「Z世代はゲームに費やす金額が減少傾向あり」との調査報告。日本では時間もお金も使わない“暇つぶしゲーム勢”拡大か

アメリカのZ世代がゲームに費やす金額が、近年大きく減少しているとする報道が注目を集めている。日本でもZ世代については、ゲームに“暇つぶし程度”に関わるユーザーが多いようだ。

アメリカのZ世代がゲームに費やす金額が、近年大きく減少しているという。ウォール・ストリート・ジャーナルの報道をもとに、VICEが先月報じていた。今回ゲーム関連のニュースを取り上げているPirat_Nation氏が取り上げ、業界人から再び注目されている。

VICEの記事では、市場調査会社Circanaによる調査結果が伝えられている。調査はアメリカの18歳から24歳のユーザーを対象に実施。2025年の1月から4月の期間においては、オンラインおよび小売店でのゲームの購入額が前年同期比13%の減少を示したという。加えて、90年代後半から2010年代前半までに生まれたZ世代(zoomers)のビデオゲームに費やす週あたりの金額は、2024年から約25%も減少したとのこと。

Video game spend among 18 to 24's is down sharply."Young grads are having a much tougher time finding jobs. Student-loan payments are restarting for millions of borrowers… credit-card delinquency rates have risen to their highest points since before the pandemic…"www.wsj.com/personal-fin…

Mat Piscatella (@matpiscatella.bsky.social) 2025-07-01T14:25:35.367Z

こうしたアメリカの若年層による支出の減少は、ゲームに限らずさまざまなカテゴリでみられる。たとえば小型家電(small appliances)やアクセサリーでは約18%の減少、アパレルやブランド化粧品などでも10%程度の減少となっている。おおむねその他の年齢層では微減、あるいは増加傾向にあるものの、全体的に趣味などに費やす金額が減少傾向にあるようだ。そのなかでも若年層のゲームの購入額減少傾向は顕著といえる。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、ここまでZ世代の消費が落ち込んだ理由として雇用市場の冷え込みや学生ローンの存在、さらに高いクレジットカードの滞納率に起因するとしている。アメリカでは、失業者数は横這いで、雇用者数は右肩下がりの減少を続けている。7月の雇用統計によれば、就業者は5月からの3か月で平均3万5000人の増加にとどまったといい、「コロナ禍後最悪」の水準となった(Bloomberg)。

さらにアメリカ教育省は5月5日より、コロナ禍で猶予を設けていた学生ローンの債務の回収を再開(日本経済新聞)。この返済は500万人が対象となっており、返済が滞った場合には差し押さえなどの強制回収が実施される。また物価高を理由として、2024年1月から3月期では、クレジットカードの延滞率が約9%まで上昇(日本経済新聞)。厳しい家計状況が引き金となり、ゲームへの出費が強く引き下げられた可能性はありそうだ。

一方で日本のZ世代については、ゲームへの関心や消費が急激に減少しているわけではないものの、緩やかな減少傾向を見せているようだ。マーケティング・リサーチ会社インテージが提供するIPファン-kitの調査によれば、Z世代が属する「15-19歳」「20-29歳」カテゴリにて、「年に1日以上ゲームで遊んだ人の割合」が減少傾向にあることが伝えられている(東洋経済オンライン)。

Image Credit: インテージ/東洋経済オンライン on Web

日本においては、アメリカほど雇用状況は厳しくないとみられ、2025年6月時点での完全失業率は2.5%と、アメリカの同月失業率4.1%と比較すると少ない。有効求人倍率も1.24倍と横這いを記録しており、若年層の経済状況は、アメリカの若年層ほど逼迫していないとみられる(総務省統計局)。

なお日本のZ世代のゲームに関する意識調査については、SHIBUYA109 lab.が2023年に実施。同機関はSHIBUYA109の運営を手がけるSHIBUYA109エンタテイメントのマーケティング機関だ。SHIBUYA109 lab.の調査では、15歳から24歳までのZ世代434人を対象として、スマートフォンやPC、各種コンソール機を使ってゲームをプレイする人にアンケートがおこなわれた。

調査の結果としては、日本のZ世代はゲームを暇つぶしやたまにプレイする程度の「暇つぶしゲーム勢」が半数を占めており、コミュニケーションを目的としたり、スキルアップなどを目的としたりする、いわゆる“ガチ勢”などに比較し、大きな派閥となっている模様。1日の平均プレイ時間は約70分程度となっており、年間に費やす金額も平均6299円と、ゲームソフト一本分程度の費用となっていることがうかがえる。使用端末が主にスマートフォンに偏っていることもあり、フルプライスゲームをあまり購入せず、スマートフォン向けの基本プレイ無料タイトルなどをメインでプレイしている可能性はありそうだ。

Image Credit: SHIBUYA109 lab. on Web

さらに、「タイム・パフォーマンス」というワードが新たな価値観として幅広い世代に膾炙する傾向がありつつも、特にZ世代では他世代に比べ“ながら”でコンテンツを楽しんだり、コンテンツに対し「使う時間・かかる時間」と「得られる価値」のバランスを考えるようにする傾向にある、といった調査結果もみられる(インテージ)。基本プレイ無料タイトルは買い切りゲームに比べ、初期投資が少なくプレイできる傾向にある。さらにスマートフォン向けタイトルでは通勤・通学の時間中にプレイすることも容易であるため、タイム・パフォーマンスの面でも好まれている可能性はあるのかもしれない。

今回報告された調査結果では、アメリカの若年層を取り巻く経済状況を主な要因として、ゲームへの出費が大きく落ち込んだことが報告された。一方で日本でもZ世代がゲームへ費やす金額や時間が減少傾向にあるというデータも見受けられる。規模や背景が異なるものの、国内外問わずゲームに費やすリソースが減少気味である可能性もあり興味深い。

なお直近ではフルプライスの買い切り型ゲームにおいて、ゲームの開発コストが上昇していることを背景に、業界全体でいわゆるフルプライスゲームが値上げされる可能性について注目されている側面がある(関連記事)。先述したゲームへの出費の減少も相まって、Z世代にとっては、より買い切りゲームの購入のハードルが上がっていくことも懸念される。またZ世代に限らず消費者の消費動向や雇用市場の動向は、ゲーム業界の動向とともに注目されるところだろう。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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