マイクロソフト、“Xboxハードウェア事業からの撤退”の噂をやんわり否定。ちゃんと投資もしている

マイクロソフトは10月5日、自社製のコンソール機およびデバイスの設計・開発・製造に、積極的に投資しているとの声明を発表した。

マイクロソフトは10月5日、自社製のコンソール機およびデバイスの設計・開発・製造に、積極的に投資しているとの声明を、マイクロソフトについての情報を中心とする海外メディアWindows Centralに向けて提供した。かねてより広まっていたハードウェア事業からの撤退の噂を否定したかたちだ。

マイクロソフトは2001年より、独自のコンソール機であるXboxシリーズを提供し続けている。2003年にはいち早くオンラインマルチプレイを提供し、多数のゲームスタジオの買収によるIP強化などもおこなって業界での地位を確立してきた。2017年に開始した月額サブスクリプションサービス「Xbox Game Pass」をきっかけに急速にユーザーを獲得し、今年7月には同サービスの年間収益が約50億ドル(現在のレートで約7500億円)に達したことも報じられた(関連記事)。

マイクロソフトの提供するコンソール機は、2020年11月に発売されたXbox Series X|Sが現行最新機種となっている。今年6月には大手半導体企業AMDとの提携を発表し、次世代Xboxコンソールを含むさまざまなデバイスの共同開発の計画があることを告げたものの、本稿執筆時点ではそれが具体的にどのようなものかについての情報は発表されていない。

そうしたなかで、現在はASUS との提携機器であるROG Xbox Allyシリーズの発売を10月16日に控えている。同機は携帯型ゲーミングPCとして、Microsoft Store向けゲームだけでなくSteamやGOG.comなどの主要なPCゲームプラットフォームのほか、自宅のXboxコンソールのリモートプレイなどにも対応。(関連記事)。また、同機と並行して開発が進んでいると思われていたマイクロソフトの自社製携帯型Xboxについては、今年6月に開発保留が報じられた(関連記事)。 そのため業界ジャーナリストなどからは、マイクロソフトはハードウェアの開発を他社との協業で進めるのでは、との見解がみられることもあった。そしてマイクロソフト自身はXboxとPCの統合を進め、今後は特定のハードウェアに縛られないソフトウェア戦略に注力していく、つまり積極的なコンソール展開からは距離を置くのではないかという見方が強まっていた。

さらに、アメリカを中心に展開している小売チェーンのコストコのオンラインストアから、Xbox製品が削除されたとの報道もあった(The Gamer)。そうしてコミュニティの間では、マイクロソフトがハードウェア事業そのものから撤退するのではという噂が、まことしやかに広まりつつあったのだ。

今回マイクロソフトが出した声明は、その噂を否定するものである。声明はWindows Centralに向けて提供されたもので、以下のような短いものとなっている。

We are actively investing in our future first-party consoles and devices designed, engineered and built by Xbox. For more details, the community can revisit our agreement announcement with AMD.

我々は、Xboxが設計・開発・製造をおこなう将来の独自のコンソール機およびデバイスに積極的に投資しています。詳細については、AMDとの提携についての発表を再度ご覧ください。
(筆者による翻訳)


声明では噂されていた「積極的な次世代機開発からの撤退」を否定しているが、公式の発表としては、実際の開発状況は明らかになっておらず、不明だ。また今年6月に公開された、AMDとの提携について発表した動画の中でも「The next generation of Xbox」という言い回しが用いられているものの、“次世代機”が従来のような独自のコンソール機(Xbox Consoles)なのか、それともROG Xbox AllyシリーズのようにPCをベースとするようなものなのかについても、まだ公表はされていない。

Windows Centralに向けたマイクロソフトの声明を受けて、コミュニティの反応としては、ハードウェア事業継続についてやや懐疑的な声も寄せられている。ユーザーの間では依然として、次世代「コンソール機」は出ないのではないかという考えが払拭されない様子だ。また今後Xbox PCアプリが中心となったエコシステムが構築された場合に、これまでに購入したゲームのライブラリが将来的にも利用できるのか不安視する意見も見られる。

これまでの動きを振り返ってみると、マイクロソフトはPCやXboxといったハードウェア間の境界を薄めて、特定のハードウェアに縛られない「Xbox体験」を目指しているように思われる。“次世代機”についても、コンソール機開発を進めていく方針はそのままに、あくまでユーザーが「Xbox体験」するにあたっての選択肢のひとつに留まり、主力商品とはならない可能性も十分にあり得る。

いずれにせよ、今回はハードウェア事業からの撤退がまことしやかに囁かれるなか、それを否定するようなかたちで出された声明を機に、「次世代のXbox」があらためて注目を浴びることとなった。その詳細が具体的にいかなるものとなるのか、マイクロソフトの今後の動向に注目したい。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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