『マーベル・ライバルズ』開発者、『コンコード』含めたヒーローシューター群がコケたことに対し「プレイしたくなる理由が大事」と言及。遊んでるゲームからの引っ越しは大変
『マーベル・ライバルズ』にてゲームディレクターを務めるThaddeus Sasser氏の、11月4日に配信されたポッドキャスト番組における『コンコード(CONCORD)』に関する言及が注目を集めている。海外メディアVideoGamerが伝えている。
『コンコード』は、チーム対戦FPSだ。ロール分けのあるキャラが登場する点が特徴の、5対5のヒーローシューターであった。同作はソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)傘下のFirewalk Studiosが手がけ、PC/PS5向けに8月24日に買い切り型ゲームとして発売。しかし配信直後のSteam同時接続プレイヤー数がピーク時にも約700人に留まるなど、大型のオンラインゲームとしてはかなり苦戦している様子も見られた(関連記事)。
そして発売からわずか10日後に販売が停止され、オンラインサービスも停止。そのまま10月30日にFirewalk Studiosが閉鎖され、販売・サービスも再開されないことが発表された(関連記事1、関連記事2)。PvPのFPSは非常に競争が激しく、常に進化しているジャンルであり、『コンコード』では目標を達成することができなかったことが背景として説明されていた。
一方『マーベル・ライバルズ』は、NetEase GamesとMARVEL Gamesとのコラボで制作されたチーム対戦TPSだ。対応プラットフォームはPC/PS5/Xbox Series X|Sで、12月6日より基本プレイ無料にて提供されている。本作ではマーベルのスーパーヒーローやヴィランたちがプレイアブルキャラクターとして登場し、ロール分けのある6対6のバトルを繰り広げる。
そんな『マーベル・ライバルズ』にてゲームディレクターを務めるThaddeus Sasser氏が、海外メディアVideoGamerのポッドキャスト番組にて、『コンコード』などのヒーローシューターに関して言及していたことが注目を集めている。『マーベル・ライバルズ』のリリース前となる11月4日に配信された番組であり、Sasser氏が同作の開発を振り返る内容だ。
番組内でSasser氏は『コンコード』を含めさまざまなヒーローシューターが現れては消えていったことについて言及され、その原因についての見解を伝えていた(番組の25分ごろ)。同氏はまずプレイヤーが新しい作品を遊ぶ際の「切り替えコスト(switching cost)」について言及。たとえば同氏はプレイヤーとして『オーバーウォッチ』にてすでにファラのスキンを15種類も購入しているそうで、「ほかの作品を遊ぶ気にならない」といったジョークを飛ばしている。つまり、ユーザーがプレイ時間を費やしたりゲーム内要素に課金したりして“投資”している作品があるなかでは、類似ジャンルの作品が現れても鞍替えのハードルが高いということだろう。
またSasser氏は、今のゲーム業界は根本的に変化しており、上手くいくと想定されていたゲームが大失敗することもあれば、その逆のパターンもあると説明。前もって成功を見極めるのが難しく、あらゆる開発者がゲームの売れ行きを懸念する状況があるようだ。
とはいえSasser氏は、そうした課題への解決策として「ユーザーがプレイしたくなる理由」が非常に重要だと述べている。『マーベル・ライバルズ』ではマーベルIPの人気キャラクターを起用することで、ユーザーがプレイしたくなる理由をもたらしていると、自信を示していた。
マーベルといえば今やコミックのみならず実写作品群「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」でも世界的な人気を博すIPだ。そしてたとえばMCUでは今年、アイアンマンのトニー・スタークを演じたロバート・ダウニー・Jr.氏が、「ドクター・ドゥーム」としてMCUに返り咲くことで注目を集めていた(THE RIVER)。この際には本作のトレイラーでもドクター・ドゥームの参戦が示唆されるなど、MCUでの盛り上がりを意識したとみられるプロモーションも見られた。マーケティングにおいても、マーベルIPを最大限に活用する方針があったのだろう。
そうした狙いが功を奏したからか、『マーベル・ライバルズ』は12月6日のリリース初日からSteamにて40万人以上の同時接続プレイヤー数を集めるなど、絶好調のスタートを記録(SteamDB)。連日ピーク時に40万人以上を集め、人気を維持している。またすべてのプラットフォーム合算で、3日間で1000万人のプレイヤーを集めたことも報告されている。ユーザーからはゲームシステムや一部キャラの能力などが『オーバーウォッチ』になぞらえられつつも、一定の好評を受けている。またマーベル作品キャラの姿をTPSとして眺められる点も持ち味として評価されている様子だ。
人気作『オーバーウォッチ』およびその後継作『オーバーウォッチ2』が先発作品としてあるなかで、ロール分けのあるチーム対戦型の新作ヒーローシューターとしてリリースされた『マーベル・ライバルズ』と『コンコード』。リリース後の結果は対照的であり、完全新規のIPかつ買い切り型のゲームであったことなども『コンコード』が苦戦した背景としてあるのだろう。業界では引き続き各社が野心的なライブサービスゲームの展開を狙う状況もあるなか、既存作品のプレイヤーを惹きつける“遊びたくなる理由”の重要性が垣間見える事例かもしれない。