新作バトロワ『Off The Grid』、「ローカライズ品質がひどい」と批判集まる。カタコトの日本語で“不謹慎すぎる罵倒”も
バトロワゲーム『Off The Grid』のSteamレビューが「賛否両論」ステータスでの幕開けとなっており、特に日本語ユーザーからはローカライズ品質や“不適切な台詞”を巡って批判を受けている。

Gunzilla Gamesは7月17日、『Off The Grid』PC(Steam)版を配信開始した。本作は2024年11月よりPC (Epic Gamesストア)/Xbox Series X|S/PS5向けに早期アクセス配信されていたタイトルだ。ただSteamレビューでの評価ステータスは「賛否両論」での幕開けとなっており、特に日本語ユーザーからはローカライズ品質や“不適切な台詞”を巡って批判を受けている。
『Off The Grid』は近未来を舞台とした三人称視点のバトルロイヤルシューターだ。ゲームへの参加を志願する兵士たちは自らの四肢を切断し、さまざまな能力をもったサイバーリムを装着。テレビ中継がおこなわれる戦場へと身を投じ、強化された肉体で生き残りを賭けて戦うことになる。

本作には、映画「第9地区」の監督として知られるニール・ブロムカンプ氏がチーフビジョナリーオフィサーとして開発に携わっており、本作のサイバーパンクな世界観は、同氏の映画作品の1つ「エリジウム」の影響を色濃く受けている。またブロックチェーン技術を活用した自社開発のエコシステム「GUNZ」をベースとしており、「GUN」というゲーム内トークンを用いて武器などのNFT(非代替性トークン)を購入することができるなど、Web3ゲームという側面もある作品だ。
そんな本作は2024年10月より、Steamを除く各プラットフォーム向けに早期アクセス配信開始。そして7月17日にはSteamでのリリースを迎えた。ついに配信が開始されたSteamでは、ピーク時に9000人超の同時接続プレイヤー数を記録(SteamDB)。また年内には60時間分ものボリュームがあるとされるストーリーモードが実装予定と今後の展開にも期待が寄せられている。
ただし、Steamにおけるユーザーレビューは本稿執筆時点で、約300件中66%が好評とする「賛否両論」ステータスとなっている。現実味のある近未来の舞台設定やサイバーリムを付け替えながら戦うというユニークなゲームシステムが一定の評価を受けているものの、おもにPC環境における最適化の面で多くの不評が集まっているようだ。また、マッチにBotのプレイヤーが多く追加される点や、月額課金のサブスクリプション限定コンテンツが存在している点なども批判の対象となっている。

さらに日本語ユーザーからは本作のローカライズについての否定的な意見も挙げられている。本作は昨年11月の早期アクセス配信時点では日本語非対応だったものの、今年2月のアップデートで日本語ローカライズが実施。そのためSteam版はリリース時点でローカライズ済みながら、品質の低さが浮き彫りになっているようだ。筆者もプレイして確認したところ、チュートリアルムービーやマッチ内でのアナウンスとして流れるすべての日本語音声が機械音声となっており、漢字が誤った読み方をされることも頻発。また全体的に自動翻訳による不自然な片言の表現となっている。
一方でゲーム中で頻繁に聞くことになるのは過激なセリフばかり。というのも、マッチ内でアナウンスをおこなう人物は、オープニングのチュートリアルムービーにも登場する「コブラ曹長」とみられる。コブラ曹長はプレイヤーに対してたびたび毒舌を吐く“鬼軍曹”的なキャラクターであるが、この人物からは度が過ぎたきつい言い回しが発せられる。たとえば、マップへの降下時には「私はこの部分を死ぬ前に飛べと呼んでいる」という違和感のあるナレーションもある傍らで、「分かったか、うつ病者ども」といった露骨な差別的表現も存在する。

さらに、マップにおけるリング収縮が開始される際には、「グリッドは福島原発よりも酷いメルトダウンを起こそうとしている」というセリフが飛び出す場面も。本作ではリング外で受けるダメージがかなり高く、収縮のスピードも速いため危険ではあるものの、ゲーム内の緊迫した状況を「福島第一原発事故」になぞらえる表現はゲームといえども不適切なたとえだろう。
そうした過激な発言をたびたび聞かされる点は、昨年11月の早期アクセス配信開始直後にも一部海外ユーザー間で顰蹙を買っていた様子。先述した原発事故を揶揄する発言についても嫌悪感を示す声が見られた。今回ローカライズがおこなわれたうえでSteam版が展開されたことで、改めて日本語ユーザーからも看過できないといった批判が寄せられている。
なお本作のSteamストアページでは、AI生成コンテンツを使用していることについて明記されている。開発初期のコンセプトアートや音声サンプル、翻訳に加えて、複数の言語で高品質な体験を提供するため、テキスト・音声・動画のローカライズにもAIが活用されているという。ただ先述のとおり品質面には課題があり、特に日本語版では、ローカライズ品質、特に読み上げの品質の低さに繋がっているのだろう。

ところで、Epic Gamesが昨年公開したニール・ブロムカンプ氏へのインタビュー記事では、本作がさまざまな現実への風刺を含んでいることが語られている。カットシーンの一部は実写とCGを組み合わせて制作されており、実際にシューティングゲームの会場が現実世界に存在していて、それを人々がテレビで見ているかのような状況が演出されているという。そして特筆すべき発言として、ブロムカンプ氏は本作が「文化の面では極めてアメリカ中心的である(super American-centric in terms of culture)」とも述べている。本作の内容が(現実における)特定の問題を指しているかどうかはわからないとしつつ、暴力的な作品であるという認識のうえで制作されたとのこと。
あえて過激な作風となっていることもうかがえ、先述したような発言も、そうしたテーマに沿って開発陣により採用されたのだろう。とはいえ、プレイ中にたびたび聞くことになるセリフとして、不謹慎な発言がさまざま含まれていることは国内外で批判を受けている。またゲームや映画のローカライズでは、対象地域のユーザーを配慮してオリジナル版の表現が調整されたり、カットされたりする例もある。生成AIに大きく頼っていたとみられる本作のローカライズにおいては品質面だけでなく、各種表現の精査も不十分であったとみられ、今回の批判に繋がったといえるだろう。
ゲームプレイにおける課題からも「賛否両論」でのスタートとなった本作。今後ユーザーの反応を受けて、ローカライズの改善などが進められるのかどうかにも注目される。
『Off The Grid』はPC(Steam)向けに配信中。PC (Epic Gamesストア)/Xbox Series X|S/PS5向けにも早期アクセスで配信中。