「メタスコア気にしない」発言の須田剛一氏、「やっぱりメタスコアは気になる」とボケてメディアレビューを褒め、笑い誘う。よりによって10点中3点の酷評レビュー


NetEase Gamesおよびグラスホッパー・マニファクチュアは10月31日、『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』をリリースした。本作のリリース前日に、グラスホッパー・マニファクチュアのCEOを務める須田剛一氏があるメディアによる“酷評レビュー”をあえて「素晴らしいレビュー」として紹介。同氏の「レビュースコアを気にしない」理念も垣間見えるユーモアたっぷりな行動を受けて、ユーザーは笑いを誘われたようだ。

『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』は、2011年にPS3/Xbox 360向けに発売された『シャドウ オブ ザ ダムド(Shadows of the Damned)』のリマスター版だ。同作は、悪魔ハンターを生業とするガルシア“G”ホットスパーを主人公とするアクションアドベンチャーゲーム。ガルシアは、銃器や打撃武器に変化する相棒であるドクロのジョンソンと共に、悪魔が巣食う地獄へと向かうことになる。


リマスターにあたっては、最大4K解像度に対応し、オリジナル版より滑らかな60fpsでプレイ可能になった(4KはPS5/Xbox Series X/Steam版のみ対応で、Nintendo Switch版は30fps)。また、オリジナル版で要望が多かったという「強くてニューゲーム」モードなどの新要素も実装。同モードでは前回プレイから武器やアップグレードを引き継いで新しいゲームをプレイできる。


発売直前に“素晴らしいレビュー”を紹介

そんな本作についてのとあるメディアのレビューについて須田氏が言及し、注目を集めている。須田氏といえば、『シルバー事件』や『ノーモア★ヒーローズ』など個性際立つ高評価作品を手がけてきた人物だ。同氏は10月30日、海外向けに『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』が10月31日にリリースされることを改めて告知。あわせて海外メディアPCGamesNによる本作のレビューを紹介し、「素晴らしいレビューなのでぜひ読んでみてください!」とユーザーにおすすめしている。


須田氏が“素晴らしいレビュー”と称賛するPCGamesNのレビューを見てみると、まず見出しから本作を「死んだままでいるべきだった」、つまりリマスターしなくてよかったと痛烈なコメント。理由として、下品で意地汚い作風であり、吹替も耳障りで、銃撃戦は中途半端で、リマスターにあたってのグラフィック向上はほんの少ししかない、との酷評を下している。その後の内容においても、具体的な場面をいくつか紹介しつつ、作風や内容を何かにつけて批判。レビュースコアは10点満点中3点としている。

そんなPCGamesNのレビューを“素晴らしいレビュー”としておすすめしている須田氏に対して、ユーザーは笑いを誘われた様子だ。「須田さん、それ好評レビューと違いますよ「わかってて言ってるんだろうよ」といったツッコミも見られる。須田氏の“すっとぼけた”ようなメディアレビュー紹介に、ユーザーはにこやかな反応を寄せているようだ。


レビュースコアは気にしない

では、なぜ須田氏はあえて発売前日に、酷評されているPCGamesNのメディアレビューを堂々と取り上げたのか。この背景には、同氏がメディアレビュー、ひいてはレビュー集積サイトMetacriticにおける「メタスコア」を気にしない姿勢があると見られる。

Metacriticには各ゲームに対するユーザーからの点数のほか、各種ゲームメディアのレビュー/点数も集められて算出されるメタスコアが一定の権威を獲得している。メタスコアは“ゲームの点数”としても扱われることがあり、特にスコアが高いものは人気作の評価を下されることが多い。


一方で須田氏は、9月に掲載された海外メディアGames Industry.bizのインタビュー記事において、(昨今では)「メーカーがみんなMetacriticのスコアを気にしすぎている」との見解を示していた。同氏によれば、メタスコアで高得点を獲得するための、ゲーム開発の“方程式”なども研究されるような状況だそうで、そうした“方程式”から外れるような作品は減点評価を下されがちだという。大手メーカーを中心に、ゲーム作りにおいてメタスコアでの減点を避ける傾向もあるようだ。

とはいえ須田氏は、個人的にはメタスコアを気にしていないとのこと。同氏やグラスホッパー・マニファクチュアにとって重要なのは「自分たちが出したいゲームを出すこと」であり、「プレイしてほしいと思うゲームをプレイしてもらうこと」だという。メタスコアで高得点を得ることではなく、スタジオの持ち味や独自性を重視したゲーム作りをしているわけだろう。

ただ今回の“PCGamesNの酷評の紹介”において須田氏は「メタスコアを気にしてるかって?もちろん気にしてるよ」ともコメントしている。上述したインタビューでの発言を踏まえると、これはジョークだろう。メタスコアもレビュースコアも気にしないからこそ、あえて発売前に酷評を堂々と紹介したとみられる。あるいはPCGamesNの記者にとっては肌に合わなかったと思われるクセの強い作風にむしろ興味を抱くユーザーに、本作を遊んでほしい狙いもあるかもしれない。


なお先述のインタビュー記事で須田氏は、グラスホッパー・マニファクチュアの作品がリリースされた際に須田氏は、メタスコアの確認自体はするとも伝えていた。同スタジオの作品はときどきメディアに0点をつけられることもあるそうで、「なんでそこまでやるの?」「なんで0点?」としてうんざりしてしまうことを、にこやかにコメント。数値として気にならないからこそ、逆に酷評レビューも臆せずしっかりチェックしている可能性もありそうだ。

ちなみに本作のMetacriticにおいてPCGamesNが付けた10点満点中3点という数値は、他メディアと比べてダントツの低評価。70点~80点を付けるメディアが多く、平均メタスコアは69となっている。とはいえメタスコアについては気にせず、実際にプレイして自分なりの評価を考えてみるのもいいかもしれない。

『シャドウ・オブ・ザ・ダムド: ヘラ リマスタード』は、PC(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch向けに発売中だ。