大手レビューサイトMetacriticにて、老舗メディアの『バイオハザード レクイエム』レビューが削除される。“存在しないライターの生成AIレビュー疑惑”が浮上し
レビュー集積サイトMetacriticに掲載されていたVideoGamerによる『バイオハザード レクイエム』のレビューが取り下げられることになった。

レビュー集積サイトMetacriticに掲載されていた海外メディアVideoGamerのレビューが一部取り下げられることになった。当該レビューは生成AIによって作成されたものではないかとの疑いが寄せられていた。Kotakuが報じている。
Metacriticは、ゲームや映像作品のレビュー集積サイトだ。同サイトではメディア・批評家のレビューを作品とそのプラットフォームごとに集積し、それぞれの評価とメディアの影響力を鑑みて重みづけしたメタスコアと呼ばれる数値を算出している点が特徴。メタスコアが“ゲームの出来栄え”を示す値となりうるかには議論もあるものの、ゲーム業界では一定の権威を持つ指標となっている。
今回はそんなMetacriticのメタスコアにおける『バイオハザード レクイエム』のメディアレビューのうち、VideoGamerによるレビューが不自然だとして物議を醸していた。Kotakuはこのレビューについて、ゲームの具体的な内容やプレイ感に関する記述ではなく、抽象的でお決まりの表現に満ちていると指摘している。たとえばレビューの一部を見てみると、特に脈絡もなく「It happens like clockwork with every major Resident Evil Requiem leak, doesn’t it? We worry if the developers can balance the scales.(まるで時計仕掛けのように、『バイオハザード レクイエム』の大きなリークがあるたびに同じことが起こるよね?私たちは開発者がバランスを取れているのか不安になる。)」といった文章が含まれている。このほかにも一文ごとに話題が目まぐるしく飛びまくっていたりと、レビュー以前に文章として不自然な内容といえる。

なおVideoGamer自体は20年以上運営されてきた老舗ゲームメディアだ。Metacriticにも数多くのレビューが掲載されており、たとえば『バイオハザード ヴィレッジ』でもレビューは存在。この際にも比喩などは多めに含まれていたものの、ゲーム内容を交えつつしっかりとした批評がおこなわれていた。また昨年のレビューを読む限りでも内容に不自然な点はないように見える。
そのためVideoGamerのレビューに“異常”が生じたのは最近のようだ。今回の『バイオハザード レクイエム』のレビューの著者はBrian Merrygold氏なる人物であり、本作のレビューの投稿前日となる2月24日に掲載された『ゴッド・オブ・ウォー スパルタの申し子』のレビューも担当している。メディア向けプレビューが可能となるタイミングは作品によってまちまちであり、プレイや執筆自体は不可能ではないだろう。ただVideoGamerにおいてBrian氏がレビューを執筆したのはこの2本のみ。また直近ではShooter Orson氏が『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』のレビューを、Sophie Andersson氏が『Styx: Blades of Greed』のレビューを担当しているが、それぞれ初のレビュー記事となっている。
これらのレビュー記事ではそれぞれ程度は異なるものの比喩が多かったり、冗長だったりといった共通点もある。またVideoGamerのレビューでは末尾にレビューにおいて使用されたプラットフォームやメーカーからコードの提供を受けていることが記載されてきたが、Brian氏・Shooter氏・Sophie氏のレビューはすべて末尾にそうした記載がないなど、これまでのレビューとフォーマットも若干異なっている。何よりもこれまでVideoGamerでレビューを担当してきたライター陣を差し置いて、4連続で“怪しいレビュー”が投じられている状況といえる。それぞれ状況証拠にすぎないものの、レビュー内容の不自然さも踏まえて疑念も強まるところだろう。

加えてBrian氏についてはプロフィール写真のURLにおけるファイル名が「ChatGPT-Image-Oct-20-2025-11_57_34-AM-300×300.png」となっている。ChatGPTで生成された画像ではないかといった推測も生じ、実在の人物かどうかも疑われているようだ。
KotakuがMetacriticの共同創設者Marc Doyle氏のコメントとして伝えるところによると、そうした状況を受けてMetacriticからは『バイオハザード レクイエム』のレビューも含め、今年投稿されたVideoGamerのレビューが複数件削除されたという。この中では先述した『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』のレビューも削除された模様だ。
なおMarc氏はMetacriticのレビュー元メディアとして認められるために厳格な審査プロセスがあることを説明(関連記事)。VideoGamerも約25年にわたって信頼できるレビュー元であったものの、メディアが売却されたり、スタッフが入れ替わったりした場合に、盗用や生成AIによるレビューといった不正が発生しうる点に懸念を示した。

VideoGamerについては、2025年8月にClickout Mediaに買収されたことが報道された。また同誌のほかにもAdventure GamersやThe EscapistといったゲームメディアがClickout Mediaに買収されたと報じられている。それぞれゲーム関係の記事に交じってオンラインギャンブル関係のトピックが扱われたり、VideoGamerに至ってはサイト内にオンラインギャンブルサイトへのリンクが設けられたりといった変化がみられるようになった。
また今月に入ってからClickout Media傘下のゲームメディアでは“生成AIへの転換”が進められているとの報道もみられた(Kotaku)。実際、この報道と同時期にはVideoGamerのライターであったCat Bussell氏が自身を含むチームが解雇されたと報告。またThe Escapistの寄稿編集者であったLloyd Coombesも同誌を解雇されたと伝えていた。
いわばそうした報道の直後に、VideoGamerが生成AIによって出力された疑いのあるレビューが投じられたかたち。今後同誌が投稿するレビューにおいても、Metacriticがメタスコアに集計するかどうかは注目されるところだろう。
なお近年では特に欧米でのゲーム業界の苦境に伴って、大手ゲームメディアでも大幅な人員削減や売却など、体制に大きな変化が見られたメディアもある(関連記事1、関連記事2)。運営チームや親会社の変化したメディアはVideoGamerだけではないわけだ。今後も運営年数の長さなど一定の信頼性のある別のメディアにおいて、記事に“異変”が発生する可能性はゼロではないだろう。今回のメタスコアの事例は、メディアの体制の変化が、メディアそのものへの信頼を前提とする仕組みにも影響しうることを物語っているかもしれない。
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