セクハラで解雇された元Bungie開発者、「セクハラしてないぞ」としてSIEを訴訟。しかしSIEから反論されまくり「訴訟自体が無意味」とまで言われる

セクハラを理由にBungieを解雇されたスタッフが、SIEを相手取り不当解雇だとして訴訟を提起。一方SIE側は裁判所に向けて同スタッフのセクハラ発言などの詳細を記した文書を提出し、解雇が正当であったことを主張している。

Bungieにてディレクターを務めていたChristopher Barrett氏は昨年3月、同スタジオを解雇された。一方で同氏は昨年12月、解雇が不当であったといった主張とともに同スタジオとソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)を相手取り訴訟を提起した。

今回、SIE側が裁判所に向け、Barrett氏の主張に反論する文書を提出。この中では、同氏がBungie在籍時にスタッフに対しておこなったとされるセクハラ発言などの詳細が明かされている。

Barrett氏は、Bungieに1999年から在籍していたベテランスタッフだ。『Destiny 2』の開発にディレクターのひとりとして携わったほか、開発中の『Marathon』のリブート版でも当初ディレクターを務めていた。しかし、昨年3月には『Marathon』のディレクターが別のスタッフであるJoe Ziegler氏に交代していたことが発覚。Barrett氏はその後Bungieを解雇される運びとなった。Bungieの社内調査により、Barrett氏の過去の言動がセクハラなどの不正行為として判断されたためだという。


そして昨年12月、Barrett氏はBungieとSIEを相手取り訴訟を提起(VentureBeat)。同氏はセクハラなどの不正行為について否定し、名誉棄損や契約違反といった訴因を主張していた。なお提訴においてBarrett氏側は、2022年にBungieがSIEに買収された際の取り決めとして、同氏が持っていたBungieの株式に応じた対価が支払われていたことを明かしていた。対価は年次で支払われており、解雇されなければ税抜で総額約4500万ドル(約68億円)もの対価が支払われる見込みであったという。同氏はSIE側がこの対価の支払いを避けるために、社内調査でBarrett氏の不正行為を“でっち上げ”て不当に解雇したと主張。SIEに対し名誉棄損などもあわせて、1億ドル(約150億円)以上の損害賠償を請求していた。

一方で今回SIE側が、訴因への反論として128ページに及ぶ文書を裁判所に提出したことが報じられている(Game File)。このなかでは、解雇の原因となったBarrett氏のセクハラについてSIE側が詳細を報告している。

SIE側は証言やテキストメッセージを元に、Barrett氏のセクハラの被害者(victim)となる女性スタッフが5名いたことを主張。たとえばあるスタッフに対して同氏はInstagramのダイレクトメッセージ(DM)にて、自分が既婚者であり口説いているわけではないとしつつ、スタッフを「聖杯(holy grail)」「非常に希少な逸材であり、そのように扱われてしかるべき」といった言葉で言及。スタッフが恋人から良好に扱われていると答えると、Barrett氏は「もしそうじゃなかったら自分が口説いていた」と送ったという。また同氏はこのスタッフに「(あなたとデートするために)人はどのようなステップを踏む必要があるのでしょう?戦略ガイドはありますか?」とのDMも送っていたそうだ。

SIE側の文書によると、Barrett氏はほかの4名のスタッフに対しても、従業員同士の適切なやりとりの一線を踏み越えたような言動をしていたとのこと。Teams上のやり取りでは女性スタッフに「まだパジャマを着ているのか」と尋ねつつ「スウェット?ルルレモン?」と具体的な服装を問いかけたり、泥酔してスタッフに電話をかけて誰と付き合っているのか、どんな人がタイプかとの質問をしたりといった事例が示されている。


また同氏はあるスタッフから適切なやりとりの一線をわきまえてほしいと伝えられたにもかかわらず、泥酔して電話をかけ、何時間もビデオ通話を続けた末に寝室へ行き「ベッドで横になりながら君と話せるなんて信じられない」と意味ありげに言い放ったと記載されている。SIE側によれば、Barrett氏が当時Bungieに長年勤め上級役職に就いていたことから、被害者たちはどう対処すべきかわからずほかの社員に助言を求めることもあったという。

SIE側はそうした証言も含め、Barrett氏の解雇は不正行為(misconduct)およびその徹底的な内部調査に基づく判断であったと主張。不正行為はなく、調査はでたらめであったとする同氏の主張に反論した。またSIE側は、そもそもの解雇の理由が正当であるため、訴訟自体が無意味であるとした。そのためそのほかの訴因へのSIE側の反論では、詳細が言及されていないものもある。

こうした文書を受けて、Barrett氏側の弁護士はGame Fileに声明を寄せ、SIE側を批判している。声明においては、SIE側がテキストメッセージや疑わしい会話を選び出し、裏付けなく結論ありきの供述をおこなっていると主張。引き続きBarrett氏の解雇に正当な法的根拠や事実上の根拠は何もなかったと述べられている。

過去にセクハラ行為があったかどうかを巡って、法廷での争いに発展したBarrett氏の解雇。同氏側とSIE側の主張は真っ向から食い違っており、今後裁判所側がどのような判断をおこなうのかは注目されるところだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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