X(Twitter)のゲーム開発者間で“推しのゲームはタダでも応援できる”とのアピールが流行る。つまり「リポストして」

「It costs $0.00 to support」で始まり画像が添えられているXポストが多数のユーザーによって投稿されている。どうやら、アーティストの自己PRの手段として大きなムーブメントが起きているようだ。

現在Xでは英語圏を中心として、「It costs $0.00 to support」で始まり画像が添えられているポストが多数のユーザーによって投稿されている。どうやら、SNSで活動するアーティストの自己PRの手段として大きなムーブメントが起きているようだ。

筆者が確認するかぎり、発端と見られるのは5月10日にXユーザーのAhnaf氏が投じたポストだ。同氏は自分が携わったアートを紹介しつつ「It costs $0.00 to support a 19 year old graphic designer(19歳のグラフィックデザイナーを支援するには一銭もかかりません)」と投稿。すなわち、応援したいと思ってくれたユーザーに、“無償の支援”としてリポストをお願いしているわけだろう。

そして、同ポストと類似した投稿がこの一週間ほどで大量のユーザーによって投稿されている。自身の年齢や肩書きとともに、無償で支援できると述べるフォーマットが定着しており、一種のネットミームのように扱われているのだ。さらに特徴として、それらの大半が他のユーザーによる「It costs $0.00 to support」のポストを引用リポストする形で投稿されており、枝分かれ的に拡散している。こうした動きが現在、X上のさまざまなコミュニティに広がっており、グラフィックデザイナーだけでなくイラストレーターやゲーム開発者など、たくさんのアーティストが画像や動画で自身の作品をアピールしている。本稿ではゲーム開発者たちによる作品をいくつか紹介したい。

上述したポストは、Pow Pixel Gamesが手がける『Abathor』の公式Xアカウントによる投稿だ。同作は2024年7月に発売された2Dアクションゲーム。ギリシャ神話やH・P・ラヴクラフトの作品に影響を受けた本作では、プレイヤーは英雄となり、アトランティスを脅かすモンスターや古き神々たちを倒していく。開発者はレトロゲーマーを名乗っており、同作には80年代および90年代のアーケードゲームのスタイルがふんだんに取り入れられている。ドット絵のグラフィックや楽曲など細部にまで作者のこだわりを感じる作品だ。

次にこちらのポストを見てみよう。個人開発者のWhyKevが手がける『PaperKlay』を紹介した投稿だ。同作は、段ボールや粘土といった手作り感あふれた世界を舞台とする3Dアクションゲーム。「開く」「展開する」「回転する」という3つのアクションを駆使してステージを進んでいくことになる。『バンジョーとカズーイの大冒険』の楽曲で知られるGrant Kirkhope氏が作曲で携わっているという。なお、5月28日にSteam向けに発売予定とされておりまさにリリース間近。宣伝するには絶好のタイミングとなっていそうだ。

続いて上述したポストは、2人の開発者からなるPurpure Studioが投稿したもの。同スタジオは、2024年2月にリリースしたターン制RPG『EVERING』を宣伝している。ドット絵を基調とする「昔ながらのRPG」といった懐かしさを重視しつつも、ランダムエンカウントを廃止して自分のペースで探検できるようにするなど、さまざまな点で体験の刷新を図っているゲームだという。伝説の起源を探る王子エルダーによる、自身の出自に迫る物語が描かれる。

最後にこちらの投稿を見てみよう。個人デベロッパーのMISK Gamesが手がける『Flowers And Favours: Florist Simulator』が宣伝されている。同作は、2025年第3四半期の発売を予定しているフローリストシミュレーションゲームだ。プレイヤーは購入した花を組み合わせて生け、包装や装飾を施してブーケとして仕上げることが可能。出来上がったフラワーアレンジメントは写真を撮ってアルバムに残すことができるという。なお開発者のIris Misk氏はまだ22歳。同氏の作品が持つほんわかとした雰囲気を気に入ったというユーザーも複数称賛を寄せている。

特に宣伝費の限られたインディー作品にとって、口コミの広がりは心強い支援となるのだろう。たとえ何気ないリポストでも、クリエイター側は立派な支援として感謝していることを改めて示し、ファンに促す狙いもあるのかもしれない。インディーゲームを中心に、他にも多くのゲーム開発者たちが自らの作品を紹介しているため、気になる人はX上をチェックしてみてほしい。

ところで、X上では過去にも、今回のようにインディー開発者が一風変わった手法で作品をアピールするムーブメントが巻き起こっており、たとえば今年2月にはゲームの開発過程を1分でまとめて振り返る動画が流行していた(関連記事)。今日ではさまざまなセルフプロデュースの手段があるが、連鎖的な拡散が発生するのはSNSならではとも言える。コミュニティ全体で宣伝しあって盛り上がることで得られる相乗効果も狙いとしてあるのだろう。ユーザー側としても好みの作品を探せるチャンスになるかもしれない。もし好みのゲームが見つかったら“無償で支援”してみてはいかがだろうか。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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