『モンスターハンターワイルズ』に無理やり“黒幕”が生み出される。絶対違うのに妙にしっくりくる集団妄想

『モンスターハンターワイルズ』にて、一部ユーザー間であるキャラクターをストーリーの“黒幕”に仕立て上げる考えが広まりを見せている。悪役ではないにもかかわらず黒幕にすると妙にしっくりくることも、ユーザーの笑いを誘っているようだ。なお本稿には、上位到達までのストーリーに関するネタバレなどが含まれているため、留意されたい。
本作は、ハンティングアクションゲーム『モンスターハンター』シリーズ最新作だ。舞台となるのは、ギルドが調査したことのない未踏の領域「禁足地」。数年前にギルドに保護された少年ナタの証言を手がかりに、プレイヤーは調査隊のハンターとしてこの地に足を踏み入れる。ナタの暮らしていた守人一族の集落を襲った謎のモンスター“白の孤影”を探す、禁足地を巡る旅が描かれる。
本作の一部プレイヤー間で“タシンおじさんが黒幕”とする不思議な概念が生じているようだ。タシンとは、プロローグのカットシーンで、白の孤影ことアルシュベルドに襲われる守人の里からナタを逃がした人物だ。
ストーリーを進めるなかではタシンを含め守人一族が、犠牲者を出しつつも壊滅はしていなかったことが判明。また守人たちがかつての文明の技術を守る使命を帯びていたことのほか、アルシュベルドなどが護竜(ガーディアン)なる人工的に作られたモンスターであり、かつての文明において使役されていたことが明かされる。

ただ護竜を生み出した文明はあくまで遠い昔に滅びており、タシンを含め守人一族は言い伝えとして、守人の里であるシルドを守ってきただけだという。当時の技術や知識を身に着けているわけでもなく、この地で細々と生き続けてきたようだ。
しかしなぜかそうしたタシンの言葉を信じず、彼を“黒幕”とする概念が国内SNS上で広まりを見せている。たとえば一部ユーザーは、ゲーム中のスクリーンショットを交えつつタシンのセリフを改変。あたかもタシンが、アルシュベルドを作って世界の破壊を望んでいたかのような人物にされている。さらにはナタを裏切るようなシーンもさまざま妄想されており、中にはタシンがかつての技術で護竜のようにナタを“造り出した”といったSFホラーのような考えまでみられる。ほかの作品の悪役をオマージュした、黒幕タシンのファンイラストまで描かれているようだ。
ただいずれもゲーム中にはまったく存在しないセリフ、あるいは示唆もされていない設定であり、タシンは少なくともゲーム内では善人として描かれていた。そのためユーザー間でタシンが黒幕という概念が自然発生的に生じ、多彩な妄想を交えつつ広まりを見せている格好だ。純朴そうなタシンおじさんを黒幕扱いするシュールさも相まってか、本来のストーリーを知るプレイヤー間のジョークとして楽しまれている格好だろう。

なおタシンは先述したとおりプロローグにも登場する人物であり、アルシュベルドの襲撃を生き延びていたこと自体が意外でもある。またその後は護竜など、シリーズ中でも異例の、明確に超古代文明的な設定が示されるストーリーを辿ることとなる。守人一族やタシンに、さらに何か裏があるのではないかと勘繰る考え方もあるのだろう。ゲーム中での描かれ方からするとシュールな“タシン黒幕説”が妙に共感を得ているのも、そうした本作の特徴的な世界観が背景にあるのかもしれない。
とはいえあくまで『モンスターハンターワイルズ』のゲーム中で示される情報の範囲では、タシンは黒幕とはいえないだろう。突如ユーザー間で生じた謎の概念であり、公式設定ではない点には留意したい。
ちなみに本作では集落の人々と親しくなると、食事の誘いが不定期で発生するようになる。守人の里シルドでもタシンたちが食事を振る舞ってくれることがあり、本編中では見られなかったシルドの郷土料理を確認可能だ。食事イベントが発生していないかどうか、全体マップで竜都の跡形に気を配っておくのもいいだろう。
『モンスターハンターワイルズ』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中。