『崩壊:スターレイル』新世界「オンパロス」の作り込みが“超スケール”級だった。試遊で見えた、街・建造物・戦略などから感じる新世界の圧倒的迫力
『崩壊:スターレイル』は、宇宙を冒険するロマンに満ちたスペースファンタジーRPGだ。記憶喪失という無色透明の主人公を通じて、プレイヤーは宇宙に点在する奇想天外な星を冒険していく。本作は運営型タイトルであり、大型アップデートを通じて新しい場所が主人公の舞台に追加されてきた。主人公が目覚めることになる宇宙ステーション「ヘルタ」、雪で覆われた星「ヤリーロ-VI」、超巨大な宇宙船に都市を築き上げた仙舟「羅浮」、銀河随一の歓楽街で現実と夢を行き来する「ピノコニー」など、主人公たちは各所で巻き起こる事件に挑む。
そんな『崩壊:スターレイル』の次期大型アップデートとなるVer.3.0では、「永遠の地」オンパロスが新たな舞台として登場する。弊誌は『崩壊:スターレイル』Ver.3.0の試遊プレイを通じて、オンパロスをひと足早く訪問することができた。オンパロスに行って知ったさまざまなことをこの記事でお伝えしたい。
オンパロスってなんなんだ?
まずは、これまでのストーリーで言及されてきたオンパロスの概要を振り返っておこう。オンパロスについては、作中でもちらちら言及がなされている。というのも、ピノコニーの事件が解決を迎えたVer.2.3で、次なる旅路の目的地の候補に挙げられたのがオンパロスだったからだ。オンパロスを目的地に推薦したのは、ブラックスワンだ。
ブラックスワンによると、この宇宙の大多数の人がオンパロスの存在を知らないという。ブラックスワンの所属する派閥「ガーデン・オブ・リコレクション」の「鏡」にしか、オンパロスは映らないそうだ。なかなか特殊な世界である。
しかしすぐオンパロスに向かったわけではなかった。Ver.2.3のメインストーリー終了後もしばらくは次の目的地が決まっていなかったが、現実の話ではあるものの、『崩壊:スターレイル』公式Xアカウントがオンパロスの新キャラクター発表したことによって、次の目的地がオンパロスになることが正式に決まった。アグライアのキャラクター紹介によると、主人公たちはオンパロスの神々である「タイタン」と戦うことになるらしい。
オンパロスのメインストーリーでは主人公たちと「タイタン」との戦いを描いた壮大なストーリーが展開されそうだ。というのも、ブラックスワンはオンパロスが3つの「運命」に縛られた世界であることを明かしていた。作中における運命とは、全宇宙の行く末を左右する力を持つ「星神(アイオーン)」たちに由来する概念をいう。スターレイルで実装されるプレイアブルキャラは皆、それぞれ運命を歩んでいて、その運命ごとに、戦闘面で異なる力を発揮している。
オンパロスに直接的に関わる3つの運命のうち、2つまでは公式のトレイラーやXアカウントで絞られてきた。新キャラクターとして発表されたアグライアの運命は「記憶」だ。Ver.3.0の予告番組によると、主人公はオンパロス編で新たに「記憶」の運命を選択可能になる模様。新キャラクターや主人公が新たに歩むことになる「記憶」の運命は、オンパロス編のストーリーに深く関わってくるのは間違いない。
Ver.2.7のメインストーリーでは、「知恵」の運命がオンパロス編に大きく関わることも列車のナビゲーターである姫子から言及された。同バージョンのストーリーでは知恵の運命を歩むヘルタが星神のヌースに謁見する様子も明らかになっている。星神は作中の世界における最上位の存在といっても過言ではなく、人間が星神から一瞥を得られるのも稀なことだ。
本作には、星神の意思を代弁する「使令」と呼ばれる特別な存在が登場し、彼らは星神の恩恵を受けているらしい。ヘルタもその使令の1人。彼女は真の姿であるマダム・ヘルタとしてオンパロス編でプレイアブルキャラクターとなる。ついにヘルタの真骨頂が見られるわけだ。
マダム・ヘルタは示唆的で、オンパロス編の紹介トレイラーでは、なにやら意味深に「オンパロス、あなたの答えは違うの?」と呟いた。なお、今回の試遊では、アグライア、記憶の運命を歩む主人公、マダム・ヘルタの全員がプレイアブルだった。性能については後述しよう。
公式トレイラーによると、オンパロスの世界はかつて混沌としていたそうだ。そこに神々が火種を与えてタイタンと呼ばれる存在が生まれた。タイタンたちによって築き上げられたオンパロスは繁栄を謳歌したが、突如として降り注いだ「暗黒の潮」によってタイタンたちに異変が発生。1000年に及ぶ戦争が巻き起こった末に、オンパロスは崩壊してしまう。
オンパロスは滅びる寸前の世界だ。Ver.3.0の予告番組(12:55~)によると、「黄金裔」と呼ばれる人間の英雄たちがオンパロスの天地を再創造するために活動しているらしい。黄金裔がタイタンの12の火種を継承するのは並大抵のことではなく、1000年もの長きの活動を経てようやく半分の6の火種を継承することができたという。再創造のために残された時間はもはや少ないなかで、主人公たちがオンパロスにやって来る。
では概要をお伝えしたところで、オンパロスの様子をお届けしよう。
公衆浴場を中心に文化が発展した都市オクヘイマ
オンパロスの世界観は、ギリシャ神話がモチーフになっている。オンパロス(Oμφαλός)は「へそ」や「中心」を意味するギリシャ語だ。オンパロスはギリシャ神話ではデルフォイのアポロン神殿に飾られた聖なる石として登場した。オンパロスのあるところが「世界の中心」と古代ギリシャでは考えられており、『崩壊:スターレイル』の世界でも重要な場所であることは間違いないだろう。新キャラクターのアグライアもギリシャ神話にちなんだ存在だ。ヘシオドスが著した『神統記』によると、アグライアは女神アプロディーテーの侍女の1人と伝わっている。
ここからは実際にオンパロスを旅した感想を語っていこう。オンパロスの中心的な都市である「オクヘイマ」と呼ばれる場所にまず行ってみた。「永遠の都」という異名を持つオクヘイマは、山を背にした空中都市のような雰囲気がある。空は晴れ渡り、遠くに巨大な石像が見える。この巨像は、かつて人間を創造したというタイタンのケファレ。暗黒の潮からオクヘイマを守るために、ケファレは街を覆う壁を築き上げた。オクヘイマに昼が訪れるのは、ケファレが太陽のような球体の「黎明」を背負ってくれているおかげだ。オクヘイマはケファレの加護によって存続している街といえるだろう。
オクヘイマの街はかなり広大だが、各所で空を見上げればケファレの姿を目にすることができる。実在感という観点からすると、ケファレは滅多に姿を見せない星神たちよりも極めて身近な存在だ。その一方で、ケファレが自らを犠牲にせざるを得ないほど追い込まれたオンパロスの苦境が窺い知れる。ケファレにしても、4本うち1本の腕が破壊されてしまったようだ。オクヘイマを守るために重荷を背負い続けるケファレの姿を見て、人々が慕うのも当然といえよう。『崩壊:スターレイル』に登場するほかの世界では見られないような神と人の関係性は、壮大で自由なオンパロスの雰囲気につながっている。
到着早々に巨大な石像に度肝を抜かれたが、オンパロスはすべてのスケールが壮大だ。石造りの建物は重厚でありながらも、数多くの柱が狭い間隔で並んでいることで均整の取れた印象を受けた。宇宙の大多数の人がオンパロスのことを知らないそうだが、訪れた都市のオクヘイマは人々で賑わっていた。オクヘイマの「雲石の天宮」には、「大地獣」と呼ばれる動物に乗って移動する人々を見かけた。「大地獣のステーキ」なるものも販売されており、市場では食肉としても流通しているようだ。
雲石の天宮の建物の入り口には、水の流れる巨大な門があった。門を通り抜けると巨大な公衆浴場へ辿り着く。オンパロスには入浴の文化が広まっているようで、老若男女が集っていた。裸になって湯に浸かる描写こそないものの、布を体に巻き付けたような軽装でリラックスした人々の姿が見られる。足だけ湯に浸かっている人もいれば、湯にソファを浮かべて座っている人もいた。利用者同士の会話内容も多岐にわたるようで、談笑している人もいれば、真剣な議論をしている人たちも存在する。
公衆浴場を探索していると、この場所はオンパロスにとってさまざまな役割を担っていることがわかる。浴場には図書館のような施設が併設されており、パピルスのような巻物の形式で数多くの所蔵があるようだ。学者のためのスペースも存在し、数学者を名乗るNPCが研究活動に励んでいる様子も見られる。大人が子供たちに何かを教えている場所もあり、公衆浴場は学校でもあるのかもしれない。ほかには利用者に食事を提供する場所もあれば、オルガン奏者による優美な音楽が流れる場所もあった。オンパロスの神々に祈りを捧げるための施設も点在している。オンパロスの文化は公衆浴場が中心であり、学問や娯楽などの文化が渾然一体となっていると言っていいだろう。入浴、食事、学問、信仰などが境目なく公衆浴場に集っていることはオンパロス独自の雰囲気を醸し出している。
オクヘイマには、商店が立ち並ぶ「雲石市場」も見逃せないスポットだ。骨董品やレストランのほかに、書店などが存在する。学術書から最新の流行書まであらゆるものが揃うという書店は、なんと書物という概念が誕生したときからあるという。もしそれが本当だとすれば、オンパロスが神々の加護を受けた土地であることはたしかなものになる。鍛冶屋も印象的で、オーナーの大工匠ハートヌスは山の民の一族だそうだ。オクヘイマには、一般人、山の民、タイタンの眷属などの複数の種族が暮らしている。もしかすると新キャラクターのアグライアも、タイタンの眷属なのだろうか。アグライアは、オクヘイマ出身の仕立て屋(ラプティス)として公式Xで紹介されている。
公衆浴場や市場のほかには、天空庭園も存在した。草木が生い茂る場所で、石像の姿もよく見える。生命の花園には大木が生えており、そちらに祈りを捧げる人々の姿も目撃した。もしかしたら、大木もまた信仰の対象なのかもしれない。財務官という行政に携わるNPCもここにいたので、オンパロスにとって重要な場所であることが垣間見える。街の各所が流線形の細い道でつながっているため、古代ギリシャ風のファンタジーの世界観でありながらも『崩壊:スターレイル』らしいSF的な雰囲気を残しているのが感慨深い。
栄光と滅亡の2つの時代の対比が際立つクレムノス
オンパロスには文化的な都市であるオクヘイマが存在する一方で、燃え盛る照明と兵士たちで荘厳な「クレムノス」と呼ばれる場所も存在する。クレムノスには「血染めの戦端」という物騒な異名が付けられているように、兵士たちの訓練所を兼ねる神殿は軍事的な拠点となっている。
クレムノスの軍が出兵するときも凱旋するときも必ず通るとされる「征伐の道」から神殿の正門までは一直線になっているが、その道は長い。『崩壊:スターレイル』の過去のストーリーを思い出しても、ここまで長い一本道はなかったと思う。オンパロスでは、壊すことで一時的な移動速度バフを得られる「飛天の壺」というフィール上のオブジェクトが新たに加わる。それを上手く使うことで、オンパロスではかつてないほどのスピードで街を探索できるようになった。
軍の拠点となる神殿は、3階建ての巨大なものだ。「紛争の正殿」と呼ばれる場所には、数多くの兵士が集まっていた。男性の兵士もいれば、女性の兵士もいる。来たるべき戦いに備えて訓練しているようだ。動きやすさを重視してか、兵士たちは街の人々よりも軽装になっている。訓練兵士たちが身軽な格好をしている一方で、正規の兵士たちは兜や鎧で身を固めていたのも印象的だった。古代ギリシャの兵士といえばお馴染みの頭頂部に飾りをつけた兜を身に着けた兵士も見かけた。オンパロス編の紹介トレイラーに登場したように、通常の人間よりも大きな身体を持つ兵士も存在しており、これから起こる人と神の戦いは壮大なものになりそうだ。
オクヘイマと異なり、クレムノスは危険に満ちている。兵士の訓練所を離れると敵がうろついているし、道も整備されていない。神殿の地下には煮えたぎる溶岩が流れている一方で、地上には「鋳魂の門」と呼ばれる厳かな雰囲気が漂う場所が存在する。この鋳魂の門には偉大な戦士をかたどったと思われる氷像が設置されていた。開けた場所に出ると青空が広がる。石造りの建物と青い空のコントラストが抜群だった。トロイの木馬のような置物も古代ギリシャ風の雰囲気を伝える。
主人公たちが訪れるオンパロスには、「黎明」と「永夜」という2つの時代があるようだ。それぞれの時代の詳細はわからなかったものの、「黎明」はまだオンパロスが栄えていた頃で「永夜」は崩壊後の時代であることがうかがい知れた。黎明の時代のクレムノスは兵士たちが戦いに備えているが、永夜の時代のクレムノスは「紛争の廃墟」という異名が付けられて滅びてしまっている。かつては戦士たちが勇気を発揮したという「クレムノス闘技場」にも永夜の時代には人影もない。
新ギミックは「時間戻し」と「巨大ハンド」
その場所の過去を垣間見る「記憶の残像」というギミックが今回から登場するが、主人公たちは時間を巻き戻して障害物を突破していく。黎明と永夜の2つの時代を切り替え可能な装置も存在し、時代を変更すると通行可能な場所も変化する。いわゆるダンジョン探索パートでは、現代の障害を乗り越えるために過去の一部を再現して先へ進んでいく。
派手なギミックとしては、巨大なロボットの手を遠隔操作するような「ザグレウスの手」が新たに登場した。ザグレウスの手の操作時には視点も変わり、主人公たちの道を塞ぐ障害物を破壊可能。それどころか、フィールド上の敵を直接攻撃して主人公たちとのバトルなしに先に進むこともできるようになっている。2つの時代を行き来するフィールドのギミックは手間がかかる一方で、ザグレウスの手を操作して邪魔な物体や敵を破壊できるのは爽快だった。元ネタのザグレウスもギリシャ神話に登場する神の1人だが、ストーリーではどのように紹介されるのか気になるところだ。
試遊の最後に訪れたのが、異境と名付けられた「創世の渦心」だ。この場所は、今回もっともSFの雰囲気に満ちた場所かもしれない。建物はなく、人の気配もしない場所だが、まるで銀河の中心にいるような神秘的な場所となっている。公式トレイラーでも一瞬だけ登場した場所で、紋章が空中に描かれているのも特徴的だ。これらの紋章は12個存在するため、公式トレイラーで紹介されたアグライアなどの新キャラクターである「黄金裔」と関連しているものと考えられる。
本格的な召喚パーティの到来を告げるバトル
Ver.3.0で実装される新キャラである、アグライア、記憶の運命を歩む主人公、マダム・ヘルタのバトルでの使用感についても紹介しておこう。なお、正式にリリースされるバージョンでは性能が異なる可能性があるので留意してほしい。
アグライアは雷属性のアタッカーだ。アグライアは記憶の精霊「ラフトラ」を召喚することができる。召喚したラフトラは自動で攻撃してくれるため、召喚後は実質的にパーティのメンバーが1人増えたような格好となる。ほかのキャラクターでラフトラにバフをかけることも可能。
アグライアの通常攻撃は単体攻撃だが、必殺技を発動後は通常攻撃の範囲が拡散攻撃となり、威力も強化される。既存のキャラクターでいうと、アグライアの必殺技はホタルの必殺技に近い性能だ。必殺技発動時に、アグライアがラフトラの胸から剣を取り出す仕草が美しい。アグライアの強化された通常攻撃の威力は高く、通常攻撃でSP消費がないことも強みとなっている。同じ雷属性の召喚型である景元とはまた異なるキャラになりそうだ。
記憶の運命を歩む主人公は、召喚能力を持つ氷属性のサポーターだ。「ミュリオン」を召喚し、味方単体の行動順を早める能力を持っている。アグライアには攻撃の回数が多いほど攻撃速度が速くなり、攻撃速度が速いほど攻撃力が高くなるという特徴が存在するため、記憶の運命を歩む主人公との相性がかなりいい。アグライアと記憶の運命を歩む主人公のコンビは、召喚能力を軸とする新たなパーティ編成の時代の到来を予感させた。
マダム・ヘルタは、知恵の運命を歩む氷属性のアタッカーだ。マダム・ヘルタがパーティにいると味方が攻撃を行う際にターゲットに累積可能なマークが付与され、そのマークの層数が高いほど、マダム・ヘルタが必殺技を発動したあとの戦闘スキルで与えるダメージが上昇する。マダム・ヘルタは新キャラクターとして登場するため、既存のヘルタと同時に編成可能。2人を併用すると全体攻撃を次から次へと繰り出すことができるため、敵をまとめて倒すことができて爽快だった。
新世界「オンパロス」を旅してみた感想
ギリシャ神話に由来する世界観は、これまでにも数多くのゲームで採用されてきた。『崩壊:スターレイル』の魅力を、宇宙を冒険するロマンと捉えていた筆者からすれば、ギリシャ神話をモチーフにすることは新鮮さが損なわれるのではないかと危惧していた部分もあった。その不安な部分は、試遊後に完全に払拭されたと言える。滅亡の危機が迫るオンパロスで、どのように主人公たちの冒険が描かれるのか楽しみでならない。また同作はこれまではどちらかといえば閉じたエリアでの展開が多かったが、オンパロスは開けており、スケール感が感じられることも特色であった。
アグライアや記憶の運命を歩む主人公の登場によって、召喚パーティのプレイフィールがどのようになるのかも気になるところだ。ストーリーもバトルも待ち切れない思い出いっぱいなのだが、いまはとにかくVer.3.0の開幕を待とう。『崩壊:スターレイル』は、PS5/PC/iOS/Android向けに基本プレイ無料で配信中。次期大型アップデートとなるVer.3.0は、2025年1月15日に配信予定となっている。