“マジでなんでも盗める”義賊アドベンチャー『BANDIT KNIGHT』、開発者は「ばかばかしい」と笑って遊んでほしい。「賞金の重圧」「夫婦で開発ってどんな感じ?」などなど訊いた

『BANDIT KNIGHT』試遊体験で感じた魅力、インタビューで聞くことのできた本作開発にまつわる経緯などについてレポートする。

BANDIT KNIGHT』は、義賊となって悪どい人物からお宝を「救出」するアクション・アドベンチャーゲームだ。3月20日・21日の2日間にわたって開催されたイベントTokyo Indie Games Summit 2026では、本作の試遊台が8台設置され活況となった。弊誌では本イベント中に、デベロッパーであるGame Floatのおふたりへインタビューする機会に恵まれた。本稿では、試遊体験で感じた魅力、インタビューで聞くことのできた本作開発にまつわる経緯などについてレポートする。なお、本作は現在Steamにて誰でも参加可能なプレイテストを実施中、先に触れてみるのもよいだろう。

持ちきれないほどのお宝の山に埋もれろ

本作の主人公は盗賊ギルド「キバドリ」に所属する盗賊のアイン。しかしアインは、ただ盗んだお宝を売りさばいて儲けることだけが目的ではない。お宝を助け出して本来の持ち主のもとに返すというような、「救出・救済」などを楽しみとしている“義賊”なのだ。さまざまな場所で探索とお宝回収を繰り返し、集めたお金でパラメータの強化や装備品のクラフトなどを行うことができ、バトルや盗みを快適にしながら物語を進めていくこととなる。

本作は2.5Dで描かれる、スーパーファミコン時代のRPGを彷彿とさせるようなグラフィックが印象的だ。スーパーファミコンのゲームをリアルタイムに遊んでいた世代の筆者には、初めてなのに懐かしさや安心感があるというのが第一印象だった。試遊体験をしていく中で最初に驚いたことは、盗めるお宝のバリエーションの異様なまでの豊富さである。ある部屋のものを盗みきって次のエリアへ進むと、見たことのない新しい大量のお宝が目に入る。これの繰り返しで、あれもこれも全部を盗み出したくなる。最初のステージでは、クリアまでのあいだに「これ以上持ちきれない」というテキストが表示され泣く泣く諦めたお宝がたくさんあった。屋外のエリアでは、地面に生えた植物さえ盗みの対象となり、オブジェクトはなんでも金銭に変換できる。

探索を終えリザルト画面に進むと、盗んできたお宝の山に囲まれ妙な高揚感を得られた。また、スキルツリーやクラフトなどの育成・強化まわりのシステムも以降のプレイ目標に直結するので、「次はさっきよりもきっとうまくいくはず」と、何度も探索に出たくなる中毒性がある。こういったプレイ体験も踏まえて、Game FloatのAmeo氏ともふもふひつじ氏にインタビューした。


「盗む」ことがメインのゲームが生まれるまで

――まずは自己紹介をお願いします。

Ameo氏:
Game FloatのAmeoです。本作では、開発全般を担当しています。

もふもふひつじ氏:
もふもふひつじです。本作のピクセルアートグラフィックを担当しています。

――本作の主人公は、「盗む」や「スリを働く」といったようなアクションがメインのキャラクターになっていますが、義賊が主人公のゲームという着想はどのように得たのでしょうか。

Ameo氏:
元々はスーパーファミコン時代のドラクエなどにおいて、街や村で民家に入って樽や壺、タンスからアイテムを集めるような要素が好きでした。そこで、その部分にフォーカスした作品を作りたいと思ったことがきっかけですね。あのアイテム集めの要素を僕は「盗み」であると捉えて、本作のようなかたちでアレンジしました。

――実際にプレイしてみて、盗めるアイテムの種類の多さに驚きました。盗めるアイテムのグラフィックには何種類くらいあるのでしょうか。

Ameo氏:
現時点では600種類ほどありまして、今後もまだ増える予定です。アイテムそれぞれには大した意味はないのですが、やはりいろいろなものを集める方が面白いなと思って、“フレーバー”的なものではあるのですがたくさん用意してみました。ちなみに、アイテムごとのレアリティの設定があるので、今回の試遊版では絶対に出てこないお宝もまだまだあるんです。

ぜ~~んぶ、1回の探索で盗んだお宝!

――スキルツリーはRPGというよりほかのゲームジャンルでよく見かけるような仕組みに感じられました。ほかのゲームジャンルからも要素を盛り込んでみようというような発想で実装していったのでしょうか。

Ameo氏:
本作には、プレイヤーさんに遊んでもらってフィードバックをもらいながら変えていった部分や、解決していった部分が多々あります。スキルツリーもそのひとつですね。やはりスキルツリーは人気があり要望も多かったです。また、本作では探索に出て、制限時間が来ると拠点に戻ってきて出直すというサイクルになるので、戻って再度出発するたびに何かが変わってくるという要素があったら面白いと思ったんです。そのためローグライクっぽさも仕組みのひとつとして取り入れています。

――ユーザーからのフィードバックをもとに変更や追加をした箇所はほかにもありますか。

Ameo氏:
大きなものから小さなものまで本当にたくさんあるんですけど、特にプレイして最初に感じる「手触り感」みたいなものは、みなさん敏感なので多く調整しています。たとえば、当初よりはキャラクターが軽快に動くようにしたり。「ここで不意に落ちてしまうことがある」という判定まわりのことなども細かく修正してきました。ゲームをよく遊ぶ方ほど、そういうところをシビアに見ていますので、さまざまな指摘をいただいて。

全体的な側面で言うと、GYAAR Studioさんやバンダイナムコの社員さんに試遊していただいて、アドバイスをもらうということもあります。こういった試遊会は隔月くらいで開催していて、そこで「こうした方が分かりやすいんじゃないか」というプロからの意見をいただいて直すということもしています。

スキルはこれからも追加予定

――「自分のこだわりがあるので変えたくない」というようなポイントはありますか。

Ameo氏:
もちろん、それもありました。こだわりというか、指摘された部分について「それはもう試してみて、検証を重ねた結果今の実装になっているんだよ」とか。

こだわりとして変えたくないのはストーリーまわりですね。多少ふざけた雰囲気の世界じゃないと成り立たない要素もあると考えているので、軽快な感じとか、シリアスすぎないバランスを目指しているんです。「なんでだよ!」と笑ってツッコみながら遊べるような。本作は一見、『ファイナルファンタジー』シリーズのような大作RPGだと思われる側面があるので、ユーザーさんの意見ではもっとシリアスだったりドラマチックだったり、壮大なお話を期待する方もいるようなのですが、僕はもっとカジュアルなものとして提供したいと思っているんですね。そこは譲らずに作っています。


家庭内共同開発はどんな感じ?

――自宅でパートナーと一緒にゲームを作るという生活は、暮らしの部分とゲーム作りの部分がどのように絡み合うのでしょうか。

もふもふひつじ氏:
道を歩いているときに、急に思い立って「あの部分さー」というノリでゲーム作りの話を始めてしまうということはあります(笑)そのなかでピリピリしたり、喧嘩に発展したりということはないですね。お互いに、ギスギスした雰囲気や喧嘩が苦手だからだと思います。

Ameo氏:
何か開発について話したいことが出てくると、カフェに誘って外でひとしきり話したりすることが多いですね。食事のたびに毎回そういう話をしているということではありませんが、家の中で会議をすることはあまりなくて。「あー吐き出したいな」とか「あれについて会議したいな」ということが溜まってくると、「よし、外行くか!」ってなります。もちろん、生活の中で相手のタイミングも見計らいながら、自然とうまくバランスをとっている感じがしますね。僕の担当部分である物語についても、“壁打ち”に付き合ってもらったりということもありますね。

もふもふひつじ氏:
何か構想に行き詰まっているときに、すごく下向いているな~と感じるときがあるので、そういうときはこちらから「何悩んでるんですか~?」と声を掛けに行ったりします。

Ameo氏:
それって家族の距離感だから、変化にもすぐ気づけるし、声もすぐに掛けられるというところがあると思うんですよね。

――Ameoさんがプログラミングなどの全般、もふもふひつじさんがキャラクターのドット絵という分担で進めているとのことですが、グラフィックの制作工程はどのようになっていますか。

もふもふひつじ氏:
具体的に「これ描いて」という依頼を受けてそれを作ります。

Ameo氏:
具体的にお願いはするんですけど、実際に上がってくるものはちょっとアレンジされていて、「こうするともっと良いんじゃない?」というアイデアが乗って出されてくるという感じですね。

――逆にもふもふひつじさんの方から、もっとこういうのを描かせてほしい、と思うことはありましたか。

もふもふひつじ氏:
私は女の子のドット絵をもっと描きたいと思っています。『BANDIT KNIGHT』は敵キャラが男性ばかりで、ひたすらおじさんを描いていた印象なんです。敵キャラクターにも攻撃や被弾、ダウンなどの差分があるので枚数が多いんですよ。

Ameo氏:
でもおじさんからじゃないと盗めないじゃん?

一同:
(笑)

もふもふひつじ氏:
たしかに女の子にナイフを投げて金品を奪うというのはちょっと嫌かも。

Ameo氏:
奥さんはもともと漫画畑にいたので、絵を描くのが早いんですよね。ドット絵もひとつひとつ打ち込むというより、筆で描画するように描いているイメージです。今回のイベント配布用に作った「予告状」も、奥さんがデザインや紙選びまで一通りこなしてくれました。

――そういうところで、漫画畑での経験が活きているのは面白いですね。コンテストで受賞して賞金が出ることで、どのような心境の変化が生まれましたか。

Ameo氏:
最初こそ生活上の安心感というようなところは感じましたが、そのあとに「貰うだけじゃダメ」という現実が徐々に大きくなってきましたね。やらなければならないことがあるというプレッシャーがじわじわ湧いてくるので、「貰った分を還元するには、一体どのくらい売れば良いんだ……?」と思いそうになるのを、考えないようにしています(笑)とにかく、「いや、今自分にやれることをやろう」と意識をそちらに向けて。

――もふもふひつじさんは、家族としてはどのように受け止めましたか?

もふもふひつじ氏:
まず、コンテストに応募した段階では送ったこと自体を知りませんでした。なので、最終段階に残ったくらいの時点で「良い話と悪い話がある」と聞かされて……。

Ameo氏:
言ったかもしれない!(笑)

――洋画ではよく聞く言い回しですが、本当に言う人と場面があるんですね。

もふもふひつじ氏:
「悪い話から聞きたい」って言ってるのに良い話からされて(笑)「受賞することが決まったんだ~」と。そこで初めて、応募していたことも知るという感じで急に生活が一変しましたね。

――悪い話の方はなんだったのでしょうか?

もふもふひつじ氏:
良い話の方しか覚えていないですね。

Ameo氏:
僕も忘れました(笑)

一同:
(笑)

Ameo氏:
家族に「コンテストに応募したんだよ」って、言いづらいじゃないですか。落ちちゃったときに「あーダメだったね」ってなるのも気まずいので……。なので、応募の段階では伝えずに、結果が返ってきた時に初めて報告するかたちでしたね。


指を指して笑いながら遊んでほしい

――Xの公式アカウントは英語での発信をされているので、海外向けも意識されているのかなという印象です。以前弊誌でも取り上げたポストは特に注目を集めていたようですが、当時はどのような気分でしたか。関連記事

Ameo氏:
驚きましたし、やはりとても嬉しかったですね。Xの公式アカウントの運用はパブリッシャーさんの方でいろいろ工夫してやってくださっています。自分はストアページを公開するときとかにも、どういう反応が来るのかは正直さっぱりわからなくて。パブリッシャーさんやユーザーさんいわく、「SNSウケがいいよ」とのことだったので、『BANDIT KNIGHT』の「こんなことまでしちゃっていいの?」「こういうこともできるのか!」という部分が面白おかしく伝わったみたいで、良い反応が得られて嬉しかったですね。

――「盗み」とか「スリ」はゲームだからこそ存分にしてもいいし、笑って許されるところがありますね。

Ameo氏:
そういう楽しみ方をしてほしいんですよ。「このゲームのこういうところ、バカバカしいな!」と指を指して笑ってほしいと思いながら作っています。

――これまでにご自身が好きで遊んできたゲームも、俗に“バカゲー”と称されるような、明らかにプレイヤーに笑ってもらいたそうな雰囲気の作品が多かったのでしょうか。

Ameo氏:
自分はどちらかといえば物語重視のものを楽しむことが多かったんです。『聖剣伝説』『ロマンシング サ・ガ3』『クロノトリガー』『ファイナルファンタジーVI』など、スクウェア(現スクウェア・エニックス)のゲームで育ってきたところがありますね。カジュアルで笑える作品としては『塊魂』が好きですね。巻き込んでいて楽しいし、制限時間があって何度も繰り返し同じステージを遊んでいくという部分は、本作にも仕組みとして取り入れていたりします。

もふもふひつじ氏:
私はもともとはそこまでゲームをやる人間ではなかったのですが、夫の影響でいろいろな作品を勧められて遊びました。その中で最初にハマったのは『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、スカイリム)で、「こんなに面白いゲームがあるなんて知らなかった!」という衝撃を受けました。寝る時間も忘れて没頭してしまうほどで。『Fallout』もプレイしたのですが、『スカイリム』の方がファンタジー寄りで自分の好みだったみたいです。『ファイナルファンタジーVI』や『クロノトリガー』も「本作を作る上での参考に」とのことで勧められて遊びました。お話も面白くて絵も綺麗なので、かなり本作のグラフィック制作の参考になっています。

Ameo氏:
『スカイリム』が出たことで、ゲーム内の「盗み」の概念が自分のなかでちょっと変わりましたね。「あ、目の前で盗んだら怒られるんだ!」と(笑)。

――ゲームのサウンドトラックも魅力的だと思いました。音楽はどういった工程で作られていますか。

Ameo氏:
ゲームのサウンドトラックは、今回のTokyo Indie Games Summitアワードでノミネートされた『HARMA 亡国のエデン』でも作曲を担当している青木しんたろうさんに依頼しています。以前から熱意を持って声をかけてくださっていた方で、「今回、受賞して賞金が出ましたから一緒にやりましょう!」とお誘いしました(笑)。

曲を作ってもらう際は結構体当たり的な感じで、ざっくばらんな頼み方でも大丈夫な関係が構築できているので、実際のゲームの画面を見てもらって「ここに合う音楽をください!」と頼んでいますね。通常の開発における作曲工程って、テキストベースでキーワードや設定情報をまとめたり、ちょっとイメージグラフィックを見せたりして進めていると思うのですが、本作の場合はもう現物を直接見てもらってます。そのおかげか、割とドンピシャな音楽がすぐに来るんです。ドラフトで2~3曲くらいが送られてくるので、そこから選んでいくという流れなんですけど、それがどれも良い曲なんですよ。

――試遊の中だけでもさまざまな雰囲気の、場面に合った曲を楽しめました。

Ameo氏:
そうなんです。僕が作りたいゲームの雰囲気を理解してくれているので、「シリアスになりすぎないように」という意図を汲んで曲を作ってくださっていますね。コミカルだったり、街などの賑やかで楽しい感じとかが、ゴキゲンな曲調で表現されていて。音楽もかなり楽しめるゲームになっているので、期待してほしいです。

――本作はどういうプレイヤー層を一番に想定して、楽しんでほしいと考えていますか。

Ameo氏:
一番というとなかなか決めづらいところではあるのですが、僕個人としてはやはりスーパーファミコンがリアルタイムだった世代みたいな、自分と同世代の人々に刺さってもらいたいですね。今回のようにイベントなどに出展した際、海外のお客さんが「Oh, FINAL FANTASY Ⅵ!?」というような反応をしてくれているとすごく嬉しい。

個人的にはそうなのだけれど、ビジネス的にはもうちょっと幅広くさまざまに、たとえば20代のユーザーさんにも楽しんでほしいです。誰でも気軽に触って、気持ちよく遊べるような簡単な作りにしているので。

――操作として「盗む」「走る」「ジャンプ」くらいのシンプルなものの組み合わせなので、とても入りやすいと感じました。

Ameo氏:
ドット絵のもつ魅力に通じると思うんです。「そういう見た目のゲームで、めちゃくちゃ複雑なアクションが要求されることはないだろう」という信頼みたいなものがユーザーさんの中にもあって。多分左スティックで歩き回れるんだろうな、✕あたりでジャンプで、□か△は攻撃ボタンだろう、みたいなそういう感覚。今日一番最初に遊んでくれたお客さんも小学生くらいの小さな子だったんですけど、直感でパッと触って思い通りに動いて、物を取ったらお金が増えた! というシンプルな楽しさはすべての世代の人たちに分かりやすく、通じるものだと思っています。

――最後に、読者へのメッセージをお願いします。

Ameo氏:
『BANDIT KNIGHT』は本当にいろいろな方々の意見を吸い上げながら、今もブラッシュアップを続けています。トレーラーで見かけたビジュアルや、ゲームの内容、設定など、どこかちょっとでも自分の中に引っかかるポイントがあると感じられたら、ぜひ手にとってもらいたいと思っています。現在VTuberさんらとも協力して、動画でのプロモーションを行っているので、そういうところで人が遊んでいるのを見て興味を持っていただけたら嬉しいです。

――ありがとうございました。

『BANDIT KNIGHT』はPC(Steam)にて配信予定。現在、オープンプレイテストも開催中で、リクエストすれば誰でも体験版的にプレイ可能だ。

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Kei Aiuchi
Kei Aiuchi

RPG、パズル、謎解きアドベンチャー、放置系などを遊びます。比較的やりこみ型。特に好きなゲームは『ルーマニア#203』

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