ゲームの早期アクセス配信期間は“6か月前後が理想”とする調査レポート。長引く早期アクセスが正式リリースに与えうる影響とは

ゲーム業界の市場調査会社Newzooは9月9日、「Newzoo's Global Games Market Report 2025」を無料公開した。

ゲーム業界の市場調査会社Newzooは9月9日、「Newzoo’s Global Games Market Report 2025」を無料公開した。この中では同社の統計に基づき、新規プレイヤー獲得を狙う際の“理想”の早期アクセス配信期間が分析されている。

Newzooは、オランダ・アムステルダムに本社を構える市場調査分析会社だ。ゲームやeスポーツ、モバイル市場といった分野を主な調査対象としている。今回同社は無料レポートとして「Newzoo’s Global Games Market Report 2025」を公開。このなかではグローバルなゲーム市場の統計などさまざまなデータが紹介されている。

そんな同レポートでは、「早期アクセス配信期間」に関する見解も説明。どの程度の早期アクセス配信期間であれば、正式リリース時の盛り上がりを維持できるのかがうかがえるデータが示されている。

Image Credit: Newzoo

レポートにおいて提示されたデータは、2021年1月から2024年12月までの4年間に早期アクセス配信を開始し、その期間内に正式リリースされたゲームを対象に集計。中国・インドを除く37か国の、正式リリース後3か月間の平均新規プレイヤー数を集計したデータだという。

そして早期アクセス配信開始後の3か月間のデータと比べると、ほとんどのタイトルが正式リリース時に早期アクセス配信開始時の勢いを上回れなかったとのこと。ただし早期アクセス配信期間が4か月~9か月であったゲームについては、正式リリース時の方が新規プレイヤー数の伸びが優れているタイトルも存在。そうしたデータをもとに同レポートでは、正式リリース時に新規プレイヤー数獲得を狙うのであれば6か月間前後が最適だと分析している。またそうした早期アクセス配信期間で正式リリースできるタイトルは、早期アクセス配信開始時点でベースが上質で、かつフィードバックを得ながら反復的な調整もおこなわれている可能性が高いことが背景として考えられるそうだ。

一方で例外もあり、たとえば約2年間早期アクセス配信を続けた『V Rising』や『Ready or Not』は正式リリース時に多くの新規プレイヤーを獲得していたとのこと。また8か月間早期アクセス配信された『デイヴ・ザ・ダイバー』も“外れ値”として正式リリース時に膨大なプレイヤーを集めていたという。とはいえ例外的なタイトルを除外すれば、少なくともNewzooが分析する限りでは先述した6か月間前後が“最適な早期アクセス配信期間”になるようだ。

『デイヴ・ザ・ダイバー』

ちなみに2023年にも、ゲーム開発者向けマーケティング情報などを提供するGameDiscoverCoのSimon Carless氏が、早期アクセス配信期間と正式リリース時の売上についての関係性の分析をおこなっていたことがある。こちらでは2015年から2023年にかけてリリースされた1500本以上のゲームについて、早期アクセス配信後と正式リリース後の最初の3か月間での推定売上本数を比較。すると、早期アクセス配信期間が長引くほど、正式リリース時の売上が減少する傾向にあったという。とはいえSimon氏は、早期アクセス配信を長く続けるほど、セールなどウィッシュリスト登録者が購入するきっかけが増えるとも説明。そのため正式リリース時の売上が鈍化することさえ念頭に置けば、長く早期アクセス配信を続けることは必ずしも悪手ではないとしていた。

近年ではSteamだけでなくコンソールプラットフォームでも、早期アクセスとして配信されるゲームは増えてきた。早期アクセス配信の期間は、基本的には開発者次第。1年以内に正式リリースされる場合もあれば、数年にわたってじっくりと早期アクセス配信を続ける例も散見される。そうしたなかで今回のNewzooのレポートでは、早期アクセス配信を長引かせた場合、正式リリース時の新規プレイヤー数増加を鈍化させうる可能性が伝えられたかたちだ。

もちろん正式リリース時の新規プレイヤー数増加には、早期アクセス配信期間だけでなく、アップデート姿勢や正式リリースのタイミングなどさまざまな条件が複合的に関係するだろう。とはいえ統計データからは、6か月前後という早期アクセス配信期間が“目安”として示されている点は興味深いところ。比較的短い早期アクセス配信期間であり、今後そうした開発方針をとる作品が増えていくかどうかも注目される。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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