ゲーミングPC・G TUNEの20年の歴史を「50時間かけて」追ってみたら、国内PCゲームの変遷とゲーミングPC戦国時代が垣間見える“濃密歴史ドラマ”があった

図書館にも足繁く通い、足掛け50時間を費やしてゲーミングPC・G TUNEの20年の歴史をまとめると、ゲーミングPCのドラマが見えてきた。

「ゲーミングPC」という言葉を耳にするようになって久しい。幼い頃から家庭用ゲーム機でのゲームプレイを中心としてきた筆者にとっても、ゲーミングPCは気になる存在だ。最近は大型タイトルもPCで発売されることが多いし、家庭用ゲーム機を超えるスペックによる高品質なゲームプレイも楽しみたい。Windows 10が2025年10月にサポート終了することや、筆者が愛好する「Football Manager」シリーズの最新作 『Football Manager 25』で推奨スペックが上がることもあってPCを買い替えるならさらに性能の高いゲーミングPCにしたいと思っていた。

そんな中、AUTOMATON編集部から「G TUNEの20周年を記念してG TUNEの歴史を調べてほしい」という相談を受けた。これでも自分はPCゲーマーだ。ゲーミングPCのある程度の流れぐらいは想像できるだろう、すぐに調べられるだろうとその時は安易に承諾した。しかし調べるうちにG TUNEの過ごした20年が濃密であり、同社だけでなくゲーミングPCの歴史やPCゲームにまつわるさまざまな出来事が絡み合う歴史が見えてきた。最初はWebだけで調査を完結させる予定であったが、図書館にも足繁く通い、足掛け50時間を費やしてこの原稿と資料を完成させた。魂と労力が詰まっているので、ぜひ読んでいただけると幸いだ。

なお、G TUNEのブランド立ち上げ20周年を記念したモデルが販売中だ。デスクトップ型ゲーミングPC1種とノート型ゲーミングPC2種のほか、デスクトップ型ゲーミングPCにディスプレイやマウスなどを同梱するセットも販売される。ラインアップは以下のとおり。

● 15.6 型ノートパソコン「G TUNE P5-I7G60WT-B(G TUNE 20 周年記念セットモデル)
 20万2000円(税込)~
  ○ 15.6 型ノートパソコン「G TUNE P5-I7G60WT-B」
  ○ ゲーミングイヤホン「Logicool G333-PU」
● 15.3 型ノートパソコン「G TUNE E5-I7G50BK-B (G TUNE 20周年記念モデル)
15万9800円(税込)


ゲーミングPCの戦国時代が開幕した最初期(2004~2009)

まずは最初期を見てみよう。G TUNEの始まり、である。G TUNEを展開しているのは、BTOパソコンメーカーであるマウスコンピューター。同社のゲーミングPCブランドとして、G TUNEは2004年に誕生した。G TUNEはハイスペックを求めるユーザー向けに展開されていた「Tune」をリニューアルする形で、ゲーマー向けのブランドとして新たな歩みを始める。

この2004年は日本のゲーミングPC元年と言っても間違いではない。G TUNEの登場と同時期には国内他社のゲーミングPCブランドも誕生しているので、ゲーミングPCの戦国時代が始まったと言っていいだろう。

ゲーミングPCという概念は今となっては普通なものの、当時としては新鮮なものだった。それゆえに、既存のPCメーカーとは異なる販売戦略が必要となってくる。そこでG TUNEが考えたのが、対象のタイトルの動作を保証する「推奨PC」の発売だ。ユーザーがCPUやメモリーなどのパーツをカスタマイズできるBTO(Build To Order)をさらに推し進めたのが推奨PCといっていいだろう。推奨PCを買うだけでお目当てのタイトルをプレイできるのは、知識や技術に乏しい多くのユーザーにとってわかりやすかった。G TUNEは2004年のブランドデビューと同時に、『リネージュII』の推奨PCを発売している。

G TUNEが誕生した頃、PCゲーム市場ではある変化が起きていた。それは、ブロードバンドが普及したことによるオンラインゲームの需要が増したことだ。定額制の高速インターネットに接続し放題という環境が生み出された結果、オンラインゲームの世界ではプレイヤー同士で、リアルタイムでコミュニケーションして冒険を進めていくタイトルが続々と登場した。

『リネージュII』以降も、G TUNEからは2006年の『ファイナルファンタジーXI』向けモデル、2008年の『モンスターハンター フロンティア オンライン』向けモデルなどの推奨PCを順次販売していく。これらのオンラインゲームは従来珍しかった運営型のタイトルだったため、推奨PCも毎年のように最新バージョンが発売された。

オンラインゲームではないシングルプレイ専用のゲームについても、G TUNEは推奨PCタイトルを増やしていった。家庭用ゲーム機からの移植としては、カプコンが積極的だった。この頃は家庭用ゲーム機とPCで同時発売とはいかないもののPC向けにも発売されるゲームは存在。G TUNEからは2008年に『デビル メイ クライ 4』の推奨PCが、2009年に『バイオハザード5』の推奨PCが発売されている。Steamは2003年にサービスを開始しているが、この頃はPC版もパッケージソフトが主流だった。

ここで国内PC向けに流行したタイトルを見ていこう。オフラインで楽しめるタイトルとなると、日本ファルコムのRPG「軌跡」シリーズの初期三部作『英雄伝説 空の軌跡FC』(2004)、『英雄伝説 空の軌跡SC』(2006)、『英雄伝説 空の軌跡 the 3rd』(2007)が発売された。国内ではフリーゲームも盛り上がっており、『洞窟物語』(2004)、『Elona』(2007)、『らんだむダンジョン』(2009)などがリリースされている。これらのタイトルは、当時PCでしかプレイできなかった。

またインターネットの発達によって、海外で話題のタイトルが日本でも知れ渡るようになった。ゲーム音楽として初のグラミー賞を受賞した『Civilization IV』(2005)をはじめ、3DオープンワールドRPGというジャンルを広めた『The Elder Scrolls IV: Oblivion』(2006)や『Fallout 3』(2009)などが海外で発売されている。

また『グランド・セフト・オート・サンアンドレアス』は海外では2004年に発売されたが、同作の過激な表現がアメリカで社会問題になってしまった。同作はPS2向け日本語版が2007年にようやく発売されたが、国内のレーティングに適合させる変更がなされている。PC向け日本語版が存在しないタイトルであっても、ゲーミングPCを購入するほど熱心なゲーマーを止めることはできない。海外向けPC版を輸入して、有志による日本語化パッチを当ててプレイするユーザーも一部見られた。ユーザーが作成したゲームデータを導入する「Mod」の文化が日本でも広まっていった。

PCでゲームをプレイするユーザーの増加に応じて、G TUNEというブランドも浸透していく。G TUNEは東京ゲームショウ2006で『ファイナルファンタジーXI』のスクウェア・エニックスに機材提供し、東京ゲームショウ2007で『三國志Online』のコーエー(当時)に機材提供した。2006年に筐体デザインを変更して、ブラックで流線型というG TUNEのイメージを確立したこともあり、東京ゲームショウのブースでG TUNEの存在感は際立った。

G TUNEを手がけるマウスコンピューターは、当時のユーザーからどのような評価を得ていたのだろうか。出版社が発行する雑誌が強い影響力を持っていたこの頃は、読者の投票によってPC満足度をランキング化する流れがあった。マウスコンピューターは大手PC雑誌の2008年のランキングから登場しており、新興勢力ながらも優れたグラフィック性能やコストパフォーマンスの高さから一定の人気を得ていたようだ。

ゲーミングPCといえば、この頃はハイエンドのデスクトップPCを意味することがほとんどだったため、デスクトップ向けのランキングではマウスコンピューターはかなりの上位に位置している。その一方でデスクトップPC大手のデルは2006年に「Alienware」を買収しており、この2009年になってAlienwareのブランドとしてゲーミングPCに参戦している。G TUNEは黎明期を乗り越えたものの、黒船とも言うべき海外の強敵による日本への本格参戦でゲーミングPCの覇権をめぐる争いは激化していった。

新勢力参戦で群雄割拠の様相を呈した中期(2010~2019)

鮮烈なデビューを果たしたといっても過言ではないG TUNEだが、各勢力がしのぎを削るPC業界では苦戦を強いられることになる。有名パソコン雑誌での人気ランキングでも年々順位を下げてしまった。黎明期は上位に度々ランクインしていたG TUNEだったが、下位に定着してしまうありさまだ。

巻き返しを図るマウスコンピューターは、PC性能の満足度の高さとコストパフォーマンスというブランド誕生時から変わらないG TUNEの強みは維持していた。それが功を奏してか、ユーザーからの評価も誕生期と変わらないような高い人気を得られるようになっていったのである。G TUNEの強みをあらためて自覚したマウスコンピューターによる反撃がここからはじまった。G TUNEは、2013年の有名PC雑誌や口コミでは「性能の満足度」と「コストパフォーマンスの満足度」で最強級の評価をユーザーから得られるブランドへと返り咲いたようだ。

マウスコンピューターは、かつては外部委託だったコールセンターを2010年に自社化した。そうした意味では2010年代前半は性能の高さやコストパフォーマンスだけではなく、ユーザーサポートの充実に本格的に乗り出した時期といえるだろう。インターネットの発達によって雑誌の影響力は薄れてしまっておりユーザー同士の口コミが重要になってきたのももちろんあるが、G TUNEを購入してくれたユーザーの満足度を向上させるように本格的に取り組んだ時期とも言えるだろう。

ゲーミングPC市場は魑魅魍魎の世界と言ってもいいかもしれない。新規参戦者は次から次へと現れるし、それまで優位を築いてた先行者がずっと勝ち続ける保証もない。ユーザーへの購入ガイドのような形を担っていたPC雑誌の企画も廃れてしまった。それでも、PCでゲームをプレイしたいという需要は存在し続けたし、それに応えるために各社が対策に乗り出していたのも事実である。

その後ゲーミングPCという用語に世間から注目が集まるようになった。PC自作のノウハウを伝える雑誌「DOS/V POWER REPORT」も、ゲーミングPCがユーザーに受け入れられていくのを無視することはできなかったようだ。「市販のゲーミングPCの魅力は、買ってからすぐに使える手軽さ。自作PCに比べれば自由度は制限されるが、ゲームを快適に楽しめることが最重要視されているので、ゲーマーに最適の完成品PCと言えるだろう」と特集「PCがいちばん身近なゲーム機だ!」で紹介されている(「DOS/V POWER REPORT」2017年10月号p.86)。

2014年にブランド誕生から10周年を迎えたG TUNEは、ゲーミングPC市場で先駆者というべき存在だ。これまでもドスパラのGALLERIAやデルのAlienwareと戦いを繰り広げてきたが、ゲーミングPCが注目されるようになって新勢力が参戦してきた。パソコン工房がゲーミングPCブランドとして「LEVEL∞」を2015年に立ち上げると、2016年にはHPの「Omen」が、2017年にはLenovoの「Legion」などが登場するのである。ゲーミングPC市場の天下統一を虎視眈々と狙う戦いはさらに白熱していく。ゲーミングPC業界は群雄割拠の様相を呈した。

G TUNEの2004年~2009年の5年間をブランド認知高めることに成功した最初期とするならば、2010年から2019年の約10年間は中期的にG TUNEがさまざまなところにアンテナを張り巡らせた日々であったといえるだろう。G TUNEは3D立体視に対応したゲーミングノートPCや東プレの「RealForceシリーズ」とコラボしたゲーミングキーボードを発売した。

購入を迷っているユーザーが、店頭でG TUNEを確認できるように国内各地でダイレクトショップもオープンされていった。10周年を迎えた2014年にはG TUNE公式キャラクターの「G TUNEちゃん」のLINEクリエイターズスタンプが販売され、翌年の2015年にはなんと、G TUNEちゃんのキャラクターソング「Burning The Soul」がリリースされた。

またゲーミングPCブランドが行う新たな試みとして、G TUNEはインディーゲームのイベントを開催した。2014年に開催された第1回では、後に大ヒットした『天穂のサクナヒメ』の開発元えーでるわいすの『アスタブリード』などを試遊できた。PS4でも発売された『巫剣神威控』も出展。ヘッドマウント型のVRディスプレイ「Oculus Rift DK2」の体験会も開かれていた。ちなみに家庭用ゲーム機において本格的なVRデバイスが登場したのは、PlayStation VRが発売された2016年10月だ。ほか、G TUNEブランド15周年の2019年には、マウスコンピューターとして初めて東京ゲームショウにブースが出展された。

G TUNEの推奨PCとしては、もはや定番の『モンスターハンター フロンティア オンライン』のほかに『ファイナルファンタジーXIV(旧版)』(2010)や『The Elder Scrolls V: Skyrim』(2012)などの推奨PCが発売された。なかでも『The Elder Scrolls V: Skyrim』は、これまで推奨PCがさまざま発売されてきたオンラインRPGとは異なる、シングルプレイのオフラインゲームだ。同作では当時最新鋭のグラフィックにて広大なオープンワールドを冒険するため、かなりのスペックを必要としたのだ。さらにグラフィック強化Modなどを入れて楽しむためには、より強い負荷がPCにかかるため、高スペックなゲーミングPCとは相性の良かった。当時の家庭用ゲーム機では味わえないModによって作り変えられた『The Elder Scrolls V: Skyrim』を冒険することができた。同作の登場は、ゲームをする場合は第一にPCでプレイしたいと考えるユーザーの増加に繋がったといえるだろう。

そのほか2010年代の大きな流行の1つとして、無料でプレイできるシューターの登場がある。オンラインFPSの『Alliance of Valiant Arms』は大ヒットしたタイトルであり、2013年にはなんと1年で5回も推奨PCがリリースされている。G TUNEの推奨PCの歴史から見ても、このときの『Alliance of Valiant Arms』は最大瞬間風速といえるほど盛り上がったタイトルなのかもしれない。

ほかの2010年~2019年に流行したゲームもザッとチェックしていこう。『Fallout: New Vegas』(2010)や『グランド・セフト・オートIV』(2008の新作ビッグタイトルは、国内のPCゲーム市場でも話題になった。2011年に正式リリースされた『Minecraft』や『Terraria』(2011)などのサンドボックスゲームが流行ったことがこの時期の特徴だ。

伝説的な当り年と言えるのが2015年で『ウィッチャー3 ワイルドハント』、『グランド・セフト・オートV』PC版、『Fallout 4』などどれも凄まじい売り上げを誇った作品だ。バトロワがブームになった2017年もすごかった。2017年は『フォートナイト』の早期アクセス配信が開始され『PUBG: BATTLEGROUNDS』がリリースされた年だ。またバトロワというジャンルからは、2019年に『Apex Legends』がリリースされている。

G TUNE20周年、続く戦国時代(2020~2024)

2019年にブランド誕生15周年を迎えたG TUNEは、2020年代になっても積極的にゲーム業界に携わっている。G TUNEは2020年にJeSU(日本eスポーツ連合)とオフィシャルPCサプライヤー契約を締結した。マウスコンピューターが2023年に創業30周年を迎えた後には、「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル2024 in 東京」へ約200台の機材協賛を行っている。そして、G TUNEは2024年にブランド誕生20周年の節目を迎えた。

ここ最近のゲームタイトルの特徴としては、タイトルによっては家庭用ゲーム機版とPC版が同時にリリースされることが多くなってきたことが挙げられる。開発環境の変化やPC市場の規模が大きくなったことによって、家庭用ゲーム機とPCの垣根はかつてないほど低くなったといえる。Steamなどによって、ダウンロード販売が一般的になったこともPCゲームをプレイしやすくなった理由であることは間違いないだろう。

近年のG TUNEでは『エルデンリング』(2022)や『ストリートファイター6』(2023)などの推奨PCが発売された。この記事を執筆している2024年にも、『龍が如く8』や『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』などの推奨PCが発売されている。人気タイトルは他社のゲーミングPCブランドから推奨PCが登場することが頻繁にあるため、先駆者として数多くの推奨PCを販売してきたG TUNEも気を抜けない。

20年におよぶG TUNEの歴史は決して楽な道のりではなかった。G TUNEは先駆者としてゲーミングPC市場に乗り込むもすぐにライバルが出現し、続々と新規勢力も登場する状況があった。G TUNEを取り巻くPC業界の20年は、まるでゲーミングPC市場の覇権をめぐる群雄割拠の戦国時代のようだ。G TUNEの戦いを振り返っていくと、ゲーム業界の変化をあらためて知ることができたと思う。

また推奨PCに選ばれたタイトルを眺めていると、さまざまなゲームの思い出が蘇ってくる。ゲームはこれからも続いていくし、ゲーミングPCの戦国時代はまだ明けない。G TUNEはライバルと切磋琢磨しつつ、これからもその戦いの歴史を紡いでいくだろう。ゲーミングPCの戦国時代は、今なお続いているのである。

2004年から2024年までのG TUNEの歴史、推奨PCタイトル、国内PCで当時流行したゲームの一覧をGoogleスプレッドシートにまとめた。本記事の副読本として参考にしてほしい。

G TUNEのブランド立ち上げ20周年を記念したモデルが販売中だ。デスクトップ型ゲーミングPC1種とノート型ゲーミングPC2種のほか、デスクトップ型ゲーミングPCにディスプレイやマウスなどを同梱するセットも販売される。ラインアップは以下のとおり。

● 15.6 型ノートパソコン「G TUNE P5-I7G60WT-B(G TUNE 20 周年記念セットモデル)
20万2000円(税込)~
  ○ 15.6 型ノートパソコン「G TUNE P5-I7G60WT-B」
  ○ ゲーミングイヤホン「Logicool G333-PU」
● 15.3 型ノートパソコン「G TUNE E5-I7G50BK-B (G TUNE 20周年記念モデル)
15万9800円(税込)

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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