『ダイイングライト:ザ・ビースト』先行プレイ感想。復讐のためには“環境全利用”、パルクール、クラフト、ステルスもフル活用で力を蓄え、解放する
本稿では、『ダイイングライト』シリーズ最新作『ダイイングライト:ザ・ビースト』の先行プレイ感想をお伝えする。

『ダイイングライト』シリーズといえば、ゾンビアポカリプスとパルクールを組み合わせた名作アクションゲームだ。崩壊した文明、限られた資源、そして何より世界を埋め尽くすゾンビの群れ。そんな厳しい状況を戦術眼や戦いの腕前で切り抜けていくことが本シリーズの醍醐味であり、最新作である『ダイイングライト:ザ・ビースト』にもその持ち味はしっかりと引き継がれている。同作はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに、日本時間9月19日1時よりリリース中だ。
だがゾンビアポカリプスものの常として、一度態勢を崩されてしまえば一気にピンチが訪れる。雪崩のように押し寄せるゾンビの大群を押し返すことは、簡単なことではないからだ。銃火器類の弾はすでに尽き、距離を詰められているためにグレネードを投げる余裕もない。必死にガードを固めるものの、武器は傷つきスタミナも限界を迎えつつある。このような状況に陥ってしまったら、このままゲームオーバー画面送りになる以外に道はないのだろうか?
否、『ダイイングライト:ザ・ビースト』ではその限りではない。本作の主人公「カイル・クレイン」は、窮地に陥った際にその身に宿るビーストの力を解き放って「ビーストモード」を発動可能。パンチ一撃でゾンビを粉砕するほどの圧倒的なパワーを得るのだ。この苦境からの大逆転によるカタルシスの開放は、『ダイイングライト:ザ・ビースト』が本シリーズにもたらした新たな魅力の1つだ。
弊誌はそんな本作を先行してプレイする機会に恵まれた。メインシナリオクリアまでの約29時間半のプレイから見えてきた本作の野性的な魅力について、お届けする。なお、本作は最大4人までのマルチプレイにも対応しているが、先行プレイである関係上マルチプレイを体験することはできなかったことにはご留意いただきたい。
内なる獣を解き放て
爆発的な逆転手段であるビーストモードの発動には、専用のゲージを溜める必要がある。カイルの怒りを源とするこのゲージは戦闘を通して上昇していき、一度発動すればほぼ無敵に近い。ただでさえ強靭なカイルの肉体が強化されることでゾンビとの立場は逆転、ゲージを使い切るまで破壊の限りを尽くす文字通りの“ビースト”と化すのだ。加えて移動能力の上昇、発動時の体力回復といったメリットもあり、武器の使用ができなくなるというデメリットは大したものには感じられないだろう。

注意すべき点は、特定のスキルを獲得するまでは発動タイミングのコントロールができず、ゲージがマックスになった時点で勝手にビーストモードに突入してしまうということだ。そのためいつでもどこでも自由に発動というわけにはいかず、「戦闘の終わり際に強制的に発動、残った1、2体のゾンビを殴って終了」などという悲しい展開も珍しくない。効果を最大限に利用したければ、派手な効果に反した繊細なゲージ管理が求められる。
過酷な世界で繰り広げられる、人間同士の生存競争
本作のストーリーも、カイルのこの特異な性質を巡るものとなっている。初代『ダイイングライト』から再び主人公の座に戻ったカイルは、非人道的な実験を13年もの間受け続けた影響でその身にビーストのDNAを宿すことに。研究施設への襲撃に乗じて逃げ延びたカイルは、実験の首謀者である狂気の科学者「バロン」への復讐を誓う。一方でバロンもカイルの能力に目を付けており、カイルはバロンが送り込む執拗な追跡を退けながら恐るべき計画の全貌に迫ることとなる。

バロンへの復讐のために力を求めるカイルは、脱出を手助けしてくれた謎の人物「オリビア」の助言に従って「キメラ」と呼ばれる怪物たちを狩ることになる。狙いは、バロンがキメラを強化するために作り出した物質「GSB」だ。この物質はカイルの中のビーストDNAにも作用するため、キメラを狩る度にビーストの力を強化していくことができる。


また、ゾンビが蔓延る世界に生きる人間たちの勢力も登場。たとえば、序盤で訪れることになる「タウンホール」には多くの生存者が身を寄せており、カイルに協力する最初の勢力となってくれる。一方で、穏健派の長老である「ジェイコブ」と合理的ではあるものの強硬な手段を好む「保安官」の間で意見が分かれることも珍しくなく、一枚岩であるとは言えない内情があるようだ。

過酷な日々を強い意志で生き抜く彼らとの関わりはメインストーリーに大きな影響を与えるほか、彼らから依頼されるサイドクエストでも、本作の醜くも美しい世界観をより深く味わうことができるだろう。サイドクエストクリア時には報酬として強力な装備や素材がもらえるほか、キャラクターたちそれぞれの生きざまを感じさせるストーリーが用意されているため、進行に必須でないからと見逃してしまうのはもったいない。ぜひ、遊んでほしいところだ。


周りにあるものすべてを利用し、生き延びろ
本作の舞台となるのは、かつて人気の観光地だった「カストール・ウッズ」。旧市街や国立公園、精神病院などさまざまなロケーションから成るこの地域の特徴は、とにかく高低差があること。数で優位に立つゾンビに勝つためにはすべてのものを利用する必要があり、それは地形も例外ではない。攻めるにしても守るにしてもまずパルクールで高所を取り、戦局を見極めて適切な行動を取ろう。


気付かれぬまま敵の背後を取り、ステルスキルを取る戦術も非常に有効だ。音を立てずに1人、また1人と始末していけば、戦闘を起こさないままスマートに勝利することもできる。一方で、格闘能力を強化していけば並み居る敵をなぎ倒していくようなパワープレイも可能となっている。


なお、先述した火炎瓶に始まり、武器、回復アイテム、ピッキングに用いるロックピックに至るまで、本作の消耗品は基本的にクラフトで補充していくことになる。クラフトの材料は倒した敵や文明の残骸から回収できるため、目についた素材はすべて集めるようにしよう。

また、カストール・ウッズ各所で乗り捨てられている車も利用価値が非常に高い。ファストトラベルが存在しない本作において、安全かつ高速で移動できる車はまさに天の助けだ。長年放置されているものなので燃料の残りは心もとないことが多いが、ありがたく使い切らせてもらおう。

ただし、これらはすべて人間に有利な昼を想定した話。夜になると、「ヴォラタイル」と呼ばれる強力なゾンビが出現する。ほかのゾンビとは比べ物にならない機動力と攻撃性でこちらを追い詰めてくる、夜の支配者だ。

彼らは音や光に敏感に反応するため、不用意な物音やヘッドライトの点灯は命取りとなる。もし見つかってしまったのなら、無事を祈りながら逃げること以外にできることはない。一方で彼らの巣には貴重なアイテムが隠されており、夜の探索という危険を冒すだけの価値はある。

危険な夜をやりすごすためには、安全な空間を確保することが重要だ。各地に点在するセーフスポットにてゾンビの排除と電力の確保を行えば安全の確保は完了、以降は拠点として使うことができる。拠点では各種アイテムのクラフトや強化ができるほか、ベッドを利用すれば安全に時間を過ごすこともできる。

耐え抜いた先で、復讐を果たせ
使えるクラフト素材が少ないことやスキルツリーの関係から、本作の序盤は苦しい戦いを強いられることが多くなる。先述の通り、利用できるものすべてを使ってなんとかしのごう。中盤以降に全体的なリソースが揃い、カイルの強化も進んでくればこちらのターンの到来。銃をぶっ放して敵をなぎ倒すもよし、豊富なアイテムで物量戦を仕掛けるもよし、ビーストモードで暴れるもよし。今までの鬱憤を思う存分晴らすチャンスだ。

本作のボス戦は、まさにこの復讐の縮図となっている。クラフトアイテムでボスの強力な攻撃を耐え凌ぎ、ゲージが溜まればビーストモードに突入。怒りに我を忘れたカイルが巨大なボスを素手で打ち倒すシーンは爽快感満点であると共に、もはやどちらが怪物なのかわからなくなる感覚すら覚える。

過酷な世界における鬱屈としたストーリー、そして時には強力なゾンビに生命を脅かされることもあるだろう。しかしクエストやクラフトを通じて、蓄えた力で逆転を果たす。この反撃にさしかかる緊張と緩和が『ダイイングライト:ザ・ビースト』の醍醐味であり、名実ともにカイルの“復讐”の物語といえるだろう。
『ダイイングライト:ザ・ビースト』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに、日本時間9月19日1時よりリリース中だ。
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