3Dプラットフォーム作品では初めての経験である。自己肯定感の低下が加速する現代において、それだけでも『ポッピュコム』には十分な価値があると言えるのではないだろうか。
また、本作はキャラクタークリエイトが可能であり、ゲームを進めていくうちにさまざまなポップでハイクオリティな衣装がアンロックされていくため、自分らしいスタイルで「ポム」たちとの戦いに挑めるのも大きな魅力となっている。先んじて『ラビッツ』とのコラボがアナウンスされているが、今後の衣装の追加にも期待したい。

『ポッピュコム』はPC(Steam / Epic Gamesストア)にて配信中だ。ゲーム内は日本語表示に対応している。
Steamストアページ:
https://link.gryphline.com/c/WEDL36bV
Epic Gamesストアページ:
https://link.gryphline.com/c/9F1tkhaa
【『ポッピュコム』✕『ラビッツ』コラボ】
コラボイベント期間中は、イベント限定スキン&アイテムがセットになった有料DLC「ラビッツ ファッションパック」をご購入いただけます。
コラボ期間:*詳しくはストアページにてご確認ください。
▼ラビッツ ファッションパック内容:
【髪型】ラビバーティー、ラビ探検隊
【メイン武器着せ替え】ラビバスター
【サブ武器着せ替え】ラビベーダー
【入場演出】ラビッツ探査船
※ゲーム内で上記2種類のいずれかの「髪型」にすると、自動で「入場演出」が変更されます。
※有料の服装コンテンツは、対応するDLCを購入されたア力ウントでのみ使用できます。