Ubisoftが『R6S』や『ゴーストリコン』新作にてアップデート頻度を高める意向を示す。『フォートナイト』などが生んだ、新規コンテンツを連発するトレンド
Ubisoftは5月15日、2018-2019会計年度業績報告を公開し、あわせて投資家向けの業績報告を行なった。同社は『レインボーシックスシージ』『ディビジョン』『フォーオナー』など長期運営型のタイトルを複数抱えているほか、シングルプレイ用の『アサシン クリード オデッセイ』でも継続的なコンテンツアップデートを続けている。コンテンツを頻繁に追加することでプレイヤーに長く遊んでもらい、DLCやゲーム内少額課金により継続収益を出していくビジネスモデルが定着しつつある。
そして今回、投資家向けの質疑応答にてUbisoft CEOのYves Guillemot氏は、『フォートナイト』と張り合えるような頻度でコンテンツを追加していけるのかどうか問われた。この質問に対しGuillemot氏は、2年間かけてアップデート頻度を上げられるよう、企業体制を整えてきたと回答。具体例として『レインボーシックスシージ』『ゴーストリコンブレイクポイント』を出しつつ、Ubisoft全体として、より定期的にコンテンツやイベントを追加していく予定であると述べている。
新規コンテンツを連発する新しいトレンド
Guillemot氏は「(コンテンツを頻繁に追加するというのは)ゲーム業界の新しいトレンドであり、多くのプレイヤーをゲームに復帰させ、お金を使ってもらうきっかけを作っています」と語るほか、「『レインボーシックスシージ』についてはすでにコンテンツ追加頻度を高めており、今年はそれを目にすることができるでしょう。また『ゴーストリコンブレイクポイント』にはPvP、Co-op、シングルプレイキャンペーンが揃っており、定期的にコンテンツが追加されていきます」と述べている。
『ゴーストリコン ブレイクポイント』についてはこれまでに、レイドコンテンツの追加が予定されていることや、装備品が複数のレアリティに分けられることが報じられている。トレジャーハント要素を導入すると、シングルプレイゲームであってもプレイ時間を増やしやすい。また『アサシン クリード』シリーズを含め、UbisoftオープンワールドゲームのアクションRPG化は、ライブサービスとの親和性が高い。アップデート頻度を高める開発体制を整えると同時に、長期間プレイしてもらいやすいフォーマットづくりも進められていることがうかがえる。
継続収益と旧作売上で安定化
ライブサービス型タイトルの増加とともに、プレイヤーのエンゲージメントも年々上昇傾向にある。モバイルタイトルを除外した年間アクティブユーザー数は1億人を超えているという。『レインボーシックスシージ』はプレイヤー数4500万人と、前会計年度から40%増。売上については合計10億ユーロを突破したとのことだ。
バックカタログの充実化にともない旧作の売上比率も伸び、今期は全体の56.5%(前期は47.6%)が旧作による売上。パッケージ/ダウンロードの比率としては、後者が全体の68.8%を占めている(DLCや少額課金などゲーム本編以外のダウンロード売上含む)。PC売上は前年比で79.7%増、アジア圏売上は前年比で62.4%増と、成長市場であることがうかがえる。
バックカタログの充実化により業績が新作頼みにはならず、ライブサービス運営により安定した継続収益を出せる。さらにUbisoftタイトルの多くは自社IPであり、長期的にも安定してフランチャイズを展開していけるという透明性も強みとしている。さらに今後に向けた投資をアジア、モバイル、クラウドゲーミング、AI研究など複数分野に渡り進めており、どこか一分野で失敗しても転けない経営基盤が構築されている。
2019Q4には未発表大型タイトルが3本発売予定
近年では、『フォートナイト』を筆頭としたライブサービス型タイトルを引き合いに出し、デベロッパーにアップデート頻度について問うケースが増えている。週間ペースでアップデートを続ける『フォートナイト』が業界水準として定着しつつある中、『Apex Legends』『Path of Exile』のデベロッパーは、従業員のワークライフバランスを維持するため、アップデート頻度をおさえる意向を示している(関連記事)。頻繁なコンテンツアップデートというのは、誰でも真似できるものではない。世界中に内製スタジオを抱えるUbisoftのように、体力のある企業だからこそ成し得る戦略だろう。
なお次期会計年度では、10月に『ゴーストリコン:ブレイクポイント』が発売されるほか、2019Q4(2020年1〜3月)に「未発表」のAAA級タイトルが3本リリースされることが判明している。投資家向けの質疑応答では、それぞれ「独自の体験」を届けると説明されていることから、異なるジャンルの作品になることが予想される。また業績報告では、今後の投資分野として新規IPや新ジャンルへの挑戦が挙げられていることから、同社の既存タイトルとは異なるIPおよびジャンルのゲームも含まれるのではないだろうか。
※『ゴーストリコン ブレイクポイント』ゲームプレイトレイラー
同社の未発表新作として考え得るのは、Ubisoft CEOのYves Guillemot氏がかねてから開発について前向きなコメントを残してきた『スプリンターセル』新作や、英国が舞台になると噂されている『ウォッチドッグス』新作だろう。『アサシンクリード』シリーズについては、2019年は『アサシンクリードオデッセイ』に注力し、新作リリースは無いと公表済みのため、2019-2020会計年度中に新作が出る可能性は低そうだ。発表済みの『Skull & Bones』に関しては、発売延期にともない(関連記事)2019-2020会計年度中には発売されないと伝えられている。