アクションRPG『フィルナーの伝説』はなんでも“鬼盛り”でかなり欲張り、特にパズル。令和に生まれたレトロRPGは、物量&品質両立のてんこ盛り
パズルまみれアクションRPG『フィルナーの伝説』を紹介する。

パブリッシャーのAnother Indieは1月15日、PC(Steam)向けに『フィルナーの伝説』を発売した。
『フィルナーの伝説』は、ノスタルジックなRPGの魅力と現代的なクラフト要素や成長要素を融合させた、シングルプレイ専用のアクションRPGだ。魔法が息づくヴォラント大陸に流れ着いた記憶喪失の主人公は、冒険者となってこの世界を揺るがす陰謀に立ち向かっていく。旅の途中ではさまざまな人々と関わることになり、そのなかでこの世界や主人公自身の秘密が徐々に明かされることになる。「初RPGの感動を再体験!」を標榜する通り、古典的なJRPGの遊び心地と現代的なクラフト要素や成長システムを組み合わせた懐かしくも新しいアクションRPGとなっている。

懐かしいといえば、個人的に最近のRPGにおいてめっきり減ったと感じている要素がある。それは、ダンジョン探索や戦闘の合間に挟まるパズルパートだ。岩を動かして道を作ったり、メッセージに隠された秘密を読み解いて謎を暴いたり、図柄が揃うようにパズルのピースを動かしたり……といった、さまざまなパズルのことである。
これらのパズルパートは探索や戦闘で火照った頭を小休止させてくれる一服の清涼剤のようなものであり、ゲームプレイにメリハリを与える役割を担っていた。まあ、ときには本編のアクションや戦闘よりも難しいパズルパートに頭を悩まされるようなことも起こるのだが、そこはご愛嬌。昔プレイしたRPGを思い返すとき、パズル要素が思い出のかなりの部分を占めているという方もいらっしゃるのではないだろうか。

本作にはそんなパズルパートがオープニングからエンディングまでこれでもかと詰め込まれており、あのころのRPGを思い起こさせる懐かしさに満ちている。もちろん魅力的なのはパズルパートだけではない。戦闘や探索、ストーリーなどの本作を構成する要素は90年代のRPGへのリスペクトと現代的なゲームから得られたアイデアの掛け合わせから生み出されており、懐かしくも新鮮なゲーム体験を味わうことができる。本稿では、そんな『フィルナーの伝説』の魅力を紐解いていく。
自由な発想が詰め込まれたパズルパート
本作は古典的なアクションRPGの流れを踏襲しており、ダンジョンを攻略してその奥に潜むボスを倒し、装備を整えて次のダンジョンへ向かうことを繰り返してゲームが進行していく。上述したパズルパートは、ダンジョン攻略の合間に差し込まれるかたちでプレイすることができる。タルを使って水上の足場を渡って逃げるサルを追い詰めたり、動く足場を適切な位置に配置してアイテムを取ったりといった、自由な発想で設計されたパズルが数多く楽しめるのだ。

パズルを解くことが進行に必須なこともあれば、報酬としてコレクションアイテムなどをもらえるだけで進行に必須ではないパズルも数多く用意されている。体感的には進行に必須ではないパズルほど難易度が高く感じたので、パズルにそこまで興味がない方は進行に必須なものだけを解いていくスタイルがおすすめ。筆者のようなパズル大好きプレイヤーの方には、ぜひすべてのパズルに挑戦してみてほしい。

シンプルかつ手触りの良いアクション
もちろん、パズルを解いているだけではダンジョンは攻略できない。ダンジョンに潜む敵を実力で退けてこその冒険者、その戦闘についても確認していこう。本作はリアルタイムアクションが採用されており、ダンジョンの探索からシームレスに戦闘に移行する。

ゲーム開始時に選択できる狂戦士、レンジャー、クロノマンサー、影刃者の4つのクラスはそれぞれ個性的で、通常攻撃とスキルを使い分けることで戦闘を有利に運ぶことができる。比較的シンプルな戦闘システムだが、こちらの攻撃をキャンセルしていつでも回避が可能だったり、敵と接触しただけではダメージを受けなかったりといったアクション面の手触りの良さは印象的だ。

かといって決して簡単すぎるということはなく、バリエーション豊かなモブ敵はそれぞれが個性的な攻撃を繰り出してくるため、常に相手の行動パターンを注視する必要がある。各種の攻撃をさばいて、敵の攻撃の隙にしっかりと反撃を入れることが重要となる。
安全地帯は必ずある、絶妙なバランスのボス戦
この戦闘のメリハリが最高潮に到達するのが、各ダンジョンの奥に潜むボスキャラクターとの戦闘だ。ボスの攻撃は非常に激しく、初見ではどうやって回避するのか見当もつかないことも。しかしじっくりと観察を重ねれば、連続攻撃の順番には法則性があったり、範囲攻撃には安全地帯が用意されていたり、こちらを閉じ込めてくる攻撃はアビリティを使って脱出が可能だったりと、常に回避方法が用意されていることがわかるはず。繰り返し挑んでボスの攻撃を食らっているうちに、自然と避け方を学べることだろう。

なお、ボス戦の設計にもそこはかとないパズルゲームっぽさがあり、なかにはかけ算の答えを入力することで回避可能な攻撃まで存在する。本作がパズル要素にかける情熱は、並々ならぬものがあると言えるだろう。

またボス戦が苛烈なゲームであるものの、好きなタイミングで難易度が変更可能であることもうれしいポイントだ。難易度は拠点に帰ればいつでも自由に変更できるため、特定のボスがどうしても倒せないときには頼ってみるのも1つの手だろう。
武器もアイテムも作れる万能クラフト、材料は自分で調達
ダンジョンに潜むのは、敵やパズルばかりではない。ダンジョンには利用価値の高い素材アイテムが大量に眠っており、それらを拠点に持ち帰ればさまざまなアイテムを作ることができる。このクラフトも、本作の重要な要素の1つだ。

クラフトはそのジャンルに応じて鍛冶や料理、錬金などに分かれており、それぞれの習熟度はレベルで表現されている。レベルの低いうちはクラフトできるアイテムが限られており、レベルに応じてクラフトレシピが拡大されていく仕組みだ。クラフトを重ねることでレベルは上昇していくので、序盤から積極的にクラフトを活用するべきだろう。

ダンジョンが変わると収集できるアイテムも変わるため、新たに訪れたダンジョンは基本的に隅から隅まで探索しよう。探索を頑張って素材を集めればクラフトでより上位のアイテムが作れるようになり、結果として戦闘が楽になる。このサイクルを意識して回すようにできれば、冒険が一気に楽になる。
特におすすめなのが、ボス戦の前まで攻略を進めたらいったん拠点に戻り、集めたアイテムで装備を強化してからボスに挑むこと。ボスの前まで攻略していれば新しい素材がたんまり集まっているはずなので、一気に強化を進めることができる。新たな強化段階に到達した装備は、ボス戦で非常に心強い働きを見せてくれるだろう。

王道ながらも堅実なシナリオ
本作は世界観も古典的なRPGにインスパイアされている。王道の「剣と魔法の世界」を舞台としており、ゲームやライトノベルなど、日本のエンタメに触れてきた人には特に馴染みある雰囲気が味わえるだろう。拠点である城下町の人々とは関わる機会も多く、アイテムの納品から敵の討伐、家を出ていった息子の捜索などさまざまなクエストを依頼される。依頼されたクエストをクリアすることで彼らの人生が少しだけ垣間見え、世界で過ごしている感覚を実感できるのも好印象だった。

メインシナリオもオーソドックスなものとなっており、記憶を失った主人公は冒険者ギルドに身を寄せつつ、世界を揺るがす陰謀に立ち向かっていくこととなる。全体を通してシンプルながらも堅実なシナリオに仕上がっており、主人公の視点に自然に感情移入することができるだろう。また、シナリオに少しだけ加えられたSFの要素も90年代のRPGへのリスペクトを感じさせ、少し懐かしい気持ちにさせてくれた。
懐かしさと新しさの見事な融合
現在ではゲームで表現できることの範囲が広がった関係で特定のジャンルに特化したタイトルが増えて、ゲームジャンルも細分化されつつある。一方で、実装できる要素をすべて組み込んだ「なんでも入り」のタイトルは、その数を減らしている印象だ。昔のタイトル、特にRPGにはそういった「なんでも入り」のタイトルが多かったように思う。

そういった意味では、リアルタイムアクション、パズル、RPG、クラフト、コレクション要素などに新しい風を吹き込みながらも、しっかりと相互に作用させて1つのゲームにまとめ上げた本作はまさに「初RPGの感動を再体験」できるタイトルだと言えるだろう。懐かしさと新しさが両立した未知の体験は、RPGファンにもそうでない方にもおすすめできる。
一方で、決して手放しに誉められない部分も本作には存在する。それは、日本語訳の品質だ。キャラクターの一人称や二人称が定まっていなかったり、キャラクターの名前の表記がブレていたりといったことが多く、なかには攻略が難しくなってしまうような適切ではない翻訳も見受けられた。英語版や中国語版に変更して意味を確認することで解決できるケースが多いものの、やはり日本語版だけで攻略できる状態の方が望ましいだろう。
本作は5年以上の歳月をかけて開発されており、そのなかでプレイヤーから寄せられたフィードバックを反映しながら改良してきたという経緯がある。公式Discordなどで行われているプレイヤーと開発陣とのやりとりや、試遊版のプレイ中に実装されたUI改善のアップデートなどからは、開発陣の品質面への高いこだわりを感じられた。それだけに、翻訳部分は少しだけ惜しい。なお、実際に発売後のアップデートでは一部の翻訳の改善が見られており、引き続きプレイヤーからのフィードバックにも耳を傾けているとのこと。今後の日本語訳の品質の改善にぜひとも期待したいところだ。
『フィルナーの伝説』は、PC(Steam)向けに発売中だ。
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