『スーパーマリオ オデッセイ』モーションコントロールの微妙な位置付けが議論の対象に。必須ではないが推奨のオプション
今月10月27日に発売された『スーパーマリオ オデッセイ』。すでに弊誌でも報じたとおり、海外レビューでは歴史上に名を残さんばかりのハイスコアを記録しているほか、Amazon.comの年間セールスランキングの4位にランクインするなど、華々しいスタートダッシュを決めている。
批判点の少ない“マスターピース”として評価されている本作であるが、一方で不満点としてあげられがちなのが「モーションコントロール」だ。ゲームをプレイ中に振るという動作を求められることが苦痛であるという意見が見受けられる。一方で、本作はゲーム内にはモーションコントロールを切るというオプションが用意されているにもかかわらず、こうした批判意見が出ており、その点はやや奇妙だ。一体どういうことなのだろうか。
本作におけるモーションコントロールは、帽子のキャッピーを投げるアクションに割り当てられているが、こうした操作はXボタンやYボタンでもおこなうことができる。そのアクション自体の性能も変わらないので、振ることで帽子を投げるか、ボタンで帽子を投げるかはプレイヤーが選べるわけだ。
ただ、必ずしも常にモーションコントロールとボタンが同じ機能を果たすわけではない。たとえば序盤に登場するカエルの敵をキャプチャーした際には、ボタンによるジャンプと、モーションコントロールによるジャンプは明らかに高さが違う。XやYボタンと同じ機能を持ちながら、モーションコントロールではそれらの機能をより拡張したものになっている。ほかの敵のキャプチャーもこの傾向にあり、羽クリボーもボタン操作では「飛ぶ」に対し、モーションコントロールでは「はやく飛ぶ」となっている。キャプチャー以外の面を見てみると、ぶら下がり中にコントローラーを振ることで素早く登れるようになったりと恩恵は大きい。しかしどのモーションコントロールにもクリアに必ずしも必要な要素とはいえない。そうした奇妙さがKotakuやPolygonなどで取り沙汰されている。
実は任天堂は『スーパーマリオ オデッセイ』ゲーム開始時にその位置付けをはっきりさせている。Joy-Conを両手に持つスタイルを推奨している点と、「ふり要素でより楽しめます」と記されているように、モーションコントロールはあくまで付加要素であるという点だ。確かにそのコンセプトははっきり貫かれてはいる。ただ、それでもやはりモーションコントロールの立ち位置は非常に微妙なものだ。「なくてもいいけど、あるとよりいい」。『スーパーマリオギャラクシー』では、ゲームを進めるためには振る動作やポインティングは必須だった。モーションコントロールをオプションにしたこと自体が大きな変化にも見える。
おそらく、こうしたモーションコントロールの立ち位置を生んだのは、携帯モードが理由だろう。プレイしてみるとわかるが、携帯モードで本作をプレイするとモーションコントロールは利用しづらい。見ている画面を本体ごと振らなければならないからだ。こうした操作性を考慮し、モーションコントロールをあくまでオプションにしたと考えることができる。
上下への帽子投げや帽子の回転投げなど、はっきりとガイドされていないものの、ボタンで再現できる操作も存在しており、できるだけボタンでもモーションコントロールと同じ動きができるように設計されている印象だ。ただ、前述したボタンとモーションコントロールの差異に加えて、プクプクをキャプチャーした場合にはモーションコントロールを使えなければ攻撃手段がないという一面もあり、ボタンが完全な互換になっているとは言い難い。Kotakuは「オプションとはいえないモーションコントロールは携帯モードでのゲーム体験を損ねる」と述べ、Polygonははっきりした意見を表明していないものの「モーションコントロールのみでの操作」を例示し、「自分で操作方法を選んでほしい」と語っている。Redditでもこの設計について意見が分かれているが、「そもそもボタン数が足りているのにモーションコントロールを入れる必要があるのか」という声は少なくない。
『スーパーマリオ オデッセイ』はある意味では、携帯モードやProコントローラーといった、あらゆる選択肢に対応できる包括性に挑戦したタイトルであるといえる。その結果が、“プラスアルファ”のモーションコントロールを生んだのだろう。実際にどの操作でも一定水準の快適さを味わうことができるのは、こうした配慮の賜物であるといえる。モーションコントロールの位置付けは、便利さを追求すれば結局振らされるといった批判点としてあげられるが、包括性を重視し最小限にその必要性を抑えているとも考えられる。ゆえに、はっきりとした良し悪しを下せない部分ではある。
ニンテンドースイッチは、遊び方や操作方法など、幅広いオプションが用意されている。それだけに、そのオプションにどこまで対応するかというのは各メーカーにとって悩みどころだろう。そうした意味では今回における、モーションコントロールの“プラスアルファ”の位置付けは、ひとつ参考になるかもしれない。