“ほぼ無人”だった26年前のMMORPGに突如プレイヤー殺到。運営元も歓喜し、初心者歓迎施策まで始まる

ほぼ無人だったMMORPG『Dark Ages』に、プレイヤーが集っているようだ。

動画投稿者のBind氏は8月30日、動画投稿・配信サイトYouTubeに「So.. I kind of Revived a Dead Game..」(どうやら死んだゲームを復活させちゃったみたい)という動画を投稿した。動画では『Dark Ages』というゲームが次第に盛り上がっていく様子が紹介されており、ひとつの動画がゲームの運営を大きく変えた事例として、海外メディアGamesRadar+などに報じられている。

『Dark Ages』は、1999年にサービスを開始したMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)である。ケルト神話をベースにクトゥルフ神話の要素が織り交ぜられたダークファンタジーの世界観で描かれており、それぞれ違った特色を持つクラスを選択し、戦闘や探索を通じてキャラクターを成長させていくのがゲームの基本となっている。

同作はそれだけでなく、プレイヤー主導でさまざまなことがおこなえるシステムを備えていた。村や町の法律を制定する政治システム、昇進システムのある8つの宗教、芸術や文学で人気を集めると貴族となれる階級システム、プレイヤーがほかのプレイヤーに講義する大学、権限を持つプレイヤーが問題のあるプレイヤーを投獄する治安維持システムなど存在。プレイヤーが主体的にロールプレイし、世界を動かしていくような作品だ。

そんな『Dark Ages』は特に英語圏で高い評価を受けたそうで、サービス開始から1週間で1000人以上のユーザーが登録し当時としてはなかなかの人気を博していた模様。先述のプレイヤーが主体となってさまざまなことができるシステムにより、熱心なプレイヤーが自らゲームを盛り上げようと活発に動いていたようだ。しかしその熱気は次第に衰え、プレイヤー人口は減っていった。それでもサービスは継続され、2020年には大型アップデートが実施。新型コロナウイルスの影響もあってか一時的に少数のプレイヤーが戻っていたようだが、2025年の時点ではサーバーにほとんど誰も存在せず、数人いるかいないかという状況だったようだ。

それでもサービスを継続している『Dark Ages』を見つけたBind氏は不思議に思い、実際に30日間プレイしてみようという企画を考案。動画撮影を開始した時点では、ただ退屈な30日を過ごすことになるのか、それともおもしろい出来事に遭遇するのかは未知数だったという。30日間の様子は「I Spent 30 Days in a Dead MMO (and it was amazing)」(死んだMMOで30日過ごしてみたら最高だった)という動画として投稿された。動画内ではBind氏がほとんど無人のサーバーをさまよい手探りで冒険を進める様子や、偶然アクティブなベテランプレイヤーと出会い、それから噂が噂を呼んで協力者が増えていく様子が紹介されている。

Image Credit: Bind on YouTube
Image Credit: Bind on YouTube

この動画は大きな反響を呼び、本稿執筆時点で約390万回の再生数を獲得している。Bind氏によれば、動画の再生数が伸びたことで『Dark Ages』には多くの新規プレイヤーが参入しているという。30日間のプレイで集まった人々は、物珍しい新規プレイヤーであるBind氏をあたたかく迎える古参プレイヤーが中心で、ほとんどBind氏1人が新規プレイヤーという状況だった。ところが、今では同時に複数の新規プレイヤーがゲームを開始している様子が見られ、プレイヤー数は平均して400〜500人、ピーク時に800人ほどと、サービス開始直後に匹敵する水準となっているというのだ。

こうした状況に開発に携わっていたメンバーも反応し、運営チームが再び動き始めることとなる。ゲーム初心者がつまずかないよう複数のアイテムのステータスを調整したり、初心者の質問に答えるための小さなイベントを開催したりと、現在は新規参入者向けの対応を中心におこなっているようだ。

また、古参プレイヤーも非公式Discordサーバーに常駐し、ゲーム開始の手順やゲーム内の質問といったサポートを自発的におこなっているほか、プレイヤー主催のイベントも企画されるに至った。これまでプレイヤー数が十分にいなかったためにできなかった『Dark Ages』のプレイヤー主導コンテンツが息を吹き返しているのだ。

Image Credit: Bind on YouTube
Image Credit: Bind on YouTube

『Dark Ages』の運営をおこなっているKRU Interactiveは、1996年にサービスを開始した『Nexus: Kingdom of the Winds』の運営も続けており、維持できる限りは古いMMOゲームを存続させる方針のようである。『Dark Ages』はアカウントごとの月額課金制となっており、一部の熱心なプレイヤーがアカウントを保持し続けたことがサービス存続につながったのだろう。

プレイヤーが主体的にゲームに関わり世界を作っていく精神は、細々と、しかし確実に維持されていたようだ。このことがBind氏をあたたかく迎えることにつながり、動画の反響を大きくし、そして訪れた新規プレイヤーをも迎えるという好循環につながったものと思われる。コミュニティに再び活気を取り戻したBind氏を讃えるプレイヤー主催イベントも開催され、運営チームはゲーム内に記念碑を作ってほしいというプレイヤーの要望に対応中だという。

今回の事例は、ユーザー主導コンテンツを備えた『Dark Ages』のシステムと、それを支えた熱心なプレイヤーたち、動画投稿者であるBind氏の行動が噛み合ったことによる奇跡的な復活劇と言える。思わぬ盛り上がりを取り戻した本作のコミュニティの今後にも注目したい。

Dark Ages』はPC向けにサービス中。月額9.95米ドル(約1460円)でプレイでき、一部のコンテンツが制限されたUnregistered Playは無料でプレイ可能だ。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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