Steam成人向けゲーム規制強化で“クレカ会社の検閲”抗議運動勃発、17万人以上の署名集まる。一方で営業妨害を始める過激派も

Steamなどにおいて、クレジットカード会社などの基準に抵触するおそれのあるゲームの規制が強化されている。そうしたなかで一部コミュニティは、クレジットカード会社に対して抗議活動を始めているようだ。

Steamやitch.ioといったPCゲームプラットフォームにおいて、主に成人向けゲームの規制が強化されている状況がある。決済代行業者および関連するクレジットカード会社・銀行などが定める基準に抵触する可能性のあるゲームを規制する動きであり、突如基準が変化した点にはユーザーの反発も強まっている。そうしたなかで一部コミュニティは、クレジットカード会社に対して抗議活動を始めているようだ。

Steamでは先日、開発者向けガイドラインであるSteamworksドキュメンテーションにおける「Steamで公開すべきではないもの」の内容を更新。Steamの決済サービス業者、関連カードネットワークや銀行、インターネットネットワークプロバイダーなどによって定められた規則や基準に違反する可能性のあるコンテンツ、特に特定の種類の成人指定(アダルトオンリー)コンテンツが新たに規制対象となることが示された。その後すぐさま多数の作品がストアから削除されることになった(関連記事)。

またitch.ioではすべての成人向けNSFWコンテンツが、同サイト内でのブラウズおよび検索結果ページから除外したことを発表。クレジットカードの決済代行業者から調査を受け、そうしたコンテンツの審査を実施することとなり、それが完了するまでの措置として閲覧制限をかけているという(関連記事)。

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なおitch.ioは声明のなかで、人権擁護団体Collective Shoutの公開書簡に関して言及。というのもCollective Shoutは7月11日、VISAやMastercard、JCB、PayPalなどの決済事業者に対しitch.ioとSteamに存在する特定のテーマの成人向けゲームについての懸念を表明し、この直後にSteamおよびitch.ioでの成人向けゲームの規制が強化されることとなった。公開書簡の後に決済事業者からSteamおよびitch.ioに働きかけがあったようで、今回の規制強化のきっかけになった可能性がうかがえる。

いずれにせよ、現状では決済事業者などが定める基準に抵触する作品をそのまま配信し続けた場合、ストアにおいて対応する決済手段が差し止められる恐れがあるのだろう。Steamの広報担当者は海外メディアPC Gamerなどに対し、決済手段がなくなると、ユーザーが基準に抵触しないタイトルやコンテンツまで購入不可能になりうるため今回のような措置をとったことを伝えている。またitch.ioもあらゆる開発者にマーケットプレイスを提供し運営を続けていくためには、決済パートナーとの関係を最優先に考える必要があるとの判断を明かしていた。

そうしたなかでは、一部コミュニティがクレジットカード会社に対して抗議を始めているようだ。なかでも海外メディアPolygonは、一部コミュニティがMaster CardおよびVisaのコールセンターに組織的に抗議電話をかけるという迷惑行為を始めたことを報じている。一部ユーザーはメッセージを伝えるためではなく、「一般客が利用できないくらい電話を殺到させる」「企業が損失を被るレベルに混乱させる」といった狙いを述べており、こちらの活動は主に営業妨害を目的としておこなわれている様子だ。企業方針について決定権のないコールセンターの担当者には礼儀正しくするといった呼びかけもあるようだが、言うまでもなく違法行為。米国でも日本でも刑事罰に繋がりうる悪質な行為である点には留意したい。

Comment
byu/rost400 from discussion
inSteam


対してオンライン署名サイトChange.orgでは、Master CardおよびVisaに対し、プラットフォームに圧力をかけて、法律やプラットフォームの規約上は問題のないフィクション作品を“検閲”しないようにすることなどを求める署名活動がおこなわれている。ゲームに限らず、創作物を扱うプラットフォーム全般における要請だろう。またこのなかでは先述したCollective Shoutなどの存在を意識してか、Master CardおよびVisaに対して、活動団体による干渉を拒むことなども要請されている。

この署名運動は7月18日に開始されたのち、17万人以上の署名を集めており、本稿執筆時点でもその署名数を伸ばしている。結果はMaster CardおよびVisaに加えて、米連邦取引委員会(FTC)および非営利の債務カウンセリング機関American Consumer Credit Counselingに提出される見込みだ。かならずしも対応がおこなわれるかどうかは不明ながら、各企業・機関への問題提起となることだろう。


いずれにせよ決済代行業者の“圧力”でSteamやitch.ioの大規模規制が生じているとみられる点はコミュニティで物議を醸し、一部ユーザー間で抗議活動も発生しているようだ。なお日本国内においても、昨年から今年にかけてDLsiteなど成人向けコンテンツを扱うサイトにおいてMaster CardやVisaのクレジットカード決済が停止される事態が相次いできた(産経ニュース)。クレジットカード会社による“検閲”として国内外で問題視されており、前述したような署名活動により今後企業や政府が対応をおこなうどうかも注目される。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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