「『ポケモンレジェンズZ-A』のグラフィックは物足りないから」と“生成AIでリアル加工”した人にツッコミ殺到。テカテカでギラギラなミアレシティ
『Pokémon LEGENDS Z-A』のグラフィックに関して、ゲーム内のスクリーンショットと、それを“リアル化加工”した画像を比較する投稿が話題となっている。

株式会社ポケモンは10月16日、『Pokémon LEGENDS Z-A』を発売した。本作のグラフィックに関して、ゲーム内のスクリーンショットと、それを“リアル化加工”した画像を比較する投稿が話題となっている。
本作は、『ポケットモンスター』シリーズの最新作だ。開発を手がけるのはゲームフリーク。本作では『ポケットモンスターX・Y』に登場したミアレシティが。メガシンカシステムがふたたび登場するほか、戦闘では新たに移動型バトルが採用されている。

本作の発売後、あるXユーザーが最新タイトルとしてのグラフィックの進化を感じられないといった批判を投稿。AIで加工したという画像と比較しつつ、本作のグラフィック品質に不満はないかどうかユーザーに意見を求めた。このポストは話題を博しているものの、その注目はユーザーの問いかけではなく“AIによってリアルに加工された画像”に向いている様子だ。
画像は本作のスクリーンショットをベースに加工されたようで、ライティングや影の表現などが妙にリアルに変化。石畳の床が攻撃エフェクトなどさまざまな光を反射して光沢感が出ていたり、全体的に影が強調されて立体感が増していたりと、高精細かつ写実的に見えるように加工されたことがうかがえる。ついでになぜかポカブがピカチュウに置き換わっている。
この画像は本作の実際のゲーム画面よりも“優れたグラフィック”を例示する意図で添付された様子ながら、むしろ不興を買っているようだ。生成AIによって強引に“リアル化”されたことで、ポケモンやトレーナーのデザインが奇妙に見えるわけだろう。また比較に用いられている『Pokémon LEGENDS Z-A』のスクリーンショットも実際のゲームプレイよりも解像度が低く、公式画像からトリミングされたように見える。公平な比較になっていない点にも苦言は寄せられている。
なお上述の比較画像についてはともかく、『Pokémon LEGENDS Z-A』においては、グラフィックのシンプルさについて不満の声もたしかに見られる。たとえばThe Washington Postのゲーム担当記者Gene Park氏は本作のレビュー記事にて、本作の都市では窓や扉やバルコニーなどが「平面的」に壁に押し付けられていると指摘。地区ごとの個性の差もなく、同じものが何度もコピーされたような都市になっているとの意見を述べている。同氏としてはグラフィック品質ではなく、あくまでテクスチャが繰り返し使われている都市のデザインに不満があるそうだ。
このほかプレイヤーからは、ポケモンのグラフィックについても不満の声が見受けられる。本作では『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』に存在したような毛並みなどの体表の質感の違いが乏しくなり簡略化。のっぺりとしたポケモンの3Dモデルにも一部不満は寄せられている。
そうした声を見るに、『Pokémon LEGENDS Z-A』のグラフィック面への批判は、単に高精細なテクスチャやハイポリゴンなモデルではなく、デザインや作り込みなどに向けられていることもうかがえる。この点からも先述した“生成AIでとりあえずリアルにした画像”が比較対象として的外れであるといった指摘が寄せられているのだろう。Park氏も今回の比較画像に反応し、「(先述したレビューでの批判は)全部撤回するよ、のっぺりした建物は美しい」と皮肉なジョークを述べている。都市のデザインの単調さについて指摘していた同氏としても、生成AIが加工したような過度にリアルなグラフィックは求めていないということだろう。
ちなみにユーザー反応では今回の比較画像を、過去に話題を博した『スーパーマリオ』のゲームプレイ風ファンメイド動画になぞらえる声も散見される。それらの映像はUnreal Engine 4あるいはUnreal Engine 5で制作されており、高精細なグラフィックのマリオが写実的な世界を動き回るという内容。リアルになったことで生じたマリオのキャラクターデザインや頭身への違和感やシュールさからか、ネットミーム的にも扱われてきた(Know Your Meme)。
これらの反応も踏まえると、少なくともゲームにおいてはひと口にグラフィック品質と言っても「リアルさ」だけで優劣が評価されるわけではないことがうかがえる。特に『スーパーマリオ』シリーズや『ポケモン』シリーズのようなアニメ調・デフォルメ調の作風では、アートスタイルに則したグラフィック・デザインであることが前提となるだろう。過去にはゲーマーコミュニティで“上質な3Dグラフィックよりも優れたアートディレクションが重要”といった主張が支持を受ける例も見られた(関連記事)。いずれにせよ、優れたグラフィックの比較例として生成AIでリアルにした画像が挙げられた今回の事例は、楽しげにツッコミも寄せられつつ、風変わりな賑わいに繋がっているようだ。