著名映画監督による「Unreal Engineの台頭で映画のCGクオリティ落ちた」との発言に、Epic Games幹部が反論。悪いのはUEじゃない
Unreal Engineの普及によって、映画のVFX表現が“好ましくない変化”を遂げているとする著名映画監督の発言に対して、Epic Gamesサイドが反論した。

Unreal Engineの普及によって、映画のVFX(視覚効果)表現が“好ましくない変化”を遂げているとする著名映画監督の発言に対して、Epic Gamesサイドが反論した。その直接的原因をUnreal Engineに求めるのは正確ではないとの姿勢を明確にしている。
Unreal EngineはEpic Gamesが開発するゲームエンジンだ。フォトリアルな美麗グラフィックが特徴で、Unityと並んで業界標準とも言える立ち位置を確立している。『サイバーパンク2077』を手がけたCD PROJEKT REDなど大手スタジオでも採用が進み、ゲームのみならず映画や建築などさまざまな分野で活用されている。

発端となったのは、昨年11月に映画監督のGore Verbinski氏が海外メディアBut Why Tho?のインタビューで放った発言だ。Verbinski氏は「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや「ザ・リング」など、多数の大ヒット映画作品で監督を務めた人物。インタビューにて、VFXの見た目がどうして昔と比べて良くないのかと問われた同氏は、Unreal EngineがVFXの世界に導入されたからだと回答。ゲームの分野で優れるUnreal Engineを、映画にも転用できるのではないかと人々が考え始めたことで、映像表現における“ゲーム的な美学”が映画の世界に入ってきたのだとする見解を示した。
Verbinski氏はUnreal Engineの映画制作への活用について、マーベル作品のように、観客が極端に非現実的な現実の中にいることを理解している場合は良いものの、厳密に写実的な観点では上手くいかないとの私論を述べている。たとえば、Subsurface Scattering(表面下散乱)や肌に光が当たった際の反射の仕方が根本的に異なり、そのせいで生き物のアニメーションでは「不気味の谷現象」が起きてしまうという。また、動きがリアルでないと脳が「現実ではない」と認識してしまうとして、ライティングや撮影技術といった見た目だけが重要なわけではないとも述べた。

一方で、Epic GamesでVFXスーパーバイザーを務めるPat Tubach氏がこの意見に反論するかたちでVGCをはじめとする海外メディアに対して声明を出した。Tubach氏は20年以上にわたって映画やテレビの視覚効果に携わった経歴をもち、アカデミー賞の「視覚効果賞」には、「スターウォーズ」シリーズ作品にて過去4度ノミネートされている。
同氏によれば、VFXやCGの現状についての誤った認識を一つのツールのせいにするのは、業界の誰が言ったとしても間違いだと明言。コンピューターグラフィックスの美学や技術はソフトウェアではなくアーティストから生まれるものだとして、業界における作風の変化がUnreal Engineの登場に由来するものであるとの考えを否定した。さらに、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のような大作VFX映画に携わったアーティストたちであれば、Unreal Engineのような強力なツールを使えばどんなに仕事が捗るか夢見ていたはずだと発言。Verbinski氏に対してUnreal Engineの価値について改めて訴えたともとれる発言だろう。

なお同氏が言及するように、映画のCG制作におけるUnreal Engineが占める役割としては、最終的に映像を構成するピクセルを作るだけでなく、バーチャル背景を用いたリアルタイム撮影を指すバーチャルプロダクションや、プレビズとよばれる検証段階での仮の映像の制作などがある模様。用途は多岐にわたるようだ。Unreal Engineの映画制作における貢献度は、映像のリアルさの一点のみでは測れないというわけだ。
Unreal Engineの登場により、少ないコストでリアルな映像が制作可能となり、同エンジンはゲームの領域を超えて映画業界にも普及。その結果、十数年前に見られたようなVFXの良さが失われつつあるとの意見も唱えられた。ただ、反論したTubach氏の考えを踏まえると、あくまでもUnreal Engineはツールであり、どれだけリアルな画を作り出すかは、それを扱うアーティスト次第であるということなのだろう。加えて、ゲーム業界においては過去十数年でグラフィックが大きな進化を遂げており、時代の変遷とともに“リアルさ”の基準も移り変わっている。もっとも、映画業界とは進化のスピードも大きく異なると思われる。とはいえVerbinski氏が言及したUnreal Engineへの懸念は、同エンジンの機能的な発展とともに、アーティストが扱いに慣れ、表現や技術面が成熟するといったかたちで、時間とともに解決される問題かもしれない。
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