SIEから“『Horizon』そっくりゲーム”で訴えられたテンセントが反論。「そもそもまだ開発途中」などを理由に、却下を申し立てる
テンセントはSIEの訴えに対して、訴状の却下申立てをおこなった。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は今年7月、テンセントが手がけるサバイバルクラフトゲーム『LIGHT OF MOTIRAM』について、『Horizon』シリーズ作品の著作権および商標権を侵害し、消費者の混同を招いているとして提訴。これに対して今回、テンセント側が訴状の却下を求める申し立てをおこなったことが明らかになった。海外メディアThe Game Postが報じている。
『Horizon』は、SIE傘下のGuerrilla Gamesが手がけたシングルプレイのオープンワールド・アクションRPGシリーズ。これまで第1作『Horizon Zero Dawn』とその続編『Horizon Forbidden West』のほか、関連作品も展開。かつての文明が失われ機械獣が住まう世界を舞台に、主人公である狩人アーロイの旅路が描かれてきた。

そして『LIGHT OF MOTIRAM』は、テンセント傘下のPOLARIS QUESTが手がけるマルチプレイ対応のオープンワールドサバイバルゲームとして、2024年11月に発表された。文明崩壊後の世界をメカが野生生物のように闊歩するという舞台設定が『Horizon』シリーズに酷似。また、キービジュアルも『Horizon Zero Dawn』のものに似ているとして、発表当初から物議を醸していた。

酷似作品を巡る訴訟
そして今年7月、SIEはカリフォルニア州北部地区連邦裁判所にて、テンセント関連企業による著作権および商標権の侵害を主張。「slavish clone(独創性のないクローン)」であり、消費者を混乱させる恐れがあるとして、『LIGHT OF MOTIRAM』のリリース差し止めや損害賠償を求めた(関連記事)。
これを受けてか、8月には同作のストアページがひそかに更新されていることも判明した。アーロイを彷彿とさせる女性キャラクターや、マンモスのような姿をした巨大な機械獣などが映る複数の画像や動画について、差し替えがおこなわれている。説明文の記述からは、機械獣を想起させるワードが消えるなど、裁判の争点となる『Horizon』との類似性について取り繕うかのような対応には注目が集まっていた(関連記事)。

訴訟に対する反論
そして9月17日、テンセントはカリフォルニア州北部地区連邦裁判所に対して、先述したSIEの訴状の却下を求める申立て(Motion to Dismiss)をおこなった。申立てにあたり、テンセントは3つの論点を提示している。
まずテンセントは、同社がカリフォルニア州および米国に向けて意図的な活動を行っていないため、同裁判所が特定の対人管轄権を有していないと指摘した。過去にはテンセントがSIEに対して『Horizon』シリーズの新作ゲームに関するライセンス取得を提案し却下されたことも報じられていたが、そもそも『LIGHT OF MOTIRAM』の開発はそれ以前に始まっていたうえ、著作権や商標権の侵害とは無関係な出来事だと主張している。また『LIGHT OF MOTIRAM』の商標を米国特許商標庁に出願していたことについても同様に、SIEに対して損害を発生させるものではないとしている。

そして、SIEが訴訟において誤った企業を被告としているとも主張。SIEの訴状では、テンセント傘下の米国法人であるTencent AmericaやProxima Beta U.S.など、米国を拠点とするテンセント関連企業が名を連ねているが、これらの会社は実際には『LIGHT OF MOTIRAM』の開発や販売に携わっていないとのこと。SIEが今回の訴訟において、関係のないテンセント傘下企業まであいまいな指摘で巻き込んでいるという主張だ。
さらに、SIEがまだ発生していない行為に対して請求をおこなっていることも挙げている。テンセントは、ゲームが2027年第4四半期に発売予定であり、まだ流動的な開発段階にあることを説明。SIEが将来の起こりうる行為について、仮定に基づいた訴訟をおこなっているとの見解を示した。
問題の行方
SIEが主張する『LIGHT OF MOTIRAM』による権利侵害に対して、今回テンセント側が反論したかたちだ。訴訟が適当な要件を満たしていないという主張に加えて、同作について発表されてきた内容はあくまでも開発中のものであることなどを根拠として却下を申し立てている。
とはいえ、テンセント側が掲げた2027年第4四半期という発売時期については、先述したストアページの変更にあわせて追記されたものであった。また削除される前にはアーロイや機械獣を想起させる内容があり、そうした内容でプロモーションをおこなっていたことが裁判所側にどのように判断されるかも注目されるところ。
なお、今回提出された訴状却下申立てについては、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所において、11月19日に公聴会がおこなわれる予定。一連の騒動について、今後両社はどのような対応をとるのだろうか。