EAが2年前に「ユーザー離脱防止」を目的としたマッチング技術の特許を申請していたことが明らかに

アメリカの大手ゲーム会社であるElectronic Arts が、2016年3月8日にオンラインゲームにおけるプレイヤーのマッチング技術に関する特許を申請していたことが明らかになった。EAが申請していた特許は「ひとつのゲームを長く遊んでもらえるようにユーザーを誘導するためのマッチング技術」。

アメリカの大手ゲーム会社であるElectronic Arts (以下、EA)が、2016年3月8日にオンラインゲームにおけるプレイヤーのマッチング技術に関する特許を申請していたことが、今になりDestructoidなど海外メディアの間で報じられている。昨年にはActivisionが「マイクロトランザクション(いわゆるゲーム内課金)を促すためのプレイヤーマッチング技術」に関する特許を申請していたが、EAが申請していた特許は「ひとつのゲームを長く遊んでもらえるようにユーザーを誘導するためのマッチング技術」だ。

「EOMM」(Engagement Optimized Matchmaking)と名付けられたその技術は、「プレイヤー同士の交流」「プレイスタイル」「ゲームへの取り組み方」「ゲーム内アイテムをどれだけ購入しているのか」「ゲームプレイの上手さ」といった要素を元に最適なプレイヤーのマッチングを行うことで、ゲーム体験を快適にし、「プレイヤーの離脱を最小限なものにする」というものである。またEAは文書内で、「EOMM」はゲームのみならずソーシャルネットワークやオンライン教育など様々な分野に応用できる可能性があるとも書いている。

注目すべき点は、マッチングの基準を「1つの要素に最適化することが可能」という点だ。数ある要素の中には勿論、「どれだけゲーム内でお金を使ったのか」という要素も含まれている。例えばこれは「課金額が同程度のプレイヤーをマッチングさせる」ことで、ユーザーにより勝利を重ねる為の課金を促すことも可能であることを暗に示している。

この特許は現在あくまで申請中となっており、未だ正式なものとして認可されてはいない。先述したActivisionのマッチングの特許が認可されるまで2年半の時間を要したことから、この特許が認可されるのは申請日から逆算すると早くとも今年後半以降になるだろう。この特許を元にした技術が既に販売されたゲームに実装されているのかは気になるところであるが、現在この技術に関する公式な声明はなく、導入済みのゲームは判明していない。しかし、実際のゲームプレイを通してEAが提供しているマッチングの「公平さ」の検証を試みているユーザーもいるようだ。

上記の動画は、EAより現在発売中のFPSゲーム「BF1」のマルチ対戦モードにおけるプレイヤーのマッチング基準の検証を試みたものだ。動画内では「ゲーム内貢献度に関わらずキルレートと目標達成率によってより強い人とチームが組まれるのではないか」という説を提唱しており、新規プレイヤーとキルレートが低いプレイヤーはよりゲーム内課金へと誘導されやすくなるのではと語っている。こういったEAのゲームのマッチングにおける公平性に対する不満をもったユーザーの声は現在も絶えない。

この「EOMM」によってプレイヤー同士のネットワーク環境に配慮したマッチアップや有害プレイヤーを判断し排除し、ユーザーにとって快適なプレイ環境を提供することがゆくゆくは技術的に可能になるだろうとEAは結論づけている。しかし、「何をもって有害なプレイ」とするかなど、EAが提供する情報は不透明であり、やや一方的であることを認識せざるを得ない。かつてActivisionが申請した心理的な課金誘導システムほど露骨さは感じさせないにしろ、使い方によってはプレイヤーにとって良い影響だけではなく悪影響を及ぼす技術でもあることは確かだ。

なお、今回の特許にはマッチング技術のほか、プレイヤーの意図しないゲーム難易度の自動調整に関する技術も含まれている。いずれも、「ユーザーに長くゲームを遊んでもらう為」の技術であるとEAは説明している。ユーザーにひとつのゲームを長く課金してもらいながら遊んでもらうことを指向しているEAのスタンス(関連記事)が、あらためて垣間見える。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

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