高難易度ヒットゲーム開発者の新作サッカーゲーム『Rematch』は、やっぱり激ムズ。操作は難しいし、思うように動かせないのになぜかやめられない

約10時間の試遊で仲間や敵から学んだものは計り知れない。

『Rematch』は、やればやるほど上達したことを実感できるサッカーゲームだ。味方が決めてくれたゴールや相手に決められてしまったゴールのリプレイを見ることで、自分の成長に必要なものが見えてくる。技を盗んで強くなるというのは武道に通じるものがあり、約10時間の試遊で仲間や敵から学んだものは計り知れない。

発売日の2025年6月19日に先駆けて、メディア向けに実施されたクローズドプレイの感想をこの記事でお伝えしたい。また、試遊は開発中のデータが使用されているため、製品版で配信されるバージョンとは異なる場合がある。対応プラットフォームはPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)であるが、今回はPC版をDualSenseでプレイした。


ファウルなし、オフサイドなしの弱肉強食なサッカー

本作のパブリッシャーのKepler InteractiveとデベロッパーのSloclapは、ストイックに格闘技を極める『Absolver』(2017年)や、死ぬと老いていくシステムと歯ごたえのあるアクションが融合した『Sifu』(2022年)に発売された。とりわけ『Sifu』はいわゆる「死にゲー」に通じるようなストイックさが存在し、シリアスな作品として高評価を獲得した。

シリアスなゲームを手掛けるSloclapからすると、本作『Rematch』は過去作とは違う独特な雰囲気だ。サッカーゲームといえども最大で5対5のミニサッカーであるし、ファウルもなければオフサイドも存在しない。スローインもないのでボールは外に出ずに跳ね返ってくる。あまりに自由なルールに、筆者は『Jリーグ エキサイトステージ’94』(1994)の「サロンフットボールモード」を思い出した。本作にあるのは6分間の間に相手より多くのゴールを決めるというシンプルなルールである。現実のサッカーならば、一発退場を免れないようなタックルで私のキャラクターがボールを奪われたときは思わず笑ってしまった。

「サッカーは球技の格闘技」と呼ばれることもあるが、本作は明らかに一線を超えておりかなりの割合として格闘技に近づいている印象を受けた。ファウルを気にしなくていいスライディングタックルの威力は高く、相手がシュートモーションに入った瞬間にその足ごと刈り取ることができる。ファウルやオフサイドで試合が途切れることはないので、試合のテンポは良好だ。カジュアルなサッカーゲームを味わえる作品としては、本作は独自の立場を築くポテンシャルを持っている。

シュートを打つキックへの異様なまでのこだわり

武術をベースにアクションゲームを開発してきたSloclapのこだわりは、本作でのシュートを打つキックのアクションににじみ出ている。シュートのコースはもちろん、キックの強さや、どのくらいの回転をかけるかなどもプレイヤーが決めることが可能だ。これほどキックの1つ1つまで細かにプレイヤーの意思を反映できるサッカーゲームは、過去にあったかどうかを考えてもすぐに思い浮かべることができない。

右足のインフロントキックでボールを擦り上げ相手キーパーの届かない場所にゴールを決めたときは、自分がデイビッド・ベッカムになったかのような感覚があった。それとは逆にアウトサイドキックでボールを擦り上げ、外れたかのように見えたボールが急激に変化してネットに突き刺さったときはロベルト・カルロスの伝説的なシュートを再現できた誇らしい気分にさせてくれる。このように、『Rematch』はボールを蹴ることへのこだわりが注ぎ込まれたゲームである。

本作は三人称視点となっており、主人公とその周囲の姿は確認しやすい。しかし、たとえば遠く離れたところや逆サイドのことはわかりにくくなっている。極論を言ってしまえば、自分がフィールド中央にいて左サイドばかり見ていると、右サイドの出来事を見失ってしまう。ミニマップの助けを借りつつも、自分の目でピッチ全体をこまめに見回すことが攻守の激しい展開のなかで適切なポジショニングを見つけることにつながるのだ。

自分の分身となるアバターキャラクターの首を振って敵味方とボールの位置を確認するのは、『リベログランデ』(1998年)に似ている。テレビで観戦しているかのような分かりやすい視点を採用している「EA SPORTS FC」シリーズや「eFootball」シリーズとは異なり、本作は独自性を発揮しているといえるだろう。『Jリーグ エキサイトステージ’94』や『リベログランデ』を思い出すようなサッカーゲーム新作が、『Sifu』のデベロッパーから出てくるのは意外だった。

コースをアナログで指定するパスやクロスは慣れが必要

ファウルなしのルールによって相手は気軽にスライディングを繰り出してくるため、ドリブル突破は難しいことが多い。特別なドリブルスキルやヒールリフトを使って相手をかわることもできるが、やはり1人ではゴールに迫ることは簡単なことではない。そこで味方へのパスが重要となってくる。本作はパスの方向をアナログで指定する方式になっているため、きちんとした方向にパスを出すことができないと、パスを待つ味方とズレてしまうのである。

これは結構慣れるまでが大変だった。パスを出す前は敵がタックルを仕掛けてくることが多いし、パスする前にボールを奪われてしまうと失点に直結しかねない。パス1つとっても奥深いものがあり、相手は足元にボールがほしいのか、それともスペースにボールがほしいのかを見極めることが必要だ。

ただ、それでも試合を通じてお互いが要求するようなパスが出てくるようになるかが不思議だ。筆者がカジュアルマッチで共に戦ったとある仲間は最前線に飛び出していくタイプのプレイヤーがいた。スペースにパスが欲しいのかと思って相手のダッシュに合わせてパスを出しても、なぜか上手く噛み合わない。相手がシュートを外しまくってくれたことでリードを許していなかったが、こちらの点が入らなければ勝てないのも事実だ。

そこで筆者は別の方法でそのプレイヤーにパスを出すことにした。味方を走らせるようなパスを出すのではなく、シュート性のクロスをサイドから放り込んでみたのだ。これまでとはまったく異なるパスに相手のディフェンスは反応できなかったが、その味方はジャンピングボレーで豪快な一撃を叩き込んでくれた。そして喜ぶ彼の姿を見たとき、私たちは名コンビになった気がしたものだ。その味方はお返しとしてパスを次の機会にくれたので、筆者は冷静にゴール隅へと流し込むことができた。信頼関係からゴールは生まれるのだ。

試合中に変わる役割分担へ貢献が勝利に直結

点が入ると、毎回プレイヤーの役割分担が変わる。さっきまでフォワードだったプレイヤーがゴールキーパーになることもあった。ゴールキーパーのプレイフィールはフィールドプレイヤーとかなり変わっており、基本的には自分たちのゴール前で守備に徹する。相手のシュートにはジャンプしてゴールを防ぐことになるが、失敗するとたちまち1点を失ってしまうので責任重大だ。そうした意味では、ゴールキーパーが初心者にとってはもっともプレッシャーのかかるポジションといえるだろう。

しかし、ゴールキーパーを上手くこなすことができればチームの勝利に貢献できることも事実である。本作はチームの勝ち負けのほかに、ゴールやパスなどで得られるポイントによってMVPが決まる。ゴールキーパーのときは相手のシュートをセーブした回数がポイントに直結するので、得意になっておくとMVPを狙いやすい。キャラクターたちには能力差が存在しないので、プレイヤーのスキルが反映されやすいのも公平なプレイフィールにつながっている。カスタマイズ要素はプレイヤーキャラクターであるアバターの外見を変更する程度だ。

ゴールキーパー以外のフィールドプレイヤーも、複数のポジションが存在する。センターフォワードだったり左右のウイングだったりと攻撃的なポジションもあれば、守備的ミッドフィールダーのようなポジションもある。5対5で戦う本作ではフィールドが広く感じるが、それぞれが適切なポジショニングを心がければそうそう穴が生まれるものでもない。もちろん、ときにはそうしたセオリーを捨ててでも点を取りに行くアグレッシブさが求められるのも事実だ。プレイした感想としてはそこまで圧倒的な差がつく試合は少なく、終盤まで競った好ゲームが多かった。

試遊で10時間プレイした感想としては、大きなバグもなくすでに完成度が高かったように感じられた。日本語とチュートリアルも完備していたため、基本的なゲームプレイに習熟しやすかったのもすぐに慣れることができた原因だろう。『Rematch』には、リアルサッカーを追求する「EA SPORTS FC」シリーズや「eFootball」シリーズにはない独自の魅力を持っている。

『Rematch』は2025年6月19日に発売予定。対応プラットフォームはPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam)。通常版のほかに発売3日前から早期アクセスが可能なエディションも発売予定だ。それぞれのエディションの詳細については、各デジタルストアを参照してほしい。また、Steamでは今後オープンベータテストが実施される予定だ。発売に先駆けて本作を試してみたい場合は、本作の公式サイトでオープンベータへ登録しよう。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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