Steamにて昨年「ホラー」タグのゲームが爆増していたと今になって話題に。“ホラー+何か”のビッグウェーブか
Steamにおける「ホラー(Horror)」タグが付いた新作数の年間推移が注目を集めている。

Steamにおける「ホラー(Horror)」タグが付いた新作数の年間推移が注目を集めている。ホラータグの付いたゲームが2024年にほかのタグと比べて急増し、今年も同程度の作品数が展開されているようだ。
今回Steam上のホラータグのついた作品数について着目されているのは、Redditのインディーゲーム系コミュニティr/IndieGamingに投じられたスレッドだ。「なぜ2024年にSteamでホラーゲームが急増したのか?」と問いかけるスレッドでは、SteamDBにおけるホラータグの付いた新作ゲームの年間本数推移データが示されている。これを見ると、2023年には1609本であったホラータグの新作数が、2024年には2586本に急増していることがうかがえる。
なお2024年といえば、そもそもSteamで発売されたゲームの総数も前年から急増し1万8580本であった(SteamDB)。前年比で+31.56%となっており、ホラータグの付いた作品だけが急増していたとは言い切れないように見える。そこで筆者はSteamDBにて、ホラータグのほかに、Steamのゲームにおいて2024年に上位5位を占めていた5つのタグの過去5年間の数値を確認。前年比をまとめた表は以下のとおりだ。

これを見ると、2024年のホラータグの作品数は前年比+60.66%であり、ほかのタグの作品と比べても著しい急増を見せている。それぞれデータ自体は今年の初めから確認できる数値であり、ジャンルごとにそもそもリリースされた本数の差もあるものの、なかでもホラータグの作品の急増ぶりに着目したRedditのスレッドは話題になっているようだ。
スレッドの投稿者は個人的な見解として、この増加傾向はストリーマーやYouTuberによって後押しされているのではないかと述べている。ホラーゲーム動画のクリップはバイラル化しやすいとして、開発者もそうした目につきやすさを狙っているのだろうと推察。ほかのユーザーからも意見を募っている。
スレッド内ではさまざまな意見が投じられており、中にはそもそもSteam上のタグ付けがホラーゲームと呼べるような作品にのみ正確におこなわれているわけではないといった意見もみられる。というのもSteamにおけるタグはストアページの管理者だけでなく、一般ユーザーも自由に作成・追加が可能。ただしユーザー作成タグについては追加して即座に反映されるわけではなく、多数の別のユーザーが同じタグを付けたり一定の支持が集まったりする必要があるようだ。本数自体は正確ではなく、実際にホラー要素のあまりない作品にも多数付与されている点には留意したいが、増加率自体はジャンルの作品数増減についての一定の傾向を示しているだろう。

いずれにせよ、ホラータグの作品数が昨年急増を見せた理由は不明。ただゲームマーケティングアナリストのChris Zukowski氏は今月11月4日に、興味深いデータを示している。同氏は猛烈な勢いで流行しているゲームを「Great Conjunction」と独自に分類し、現状の流行ジャンルとしては、フレンドとゆるく賑わえるいわゆるFriendslop系ゲームを筆頭に、ホラー要素とさまざまな要素を組み合わせたジャンルを挙げている。
このうちFriendslop系の作品についてChris氏は、フレンド間の協力プレイゲーム自体はSteamに昔から存在し、一定の人気があったと説明。とはいえ2023年末に『Lethal Company』がリリースされて以降、フレンドと一緒におバカな要素のあるゲームを遊ぶという需要が急騰したとの見解を述べている。
そして『Lethal Company』のほか、後発の『Content Warning』や『R.E.P.O.』も含めてすべてホラー要素を含む作品だ。またそうしたジャンルの草分け的な作品である『Phasmophobia』も協力プレイホラーゲームであった。今年は『PEAK』『RV There Yet?』などFriendslop系でもホラージャンル以外のゲームも人気を博しているものの、初期のFriendslop系のヒット作になぞらえて“後追い”のFriendslop系ホラー作品が多数輩出された可能性はある。

このほかChris氏は先述したとおりホラーとその他のジャンルを掛け合わせた人気作についても例示。2024年にリリースされたショットガン・ロシアンルーレットゲーム『Buckshot Roulette』などを挙げている。同作は純粋なホラーゲームではないものの、Steamストアでは精神的恐怖やホラーといったタグが付与されている。同作は400万本を超える大ヒットを記録しており、ダークな雰囲気とリプレイ性の高いゲームシステムを組み合わせる、フォロワー的作品も見受けられる。
そうした見解も踏まえると、ホラータグの作品が昨年急増を見せていた背景には2024年前後のヒット作や流行もあったのかもしれない。ホラータグが付けられたゲームは純粋なホラーゲームばかりではない点には留意したいものの、ホラー要素は昨年のトレンドのひとつとなっていたこともうかがえる。
なお年の瀬に近づく今年は、現時点でSteamDBで集計されている新作ゲームの本数は昨年よりもやや少なめ。これに伴って、ホラーを含む各種タグの作品数も昨年よりも少し少ない本数となっている。とはいえ昨年と同程度の作品数となっている点を見るに、今もそうしたトレンドは続いているのだろう。 一方でシミュレーションタグのゲームはすでに昨年よりも多く展開されているなど、昨年と違ったタグ別作品数の増減傾向もあるようだ。先述したFriendslop系ゲームもホラーに限らないヒットを見せており、早くも新たな流行の兆しもみられる。最終的な2025年のSteamのタグ別作品数がどのようになるのかも注目される。




