『スカイリム』の“バケツ被せ窃盗”裏技には、開発中は誰も気づけなかった。発覚後も「面白いから」見逃された、破天荒珍妙トリック
『The Elder Scrolls V: Skyrim』のコミュニティでネットミーム的に愛されてきた“バケツ被せ”テクニックについて、同作のリードデザイナーが言及した。

『The Elder Scrolls V: Skyrim』のリードデザイナーを務めたBruce Nesmith氏は10月23日、同作のコミュニティでネットミーム的に愛されてきた“バケツ被せ”テクニックについて、意図して作られた仕様ではなく、全くの想定外だったとする旨を語った。海外メディアFRVRが伝えている。
『The Elder Scrolls V: Skyrim』はBethesda Game Studiosが手がけたオープンワールドRPGだ。タムリエル大陸の北方に位置するスカイリム地方を舞台に、プレイヤーは伝説の勇者「ドラゴンボーン」としてドラゴンたちに立ち向かう。2011年にPC/PS3/Xbox 360版が発売され、その後複数のエディションを冠して幅広いプラットフォームで展開されてきた。キャラクター育成や探索の自由度などが特徴であり、PCではModコミュニティも長年にわたって活発である。

今回FRVRはそんな同作に携わったBruce Nesmith氏に向けてインタビューを実施。Nesmith氏は2021年までBethesda Game Studiosに所属していたゲームデザイナーで、『The Elder Scrolls IV: Oblivion』『Fallout 3』『Fallout 4』などの作品に携わった経歴をもつ。『The Elder Scrolls V: Skyrim』ではリードデザイナーを務めた。
インタビューの中でNesmith氏は「bucket trick」について言及している。bucket trickは同作を代表するグリッチの一つ。『The Elder Scrolls V: Skyrim』では、NPCに見られているときに誰かの所持品を取ると窃盗と判定され罰金を課せられてしまう。一方で本作では、ゲーム内のさまざまなオブジェクトを掴んで移動させることが可能。そこで、釜などのオブジェクトをNPCの頭に無理やり被せ、相手の視界を遮ると、気づかれずに所持品を盗むことができるのだ。
『The Elder Scrolls V: Skyrim』のこのグリッチは、同作の発売日の翌日には発見されていたことも知られている。一方でNesmith氏によれば、ゲームが発売されるまで、開発チームでは誰かの頭にバケツを被せようとすらしていなかったといい、「あれは完全に事故だった」と振り返っている。どうやらまさに想定外の発見だったようだ。
ちなみにbucket trickについては、同作でディレクター兼エグゼクティブプロデューサーを務めたTodd Howard氏も、海外メディアThe Guardianのインタビューにおいて2022年に語っていた。ゲームをリリースした後、開発チームでは予期していなかった現象をユーザーが発見したことで、修正すべきかどうか激しい議論になったという。最終的には、それが滑稽(hilarious)だったために、修正しないことに決めたそうだ。

なお“NPCにバケツを被せる”遊びはその後のBethesda Game Studios作品では恒例と化しており、2023年には『Starfield』でも発売後すぐさま海外コミュニティで流行していた(関連記事)。ただし被せても視界を遮ることはできなくなっており、実用的なグリッチではなくミーム的な遊びとして残されている模様だ。
今回、そんなバケツ被せの原点でもある『The Elder Scrolls V: Skyrim』のbucket trickが、開発チームの誰も予想だにしていなかったことが開発者によって改めて明かされたかたち。ちなみに『The Elder Scrolls V: Skyrim』以前には、『Fallout: New Vegas』にて盗みたいものを掴んで鍋に入れ、誰も見ていないところまで運んでから拾うというテクニックも存在した。Bethesda Game Studiosファンコミュニティがアイテムを掴むシステムを活用しながら“盗みのテクニック”を作品をまたいで磨き上げてきたこともうかがえ、『The Elder Scrolls V: Skyrim』では突拍子もないbucket trickが発売の翌日に生み出されることになったのだろう。
このほか『Starfield』でも掴んだオブジェクトで盗みたいアイテムを“押して運ぶ”という手法が編み出されていた。アイテムを掴むシステムはその自由度ゆえ、さまざまな悪知恵を実現してきたといえる。現在開発中の『The Elder Scrolls VI』でも掴みシステムが受け継がれるかどうかは不明ながら、もし継承されるのであればどのような盗みテクニックが発明されるのかは注目点かもしれない。

