ウクライナに拠点もつ『Metro』開発元、戦争下でもめげずに新作2本開発中と報告。ロシアによる戦禍は『Metro』新作の内容にも反映へ

デベロッパーの4A Gamesは3月16日、『Metro』シリーズ15周年を記念する動画と近況報告を公開した。『Metro』新作と「未発表のAAA級ゲーム」開発に引き続き取り組んでいることを伝えているほか、ロシアによるウクライナ侵攻の影響は新作の内容にも影響を及ぼしているようだ。
『Metro』は、ロシアの小説家Dmitry Glukhovsky氏の小説「Metro」シリーズを原作とするFPSゲームシリーズだ。これまでに『Metro 2033』『Metro: Last Light』『Metro Exodus』そしてVR向けゲーム『Metro Awakening』がリリース済み。ロシア・モスクワの地下鉄網などを舞台とし、荒廃した世界での生き残りと、人々の命運をかけた戦いが描かれた。初作『Metro 2033』は北米向けに2010年3月16日にリリースされており、昨日めでたくシリーズ15周年を迎えている。
『Metro』シリーズを手がける4A Gamesは、ウクライナのキーウにて創業したデベロッパー。現在はロシアによるウクライナ侵攻の影響により、本社をマルタ共和国に移動。しかし、キーウにも開発拠点を残しており、多くのスタッフが引き続き同地で開発に臨んでいる。現在、同デベロッパーは『Metro』シリーズ新作と「新たなAAA級ゲーム」を手がけていると伝えられていた。
そして今回、『Metro』シリーズ15周年を記念し、同デベロッパーの新たな近況報告が届けられた。その中では、これまでを振り返っての感慨と、ファンへの感謝を綴りつつ、スタジオの近況が伝えられている。現在同デベロッパーは200人を超えるスタッフを擁しており、うち150人が依然として戦禍のさなかにあるキーウに、残りがマルタの拠点に在籍しているという。そして、前述の『Metro』新作および「AAA級新作」についても引き続き鋭意開発中であることが強調された。

同報告では、ロシアによるウクライナ侵攻の影響についても言及。「ミサイル攻撃や空襲警報、ウクライナに恐怖が降り注ぐなかでも開発を続けているため、安心してほしい」と力強く語った。危険な状況であるものの、可能な限り安全を確保して活動しているとのこと。『Metro』新作の正式発表については、ファンに過大な期待をさせすぎないよう、準備が整い次第おこなうそうだ。
また、ロシアによる侵攻は『Metro』新作の内容についても影響を与えたそうだ。戦禍のなかで開発陣は、対立・勢力争い・独裁の恐怖・自由の代償といった物事が生活の一部となった状態で、3年以上を過ごすこととなったという。そうした経験がゲームにも必然的に反映されており、もともと政治的でハードかつ反戦のメッセージをもっていた『Metro』シリーズながら、新作ではさらに暗い物語が描かれるという。

そして小説「Metro」作者のGlukhovsky氏については、ロシアの作家でありながらも、侵攻当時からウクライナ側に立ち、ロシア政府に対して批判的な立場をとっていた。そうした活動の結果、同氏はロシア政府から追われる身となり、欠席裁判のなか懲役刑の判決さえ受けている。そうした状況のなかでもGlukhovsky氏は、共同制作者として4A Gamesと協力して作品を作っていくとのこと。
なお、4A Gamesスタッフからは過去に戦死者も出ている。ウクライナ軍に従軍していた、シニアアニメーターのAndrii Korzinkin氏だ(関連記事)。今回の報告は、戦闘で仲間を喪うような死と隣り合わせの状況にて、生活を脅かされながらも開発に臨む同デベロッパーの力強い呼びかけであった。
『Metro』新作および「新作AAA級ゲーム」は現在開発中。続報に期待したい。