イタリアのサイバーパンクレースゲーム『Screamer』のアニメパートは、日本のポリゴン・ピクチュアズが作っている。なぜ、どういう経緯でタッグを組んだのか訊いてきた
サイバーパンクレースゲーム『Screamer』のアニメパート制作スタッフに話を訊いた。

Milestoneは、2026年3月26日に『Screamer』をPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けにリリースする。本作は1995年にMS-DOS向けに発売されたレースゲーム『Screamer』を現代に合わせリメイクしたレーシングゲームだ。ネオンの煌めく未来都市を舞台に、正体不明の主催者「マスター」が開催する苛烈なレースに挑む人々の群像劇が描かれる。
本作は80~90年代のアニメーションや漫画からインスピレーションを受けたという、手描きアニメ風のセルルック3DCGを用いたアニメシーンも特徴。アニメーション制作はTVアニメ「シドニアの騎士」「亜人」などを手掛けたポリゴン・ピクチュアズが担当。そんなポリゴン・ピクチュアズのスタッフに、制作の裏側について詳しく話を伺った。

――自己紹介をお願いします。
島村 大輔氏(以下、島村氏):
『Screamer』アニメーション監督の島村と申します。
伊藤 克承氏(以下、伊藤氏):
ポリゴン・ピクチュアズのCGスーパーバイザーの伊藤と申します。
田中 志保氏(以下、田中氏):
同じくポリゴン・ピクチュアズのラインプロデューサーの田中と申します。
――『Screamer』でのアニメ制作のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
田中氏:
まず、Milestoneさんが『Screamer』を開発しているなかで、カットシーン制作を日本風のアニメ作画で検討していたそうです。弊社はセルルック(手描きアニメ風のルック)のCGアニメを得意としているので、30分程度のカットシーンを作って欲しいということでお話をいただきました。
――Milestoneさん側の制作イメージにぴったり合致したということでしょうか。
田中氏:
そうですね、Milestoneさんの側で日本のアニメーションというイメージが強くあったようです。ディレクターのFederico Cardiniさんが「シドニアの騎士」が大好きらしくて、そこの流れでお声掛けいただいた感じです。
――本作はゲーム部分がフォトリアルでありながら、カットシーンはセルルックなのが面白いバランスだと感じました。その組み合わせの中で、ポリゴン・ピクチュアズさんとMilestoneさんではどのようなすり合わせがあったのでしょうか?
田中氏:
実はゲーム側の開発とアニメーション制作はほぼ同時並行だったんです。私たちも先ほど初めてゲームの方をプレイしたぐらいだったので、アニメーション側はフォトリアルのパートを気にすることなく制作を進めていましたね。

――本作はサイバーパンク的世界観が魅力的です。80~90年代のアニメーションや漫画からインスピレーションを受けたと伺っていますが、アニメ制作の上で具体的なリファレンスはあったのでしょうか?
島村氏:
「AKIRA」や「攻殻機動隊」には強い影響を受けました。最近の作品では「サイバーパンク:エッジランナーズ」、レースものでは「REDLINE」なども参考に挙がってきましたね。
――まさに日本のアニメーションを代表する作品群が挙がっていますね。
島村氏:
特に「エッジランナーズ」はネオンの光が感じられる色が特徴的だったので、かなり意識して制作していましたね。本作でも似た雰囲気が出ればいいなと思っています。今の日本を代表するような作品たちなので、おいそれと近づけられるとは思っていないのですが、自分たちも追いつけるようにチャレンジしてみようという感じでした。
――トレーラーを拝見したのですが、本作はいわゆるセルルックCGの面白さもありつつ、より手描きアニメ的な演出もあるなという風に感じました。
島村氏:
おっしゃるとおりで、手描き風アニメを意識して制作していました。CGの一番いいところである「絵柄が安定している」点を活かしつつ、CGっぽさを出さないためにエフェクトなどは手描きの作画で制作するという、贅沢なやり方をさせてもらっています。
――CGアニメで手書きエフェクトというと、「アーケイン」や「スパイダーマン:スパイダーバース」なども同じ手法で制作されていますよね。
島村氏:
なかなか大変な制作手法ではあるのですが、幸いなことに本作のアニメーションパートにアクションシーンはあまりなかったので、アクションシーンのエフェクトを手描きにすることに注力できました。オープニングでもエフェクトはほとんど手描きになっていますので、注目してみてください。
最近では3Dアニメも手描き風に寄ってきているのがトレンドです。3Dだからといって簡単に制作できるわけではないですし、それぞれのクリエイターがそれぞれの力を発揮して、一つのカットを制作していく……というのは、手描きアニメーションと同じなのかなと思っています。
――アニメーター個人の特長が出てくるような作風は、やっぱりいいですよね。
島村氏:
そのアニメーター作画もその人に頼んで、にしか描けないような絵柄や作風が今は好まれると思うのですが、3Dも同じですよね。クリエイターそれぞれの力を発揮してもらうスタイルがいい方向に働けば、唯一無二の個性的な作品ができるんじゃないかなと。今回はそういう意味でも、手描きのエフェクトを入れるようにしています。

――次にストーリーについて伺います。本作では15人の個性あるキャラクターが登場しますが、それぞれのキャラの特色はどのように作られていったのでしょうか?
島村氏:
事前にMilestoneさんから、シナリオやそれぞれのチームカラー、各キャラクターの性格まで詳しい資料をいただいていました。そのストーリーシナリオに乗っかって肉付けしていけばよかったので、きました。非常に制作しやすかったですね。
――肉付けをしたのはどのような部分ですか?
島村氏:
主にビジュアル面ですが、シナリオ側も膨らませています。さまざまなシーンで、シナリオでは描いていないようなところを絵コンテで追加してから制作を始めました。
――トレーラーでは、キャラクター同士の関係性もフィーチャーされていましたが、関係性はどのように絡みあっていくのでしょうか?
島村氏:
めちゃくちゃ複雑です(笑) 簡単に説明すると、「パルプ・フィクション」みたいな話なんですよ。いろんな視点でキャラクター同士の関係性を語っていって、次第にそれぞれのシーンが繋がっていくんです。一見関係なさそうだけど実は過去に繋がっているチームがあるなど、群像劇みたいな感じで複雑に絡み合ってるんですよね。その辺りはぜひ遊んでみてもらえればと。
――各キャラクターはチームごとにも特色がありますよね。どのように差別化していったのでしょうか?
島村氏:
各キャラクターやチームは、民族性も人種もそれぞれまちまちです。それぞれの特徴や雰囲気は損なわないように、意識して3Dモデルを作っていきました。トレーラーを見てもらうとわかると思うのですが、各キャラクターはそれぞれの国の言葉で喋っています。なのでキャラクターデザインとしても、民族性を意識した造形にしていましたね。
――なるほど。それはアフレコも大変だったのではないでしょうか?
田中氏:
2Dアニメーションはアフレコなのですが、通常のCGアニメーションではプレスコといって、絵コンテに声入れをしていくんですね。でも、今回はプレスコですらなくて、役者さんの演技に幅を持たせたいからということで、脚本だけの用意で収録をしてもらいました。絵を全く見てない状態で脚本を読んでもらって、その音声をもらってこちらで制作する、という感じでした。
――結構変則的な作業ですね。尺感とかも難しかったりしたのでは?
島村氏:
難しいかと思いきや、大きくはズレませんでしたね。何箇所か録り直していただいたことはありましたが、基本的にはトラブルなく進んで良かったです。

――皆さんのお気に入りのキャラクターやチームについて教えて下さい。
伊藤氏:
僕は「ヒーローチーム」が気に入っています。最初はちょっと仲が悪かったりするんですけど、成長してだんだん仲良くなっていくところが成長物語的でいいかなと。
島村氏:
自分は「アナコンダコープ」かな。ヒーローチームの敵キャラなんですけど、思いっきり敵っていう感じではなく、割と人間味のある部分もあったりして、そこが面白いかなと。
田中氏:
私はもう全然違う着眼点なんですけど、「ヒナ」というキャラですね。最初Milestoneさんとどういうルックにしていこうか、というのをヒナで色々決めていて。なので一番見つめた時間が長かったんですよ。「この子どうしよっかな」みたいな時間が長かったから、一番思い入れがあるかな。
――各キャラクターのコスチュームデザインも特徴的ですよね。どういった形で制作されたのでしょうか?
島村氏:
コスチュームデザインの大元は、Milestoneさんの方で制作されていました。こちらでも日本風にはデザインし直したんですけど、服装とかまでは大きく変えていません。頂いたものを再現してる感じですね。Milestoneさん自身、日本のアニメを意識してデザインしているので、結構独特なものになっていますよね。造形もそうですけど、レトロフューチャー的な雰囲気もあるし。

――サイバーパンクものといえば「街」の美しさが印象的ですよね。そこで、本作の背景美術の制作についてお訊きしたいです。
島村氏:
Milestoneさんから、コースの周りの建物がしっかり作られている3Dの背景資料をいただいています。アニメーション制作においてはシーンのロケーションに指定があったので、そのとおりにそのまま使わせてもらうことが多かったですね。
――そこまで指定があるのって珍しいですよね。
島村氏:
珍しいですし、ありがたかったですね。いちから世界観を作るというのをしなくてよかったので、そういう意味では助かりました。
――ポリゴン・ピクチュアズさんの制作体制的には、ここまでゲーム会社が入ってくるということはなかなか珍しいんじゃないかなと思うのですが、それによる苦労はあまりなかったのでしょうか?
島村氏:
そういった苦労は全然ありませんでした。やはりゲームと映像というのもまた違いますし、海外と日本という点でも違うのもあってか、つまずくことがあまりありませんでした。Milestoneさんと同じ方向を向けていたかどうかは分かりませんが、こちらが出したものに対しては受け入れていただいていて。割とトントン拍子に行きましたね。

――最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
島村氏:
ゲームの方は熱いレースを、アニメの方は各キャラクターの関係性やドラマを存分に楽しんでもらえればと思います。ポリゴン・ピクチュアズ制作のアニメーションパートでは、とくにオープニングに色々な要素を詰めています。レースシーンやキャラクター同士の相関図など、見どころがたくさんあるので是非ご覧ください。ゲームの世界観を広げてもらって、より一層本作を楽しんでいただければ嬉しいです。ぜひよろしくお願いします。
伊藤氏:
キャラクターデザインから、背景デザインまで、社内でかなり頑張ったところなので、そこを見ていただきたいです。また、初めてイタリアのMilestoneさんとお仕事させていただいて、最初「なかなかうまくいかないんじゃないか?」という不安があったんですけど、制作を進める中でどんどん笑いが絶えない雰囲気になりました。楽しく作らせていただいたので、ぜひそれが伝わるといいなと思ってます。
田中氏:
今回私たちもイタリアのゲーム会社さんと初めて仕事をして、かっこいいイタリアのレースゲームの中に日本のアニメーションが入っていくという、すごくいいコラボレーションができました。
日本のファンには、ヨーロッパのレースゲームを遊んでもらいつつ、親しみのある日本のアニメーションでキャラクターの心情を読み取って、よりキャラクターに感情移入して楽しんでもらえたら嬉しいなと思ってます。
――ありがとうございました。
『Screamer』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに、2026年3月26日発売予定だ。
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