『Slay the Spire 2』にて「1ターン必勝だけど勝つまで“数千兆年”かかる」コンボが発見される。永遠に続く「ずっと俺のターン」

デッキ構築型ローグライト『Slay the Spire 2』にて「1ターン必勝」を誇りながら、事実上の敗北を余儀なくされるデッキが話題となっている。

デッキ構築型ローグライト『Slay the Spire 2』にて、とあるコンボがReddit上で話題を呼んでいる。というのも、そのデッキは「1ターン必勝」といえるほどの圧倒的な力を誇りながら、とある理由により事実上の敗北を余儀なくされるそうだ。“勝てるのに勝てない”、そんなジレンマを抱えたコンボが注目を集めている。

『Slay the Spire 2』はMega Critが手がけるデッキ構築型ローグライクゲームだ。前作『Slay the Spire』は2017年にSteamで早期アクセスの配信を開始したのち2019年に正式リリース。その高い中毒性と戦略性は後続の作品に多大な影響を与えている。本作はその待望の続編として、今年3月6日に早期アクセス配信を開始した。

本作では、プレイヤーは三層に重なる塔をモンスターとの戦闘を挟みながら登頂していく。戦闘は毎ターンデッキから引かれる5枚のカードの中から行動を選択して進行する。カードは戦闘報酬などで1枚ずつ入手でき、塔を登るたびにデッキ構成が変化していく。こうしたローグライク要素による予測不能なプレイ体験が本作の最大の特色となっている。

そんな本作において注目を集めているのが、Redditユーザーのdarquintan1氏が投稿した「カスケード」を利用したコンボだ。「カスケード」は「山札の上からX枚のカードをプレイする」という効果を持つアイアンクラッドのスキルカード。消費したエナジーの数だけ山札のカードをコストを踏み倒して発動するため、先の展開が予想しにくい反面、一発逆転を狙える豪快なカードとなっている。

さらにアップグレード版である「カスケード+」になると、「X枚」が「X+1枚」に強化され、エナジーが0の状態でも最低1枚は山札からカードを発動できるという利点が加わる。

それに併せて、レリック「ケミカルX」を手に入れると「カスケード」は飛躍的に性能を向上させる。「ケミカルX」は「コストXのカードの効果が2増加する」という効果を持つショップ限定レリックだ。これを所持した状態で「カスケード+」を使用すると山札の上から発動できるカード枚数は「X+3枚」まで伸び、エナジー0でも3枚のカードをコスト無視で発動できるという、破格のパフォーマンスを発揮する。

この時点ですでに強力なコンボだが、darquintan1氏はさらに手を加える。同氏は「カスケード+」に「クローン」エンチャントを付与。「クローン」は対象のカードに「休憩所で複製できる」という効果を与えるエンチャントで、ACT2開始時にパエルが出現した場合、レリック「パエルの膿」を選択することで山札の任意の1枚に付与できる。これにより休憩所に「複製」の選択肢が追加され、それを選ぶことで「クローン」付与カードをデッキ内に増殖させることが可能になる。

なお「複製」を行うと、アップグレードやエンチャント情報もそのまま複製先に引き継がれる。つまり「クローン」エンチャントもコピーされるため、2回目以降に「複製」を選ぶと、山札内のクローン付きカードがまとめて複製され、2枚が一気に4枚へと倍加する。したがって、「複製」は1枚ずつ増えるのではなく、2枚、4枚、8枚、16枚と倍々に増殖していく仕組みになっている。

darquintan1氏はこの複製効果を活用し、最終的に「カスケード+」を64枚まで増殖させたという。さらにレリック「ケミカルX」も揃え、理想的なデッキが完成したと考えていたようだ。

そして同氏は戦闘にて「カスケード+」を発動。まず最初の「カスケード+」が山札の上から最低3枚以上のカードを呼び出し発動する。山札の大半が複製された「カスケード+」で占められているため、「カスケード+」で「カスケード+」を呼び寄せるかたちになり、次の「カスケード+」が発動する。このとき、最初のXコストの発動ですでに所持エナジーは0になっているものの、アップグレードによる「X+1」と「ケミカルX」の「X+2」が加算され、0コストでも3枚のカードを山札から発動する挙動になる。このようにして「カスケード+」が連鎖的に発動し続ける自動ループへと突入するわけだ。

このコンボの最大の特徴は、一度発動するとプレイヤーでも止めることの出来ない自動ループが出来上がる点だ。先日もオスティのHPを実質無限化するループコンボが話題となったが(関連記事)、あちらはプレイヤーによる能動的な操作が前提だった。一方で「カスケード+」を用いたこの構成は、カードをすべて消費し切るか、敵を倒し切るまで止まることはない。わずか1枚からコンボを始動できる手軽さに加え、キーカードが初手に揃う確率も非常に高いため、安定性に優れた強力なコンボといえる。darquintan1氏はこのビルドを「確実にワンターンで勝つことが出来るデッキ」と称している。しかしこのデッキには大きな落とし穴があったようだ。

というのも、本作のボスには、ACT3に登場する「実験体」のように、HPを0にすると次のターンに強化形態となって復活する、いわゆる形態変化能力を持つものが存在する。こうした敵は最終形態を除き、HPを0にしたターン中は無敵状態となるため、それ以上のダメージを与えることができない。言い換えれば、プレイヤーが自ら「ターン終了」を選ばない限り、次のフェーズへ移行させることができない仕組みになっている。

こうした状況で「カスケード+」コンボを発動すると、無敵状態の敵に対してデッキ内の「カスケード+」をすべて使い切るまで止まらない「ほぼ無限」ループが発生してしまうのだ。前述の通り、このコンボは一度回り始めるとプレイヤーが介入できなくなるため、darquintan1氏は約1時間にわたり、「ただ防御カードが繰り返し発動するのを眺めるだけ」の状態に陥ったという。同氏の試算では、このループが収束するまでに必要なカードプレイ数は3の64乗に近く、完了には数千兆年かかるだろうと語った。厳密にはかかる時間の計算は諸説あるものの、いずれにせよ途方もない時間がかかるようである。残念ながらそこまでの時間はかけられないとし、同氏は最終的に登塔は諦めたようだ。勝負には“必勝”ながら、試合には“必敗”するこの奇妙なコンボにRedditでは注目が集まった格好だ。

なお、本コンボは一見すると無限ループのように見えるが、Redditユーザー間では、実際には終わらないのではなく、先述したとおり単に解決までに途方もない時間を要するだけだとみられている。この点は挙動の細かい理解が必要になるが、「カスケード」はカードを1枚ずつ順に引いて処理するのではなく、まず複数枚まとめて引き込み、その後に1枚ずつ処理を開始していく仕様になっている。さらに、引き込んだカードはすべての処理が完了するまで手札や捨て札に移らず、“プレイエリア”に留まり続ける。

たとえば最初の「カスケード+」(a)が3枚の「カスケード+」(b/c/d)を引き込んだ場合、それら(b/c/d)の処理が終わるまで(a)は捨て札に送られず、プレイエリアに残り続ける。そして(b/c/d)もまた次の「カスケード+」を連鎖的に呼び出すため、処理はさらに後ろへと押し延ばされていく。いわば幹から枝へ、枝からさらに枝へと分岐が広がるように、効果が連鎖しながら際限なく先送りされていく構造になっている。

そしてカードを引き続け、山札が0枚となり山札へと戻る捨て札も0枚となった場合、最後の「カスケード+」は事実上の不発となり、捨て札へと送られる。続いて、プレイエリアに残存している最後から2番目の「カスケード+」の処理が開始する。この際、直前に捨て札へ送られた「カスケード+」が山札へ戻って再び発動するが、同様に不発となり、両者の処理が完了する。そして次は最後から3番目の「カスケード+」が発動し、山札(捨て札)にある2枚の「カスケード+」を再発動させる流れとなる。こうして1枚ずつ処理を完了させていくのだ。

このようにして、プレイエリアに残存している数十枚の「カスケード+」の効果処理がすべて終わるまで、アイアンクラッドのターンが継続し続けるわけだ。処理は確実に1枚ずつ進んでいくため厳密には「無限ループ」ではないものの、処理が進むにつれて指数関数的に「一巡」の時間が増えていくのが想像できるだろう。

YouTube上にもさっそく当コンボを活用したプレイヤーの動画が公開されており、その挙動が確認できる。こちらのビルドでは「供物」を採用することでループコンボへと突入する模様。当該動画では約15分にも及ぶ自動ループの末、ACT3ボスの「実験体」を撃破している。同投稿者が「ほぼ無限」ループに陥らなかったのは、「ケミカルX」を所持していなかったため、序盤の段階で適度にループが途切れたことが要因のようだ。1ターンで処理できない敵が確認できる場合は、「ケミカルX」をあえて取得しないという立ち回りも選択肢になりそうだ。

今回話題を集めたのには、実用性の高い最強ビルドでありながら一方で、状況によっては「終わらない戦闘」によって事実上の“詰み”を招いてしまう皮肉な点が、Redditユーザーの好奇心を刺激したようだ。なお今月13日に配信された本作のアップデートでは、オーバーフローに対応するためHPを9億9999万9999に制限するというパッチが適用されている。Mega Critは強すぎるシナジーはナーフさせる方針を示しており(関連記事)、制御不能なループに突入する本コンボが修正されるのかどうかにも注目が集まりそうだ。

『Slay the Spire 2』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。なお、本作は日本語表示に対応している。

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Kousetsu Taguchi
Kousetsu Taguchi

レトロゲームショップに入ると真っ先にセガサターンのコーナを確認するタイプです。

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