『Dinkum』は『どうぶつの森』風ゲーム……とは全然違った。開拓冒険の末に、ようやく勝ち取るスローライフ
KRAFTONは4月23日に箱庭スローライフゲーム『Dinkum(ディンカム)』を正式リリースする。本稿では筆者の感想に基づき、本作と『どうぶつの森』との“違い”をお伝えしていく。

KRAFTONは4月23日に『Dinkum(ディンカム)』を正式リリースする。対応プラットフォームはPC(Steam)で、ゲーム内は日本語表示に対応している。
『Dinkum』は最大6人マルチプレイ対応の箱庭スローライフゲームだ。2022年7月にSteamにて早期アクセス配信が開始され、これまでの売り上げが100万本を超えていることが報告されるなど、人気を博している作品である。本作の舞台となるのは、オーストラリアをモチーフとした無人島だ。自然豊かな島でプレイヤーは町づくりをおこない、住民を集めながら自由に暮らしていく。
本作はレビューなどで、『どうぶつの森』風の作品だと紹介されることが多い。実際、無人島に住民を呼び集めて町を作っていく本作の基本的なゲームプレイは『どうぶつの森』を彷彿とさせるし、細かい部分にも同作になぞらえた演出や仕様が散見される。少しプレイすれば、『Dinkum』が『どうぶつの森』シリーズをリスペクトして開発されていることはすぐにわかる。
しかしながら実際に両作をプレイした筆者としては、本作『Dinkum』で得られる体験は『どうぶつの森』とは別物であると感じている。端的に言えば、どこまでも平和で牧歌的な『どうぶつの森』とは異なり、『Dinkum』の自然は一筋縄ではいかないのだ。オーストラリアがモデルとなっている『Dinkum』の島には、危険と刺激がちりばめられている。そこで本稿では筆者の『Dinkum』初見プレイの感想を通じて、本作の『どうぶつの森』との“違い”をお伝えしていく。
広大な荒野でゼロから村づくり
本作を始めると、フレッチという名前のおばあさんとたったふたりで無人島に移住することになる。プレイ当初はそれこそ『どうぶつの森』的なやさしいスローライフを期待していた筆者だったが、到着した島を見てさっそくちょっとした驚きを覚える。本当に何もないのだ。家もお店もなく、先行した人たちがテントを張って待ってくれているようなこともない。ビーチの向こう側には、ただ赤茶けた乾いた大地が広がっている。

尻込みする筆者を横目に、フレッチはプレイヤーにテントを渡し、未来の町の中心となる拠点テントを設置するよう促してくる。広い島のどこに置くか迷いつつ、筆者はなんとなく川沿いの平地に設置した。しかし川に近すぎる位置にテントを置いた判断は、少し後で起きる悲しい事件の原因となる。川は便利な存在ではあるが、そこには危険も存在していたからだ。
やさしくないどうぶつたち
本格的にゲームプレイが始まると、四季のある島にて物を拾ったり虫を捕まえたりしながら、クラフトなどを進めていくことになる。この辺りの要素は『どうぶつの森』らしいが、カンガルーのような野生動物がうろついていたりして、環境はオーストラリア感が満載だ。のんびりとプレイしていた筆者だったが、野外を歩いているといきなり黒っぽいダチョウのような生物に攻撃を受ける。突然の戦闘となり驚くが、武器も何も持っていない筆者は逃げ惑うのみだ。執拗に追い回されてなかなか振り切れず、結局川に飛び込んでなんとか難を逃れた。
殺伐とした展開に筆者は、本作を『どうぶつの森』感覚で遊んではいけないと思い直す。スローライフを堪能したいのはやまやまだが、この島のどうぶつはやさしくない。『Dinkum』の自然はなめてはいけないのだ。生き延びるためには道具が必要である。さいわい島には商人たちがときどきやってきて、斧やツルハシといったツールを販売している。さらに商人たちは取引を繰り返しているうちに島を気に入り、そのうち定住して住民になってくれる。つまりどういうことかというと、無人島で生きるにもお金が必要なのだ。集めた虫や釣った魚などを商人に売り、代わりに文明の利器を手に入れるのである。

虫を売ってお金を稼ぐのは『どうぶつの森』にもある要素だ。時間の流れのゆるやかな同作ではまったりと虫集めをして、スローライフをエンジョイできる。しかし『Dinkum』で虫を捕っているときの筆者の心境は、とても穏やかではなかった。虫を売ってツールを買わなければ、ここでは生きていけない。そんな気持ちに追われながら虫を集めていると時間の流れが速く、あっという間に日が暮れていく。とてもスローライフどころではない。せっせと働いて得たお金でツルハシや斧といったツールを買ったり、卵目当てでニワトリを買ったりして、少しづつ環境を整えていった。
しかし野外で作業中だったある時、買ったニワトリが死んだ、とのメッセージが突然表示される。「エサはちゃんとあげたのに、なぜだ」と村に戻ってみると、なんと村の中をワニがうろつき回っていた。近づくと、当然こちらに襲いかかってくる。どうやら村が川に近すぎて、川に棲むワニが迷い込んできてしまったようだった。こいつがニワトリを食べてしまったのはまちがいない。

クラフトしていた素朴な槍で抵抗を試みる筆者だったが、ワニは強かった。あえなくやられた筆者は家で目を覚まし、所持品の耐久度が軒並み下がるという手痛いペナルティを食らってしまう。ニワトリの死を悼みつつ、村の立地に失敗したことを悟って嘆く筆者だったが、何人かの商人がすでに店を構えてしまっているため、もはや拠点の引っ越しは現実的ではない。ワニがうろつく村ではスローライフなど夢のまた夢だ。対策は急務だった。
筆者は柵を作って村を囲み、野生動物が迷い込んでこないようにすることにした。必要なのは木材だ。さっそくお店で斧を買い込んで、周囲の森の伐採を始める。やはりスローライフどころではなく、一日があっという間に終わる日々が続くが、自然を切り拓きながら生活環境を作っていく行程はさながら開拓民で、どこかワクワク感がある。ときおりワニに追い回されながら柵を完成させた筆者は、ここでようやく一息つくのだった。
乗り物に乗って冒険も
村の安全が確保されれば、より遠くまで島を探索してみたい気持ちにもなる。本作には金属探知機で土中のお宝を探すといった探検要素が用意されており、また乗り物も複数存在している。船に乗って川や海で釣りをしたり、ダチョウを手なづけて乗ったりすることができ、最終的にはヘリを作って飛ぶことすらできる。歩いて回るにはいささか広い島であるため、乗り物の存在はありがたいし、なにより乗っていて楽しい。
乗り物の多くは中盤以降に入手できる素材が必要となるが、比較的序盤から作成できるのが手漕ぎボートだ。当然水の上しか進めないが、川の周りを掘って自分で水路を作れば、利便性ははるかに増す。川のすぐそばにある筆者の村の立地は、ボートの利用には好都合だ。ちょっとした運河を掘った結果、ボートで島の東西南北へ出かけられるようになった。そうして筆者は島の各地を探索し、物資を充実させていったのだった。

そして勝ち取るスローライフ
島に来てすぐの頃は道具も何もなく、一日があっという間に終わっていた。しかしプレイを進めて道具やスキルが揃い、乗り物も増えていくと、だんだん時間と物資が余るようになってくる。その日終えたい作業を全部こなしても、まだお日様が沈んでいない。それぞれの仕事を終えて広場に出てくる住民たちの姿を眺めながら、家のデコレーションや町のデザインなどにいそしむ余裕が出てくる。そう、筆者はここに至ってようやく、スローライフらしい時間を楽しむことができるようになったのだ。ダチョウやワニに追い回された日々を懐かしく思いつつ、のんびりと平和なひとときを味わう筆者の胸は、そこはかとない達成感を感じていた。

以上が、筆者の初見プレイ時の感想だ。本作についての筆者の印象をまとめると、つまり本作のスローライフというのはあらかじめ用意されているものではなく、自分で作り上げていくものなのである。虫の収集や町の飾り付けなど、『どうぶつの森』を思い起こさせる要素は確かに多いが、オーストラリアをモチーフとした厳しい自然は、プレイヤーにただのんびりと過ごすことを許してくれない。リアルタイムに連動してゆるやかに時が流れ、気ままにゆるりと遊ぶことができる『どうぶつの森』シリーズとは、かなり異なる遊び心地がある。
実際に両作をプレイした筆者としては、『Dinkum』を『どうぶつの森』風ゲームとは紹介しない。『どうぶつの森』ゆずりの温かみのある雰囲気は確かに本作の魅力のひとつではあるが、本作の本質は開拓と冒険のフロンティア精神を心行くまで楽しみ、その末にある牧歌的な日常を勝ち取るゲームなのだ。
『Dinkum(ディンカム)』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中。4月23日に正式リリースだ。価格は税込2300円で、ゲーム内は日本語表示に対応している。