新作ローグライク『ビビッドワールド』は人を「計画中毒」に陥れる魔のゲーム。カジュアルな見た目で油断した筆者は、もう抜け出せない
アソビズムが本日発売したローグライク『ビビッドワールド』で計画中毒になってしまった。魔のゲームすぎる。

突然だが、ゲームの魅力とはなんだろうか。爽快なアクション、プレイヤーを引き込むストーリー、ほかのプレイヤーとの協力や対戦……。さまざまな要素が思いつくが、その中でも「思い描いていたプランが上手くハマったときの気持ちよさ」は格別のものだ。
アソビズムから本日リリースされた『ビビッドワールド』は、宝石になったユニットや不思議な力が宿ったジェムなどを集めてパーティを強化していく、オートバトラー形式のパーティ構築型ローグライク作品だ。魔法学校で授業を受けていたはずの主人公「レムリア」は、ある事件に巻き込まれて悪魔が支配する冥界に迷い込んでしまう。冥界から脱出するため、そして同じく冥界に囚われてしまった友人たちの魂を救うため、冥界のダンジョンを攻略していくことになる。
今回、本作の先行プレイの機会をいただき、戦闘での行動選択や効率的なフロア探索、弱点のないデッキ構築など、プランを構築して選択肢を積み重ねる面白さに唸らされた。本稿では『ビビッドワールド』のプレイレポートをお届けする。積み重ねた選択が報われる瞬間の気持ちよさについて、少しでも伝われば幸いだ。
ユニットを束ねてパーティを結成、主人公はあくまで裏方
ダンジョン内は危険な魔物で溢れており、レムリアだけでの踏破は不可能。宝石のユニットを束ねてパーティを結成し、ダンジョンの最深部に潜むボスの討伐を目指すのだ。ユニットはそれぞれ固有のステータスとスキルが与えられており、レムリアの代わりに戦ってくれる。ユニットたちはそのビジュアルに負けず劣らずの個性派ぞろいで、タンク、アタッカー、ヒーラーなどのわかりやすい役割を持つものから、やや複雑ながら状況次第では強力な効果を発揮するスキルを所持しているものもいる。


本作の戦闘はいわゆるオートバトラー形式で進行し、ユニットは自律的に行動する。自動的に進行するユニットの戦闘を、レムリアは多種多様な効果を持つアイテム「ジェム」を使って支援していく。ジェムは、敵にダメージを与えるシンプルな攻撃系のジェムに始まり、体力回復やデバフ解除などの回復系ジェム、相手の強力な攻撃に対応できる防御系のジェムなどが存在する。ジェムには個別のクールダウンが設定されているため、使いどころを見極めることが重要だ。


利益は最大化、危険は最小限に
ユニットやジェムなどのリソースは、各フロアを探索することによって入手することができる。ユニットは探索でのランダム入手に加えて宝石屋での購入も可能だが、そのためには冥界の通貨であるキーンが必要。キーンは主に敵を倒すことで入手できるため、やはりフロアの探索はダンジョン攻略における最重要事項といえる。

ここでネックとなってくるのが、フロア内を移動できる回数には制限があるという点だ。フロア内の移動にはマナというリソースを消費しなければならないため、進路を計画的に定める必要がある。次のフロアへの階段を終点に、一筆書きの要領で探索する……と言えば簡単そうだが、実際に足を踏み入れるまでマップは可視化されていない上に、各部屋ではランダムなイベントが発生することもあるため、なかなか思う通りには進まない。だからこそ、自分の選択を信じて進み、すべてのイベントとリソースをきっちりと回収しきれたときの満足感はひとしおだ。

パーティの完成度に直結する要素、「シンボル」
ダンジョンを進んでいくごとにリソースが手に入ってパーティが強化されていくわけだが、単に強いユニットやジェムを並べればいいというものでもない。その最たる例が、特定のユニットを複数パーティに加えたときに発生するシンボルバフだ。
各ユニットには色と陣営という2つのシンボルが割り当てられている。そして、パーティに同じシンボルを一定数集めるとバフが発動。シンボルバフにはスキルダメージの増加、ステータスの強化などさまざまな種類があり、そのどれもがパーティの方向性を決定づけるだけのインパクトをもっている。このシンボルを効率よく集めていくことこそが、本作のパーティ構築の核なのだ。

シンボルバフを増やすために重要となるのが、ユニットのアップグレード。同名のユニット3体を集めた場合、重ねることで1体の銀星ユニットへアップグレードすることが可能。ステータスの上昇ボーナスに加えて、そのユニットを控えに回したり売却したりなどでパーティから外しても、シンボルの効果が永続的に適用されるようになる。

しかし、アップグレードによるシンボル永続化を活用すれば、獲得できるシンボルバフの幅は大きく広がる。
いいこと尽くめに聞こえるアップグレードシステムだが、ユニットのアップグレードが終わっても考えるべきことはまだまだある。例えばいくらシンボルバフを揃えるためとはいえ、せっかく作った銀星ユニットを控えに回してしまうのはもったいないときもある。かといって銀星ユニットを戦闘に回した場合、シンボル永続の効果は実質的に意味のないものとなってしまう。シンボルボーナスを優先した星なしパーティか、ステータスの高さに物を言わせた銀星ユニット入りのパーティか。ここでも選択から逃れることはできないようだ。

星なしユニットとは比べ物にならないほどのステータスを誇るが、上手く集まらなかったときのリスクも相応に大きい。
ちなみに同名ユニットを3体集めるという条件自体はそこで難しいものではなく、ダンジョンの後半では銀星ユニットでパーティが埋まることは珍しくもない。ただし、シンボルの揃っていない単なる銀星の寄せ集めパーティでは、戦力はあまり見込めない。ボスの討伐はかなり厳しいものになってしまうだろう。
これを防ぐためには、ダンジョン攻略の最初の段階からパーティの最終的な完成形をプランニングしておくことが重要だ。そこでキーとなってくるのが、「流浪の宝石屋」の存在。ダンジョン内のいくつかのフロアだけに登場する彼は通常の宝石屋と異なり、特定の3種類のシンボルをもつユニットのみを販売してくれるのだ。そして嬉しいことに、その3種類のシンボルはダンジョン攻略開始時点からいつでも確認可能。「流浪の宝石屋」が取り扱うシンボルをパーティ構築の軸に据えて、道中ではその3種類のシンボルに合ったユニットを獲得していくとよいだろう。

シンボルバフばかりではなく、パーティ内の役割バランスや能力のシナジーも軽視できない要素だ。スキルの回転率と火力を上げたスキル特化パーティ、通常攻撃に重きを置いた殴りパーティ、レムリアのジェムにバフを与えることを重視したジェム支援パーティなど、さまざまな構築が存在する。また、特定のユニットの組み合わせで発動する「ユニオンスキル」も構築の指針となるレベルのパワーを持っているため、有効に活用していきたい。編成や戦略を考えて、より良いパーティを目指して選択を繰り返すのが、本作の道中の醍醐味だ。
これまでの選択が問われるボス戦
こうしてパーティの強化を重ねたら、いよいよダンジョン最深部のボスへ挑む。本作のボス戦は、ある意味でここまで積み重ねてきた選択肢の答え合わせのようなもの。ボスはみな強力なスキルや戦法を使いこなす難敵だが、撃破できた暁にはこれまでの選択のすべてが報われたような喜びと安堵感を味わえることだろう。

ゲームシステムと自然に融合した世界観
余談にはなるが、筆者は本作を彩る個性豊かなユニットたちのビジュアルにも注目したい。デザイン的には一見とりとめもないようにも見えるが、本作をプレイしていくうちにある法則性があることに気付いたのだ。それは、ユニットがもつ陣営はそれぞれの世界観を表しており、デザインもそれに基づいているのである。

屈強な見た目に違わず物理攻撃に強く、シンボルバフも物理攻撃へのカウンターを付与するものだ。
一方で、魔法攻撃には弱い傾向にある。
陣営の例として和風の「ブシドウ」、ガンマン西部劇テイストの「ウェスタン」、王道ファンタジー風の「騎士団」などが存在し、同じ陣営はステータスや能力にある程度の共通点があることが多いほか、世界観を共有しているためにデザインにも一定の方向性がある。慣れてくれば新登場のユニットであってもその外見から陣営を予測することもできるほどにきっちりとデザインされており、その見た目の華やかさはゲームプレイに彩りを添えてくれる。

各ユニットを銀星や金星にアップグレードすることで開放されていく3つのエピソードは、一読の価値あり。
冥界からの脱出を目指すメインのシナリオも王道ながら単調ではなく、ダンジョン攻略で疲れ果てた脳みそをほどよくリラックスさせてくれるものとなっている。ファンタジー要素全開のユニットの面々と比べて、当初は世界観的に少々浮いているように感じられたレムリアの制服姿も、さまざまな世界から来たユニットたちを束ねる魔法使いというレムリアの立ち位置を理解してからはむしろ納得の感があった。

ほかの冥界の住人達も、どこか一癖あるものばかりだ。
「プラン通り」という快感
本作は、戦闘というミクロな観点から、効率的なフロア探索、弱点のないデッキ構築、そして最終的な目標であるダンジョンのボス討伐というマクロな観点まで、「常に先のプランを思い描き続ける」ゲームだ。そしてそれは、もしすべてが思惑通りに進んだ場合「プランが常に上手くハマり続ける」ゲームになることを意味する。この手の快感に弱いゲーマー諸君には、一度体験してみてほしい一作だ。
なお、先行プレイでは体験できなかったものの、本作はリリース時に最大2人でのマルチプレイにも対応する。同じフロアを別々に探索し、戦闘時には共闘するという形での協力プレイが楽しめるようだ。特筆すべきは、1人プレイ時のパーティの最大人数は6人だったのに対し、協力プレイ時はパーティの最大人数が4+4の8人になるということ。1人プレイ時では実現できないパーティ構成を堪能することができ、ソロプレイとは違った快感が味わえそうだ。


『ビビッドワールド』は、PC(Steam)向けに発売中だ。通常価格は税込2300円。現在は10%オフのセールにより、税込2070円で購入できる。


