最適化不足に苦しんだ『Cities: Skylines 2』の元開発スタジオCEO、「“Unityの新技術頼み”になりすぎたのが原因」と反省。チームの誤算が招いた“自力実装の悪夢”
Colossal Orderが当初開発していた『Cities: Skylines 2』においては、Unityの新技術についての“誤算”があったという。

Colossal Orderが手がけ2023年10月に発売された『Cities: Skylines 2』は当初、深刻な最適化不足が問題となっていた。その後改善が進められたものの現在Colossal Orderは同作の開発から離脱し、Paradox Interactive傘下のIceflake Studiosが開発を引き継いでいる。
今回、Colossal OrderのCEO・Mariina Hallikainen氏が海外メディアPC Gamerの取材に対し、『Cities: Skylines 2』の最適化が難航した背景を説明。本作のゲームエンジンUnityの当時の新技術に、開発チームが過度に期待を寄せるという“誤算”があったことを明かしている。

『Cities: Skylines 2』は、高い評価を得た都市開発シミュレーションゲーム『Cities: Skylines(シティーズ:スカイライン)』の続編だ。プレイヤーは居住区やインフラなどを整備し、さらに産業を活性化させながら街を一から建設。市民の生活や経済などが複雑にシミュレーションされ、それらのニーズや状況変化に対応しながら街を発展させていく。
そんな『Cities: Skylines 2』はコンソール版が延期となりつつPC版のみ2023年10月に発売。しかし、パフォーマンス面や最適化不足でコミュニティから批判の声が多く上がることになった。その後Colossal Orderは改善アップデートを続けてきたものの、2025年11月、開発元がColossal OrderからIceflake Studiosに変更されることが発表。理由については明かされなかったが、Paradox InteractiveとColossal Order双方の合意による決定として今後はそれぞれ別の道を歩むことが伝えられていた。
今回はそんなColossal OrderのCEO・Mariina Hallikainen氏がPC Gamerの取材に応じ、本作開発中の同スタジオの“誤算”が、最適化の難航を招いていたことを明かした。というのも『Cities: Skylines 2』のゲームエンジンには前作に続いてUnityが用いられており、開発チームは本作のプロジェクトの初期段階に、当時のUnityの新技術を当てにして開発を始動させたという。まだUnityにおいて未実装であった機能を前提にしてあらゆる計画を立てていたとのこと。しかし実際にはそうした新技術は本作の開発においては機能が不十分であり、欠けていたり動かなかったりする機能を補うために、むしろ自前での実装が必要になるものが多く発生していたという。

具体的には、本作にはHDレンダーパイプライン(HDRP)やECS(Entity Component System)など当時のUnityの新技術を採用。HDRPはハイエンドデバイス向けの高品質な描画に強いレンダーパイプラインであり、土台となるスクリプタブルレンダーパイプラインではC#を用いて細かな制御が可能となっている。そしてECSは、オブジェクトのデータと処理を分け、データ指向で扱うことで、効率的なメモリアクセスや並列処理を実現する仕組みだ。そうした新技術で、グラフィック面とパフォーマンス面を両立させる狙いもあったのだろう。
しかし同氏によれば、開発当時のHDRPのシェーダーパイプラインにおいては、Shader GraphのCustom Interpolatorsのような中核機能が欠けており、またECSについても長時間ジョブを実行する場合のサポートが十分ではなかったという。実際、Custom Interpolatorsは2021年10月に正式実装されるも、その後現在に至るまで改善が続けられており、最新LTSバージョンであるUnity 6.3においてもまだ制約が存在。ECSに至っては2023年6月に正式リリースされたため、発売時点でもかなり新しい技術だったと言える。ただ、将来性も考えた上で、そうした未成熟な新技術でも先んじて導入したいという思惑があったようだ。
Hallikainen氏は、あくまでそうした状況は未実装の技術に賭けた同スタジオのミスであったと後になって思い知っているとのこと。そして一連の課題は、開発における大きな足かせになったという。とはいえUnityを手がけるUnity Technologiesとは開発期間を通してコミュニケーションをとり、非常に良好な関係を築いているそうだ。開発において同社が極力サポートをしてくれたことも強調されており、Unity Technologies、Paradox Interactive、Colossal Orderの誰もが本作においてできる限りのことをしてきたと伝えている。なおColossal Orderでは新作もUnityにて開発を進めているそうだ。

ちなみに本作の発売後には、あるソフトウェア開発者によって独自の分析がおこなわれ、Colossal Orderによる“予想外の自力実装”の痕跡から、パフォーマンス面の課題が生まれているのではないかとの推察が伝えられていた(関連記事)。この際にもECSにおける課題点などが分析されており、今回のHallikainen氏の発言はそうしたユーザー分析の裏付けともいえるだろう。大手スタジオではUnityやUnreal Engineといった汎用エンジンを独自にカスタマイズする開発方法も一般的ながら、リソースの限られた中小規模のスタジオでは大幅なカスタマイズが困難なことも改めてうかがえる。
先述したとおり現在『Cities: Skylines 2』はColossal Orderの手元を離れ、Iceflake Studiosが開発を引き継いでいる。すでに複数回のアップデートが配信され、新要素の追加や不具合修正が実施済み。Colossal Orderの“誤算”から立て直しが続けられていた本作ながら、Iceflake Studiosによって今後もさらにブラッシュアップが進められていくとみられる。依然として課題も抱えている『Cities: Skylines 2』がどのように磨き上げられていくのか、引き続き注目したい。
『Cities: Skylines II』は、PC(Steam/Microsoft Store)向けに発売中。Xbox Game Pass向けにも提供されている。
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