「最近のゲームのユーザーレビューは参考にできなくなった」との意見が議論呼ぶ。“駄作or傑作”の極端レビューが投稿されがちとして

最近のゲームレビューに対する考えを綴ったReddit投稿が話題になっている。両極端なゲームレビューばかりが生まれているという見解を示す、レビューの意義についての問題提起だ。

海外掲示板RedditのSubreddit「r/gaming」にて、最近のゲームレビューに対する考えを綴った投稿が話題になっている。2月27日の投稿には本稿執筆時点で1400件以上のコメントがつき、支持する声が多く寄せられた。両極端なゲームレビューばかりが生まれているという見解が示され、レビューの意義が問題提起されている。

話題になっているのは、eternalsgoku氏の投稿だ。同氏は、最近のゲームレビューは「ゲーム業界を永遠に変える傑作(masterpiece)」か「歴史上最大の災難(disaster)」かの両極端になっているのではないかという疑問をユーザーに投げかけた。大作ゲームが出るたびに「10点中10点」か「10点中1点」かといった極端なレビューが多く集まり、その中間はめったに存在しないと同氏は感じているようだ。ゲームに少しでもバグがあったりすると「ゴミ(garbage)」と呼ばれ、はたまた“代名詞”といえるような分かりやすく優れた点が存在する作品はいきなり「GOTY候補」ともてはやされるような風潮があるとの見解を示した。

なお「レビュー」といっても、メディアレビューやユーザーレビューなどさまざまな形態があるが、eternalsgoku氏は主にユーザーレビューに上述したような傾向があるという考えのようだ。またこうした問題提起をするきっかけになったのは、Obsidian Entertainmentが手がけ2月18日に発売された『Avowed』のレビュー動画だという。YouTube上でおすすめ表示された動画のうち、大半が同作を大きく批判する内容であったことにうんざりしてしまったそうだ。これは同氏が『Avowed』を半分ほどプレイしたときの出来事だといい、作品の品質に反して“過剰に批判されている”といった印象を受けたのだろう。実際にYouTube上には本作を酷評する動画が散見され、数万回再生を記録している動画も複数見られる。とはいえ、中には評価点や課題点を真剣に指摘する動画も見受けられ、レビュー動画における『Avowed』の扱いは投稿者によってまちまちともいえる。

極端なレビュースコア

一方でレビュー集積サイトMetacriticに目を向けると、極端なレビューが多いといった傾向が垣間見えるかもしれない。まず『Avowed』の、メディア・批評家からのレビュースコアであるメタスコアを見てみると、PC版が78点。同じくObsidian Entertainmentが手がけ2019年に発売された『The Outer Worlds』では、PC版が82点となっていた。少なくともメタスコアで比較する限りは、『Avowed』は『The Outer Worlds』よりもやや評価が劣るものの、なかなかの評判といえるだろう。

しかしユーザーからの評価であるユーザースコアに目を向けると、『The Outer Worlds』では好評(Positive)・賛否両論(Mixed)・不評(Negative)がそれぞれ本稿執筆時点で60%・23%・17%。一方の『Avowed』はそれぞれ40%・12%・48%となっている。『Avowed』では、好評や賛否両論が減りつつ、不評とするレビューの割合が非常に大きく増えている格好だ。メタスコアとは異なる評価傾向といえる。

なお不評は4点以下のレビューが対象となるが、『The Outer Worlds』PC版では不評のうち0点のレビューは約13%、対して『Avowed』PC版では約26%となっていた。ちなみに『Avowed』のレビューを見てみると、「ゲームはまあまあ」と評価しつつもキャラクターとストーリーを批判して0点とする意見や、“バグがあったら0点にする”というユーザーのレビューなども見受けられる。もちろん、Metacriticにおける2作品の比較だけで「極端なレビューが増えている」とは言い切れないものの、eternalsgoku氏が言うような極端な評価が投じられやすくなった傾向を示しているかもしれない。

揺らぐ「レビュー」の信頼性

もし仮に極端にネガティブなレビューが投じられやすくなった傾向があるとすれば、その背景には「ネガティブな情報ほど関心を引き、広まりやすい可能性がある」ことが一因としてありそうだ。というのも、2024年に自然科学分野の電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載された論文では、ネガティブなニュースがSNSを通じて共有される可能性が約1.9倍高いことが示されていた。そしてゲームのレビュー動画においても、そうした傾向を検証する試みがある。ストラテジーゲームを中心にプレイするYouTuber・PotatoMcWhiskey氏は、2月11日に発売された『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』(以下、Civ 7)のレビュー動画を「2本」投稿。一方は同作を「傑作」だと称賛する動画で、他方は同作を「めちゃくちゃ」だとこきおろす動画だ。ここで注目すべきはその再生回数の違い。本稿執筆時点で、『Civ 7』を褒めちぎる動画は36万回再生、逆に『Civ 7』をこきおろす動画は58万回再生となっている。後者がおよそ1.6倍も多くの再生回数を獲得しており、ニュースではなくレビュー動画でも人々がネガティブな情報に関心を寄せやすい傾向が垣間見える。


ゲームのレビューが「極端な意見ばかりになっている」という見解に基づいて投じられた問題提起。動画や記事に登場する極端にネガティブな評価のレビューについては、関心を引いてシェアされやすくすることを狙った事例もあるのかもしれない。またそうした状況がエコーチェンバーとなって、SNSやユーザーレビューの評価に波及する場合も考えられるだろう。不評が不評の呼び水になるといった状況も生じやすいとみられ、先述したように評価点や魅力があるとしつつも“0点”というスコアを付ける例もみられる。

ちなみにユーザーレビューに関連して、Steamではゲームの運営方法やマネタイズを批判視して、多数のユーザーが短期間に大量の不評レビューを投稿する、いわゆる「レビュー爆撃」のような状況が生じる例もしばしば見られる。また好評・不評を問わずゲームの内容の評価ではないネットミームやジョークがレビューとして投じられるケースもあり、Steamでは有用性の高いレビューを優先的に表示する仕組みが実装予定となっている(関連記事)。「ゲームの品質」が反映されていないユーザーレビューが投稿されるケースはさまざま見られ、レビュー集積システムにとっての課題ともいえる。

他方、昨今の業界ではメディア・批評家のレビューに基づくMetacriticのメタスコアに向けても、ゲームの面白さや持ち味を正当に評価できているかどうかに疑義を呈する声も見られる(関連記事)。そのため今回問題提起を行なったeternalsgoku氏のように、各所のレビューの信頼性に疑問をもつユーザーは一定数いると考えられる。レビューの主体を問わず、信頼性を維持するための新たな仕組みが求められている状況はあるかもしれない。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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