ゲームエンジンGodot開発者、「“雑な生成AI製コード”の変更提案が殺到してチームがクタクタ」と悲鳴。オープンソースゆえの深刻な悩み

Godot Engineにて、現在生成AI製の雑多なプルリクエストに悩まされている状況があるようだ。

オープンソースのゲームエンジン「Godot Engine」について、現在数多くのプルリクエスト(コードの追加/修正反映依頼)が寄せられ、レビュー担当者やメンテナーが疲弊しているのだという。数多くのプルリクエストの中には、生成AIの“意味不明”なものも多くみられるそうだ。

Godot Engineは、PC/モバイル/Web向けゲームおよびアプリを制作できる2D/3Dゲームエンジンだ。オープンソースとして提供され、完全無料で利用可能。開発にかかるコストは寄付によって賄われている。近年インディーゲームを中心として採用例が増えており、大手スタジオでも用途に応じて用いられることがあるゲームエンジンだ(弊誌インタビュー記事)。

Godot EngineはGitHub上でバージョン管理されており、ユーザーは誰でも自由に提案、ディスカッションに参加できるほか、プルリクエストによって変更をおこなうことも可能だ。プルリクエストはコントリビューターなどによって内容が確認され、承認されれば指定のブランチにマージ(統合)される。

Godot's GitHub has increasingly many pull requests generated by LLMs and it's a MASSIVE time waster for reviewers – especially if people don't disclose it. Changes often make no sense, descriptions are extremely verbose, users don't understand their own changes… It's a total shitshow. #godotengine

Adriaan (@adriaan.games) 2026-02-16T09:03:52.727Z

そんなGodot Engineについて、関係者が生成AIによる“被害”を受けている状況を次々こぼしている。ゲームデザイナーであり、人探しパズル『Hidden Folks』のディレクターを務めているAdriaan de Jongh氏は、BlueSkyに現況を投稿した。

同氏によれば、Godot EngineのGitHubには現在LLM(大規模言語モデル)によってAI生成されたプルリクエストが急増中なのだという。さらに生成AI製である旨も明記されていない場合、プルリクエストの妥当性などを判断するレビュアーにとって、膨大な時間の浪費につながっているとのこと。生成AIに由来するプルリクエストは、往々にして意味不明(make no sense)で、説明文は極めて冗長(extremely verbose)、そしてリクエスト者自身が変更点を把握していない、という事態もあるようだ。

Adriaan氏の投稿に対し、Godot Engineのプロジェクトマネージャー兼メンテナーで、Godot向けサービスなどを手がけるW4 GamesのCCOでもあるRémi Verschelde氏が反応。Godot Engineのメンテナーとして、AI製の雑多なプルリクエスト(AI slop PRs)が現場を疲弊させ、士気低下を招いていると指摘している。

Honestly, AI slop PRs are becoming increasingly draining and demoralizing for #Godot maintainers.If you want to help, more funding so we can pay more maintainers to deal with the slop (on top of everything we do already) is the only viable solution I can think of:fund.godotengine.org

Rémi Verschelde (@akien.bsky.social) 2026-02-16T15:33:57.699Z

Rémi氏は続く投稿にて、プルリクエストをレビューするにあたっては、説明部分がLLMによる生成だったとしても、コード部分が人によって書かれたものが含まれているのか、作成者がコードそのものを理解しているかといった部分まで考慮しないといけないと説明。さらにコードがテストされたのか、テスト結果が捏造でないかどうかのチェックも必要だという。加えてコードにミスがあった場合、生成AIによって書かれたために間違っているのか、コードを記述した人の単なるミスだったのかを判断することも難しくなっているとのこと。

Rémi氏はGodot Engineの方針として、新たなコントリビューターを歓迎し、あらゆるユーザーがエンジンに影響を与えられる可能性があることを大切にしていると説明。そのためメンテナーが新規コントリビューターをサポートし、プルリクエストをマージ可能な状態にできるよう時間をかけているとしつつも、この状態をいつまで続けられるかわからないと今後への懸念も明らかにした。生成AIによる“粗雑なプルリクエスト”が多く寄せられるなかで、管理やチェックの負担が急激に上昇しているという状況があるようだ。ちなみに現在、Godot Engineのページではプルリクエストが4700件ほど寄せられている。生成AIを用いたプルリクエストの割合は不明ながら、精査には多大な労力を割くことになるだろう。

なおGitHubではかねてより低品質なコントリビューションの増加が問題視されており、2026年1月には運営元からの声明が発されていた。声明では所有者がプルリクエストの権限を細かく設定できる機能を追加したり、メンバーのコントリビューションをトリアージできたりするようなツールの追加など、短期/長期における解決策が示されており、順次開発中であると伝えられている。

ちなみにゲーム開発者会議Game Developers Conference(GDC)を運営するInforma Techが毎年実施している業界調査「STATE OF THE GAME INDUSTRY」において、今年は生成AIに関しては、ゲーム業界関係者の36%が使用しているというアンケート結果が示されていた(関連記事)。主な用途としては調査・アイデア出しや日常業務のほか、コードアシスタントに使用しているとの回答が47%となっており、ゲーム業界での実務にも一定の浸透を見せている様子もうかがえる。

とはいえ、幅広いユーザーからプルリクエストが募られるオープンソースの開発形態では、生成AIで出力され精査されないままのコードなどが問題を引き起こしているようだ。GitHub側の対策の導入や、Godotが現状のフローを維持できるかどうかも含めて、今後の動向には注目が寄せられるところだ。

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Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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