「ゲームを殺すな」運動、署名約130万件を集め法制化に一歩前進。「サポート終了で遊べなくなるゲーム」の保護運動

「Stop Killing Games(ゲームを殺すな)」運動について、ユーザー署名が規定数を超えたため、欧州委員会にて審議入りとなるようだ。

「Stop Killing Games(ゲームを殺すな)」(以下、SKG)運動の中核メンバーである Moritz Katzner氏はRedditにて、同団体がEUで集めた署名のうち、約130万件が認められたことを報告した。これは欧州委員会で審議を始めるために必要な最低署名数100万筆を超える数字だ。これにより、今後欧州委員会で法制化に向けた審議が始まるものとみられる。PC Gamerなどが報じている。

SKGは、ゲームがオンラインサービスを終了したあとも、購入者が自由にゲームをプレイできるよう企業に義務化を求める市民運動だ。2024年にレースゲーム『ザ クルー』が、ゲームサーバーの終了に伴い、当時オンライン専用だった同作のプレイ自体が不可能になったことを受け、YouTuberであるRoss Scott氏が同団体を立ち上げた(関連記事)。同運動は、『ザ クルー』に限らず、オフラインの代替手段なしにサービスを終了させてはならないことを明文化するよう求めている。

『ザ クルー』

SKGはEUでの法案化を目指し、「European Citizens Initiative(ECI)」に基づく署名運動を2024年に開始した。ECIとは、加盟国7カ国から100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対し立法を提案することができる制度。署名の収集期間は1年間と限定されており、SKGは2024年7月末から2025年7月末の1年間にわたりEU内で署名を集めていた(関連記事)。署名数は長らく40万件台で停滞していたものの、最終月である2025年7月にXでのオンラインデモを受け爆発的に増加。1か月で約100万筆に近い署名を集め、最終的に目標署名数である100万件を大幅に超える約145万件の署名を集めた。

集められた署名はその後、所管官庁の検証によって有効な署名数が確定される。この度のMoritz Katzner氏のポストは、提出された約145万件のうち、129万4188筆が有効署名と認定されたことを報告するものだ。審議化に必要な100万筆を突破したため、これから欧州委員会で検討が開始され、その後の判断に応じて法制化に向けた審議に進む可能性がある。

ちなみに、有効と認められた署名数は提出された署名数の約90%に達する。Moritz Katzner氏はこの点について、過去に実施されたECIの中でも間違いなくトップ3に入る認定率の高さだろうと語っている。この認定署名率の高さは、本件に対するEUゲーマーの問題意識の高さが表れているといえるだろう。

なお、SKGの署名運動はイギリスでも行われており、同国では約20万件の署名を集めた。昨年12月には早くも英国議会で本件に関する審議が行われ、議会では複数の国会議員が購入したゲームに対する保証が欠如していることを主張し、政府に改善を求めた(VGC)。政府はそのような消費者心理を認めた一方で、オンラインサービスの維持には多額の資金が必要になること、またユーザー主導のサービスには違法・有害コンテンツに対するセキュリティが低下する可能性などを挙げ、法制化には慎重な姿勢を見せている。

またSKGの主張への反論は、議会以外からも寄せられている。例えば、EUのゲーム系ロビー団体「Video Games Europe(VGE)」はSKGが「企業は、オンラインサービスを打ち切るのであれば、プレイヤーがプライベートサーバーを運営できるようにすべき」とする提案に対して意見を述べている。VGEの主張によれば、プライベートサーバーでは、プレイヤーデータの保護や、違法コンテンツの削除、安全でないコミュニティコンテンツへの対策といった保護措置が存在しないとのことで、常に有効な代替手段とはならないだろうとの見解を示している。また、多くのゲームは最初からオンライン専用として設計されているため、SKGの提案を前提とした制作はビデオゲームの開発コストを法外に高くするだろうと警告を発した(VGC)。

上述の反論のように、「ゲームをいつまでも遊べる」ようにするためには、多大なコストを必要とする。実際に『ザ クルー』第1作では、サーバーインフラの維持やライセンス契約といったコスト面の問題が配信停止決断の背景にあったと伝えられている(関連記事)。その一方で、SKGが「オンライン専用ゲームであっても、サービス終了後も遊ばせてほしい」とする多くのゲーマーから賛同を集め、100万件を超える署名を提出したのも事実である。SKGの主張や、それに対する批判も含めて、これから欧州委員会などで検討や議論が始まるのだろう。もしEUで法制化が実現すれば、その規制は欧州のみならず全世界に影響を与える可能性もある。欧州委員会の動向に大きな注目が集まっている。

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Kousetsu Taguchi
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