Googleの新“ワールド生成AI”が「生成拒否するゲーム」に注目集まる。『ブレス オブ ザ ワイルド』風は作るけど『キングダム ハーツ』風だと弾くプロトタイプ
一部のタイトルに似たコンテンツが生成時にブロックされることが判明している。

Google DeepMindは1月30日、生成AIアプリケーション「Project Genie」を米国の一部のユーザーを対象に公開した。既存のゲーム作品に似たコンテンツも生成可能であると話題になる中で、一部のタイトルについては生成時にブロックされることが判明している。海外メディアThe Vergeなどが報じている。
Project GenieはGoogle DeepMindが開発するWebアプリケーションだ。テキストや画像を入力することで、インタラクティブなワールドとそこで探検可能なキャラクターを生成することができる。ワールドモデルである「Genie 3」をベースに、画像生成モデル「Nano Banana Pro」などを統合することで実現しているという。

ベースとなるGenie 3は2025年8月に発表。720pかつ24fpsのインタラクティブな映像を、数分間にわたって一貫性を保って生成できる点がアピールされ、ゲームのようなコンテンツを誰でも簡単に作れるようになるとして大きな注目を集めた。その後少数のテスターを対象としてプレビューがおこなわれてきたGenie 3だが、このたび実験段階のプロトタイプとしてWebアプリ「Project Genie」にて利用可能となった。同アプリではいちどに生成できるコンテンツが60秒間に限られており、まずはGoogle AI Ultraプランに加入している米国在住のユーザー向けにリリースされている。
さっそくさまざまなユーザーが生成したワールドの様子を共有する中、The VergeのライターであるJay Peters氏が興味深い結果を伝えている。同氏はまず、『スーパーマリオ64』『メトロイドプライム4 ビヨンド』『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』など任天堂のIPについてプロンプトで指示。すると、本物に近い見た目のコンテンツが生成されたようだ。あくまで移動だけであり同氏の環境では入力遅延も大きかったそうだが、特に『ブレス オブ ザ ワイルド』では、マップの作りやキャラクターの歩き方、さらにはパラセールによる滑空まで再現されている。

一方で、上手く生成することができなかったタイトルもあった様子。それはスクウェア・エニックスの『キングダム ハーツ』だ。Peters氏は生成時の環境の指示として、「スチームパンクな雰囲気」「ディズニーキャラクターでいっぱい」といった説明に加えて、ドナルドやグーフィー、ジャック・スケリントン、クラウド・ストライフといったキャラクターの名前を明記。またプレイキャラは「鍵のような剣を振るうトゲトゲ頭のアニメ風ティーンエイジャー」として、同作の主人公ソラを彷彿とさせる説明を記した。しかし、そうしたプロンプトではワールドの生成がおこなえなかったそうだ。
そこで、キャラクターたちの名前を削除し、代わりにそのキャラクターの概要を書いたところ、そのキャラクターたちが並んで歩く後ろ姿のサムネイル画像が生成されたという。ただし、その後のワールドの生成はブロックされてしまったとのこと。

なおそうした結果を踏まえてThe VergeはGoogle DeepMindのプロダクトマネージャーであるDiego Rivas氏に取材をおこなっている。Rivas氏によれば、Project Genieは実験的な研究用プロトタイプであり、綿密な監視をおこなうとともに、ユーザーのフィードバックに耳を傾けていると回答。また同氏は続けて、Genie 3モデルがおもにWeb上に公開されているデータで訓練されていることも明かした。
具体的にWeb上のどのようなデータが学習データとして用いられているかは現時点では発表されていないが、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に似た生成などが可能だった背景には、YouTube等の動画共有プラットフォームに同作のプレイ動画が多数上がっていることも影響しているのかもしれない。なおThe Vergeによれば、現時点では『スーパーマリオ64』に基づいたワールドの生成はすでにおこなえなくなっているとのこと。前述したRivas氏の回答を踏まえると、学習データに含まれるデータによっては、権利を侵害するコンテンツが生成できてしまう場合もあるが、Googleではそれらを監視しつつ、必要に応じて制限していくという方針を取っているのだろう。
ちなみに、2024年2月にOpenAIがリリースした動画生成モデル「Sora」では、YouTube上の動画を学習データに使用した疑いが浮上し物議を醸していた。当時のBloombergのインタビューでは、YouTubeのCEOであるNeal Mohan氏がOpenAIを批判した上で、GoogleではYouTubeの利用規約に則ったかたちでGeminiの学習をおこなっていると主張していた。学習データに著作物を無断で利用してよいかという点は世界各国で議論を呼んでおり、ましてや今回の事例のように、ユーザーが生成AIを用いてその著作権を侵害するコンテンツを生成できてしまうというのは問題であろう。現時点ではあくまでプロトタイプ段階であり、今後解消がされることも期待される。
Project Genieによって提示された「ワールドモデル」と呼ばれる新たな技術は、ゲーム業界にも大きな影響を与える可能性を秘めている一方、その広範な利用を推進するうえでは、多くの課題が残っていると言える。Project Genieに限らず、実在するゲーム作品に酷似したコンテンツが生成されうることについて、AI開発をおこなう各社が今後どのようなスタンスをとっていくのか注目される。
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