任天堂、米国で出願していた“『パルワールド』意識”とみられる特許が最終拒絶を受ける。しかし“米国での訴訟の下準備”は進行中か

任天堂が米国にて出願していた特許が、内容のほとんどが拒絶されるかたちで最終拒絶されていたことが明らかとなった。

任天堂が米国にて出願していた特許が、内容のほとんどが拒絶されるかたちで最終拒絶されていたことが明らかとなった。この特許は、今後米国で『Palworld / パルワールド』(以下、パルワールド)を巡って訴訟を提起する準備として出願された特許ではないかとみられている。海外メディアgames frayが報じている。

任天堂および株式会社ポケモンは昨年9月19日、東京地方裁判所で株式会社ポケットペアを提訴したことを発表。ポケットペアが手がける『パルワールド』が、複数の特許権を侵害していると主張した。その後11月、ポケットペアは任天堂および株式会社ポケモンからの訴えの内容を開示し、対象となる特許も明らかとなっていた(関連記事)。

なおそれぞれの特許は、『パルワールド』の早期アクセス配信開始以前に任天堂が取得していた特許を親特許として、同作配信後に分割出願し、取得された特許であった。訴訟に先立って準備が進められていた様子もうかがえる。


その後米国においても任天堂の米国特許商標庁(USPTO)への出願状況から、『パルワールド』を巡る特許権侵害訴訟の準備をしているのではないかという可能性が報じられていた(GamesIndustry.biz)。この際に任天堂が“『パルワールド』意識”で出願したのではないかと推察されたのが、昨年5月に出願されていた出願番号18/652,874および18/652,883の特許だ。

USPTOの公開データベースPatent Centerにて文書を見るに、このうち出願番号18/652,874の特許は、ゲームプログラムにおいて、プレイヤーキャラが捕獲用のアイテムをフィールド上のキャラに狙いを定めて投げ、捕獲の成功判定が行われるシステムなどに関する特許として申請されていた。また出願番号18/652,883の特許は、ゲームプログラムにおける、プレイヤーキャラが乗って移動できる搭乗キャラや、空中移動が可能な搭乗キャラなどに関する特許として申請されていた。いずれも『パルワールド』への意識もうかがわせる内容だ。またいずれの特許もUSPTOに追加費用を支払って優先的に審査を進められる制度「Track One」が用いられていた。

しかし、USPTOはいずれの特許も昨年7月に拒絶。任天堂は内容を訂正した上で10月に再申請を実施し、出願番号18/652,874の特許については訂正後の内容で承認されていた。一方で出願番号18/652,883の特許については、現地時間12月4日に最終拒絶(Final Rejection)がおこなわれた。

最終拒絶とはいっても、USPTOの審査結果について、任天堂には同機関内のThe Patent Trial and Appeal Board(PTAB)に不服を申し立てる権利も存在。また最終拒絶後に修正できる箇所がある特許は、修正したうえで審査の継続を求めることができるようだ。

ただし出願番号18/652,883の特許の最終拒絶は、任天堂の出願内容が“ほぼ”拒絶される結果となっている。同特許には、特許権による保護を求める発明を定義する「請求項」が計23項あり、このうち計22項が先行技術にない独自性を認められず拒絶された。つまり1つの請求項を残して、ほかの項は特許権に値する発明とは認められなかったようだ。


ちなみに残る1項は第22請求項であり、この項のみ、訂正がおこなわれれば承認される見込み。定義の中に拒絶された第1請求項を含むため、説明において第1請求項を指定しないような訂正が求められているようだ。内容としてはゲームプログラムにおいて、仮想空間をプレイヤーキャラが搭乗用の飛行キャラに乗って飛行している際に、地面との距離が一定値になると飛行キャラからプレイヤーキャラに切り替わるといった技術。つまり地面すれすれになるとキャラに乗って飛行している状態からプレイヤーキャラに切り替わるといった仕組みだろう。

先述のとおり出願番号18/652,883の特許は現地時間12月4日に最終拒絶がおこなわれた。しかしその後2か月以上にわたって手続きに動きはなく、任天堂側は本特許の対応を決めかねていた様子がうかがえる。拒絶を受け入れるのか、先述した第22請求項を修正して同項だけを特許として取得するのか、あるいはPTABに不服を申し立てるかといった選択肢があるだろう。ただPatent Centerを見るに任天堂は現知時間2月11日に、まず審査官とのWeb面談を申し込んだようだ。本稿執筆時点ではUSPTO側の返答を待つ状況とみられる。

なお先述したとおり任天堂は出願番号18/652,874における狙いをつけて投げつけた捕獲アイテムにて捕獲の成功判定が行われるといったシステムについては、特許の取得に至っている。同社は米国でもさまざまな特許を有しており、現地時間2月11日には昨年7月に分割出願された特許番号12,220,638の特許を新たに取得したという。出願番号18/652,883の特許が最終拒絶された一方で、『パルワールド』を巡る米国での特許侵害訴訟の下準備と見られる特許取得が進められている様子であり、今後の動向は注視される。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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